白色申告の大家が確定申告で出す「収支内訳書(不動産所得用)」は、表と裏のA4・2ページだけの様式です。それでも、いざ手元の通帳と返済予定表を前にすると「礼金はどの欄か」「返済額のどこまでが経費か」「減価償却の欄は何を入れる順番か」で手が止まります。国税庁の様式(令和2年分以降用)と「令和7年分 収支内訳書(不動産所得用)の書き方」を一次資料に、表面の①から裏面の「貸付不動産の保有状況」まで、様式の欄と同じ順番で、何を・どこから転記するかを整理しました。
筆者は最初の区分マンションを3月に取得し、その年はこの様式で申告しています。年の途中取得の月割りや、信販系ローンの返済予定表から利息だけを拾う作業でつまずいた場所は、いまも毎年同じところです。計算式は国税庁の書き方どおり、数字はモデルケースで実際に計算して示しますので、ご自身の物件の数字に置き換えれば、そのまま記入できます。
- 白色申告で不動産所得を申告する大家・サラリーマン投資家
- 収支内訳書(不動産所得用)の表面・裏面を、欄の順番どおりに埋めたい方
- 減価償却費の計算欄(取得価額・償却率・月数・未償却残高)の入れ方を確認したい方
- 借入金利子の転記、土地取得分の利子の扱い、礼金・敷金の年分で毎年迷う方
- 収支内訳書の数字を確定申告書の第一表・第二表へどう写すかを知りたい方
- 様式は表面(収入①〜⑤・経費⑥〜⑫・所得⑮・収入の内訳)と裏面(減価償却費の計算・借入金利子・地代家賃・修繕費の内訳・貸付不動産の保有状況)の2ページ。書く順番は「裏面の内訳→表面の合計」が早い
- 収入:賃貸料は契約で決めた支払日の年分。礼金・更新料は「収入することが確定した年」。敷金・保証金は預り金なので収入に入れない(返さないことが確定した分だけ収入)
- 経費の2大ミス:借入金は利子だけが経費で元本は入らない/所得税・住民税・延滞税は租税公課に入らない
- 減価償却:建物は定額法。年の途中取得は月割り(3月取得なら10か月)。建物1,000万円・RC造47年なら初年度183,333円、翌年から220,000円
- 赤字のとき:土地取得分の借入金利子は損益通算できないため、専用欄に書き、申告書の不動産所得は「赤字−土地分利子」の額を△で書く(利子のほうが大きければ0)
- 手書きより国税庁「確定申告書等作成コーナー」が確実。計算欄は自動計算で、スマホとマイナンバーカードでe-Tax提出まで完結する
- 礼金を入金月で、家賃を「もらった分だけ」で集計している
- 毎月の返済額をそのまま借入金利子に書いてしまう
- 減価償却の欄で「償却の基礎になる金額」と「未償却残高」の違いが分からない
- 赤字なのに土地取得分の利子欄を空欄のまま損益通算している
- 収入は「支払日の定め」と「確定した日」で年分を切り分けられる
- 返済予定表の利息列だけを合計し、⑩に転記できる
- 取得価額×償却率×月数÷12を自分で検算し、翌年の残高まで出せる
- 土地分の利子を分け、申告書第一表の不動産所得欄に△の正しい額を書ける
- 📋 1. 収支内訳書(不動産所得用)とは|出す人・出さない人・2ページの構成
- 🧾 2. 表面(1ページ目)の書き方|上から順に埋める
- 📐 3. 裏面(2ページ目)の書き方|減価償却と4つの内訳
- 🧮 4. 減価償却費の計算例|3月取得の区分マンションを月割りで償却する
- 💴 5. 借入金利子の転記と「土地分の利子」|返済予定表の利息列だけを合計する
- 🏠 6. 家事関連費のあん分|自宅兼・共用部の水道光熱費
- 📝 7. 収支内訳書から確定申告書へ写す3箇所と、損益通算
- 📱 8. 確定申告書等作成コーナーで作る手順|収支内訳書は自動計算
- 🔁 9. 白色から青色へ切り替える判断
- ❓ 10. よくある質問
- 📚 11. まとめ|欄の順番で埋めれば2ページで終わる
- 📖 この記事の根拠(出典・参考)
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📋 1. 収支内訳書(不動産所得用)とは|出す人・出さない人・2ページの構成
収支内訳書は、白色申告で不動産所得がある人が、確定申告書に添えて出す集計表です。所得税法上は「総収入金額や必要経費の内容を記載した書類」で、青色申告の人はこの様式ではなく「青色申告決算書(不動産所得用)」を出します。青色申告特別控除を狙う段階になったら、不動産投資の青色申告のやり方で切り替えの手続きと期限を確認してください。
| 立場 | 出す書類 | 注意点 |
|---|---|---|
| 白色申告で家賃収入がある | 確定申告書+収支内訳書(不動産所得用) | 駐車場・貸地・貸店舗も同じ様式。事業所得もある人は一般用を別に作る |
| 青色申告の承認を受けている | 確定申告書+青色申告決算書(不動産所得用) | 収支内訳書は使わない。損益計算書・貸借対照表を含む4ページ構成 |
| 会社員で不動産所得が年20万円以下 | 所得税の確定申告は原則不要 | 住民税の申告は別に必要。医療費控除などで申告するなら不動産所得も含めて全部申告する |
様式は「令和二年分以降用」として毎年同じ2ページ構成です。表面が集計と収入の内訳、裏面が減価償却と各種内訳です。
| ページ | 欄 | この記事の章 |
|---|---|---|
| 表面(1ページ目) | 住所・氏名・職業・電話・依頼税理士等/自〇月〇日至〇月〇日 | 2-1 |
| 収入金額①〜⑤、経費⑥〜⑫、所得金額⑬〜⑮、土地等を取得するために要した負債の利子の額 | 2-2〜2-4、第5章 | |
| 不動産所得の収入の内訳(物件・賃借人ごと) | 2-5 | |
| 給料賃金の内訳/事業専従者の氏名等 | 2-6 | |
| 裏面(2ページ目) | 減価償却費の計算(イ〜ヌ・摘要) | 3-1、第4章 |
| 借入金利子の内訳(金融機関を除く)/地代家賃の内訳/修繕費の内訳/税理士・弁護士等の報酬・料金の内訳 | 3-2〜3-4 | |
| 本年中における特殊事情・保証金等の運用状況/貸付不動産の保有状況 | 3-5、3-6 |
白色申告でも、記帳と帳簿書類の保存は義務です(帳簿は7年、領収書などの書類は5年)。集計の元になる家賃台帳・通帳・返済予定表・領収書は、申告が終わっても捨てないでください。
🧾 2. 表面(1ページ目)の書き方|上から順に埋める
2-1. 頭書き|住所・職業・自至の期間
住所は現住所、職業は「不動産賃貸業」(会社員なら「会社員・不動産賃貸業」)で通ります。「自〇月〇日 至〇月〇日」は暦年(1月1日〜12月31日)です。年の途中で貸付けを始めた年も、記入は1月1日から12月31日で構いません(収入の内訳欄の賃貸契約期間で開始月が分かります)。依頼税理士等の欄は、自分で作る場合は空欄です。
2-2. 収入金額①〜⑤|礼金・更新料は「確定した年」、敷金は預り金
収入側は5つの欄で、③までを内訳から転記し、④⑤は足し算です。金額は裏面ではなく表面右側の「不動産所得の収入の内訳」の合計①②③を写します。
| 欄 | 入れるもの | 年分の決め方(国税庁の書き方・No.1376) |
|---|---|---|
| 賃貸料① | 家賃・共益費・駐車場代など本年分の賃貸料の合計 | 契約で支払日が決まっていればその支払日の属する年。前月末払いの契約なら、12月末に受け取る翌年1月分も本年の収入。支払日の定めがなければ実際に受け取った日 |
| 礼金・権利金・更新料② | 本年中に収入することが確定した礼金・権利金・更新料 | 部屋の引渡しを伴うものは引渡しの日、伴わないものは契約の効力発生日。内訳欄では「礼」「権」「更」を○で囲む |
| 名義書換料・その他③ | 名義書換料、返還しないことが確定した敷金・保証金(敷引き・償却分)、入居者から受け取る水道料・電気料など | 敷金は返還を要しないことが確定した日の年分。税込経理の消費税還付税額もここ |
| 小計④/計⑤ | ④=②+③、⑤=①+④ | ⑤が申告書第一表「収入金額等」の不動産欄へ |
| 保証金・敷金 | 預かっている敷金・保証金の期末残高(内訳欄の右端) | 預り金なので収入金額には入れない。残高を書くだけ |
未収の家賃も、支払日が来ていれば本年の収入です。滞納で入金がない分を収入から外すことはできず、回収不能が確定したときに貸倒金⑧(事業的規模の場合)または前年以前にさかのぼった修正で処理します(No.1373)。


2-3. 必要経費⑥〜⑫|9科目と空欄ニの使い方
経費は⑥〜⑩の5科目と、イ〜ホの5科目(うちニは空欄で、自分で科目名を書く)に分かれます。⑪はイ〜ホの小計、⑫は⑥〜⑩と⑪の合計です。国税庁の書き方に載っている各科目の中身と、大家が入れ間違えやすい点を一表にします。
| 欄 | 入れるもの | 入れられないもの・注意 |
|---|---|---|
| 給料賃金⑥ | 建物の管理や集金に従事する使用人への給料・賞与 | 生計を一にする家族への給料は入らない(白色は専従者控除⑭で処理) |
| 減価償却費⑦ | 建物・建物附属設備・構築物などの本年分の償却費 | 裏面「減価償却費の計算」のリ欄の計を転記。土地は償却しない |
| 貸倒金⑧ | 収入に計上済みの未収家賃のうち回収不能になった額(事業的規模の貸付けに限る) | 5棟10室に満たない場合は、収入に入れた年分にさかのぼって所得を計算し直す |
| 地代家賃⑨ | 貸している建物の敷地を借りている場合の地代 | 裏面「地代家賃の内訳」と一致させる |
| 借入金利子⑩ | 物件取得のための借入金の利子(本年中に支払うことが確定した額) | 返済額のうち元本部分は必要経費になりません。第5章で転記のしかたを解説 |
| 租税公課イ | 固定資産税・都市計画税・不動産取得税・登録免許税・印紙税・事業税・税込経理の消費税の納付額 | 所得税・住民税・相続税・国民健康保険税・国民年金・延滞税・加算税・罰金は入れられません |
| 損害保険料ロ | 貸している建物の火災保険料・地震保険料 | 5年一括払いなどは本年分に対応する期間だけ |
| 修繕費ハ | 原状回復・設備の修理など、貸している建物等の修繕費用 | 価値を高める・使用可能期間を延ばす支出は資本的支出=減価償却資産として裏面へ。判定は修繕費と資本的支出のフローチャート |
| (空欄)ニ | 管理委託料・共用部の水道光熱費・広告料など、他に当てはまらない主な科目を自分で作って記入 | 空欄は1つなので、管理費など金額の大きい科目を立て、残りは雑費へ |
| 雑費ホ | 業務上の費用で他の科目に当てはまらないもの(交通費・通信費・振込手数料など) | 家事分は除く |
経費に入れられる範囲の全体像(落とせるもの・落とせないもの)は不動産投資の経費一覧に、固定資産税の計算と関西の起算日は住宅用地特例と大家の固定資産税にまとめています。
2-4. 所得金額⑬〜⑮と専従者控除|5棟10室に満たないと使えない
⑬は⑤−⑫(専従者控除前の所得金額)、⑮は⑬−⑭(所得金額)です。⑭の専従者控除は、生計を一にする15歳以上の配偶者・親族が、その年に6か月を超える期間、不動産所得を生ずべき事業に専ら従事している場合に使えます。控除額は配偶者86万円・その他の親族50万円と、⑬÷(専従者数+1)のいずれか少ない額です。
ここで大家に効く条件が「事業として行われていること」です。貸付けが事業的規模(おおむね10室以上、または独立家屋おおむね5棟以上)でなければ専従者控除は使えません(国税庁の書き方・No.1373)。区分マンション1〜2戸の白色申告では、配偶者に手伝ってもらっていても⑭は空欄になります。専従者控除を受けた家族は、扶養控除・配偶者控除の対象から外れる点も一緒に確認してください。
2-5. 不動産所得の収入の内訳|物件1つでも必ず書く
表面の右側は、貸している物件・賃借人ごとの明細です。物件が1つでも必ず記入し、この合計①②③が左側の収入金額になります。書ききれない場合は、適宜の用紙に書いて内訳書に添付します。
| 列 | 書き方 |
|---|---|
| 貸家・貸地等の別 | 貸家・貸店舗・アパート・貸マンション・貸間・貸地・駐車場などと記入 |
| 用途 | 住宅用・住宅用以外・店舗併用住宅など。住宅用の家賃は消費税が非課税、店舗や駐車場は課税取引になるので、ここで分けておくと消費税の判定にも使える |
| 不動産の所在地/賃借人の住所・氏名 | 部屋番号まで書く。法人契約なら法人名 |
| 賃貸契約期間 | 契約開始の年月(更新したときはその年月)と終了の年月 |
| 貸付面積 | 平方メートル。自宅兼の場合はここが家事按分の基準にもなる |
| 賃貸料 月額・年額 | 年の途中で賃料を変えたら、変更した月と変更前後の賃料を書く |
| 礼金・権利金・更新料/名義書換料・その他 | 該当文字を○で囲んで金額。返還不要が確定した敷金は「その他」 |
| 保証金・敷金(期末残高) | 預かっている額。収入ではないので左側には転記しない |
2-6. 給料賃金の内訳・事業専従者の氏名等
使用人に給料を払っていれば、氏名・年齢・従事月数・給料賃金・賞与・合計と、年末調整後の源泉徴収税額を書きます。4人目以降は「その他(〇人分)」にまとめます。専従者控除を使う場合は、右側の「事業専従者の氏名等」に氏名・続柄・年齢・従事月数を記入し、延べ従事月数を合計します。管理会社に委託しているだけの大家は、どちらも空欄です。
📐 3. 裏面(2ページ目)の書き方|減価償却と4つの内訳
3-1. 減価償却費の計算欄|イからヌまで、列の意味
裏面の主役がこの欄です。資産ごとに1行(建物・建物附属設備・構築物など)を使い、7行で足りなければ別紙を添付します。列の意味を先に押さえると、あとは掛け算だけです。
| 列 | 書くもの | 大家の実務メモ |
|---|---|---|
| 名称等/面積又は数量/取得年月 | 「鉄筋コンクリート造マンション(建物)」「木造アパート」「給湯器」など。面積は㎡、取得年月は購入時の引渡月 | 土地は書かない。建物と建物附属設備を分けると償却が早くなる(第4章) |
| イ 取得価額(償却保証額) | 建物部分の購入代金+購入手数料などの付随費用 | カッコ内の償却保証額は定率法の場合のみ。建物は定額法なので空欄 |
| ロ 償却の基礎になる金額 | 定額法(平成19年4月1日以後取得)は取得価額そのまま | 平成19年3月31日以前取得の旧定額法は取得価額×90% |
| 償却方法/耐用年数 | 「定額」と、法定耐用年数(中古は見積年数) | 届出をしていなければ定額法。建物・建物附属設備・構築物は定額法しか選べない |
| ハ 償却率 | 耐用年数に応じた定額法の償却率(書き方8ページの表) | 一括償却資産(10万円以上20万円未満)は「1/3」と書く |
| ニ 本年中の償却期間 | 月数。月の途中で取得した月も1か月と数える | 3月20日取得なら3〜12月の10か月 |
| ホ 本年分の普通償却費 | ロ×ハ×ニ÷12 | 未償却残高が1円になるまで償却する |
| ヘ 割増(特別)償却費/ト 本年分の償却費合計 | 特例の適用がなければヘは空欄、トはホと同じ | — |
| チ 貸付割合/リ 本年分の必要経費算入額 | 貸している割合(%)と、ト×チ | 1棟丸ごと貸していれば100。自宅兼なら貸付面積の割合。リの計が表面の減価償却費⑦ |
| ヌ 未償却残高(期末残高) | 本年取得はイ−ト、前年以前取得は前年末残高−ト | 来年の申告で「前年末の未償却残高」として使う数字。控えを残す |
| 摘要 | 中古で取得したならその旨、本年に譲渡・取壊しをしたらその月日と事由 | 「中古」と書いておくと、見積耐用年数の根拠が伝わる |
3-2. 借入金利子の内訳(金融機関を除く)
見落としやすいのが欄名の「金融機関を除く」です。銀行・信販会社・公庫からの借入れは、この内訳に書く必要がありません。書くのは、親族や勤務先など金融機関以外から借りている場合で、支払先の住所・氏名、期末現在の借入金等の金額、本年中の借入金利子、うち必要経費算入額を記入します。金融機関の利子は表面の⑩に合計を書くだけです(転記のしかたは第5章)。
3-3. 地代家賃の内訳・修繕費の内訳
地代家賃の内訳は、貸している建物の敷地を借りている場合に、支払先・賃借物件・本年中の賃借料(権利金・更新料は上段、賃借料は下段)と必要経費算入額を書きます。
修繕費の内訳は、支払先の住所・氏名、工事名又は資材の品名、支払年月日、支払金額、うち必要経費算入額です。「工事名」を書く欄があるため、原状回復・給湯器交換・外壁塗装のどれかがここで税務署に見えます。20万円以上で資産の価値を高める工事を修繕費に入れていると、この欄から資本的支出ではないかと確認が入ります。工事の実額をどう振り分けるかは修繕費と資本的支出のフローチャートで、筆者の見積書8件を通達に当てはめて示しています。
3-4. 税理士・弁護士等の報酬・料金の内訳
申告を税理士に頼んだ場合や、立退き・滞納で弁護士に払った報酬があれば、支払先・本年中の報酬等の金額・必要経費算入額・源泉徴収税額を書きます。自分で申告する大家は空欄です。
3-5. 本年中における特殊事情・保証金等の運用状況
借地権の設定に伴って借地人から預かった保証金など、預り金の運用状況を書く欄です。国税庁の書き方の例文は「令和○年○月○日保証金受入れ、受入金額10,000,000円、不動産所得に係る資金としてアパートの建築資金に充当。」です。通常の敷金だけの大家は空欄で構いません。前年と数字が大きく変わった理由(大規模修繕・退去が続いた等)を一言書いておくと、問い合わせの予防になります。
3-6. 貸付不動産の保有状況|空室・空地も含めて数える
裏面の最後は、貸している不動産の棚卸しです。空家(空室)・空地を含めて記入すると様式に明記されています。建物は「一戸建(棟)」「一戸建以外(室)」を住宅用・住宅用以外(事務所・店舗等)に分けて数え、土地は契約件数と総面積、駐車場は屋根付・青空の台数です。区分マンション1戸なら「住宅用・一戸建以外・1室」です。この欄は事業的規模(5棟10室)の判定材料としても読まれます。
🧮 4. 減価償却費の計算例|3月取得の区分マンションを月割りで償却する
筆者が初めて申告した年は、区分マンション(鉄筋コンクリート造)を3月に取得したため、償却期間は10か月でした。実際の取得価額は伏せ、ここでは建物部分1,000万円のモデルで、欄をそのまま埋めてみます。
| 列 | 初年度(3月取得) | 2年目 |
|---|---|---|
| 名称等/取得年月 | 鉄筋コンクリート造マンション(建物)/令和7年3月 | 同じ |
| イ 取得価額/ロ 償却の基礎になる金額 | 10,000,000円/10,000,000円 | 10,000,000円/10,000,000円(定額法は毎年同じ) |
| 償却方法/耐用年数/ハ 償却率 | 定額/47年/0.022 | 同じ |
| ニ 本年中の償却期間 | 10か月 | 12か月 |
| ホ 本年分の普通償却費(ロ×ハ×ニ÷12) | 10,000,000×0.022×10÷12=183,333円 | 10,000,000×0.022=220,000円 |
| チ 貸付割合/リ 必要経費算入額 | 100%/183,333円 | 100%/220,000円 |
| ヌ 未償却残高(期末残高) | 10,000,000−183,333=9,816,667円 | 9,816,667−220,000=9,596,667円 |
初年度は「12か月分ではない」点を押さえてください。円未満の端数は切り捨てで計算しています。翌年以降は「前年末の未償却残高」から本年分を引いていくだけなので、初年度の控えを残しておけば、2年目からの申告は毎年同じ数字の繰り返しです。
4-1. 中古で買った場合の耐用年数|簡便法の2つの式
中古物件は法定耐用年数ではなく、取得後の使用可能年数を見積もって償却できます。見積りが難しい場合は、国税庁の書き方に載っている次の式(簡便法)を使います。年数に1年未満の端数が出たら切り捨て、2年未満なら2年です。
- 法定耐用年数を全部経過した資産:法定耐用年数×0.2。木造住宅(22年)の築25年なら 22×0.2=4.4→4年(償却率0.250)。建物600万円なら年150万円
- 一部を経過した資産:法定耐用年数−経過年数×0.8。鉄筋コンクリート造(47年)の築12年なら 47−12×0.8=37.4→37年(償却率0.028)。建物2,000万円なら年56万円
摘要欄に「中古」と書き、経過年数の根拠(登記事項証明書の新築年月)を控えておきます。築古木造の短期償却と、その後に来るデッドクロスの考え方は中古マンション・築古物件の減価償却の計算方法で扱っています。
4-2. 建物と設備を分ける|給湯器交換は「建物附属設備・15年」
建物本体の一部でも、給排水・衛生設備・ガス設備・電気設備は建物附属設備として耐用年数15年(償却率0.067)、冷暖房設備(冷凍機の出力22kW以下)は13年(0.077)で、建物より早く経費化できます。たとえば25万円の給湯器を4月に交換して資本的支出になった場合、その年の償却費は 250,000×0.067×9÷12=12,562円で、行を1つ足して記入します。
10万円未満の少額な減価償却資産は、使った年に全額が必要経費です。ただし令和4年4月1日以後に取得した「貸付けの用に供する資産」は対象外という改正があり、不動産貸付業者が入居者に家具・電気機器を貸し付ける行為は「主要な業務として行われる貸付け」に当たるため、大家の賃貸用エアコン等はこれまでどおり少額資産の扱いが使えます(国税庁の書き方6ページ)。10万円以上20万円未満は一括償却資産として3年で均等償却でき、その場合はハ欄に「1/3」と書きます。


💴 5. 借入金利子の転記と「土地分の利子」|返済予定表の利息列だけを合計する
筆者が初年度にいちばん時間を使ったのが⑩借入金利子でした。信販系ローン(当時の残高約1,100万円・変動2.47%・20年)の返済予定表を開き、その年に支払日が来た行の「利息」列だけを合計します。毎月の返済額をそのまま書くと元本込みになり、過大計上です。
感覚をつかむために、1,100万円・年2.47%・20年・元利均等返済のモデルで計算すると、月々の返済は約58,100円、初年度12か月の利息は約266,800円、元本返済は約430,700円です。返済額の約6割が元本で、元本を経費に入れると年40万円以上の過大計上になります。3月実行で10か月分なら利息は約223,100円です。
| 返済予定表の列 | 収支内訳書での扱い |
|---|---|
| 返済額(元利合計) | 書かない |
| うち元金 | 経費にならない |
| うち利息 | 本年分を合計して⑩へ。年末残高は住宅ローン控除の対象外なので不要だが、翌年の内訳のために控える |
| 事務手数料・保証料 | 借入時の一括払いは借入期間で按分して雑費(またはニ欄に科目を立てる)。取得価額に含める処理も可 |
5-1. 不動産所得が赤字のときだけ効く「土地等を取得するために要した負債の利子の額」
表面の左下にある専用欄は、⑮の所得金額が赤字で、かつ経費に入れた借入金利子のうち土地の取得に対応する部分があるときに書きます。不動産所得の赤字のうち土地取得分の利子に相当する金額は、生じなかったものとみなされ、給与所得との損益通算ができません(No.1391)。区分マンションでも敷地権の分は土地です。
土地分の利子は、借入金を土地と建物の取得価額の比率で按分して求めるのが一般的です。モデルで計算します。
- 物件3,000万円(土地1,200万円・建物1,800万円)、借入2,800万円、年間利息70万円
- 土地分の利子=70万円×1,200万円÷3,000万円=28万円(土地等を取得するために要した負債の利子の額の欄に記入)
- ⑮が△50万円なら、申告書第一表の不動産所得欄は「50万円−28万円」で△22万円と書き、頭に「不」を○で囲んで表示する
- ⑮が△20万円(利子28万円より小さい)なら、申告書の不動産所得欄は0
国税庁の書き方の例は「⑮欄が△100で、負債の利子の額の欄が90のとき→100>90→△10」です。作成コーナーで申告書を作れば、この差し引きは自動で行われます。損益通算の全体像と会社員の年収別の効き方は不動産投資の節税は嘘?効く人・効かない人で確認してください。
🏠 6. 家事関連費のあん分|自宅兼・共用部の水道光熱費
建物の一部を貸している場合の地代・火災保険料・固定資産税・修繕費のうち自用部分に対応する費用と、水道料・電気料・燃料費のうち家事分は必要経費になりません。国税庁の書き方では、家事関連費の家事分と業務分は「貸付面積や保険金額などの適切な基準」であん分すると明記されています。賃貸併用住宅や、自宅の一室を管理業務に使っている場合は、貸付面積の比率を表面の内訳欄と揃えておくと説明がつきます。按分割合の決め方と否認された事例は自宅兼事務所の経費と家事按分で扱っています。
📝 7. 収支内訳書から確定申告書へ写す3箇所と、損益通算
収支内訳書ができたら、確定申告書へ転記します。写す場所は3箇所です。
| 収支内訳書 | 確定申告書 | 注意 |
|---|---|---|
| 収入金額 計⑤ | 第一表「収入金額等」の不動産欄 | 給与の収入とは別の行 |
| 所得金額⑮ | 第一表「所得金額等」の不動産③ | 赤字で土地分利子があるときは第5章の額(0または△差額・頭に「不」) |
| 専従者控除⑭・事業専従者の氏名等 | 第一表の専従者給与(控除)額、第二表の事業専従者に関する事項 | 第二表には氏名・個人番号・続柄・生年月日・従事月数と、白色は仕事の内容も書く |
会社員大家は、第二表「所得の内訳」に給与の源泉徴収税額も書きます。源泉徴収票のどの数字を写すかは源泉徴収票の見方と大家が転記する3箇所を参照してください。住民税を給与天引きにしたくない場合は、第二表の住民税に関する事項で「自分で納付」を選びます。申告が勤務先にどう見えるかは不動産投資はバレる?税務署・会社・公務員の3ルートにまとめています。
📱 8. 確定申告書等作成コーナーで作る手順|収支内訳書は自動計算
手書きより、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」で作るのが確実です。収支内訳書の計算欄はすべて自動計算で、転記ミス・計算ミスが起きません。スマホとマイナンバーカードがあればe-Taxで送信まで終わり、書面提出より還付も早くなります(3週間程度)。
- 1資料を手元に揃える
家賃台帳(または通帳)、賃貸借契約書、返済予定表、固定資産税の課税明細書、火災保険の証券、修繕の領収書、売買契約書(建物価格の根拠)、給与の源泉徴収票。 - 2作成コーナーで「収支内訳書(不動産所得用)」を選ぶ
申告書と同時に作成でき、収入の内訳(物件ごと)→経費→減価償却資産の順に入力します。減価償却は取得年月・取得価額・耐用年数・貸付割合を入れると本年分と期末残高が計算されます。 - 3土地取得分の利子と専従者を入力する
赤字になりそうな年は、土地等を取得するために要した負債の利子の額を入力すると、申告書側の不動産所得が自動で計算されます。専従者控除は事業的規模の確認が出ます。 - 4申告書へ引き継ぎ、給与・控除を入力する
収支内訳書の数字は申告書に自動転記されます。源泉徴収票、社会保険料、生命保険料、ふるさと納税などを入力し、住民税は「自分で納付」を選べます。 - 5e-Taxで送信し、控えと帳簿を保存する
マイナンバーカードの電子証明書の有効期限に注意。送信後の受信通知と、作成した収支内訳書のPDFを保存します。裏面の未償却残高は翌年の入力にそのまま使う数字です。
提出期限は翌年2月16日から3月15日(令和7年分は2026年3月16日まで)です。作成コーナーは前年のデータを読み込めるため、2年目以降は減価償却資産の入力が引き継がれます。
🔁 9. 白色から青色へ切り替える判断
物件が増え、帳簿を会計ソフトでつけるようになったら青色が定石です。青色申告特別控除(事業的規模で複式簿記なら55万円、e-Taxまたは電子帳簿保存で65万円、それ以外は10万円)、純損失の3年繰越し、青色事業専従者給与(届出額を実額で経費化)は白色にはありません。区分1戸のうちは10万円控除しか使えないため差は小さいですが、赤字が出た年の繰越しは白色ではできない点は、物件を買った初年度ほど効きます。承認申請書の期限(その年の3月15日まで、新規開業は開業日から2か月以内)と5棟10室の判定は不動産投資の青色申告のやり方へ。
❓ 10. よくある質問
Q1. 収支内訳書と青色申告決算書は何が違いますか?
A. 収支内訳書は白色申告用の2ページの集計表で、青色申告決算書は損益計算書と貸借対照表を含む4ページの決算書です。書く経費科目はほぼ同じですが、青色は特別控除・専従者給与・赤字の繰越しが使えます。青色の承認を受けていない人は収支内訳書を出します。
Q2. 家賃収入が年20万円以下なら収支内訳書は不要ですか?
A. 会社員で給与以外の所得が20万円以下なら所得税の確定申告は原則不要で、その場合は収支内訳書も不要です。ただし住民税の申告は別に必要で、医療費控除や住宅ローン控除の初年度などで確定申告をするなら、不動産所得も含めて申告し収支内訳書を添付します。
Q3. 赤字でも収支内訳書を出す意味はありますか?
A. あります。減価償却費や借入金利子で不動産所得が赤字になれば、給与所得と損益通算して源泉徴収された所得税が還付されます。その計算の根拠が収支内訳書です。土地取得分の借入金利子に相当する赤字だけは通算できないので、専用欄への記入を忘れないでください。
Q4. 敷金はどこに書きますか?
A. 収入金額には入れず、収入の内訳欄の右端「保証金・敷金(期末残高)」に預かっている額を書きます。退去時に返さないことが確定した分(敷引きや原状回復費への充当分)だけを、確定した年の「名義書換料・その他③」に収入として書きます。
Q5. 消費税の課税事業者になる可能性はありますか?
A. 住宅の家賃は非課税ですが、店舗・事務所・駐車場の賃料や、事業用建物の売却代金は課税売上高に入ります。令和7年分の課税売上高が1,000万円を超えると令和9年分から課税事業者になり、届出書の提出が必要です。住宅用だけの大家はほぼ該当しませんが、区分の売却がある年は売却代金を含めて判定します。
Q6. エクセルで作った収支内訳書を提出してもよいですか?
A. 国税庁の様式(PDF)に沿った内容であれば、作成コーナーや会計ソフトで出力したものを提出できます。自作のエクセル表をそのまま様式の代わりにすることはできないため、集計はエクセルで行い、様式への転記は作成コーナーで行うのが確実です。
📚 11. まとめ|欄の順番で埋めれば2ページで終わる
収支内訳書(不動産所得用)は、裏面の減価償却費の計算と内訳を先に埋め、その合計を表面へ写す順番で作ると迷いません。収入は「支払日の定め」と「確定した日」で年分を決め、礼金・更新料は確定した年、敷金は預り金。経費は元本と所得税・住民税を入れない。減価償却は取得価額×償却率×月数÷12を自分で検算し、翌年の未償却残高を控える。赤字の年は土地分の利子を分ける。この4点が毎年の急所です。
取得・保有・売却・相続まで含めた税金の全体像と、青色申告・法人化の判断は、ハブ記事不動産投資の確定申告と税金の全体像で俯瞰できます。
📖 この記事の根拠(出典・参考)
- 国税庁「令和7年分 収支内訳書(不動産所得用)の書き方」(必要経費の各科目の具体例/収入の内訳/収入すべき時期/家事上の費用のあん分/専従者控除/土地等を取得するために要した負債の利子の額/減価償却費の計算・中古資産の耐用年数・少額資産と一括償却資産/耐用年数表・償却率表。2026年9月参照)
- 国税庁「収支内訳書(不動産所得用)様式(令和二年分以降用)」(表面・裏面の欄の構成、借入金利子の内訳の「金融機関を除く」、修繕費の内訳、貸付不動産の保有状況。2026年9月参照)
- 国税庁 タックスアンサー No.1370 不動産収入を受け取ったとき/No.1376 不動産所得の収入計上時期/No.1373 事業としての不動産貸付けとそれ以外の区分/No.1391 不動産所得が赤字のときの他の所得との通算/No.2210 必要経費の知識(いずれも令和8年4月1日現在法令等・2026年9月参照)
- 国税庁「令和7年分 確定申告の手引き 手順2 不動産所得」(収支内訳書から申告書第一表への転記、事業専従者に関する事項)
- 国税庁「確定申告書等作成コーナー」(収支内訳書の自動計算、スマホ・マイナンバーカードによるe-Tax提出、前年データの引継ぎ)
- 計算例:減価償却費と元利均等返済の利息は、上記の書き方の算式と償却率表を用いてモデル値(建物1,000万円・借入1,100万円等)で筆者が計算したもの。円未満切捨て
- 体験ベース:筆者が区分マンション取得初年度(3月取得)に白色申告・収支内訳書(不動産所得用)で申告した実体験(10か月の月割り償却、信販系ローンの返済予定表からの利子転記)。実額は非公開
- 監修について:本記事は税理士の監修を受けたものではありません。個別の申告判断は所轄税務署または税理士にご確認ください
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関西の不動産投資家・15年以上の実務経験。複数物件を保有し、税務・融資・賃貸経営・法人運営の現場で得た一次情報をもとに、机上の理論ではなく「実際に使える」実務ガイドを発信しています。


コメント
損害保険料ですが、10年分を経費として計上してないですか?
(経費になるのは、その年の期間対応分だけで、のこりは長期前払費用として資産計上し、毎年12か月分を保険料に振り替える必要があります。)
ご連絡、有難う御座います。
また返信に時間が掛かってしまい申し訳御座いません。
僕も確かに損害保険料の金額が高いなぁと思い、再度確認してみました。
ご指摘頂いた通り火災保険料は10年一括払いですが、経費計上は分割になりますね。
損害保険料の約40万円の内訳としては主に以下の項目が含まれています。
・火災保険料
・住宅ローン保証料
・委託管理料
・税理士報酬
この中では住宅ローン保証料が比較的高い割合を占めていました。
この年の住宅ローンにはジャックスからの融資を受けていますが、金利約2%のうち、約1%は利率、残りの約1%は保証料率となります。
気になったもので、すいませんでした。
委託管理費は、管理費・修繕積立金の管理費に含めたほうがわかりやすいですね。
保証料も保証期間で月割して経費処理だと思っていたのですが、
依頼している税理士さんはそのようにされてましたか?
ご丁寧に教えて頂き大変有難う御座います。
確かに委託管理費については項目名からしても「管理費」として計上する方が適切なような気がしますね。
住宅ローン保証料については言葉足らずの説明となっており申し訳御座いません。
こちらにつきましてはご指摘の通り保証期間の月割として計上しています。つまり実際に支払った実績ベースの認識です。
確定申告については将来的には自分で対応できるようにと考えておりますが、現時点では担当税理士が作成した内容となります。