2018年1月、首都圏で女性向けシェアハウス「かぼちゃの馬車」を運営するスマートデイズが家主への賃料の支払いを停止しました。
多くの物件購入者がシェアハウス1棟辺り(10室〜20室程)およそ1億円〜2億円の販売価格に加え諸費用分までを金融機関からの融資でまかなっていましたが、今後の返済の目処が立たず大きな問題になっています。
「かぼちゃの馬車」問題の経緯について
「かぼちゃの馬車」問題について全ての契約内容が該当する訳ではありませんが、現時点で以下のようなポイントが挙げられます。
- シェアハウスの販売価格は1億円〜2億円
- 貸出金融機関は主にスルガ銀行
- 当初の想定利回りは8%程
- 物件価格の貸出金利は3.5%〜4.5%程
- 諸費用ローンの貸出金利は7.5%程
- 2017年10月より家賃保証が金融機関への返済分にまで縮小
- 2018年01月より全ての家賃保証が支払い停止
- 家賃保証停止による家主側の自己負担額は月々100万円以上
- 平均入居率が低く平均入居期間も短い
- 金融機関との金利交渉は家主が直接行う必要がある
投資は自己責任?
今回に件にかぎらずですが、不動産の経営に関わらず投資は自己責任です。
ですが、一方、専門家の中でも「これは計画的な詐欺では無いか?」と言う意見もあります。
投資を行う際には全ての契約書類の内容を十分理解して契約を結ぶことが大切であることは言うまでもありませんが、現実問題としては中々難しいもので、結局は「販売会社の営業の言葉を信じる」という「ある意味とても無責任な投資判断」をしてしまう訳です。
確かに世の中には「とても巧妙で悪質な詐欺」や「初心者には(時にはプロでさえ)見破るのが難しい仕組み」があると思いますが、少なくとも今回の件はいくつかのポイントを押さえ冷静に考えていればトラブルを回避することができた十分に可能だったかと思います。
僕は投資判断に限らず物事を判断する時にはできるだけ以下のことを考えてから行動するようにしています。
- 客観的にはどうなのか?
- 主観的にはどうなのか?
- 常識的にはどうなのか?
- 最悪のシナリオはどうなのか?
常に最悪のシナリオだけを想定していると中々何かに挑戦するのは難しくなってしまいませんが、楽観的に考え過ぎるのも危険です。
皆さんも投資判断をする際、楽観的に考えてしまったりしたことはありませんか?
大きな会社だから常識的に考えて安心できるだろう
人気のある立地だから想定通りの利回りが見込めるはず
ただ、そんな時は「自分に都合の良い情報」や「自分の判断を後押ししてくれる情報」を無意識に探している傾向があります。
そんな時こそ「客観的にはどうなのか?」も併せて考えられるように意識できれば良いと思います。
甘い言葉の罠に注意する
投資判断をする場合、自分の中にいくつかのポイントがあると思います。
そのポイントについて一つ一つ考え直し「それが本当に正しいのか?」「信用できるのか」を考えることが大切です。
一括借上保証制度は賃料を保証する制度では無い
そもそも一括借り上げ保証制度は賃料を払い続けることが保障されている制度であって、賃料の金額について保障されている制度ではありません。
※「かぼちゃの馬車」の場合は家賃を払い続けること自体を放棄しているためそれ以前の問題ですが…
一括借り上げ保証は賃料の支払いを保証するもので賃料(金額)自体を保証するものでは無いから「賃料が値下げされた!」と騒ぎ出すのは筋が違う。だけど「支払い自体を放棄する」のであればそれはやっぱり契約違反で計画的な詐欺行為と言い切れると思います。
— 西本 豪 (@go_1101) January 28, 2018
またサブリース契約自体にそれ程長い歴史がありません。
そのため35年間の一括借り上げ保証を保証する賃貸会社があったとしても実際に35年間安定的に家賃を保証した実績を持つ会社はまだ出てきていないはずです。
少なくとも僕の知る限りでは35年間、家賃を払い続けた実績を持つ会社は聞いたことがありません。
高金利での融資は受けない
金利が4%の場合、4%以上の利回りが無いと採算が合いません。
仮に4%の運用ができたとしても4%の金利を支払っているのであれば大きなリスクは伴うもののリターンは一切無いです。
例え8%の想定利回りがあったとしても4%の金利の場合、イールドギャップは4%です。
また、自分で考えて運用しない限り当初想定してた利回りを下回ることはあっても基本的には上回ることは無いです。
必ずしも高金利が問題だとは言いませんが、仮に金利が1%でもあがれば「返済計画にどのような影響を与えるのか?」「返済総額は何百万円増えるのか?」などはちゃんと理解し自分の収入と照らし合わせた上で判断する必要があります。
なぜエリートビジネスマンが対象なのか?
不動産投資にはよく「年収700万円以上の方が対象です」と言うキャッチフレーズを耳にすることがあります。
たまたま自分の年収700万円以上であったら場合は何か認められた感じでとても良い気分になりますよね。
ちなみに今回被害にあったのも以下のような方たちが多いようです。
- 高年収のサラリーマンや公務員
- 弁護士、会計士等の士業
ただし「エリートビジネスマンだけを対象とした不動産投資」の本当の意味は金融機関からの融資の問題です。
本来、投資用物件の融資基準は一般の住宅ローンとは異なり「事業への融資」です。
なので「この事業計画なら問題ないか?」「この物件であれば想定した運用益が見込めるか?」が一つの基準になるはずです。
ただし対象物件に対して融資額相当の資産価値を認められない場合で、万が一、不動産の経営が上手くいかなかった場合でも金融機関への返済は予定通りに進めないといけません。
そう考えると月々の持ち出し(自己負担)があったとしても年収の高くかつ安定した収入のあるサラリーマンであれば滞りなく返済を進められるとの考えられる訳です。
「ビジネスエリートだけを対象とした不動産投資」っていうのは要する金融機関からの融資の問題で「対象物件に対して融資額相当の資産価値を認められないから、万が一経営に失敗してもビジネスエリート様の年収で何とでもなるよね?」って事で、販売側は別にビジネスエリートとも何とも思ってないよ。
— 西本 豪 (@go_1101) January 27, 2018
販売のプロは運用のプロでは無い
不動産の販売側からすれば別にエリートとも何とも思っていませんし、「自分がエリートビジネスマンであることと不動産投資が成功すること」には何の関係もありませんよね。
本当に不安要素が無く想定した利回りが見込めるような物件であれば年収が100万円以下の人に融資をしても全く問題無いはずです。
販売会社の営業は「販売することが目的」の「販売のプロ」です。その後の投資が運用が上手くいくかどうかは知ったことではありません。
フルローン自体は問題ではない
物件を購入する際、頭金を一切入れずに全ての金額を金融機関からの融資に頼ることをフルローンと呼びます。
また物件の購入金額に加えその他の諸費用(事務手数料など)も含め全ての金額に対して融資を利用することをオーバーローンと呼びます
このような話題が取り上げられると「フルローンであることがリスク」とように思われるかもしれませんが、フルローンであることや自己資産を何割入れているかはリスクとは関係ありません。
確かに「自己破産するか?自己破産しないか?」が論点であれば融資額(借金の金額)が問題になります。
ですが事業として重要なのは対象の物件を「どれくらいの資産価値があるか?」「どれ程の運用益が見込めるか?」が本質で、その基準に対して妥当な金額(またはそれ以下の金額)であればフルローンだろうがオーバーローンだろうが問題ありませんし、逆に価値が無い(少ない)物件なのであれば何%の頭金を入れたとしても投資としては成功しません。
失敗しない可能性を高めることはできる
僕はまだ自分で「不動産の経営で成功している」とは言えないので明確に「成功する方法」は分かりません。あったら教えて欲しいくらいです。
なので僕自身、気付いていないだけで実は騙されている部分もあるのかもしれませんが「こんなことをすると失敗する」ということは少しずつですが分かってきました。
安易に一括借り上げ保証を信用することや計画性の無い高金利での借り入れは自分から破産に突っ込んでいくようなものです。
恐らくかぼちゃの馬車のオーナーの中には多くの自己破産者が出ると思います。
今回の件は個人的にもとてもショッキングなニュースであり、不動産投資の恐ろしさを改めて再確認させられることになりました。
今一度(と言うより常にだけど)、自分の考え方は本当に正しいのかをしっかり考えたいと思いました。
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