「かぼちゃの馬車」問題で考える 〜甘い言葉の罠に騙されない最低限の知識〜

不動産会社
この記事は約7分で読めます。

2018年1月、首都圏で女性向けシェアハウス「かぼちゃの馬車」を運営するスマートデイズが家主への賃料の支払いを停止しました。

多くの物件購入者がシェアハウス1棟辺り(10室〜20室程)およそ1億円〜2億円の販売価格に加え諸費用分までを金融機関からの融資でまかなっていましたが、今後の返済の目処が立たず大きな問題になっています。

スポンサーリンク

「かぼちゃの馬車」問題の経緯について

「かぼちゃの馬車」問題について全ての契約内容が該当する訳ではありませんが、現時点で以下のようなポイントが挙げられます。

  • シェアハウスの販売価格は1億円〜2億円
  • 貸出金融機関は主にスルガ銀行
  • 当初の想定利回りは8%程
  • 物件価格の貸出金利は3.5%〜4.5%程
  • 諸費用ローンの貸出金利は7.5%程
  • 2017年10月より家賃保証が金融機関への返済分にまで縮小
  • 2018年01月より全ての家賃保証が支払い停止
  • 家賃保証停止による家主側の自己負担額は月々100万円以上
  • 平均入居率が低く平均入居期間も短い
  • 金融機関との金利交渉は家主が直接行う必要がある
「かぼちゃの馬車」終焉で自己破産者続出か|楽待不動産投資新聞
魔法が解けたシェアハウス【前編】 スマートデイズ、サブリース賃料完全停止へ
スポンサーリンク

投資は自己責任?

今回に件にかぎらずですが、不動産の経営に関わらず投資は自己責任です。

ですが、一方、専門家の中でも「これは計画的な詐欺では無いか?」と言う意見もあります。

投資を行う際には全ての契約書類の内容を十分理解して契約を結ぶことが大切であることは言うまでもありませんが、現実問題としては中々難しいもので、結局は「販売会社の営業の言葉を信じる」という「ある意味とても無責任な投資判断」をしてしまう訳です。

確かに世の中には「とても巧妙で悪質な詐欺」や「初心者には(時にはプロでさえ)見破るのが難しい仕組み」があると思いますが、少なくとも今回の件はいくつかのポイントを押さえ冷静に考えていればトラブルを回避することができた十分に可能だったかと思います。

僕は投資判断に限らず物事を判断する時にはできるだけ以下のことを考えてから行動するようにしています。

  • 客観的にはどうなのか?
  • 主観的にはどうなのか?
  • 常識的にはどうなのか?
  • 最悪のシナリオはどうなのか?

常に最悪のシナリオだけを想定していると中々何かに挑戦するのは難しくなってしまいませんが、楽観的に考え過ぎるのも危険です。

皆さんも投資判断をする際、楽観的に考えてしまったりしたことはありませんか?

大きな会社だから常識的に考えて安心できるだろう

人気のある立地だから想定通りの利回りが見込めるはず

ただ、そんな時は「自分に都合の良い情報」や「自分の判断を後押ししてくれる情報」を無意識に探している傾向があります。

そんな時こそ「客観的にはどうなのか?」も併せて考えられるように意識できれば良いと思います。

スポンサーリンク

甘い言葉の罠に注意する

投資判断をする場合、自分の中にいくつかのポイントがあると思います。

そのポイントについて一つ一つ考え直し「それが本当に正しいのか?」「信用できるのか」を考えることが大切です。

一括借上保証制度は賃料を保証する制度では無い

そもそも一括借り上げ保証制度は賃料を払い続けることが保障されている制度であって、賃料の金額について保障されている制度ではありません。
※「かぼちゃの馬車」の場合は家賃を払い続けること自体を放棄しているためそれ以前の問題ですが…

またサブリース契約自体にそれ程長い歴史がありません。

そのため35年間の一括借り上げ保証を保証する賃貸会社があったとしても実際に35年間安定的に家賃を保証した実績を持つ会社はまだ出てきていないはずです。

少なくとも僕の知る限りでは35年間、家賃を払い続けた実績を持つ会社は聞いたことがありません。

サブリースの注意点!契約時の減額説明が義務付けられます
2016年9月より国土交通省が賃貸住宅管理業者登録制度に参加する3735社に対してサブリース契約時の減額説明を義務付けるようルールを改正しました。 家賃が下がる可能性を伝えなければいけない 登録制度に登録する企業はサブリース契約締結時には貸...
優良顧客向けの最高の融資条件?TIBOR連動の金利とは?
皆さんは「TIBOR連動金利」という言葉を聞いたことはありますか? 賃貸経営をする場合、金融機関から融資を受けて物件を購入します。 変動金利や固定金利など金利の種類を悩むかもしれませんが、同じような金利の種類に「TIBOR連動金利」と呼ばれ...

高金利での融資は受けない

金利が4%の場合、4%以上の利回りが無いと採算が合いません。

仮に4%の運用ができたとしても4%の金利を支払っているのであれば大きなリスクは伴うもののリターンは一切無いです。

例え8%の想定利回りがあったとしても4%の金利の場合、イールドギャップは4%です。

また、自分で考えて運用しない限り当初想定してた利回りを下回ることはあっても基本的には上回ることは無いです。

必ずしも高金利が問題だとは言いませんが、仮に金利が1%でもあがれば「返済計画にどのような影響を与えるのか?」「返済総額は何百万円増えるのか?」などはちゃんと理解し自分の収入と照らし合わせた上で判断する必要があります。

賃貸経営のイールドギャップとは?正しい考え方と自分にあった資産運用
不動産投資用の物件購入を判断する時の指数として表面利回りや実質利回りなどがありますが、同じような指数の一つにイールドギャップと呼ばれるものがあります。 イールドギャップの計算方法はとてもシンプルで金融機関から融資を受けた場合の借入金利と投資...
賃貸経営者なら絶対に覚えておきたい!スルガ銀行スキームの利用法!
スルガ銀行は不動産投資の世界で最も有名な金融機関です。貸出金利は4.5%と高めですが、融資枠が大きく審査機関も短いため、上手く活用することで保有資産の拡大にとても効果的です。

なぜエリートビジネスマンが対象なのか?

不動産投資にはよく「年収700万円以上の方が対象です」と言うキャッチフレーズを耳にすることがあります。

たまたま自分の年収700万円以上であったら場合は何か認められた感じでとても良い気分になりますよね。

ちなみに今回被害にあったのも以下のような方たちが多いようです。

  • 高年収のサラリーマンや公務員
  • 弁護士、会計士等の士業

ただし「エリートビジネスマンだけを対象とした不動産投資」の本当の意味は金融機関からの融資の問題です。

本来、投資用物件の融資基準は一般の住宅ローンとは異なり「事業への融資」です。

なので「この事業計画なら問題ないか?」「この物件であれば想定した運用益が見込めるか?」が一つの基準になるはずです。

ただし対象物件に対して融資額相当の資産価値を認められない場合で、万が一、不動産の経営が上手くいかなかった場合でも金融機関への返済は予定通りに進めないといけません。

そう考えると月々の持ち出し(自己負担)があったとしても年収の高くかつ安定した収入のあるサラリーマンであれば滞りなく返済を進められるとの考えられる訳です。

販売のプロは運用のプロでは無い

不動産の販売側からすれば別にエリートとも何とも思っていませんし、「自分がエリートビジネスマンであることと不動産投資が成功すること」には何の関係もありませんよね。

本当に不安要素が無く想定した利回りが見込めるような物件であれば年収が100万円以下の人に融資をしても全く問題無いはずです。

販売会社の営業は「販売することが目的」の「販売のプロ」です。その後の投資が運用が上手くいくかどうかは知ったことではありません。

スポンサーリンク

フルローン自体は問題ではない

物件を購入する際、頭金を一切入れずに全ての金額を金融機関からの融資に頼ることをフルローンと呼びます。

また物件の購入金額に加えその他の諸費用(事務手数料など)も含め全ての金額に対して融資を利用することをオーバーローンと呼びます

このような話題が取り上げられると「フルローンであることがリスク」とように思われるかもしれませんが、フルローンであることや自己資産を何割入れているかはリスクとは関係ありません。

確かに「自己破産するか?自己破産しないか?」が論点であれば融資額(借金の金額)が問題になります。

ですが事業として重要なのは対象の物件を「どれくらいの資産価値があるか?」「どれ程の運用益が見込めるか?」が本質で、その基準に対して妥当な金額(またはそれ以下の金額)であればフルローンだろうがオーバーローンだろうが問題ありませんし、逆に価値が無い(少ない)物件なのであれば何%の頭金を入れたとしても投資としては成功しません。

オーバーローンはハイリスク?物件価格を見極めることが大切です!
昨日は株式会社わひこが主催する不動産投資セミナーに参加させて頂きました。 株式会社わひこは1棟収物件を中心とした不動産経営を支援し、コンサルティング全般を得意とする不動産投資会社です。 2018年10月8日時点で、株式会社わひこは営業停止に...
不動産経営で大失敗?自己破産するとどうなるのか調べてみました
自己破産という言葉を良く聞きますが、実際に自己破産をするとどうなるのかイマイチ分からない方も多いと思います。今回は不動産経営を中心とした自己破産について簡単にまとめてみました。
スポンサーリンク

失敗しない可能性を高めることはできる

僕はまだ自分で「不動産の経営で成功している」とは言えないので明確に「成功する方法」は分かりません。あったら教えて欲しいくらいです。

なので僕自身、気付いていないだけで実は騙されている部分もあるのかもしれませんが「こんなことをすると失敗する」ということは少しずつですが分かってきました。

安易に一括借り上げ保証を信用することや計画性の無い高金利での借り入れは自分から破産に突っ込んでいくようなものです。

恐らくかぼちゃの馬車のオーナーの中には多くの自己破産者が出ると思います。

今回の件は個人的にもとてもショッキングなニュースであり、不動産投資の恐ろしさを改めて再確認させられることになりました。

今一度(と言うより常にだけど)、自分の考え方は本当に正しいのかをしっかり考えたいと思いました。

破綻リスクは誰にでもある 〜住宅ローンで破綻しないための注意点について〜
数年前から賃貸物件の供給戸数がずっと増え続けていましたが、ここ最近は少しずつ減少傾向になってきています。 さらに、今後も着工数は減少傾向になると予想されています。 また賃貸物件に限らず一般の不動産の含め販売価格の少しずつ下降傾向のようです。...
プロフィール

楽待新聞&不動産投資Libraryのコラムニストをしています。
普段、不動産投資家として考えていることや体験談などを掲載しています。
これから不動産投資を始めたい方や、賃貸経営初心者の方に対して、分かりやすい内容を心掛けています。

西本 豪をフォローする
この記事が気に入ったら
いいね!しよう
最新情報をお届けします。
不動産会社
スポンサーリンク
西本 豪をフォローする

コメント

タイトルとURLをコピーしました