エアコン故障の賃料減額はいくら?|民法611条の当然減額とA群B群の減額割合・免責日数・給湯器の実務

修繕・老朽化・設備
この記事は約29分で読めます。

入居者から「エアコンが効かない」「お湯が出ない」と連絡が来たとき、大家が最初に知っておくべきことは賃料の減額は入居者が請求しなくても、使えなくなった時点で始まっているという点です。2020年4月施行の改正民法611条1項は「賃料は、その使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて、減額される」と定めており、条文に「請求」の文字はありません。

では実際にいくら減るのか。業界の目安として使われているのが、公益財団法人日本賃貸住宅管理協会の「貸室・設備等の不具合による賃料減額ガイドライン」です。本記事は条文とこのガイドラインの現行版(令和6年10月4日運用開始)にあたったうえで、エアコン・給湯器を中心に、減額の計算・免責日数・対象外になる場合・負担区分・関西での修繕実務までを整理しました。

🎯 30秒でわかる本記事の要点
  • 減額の根拠は民法611条。606条は修繕義務の条文で、減額そのものの根拠ではない
  • 目安はまずA群(電気・ガス・水)に当たるかを見て、当たらなければB群(トイレ・風呂・エアコン等)を見るという二段構え
  • A群=電気40%・ガス10%・水30%/B群=トイレ20%・風呂10%・エアコン10%・テレビ等10%・雨漏り5〜50%
  • いちばん重いのは電気(40%・免責2日)。エアコン10日より電気5日のほうが減額は大きい
  • 2024年10月の改定で変わったのはエアコンの1項目だけ(月5,000円の定額→10%)
  • 給湯器はガイドラインに項目がない。ガス供給ごと止まればA群、給湯器だけの故障ならB群の風呂で当てはめる
  • 減額の対象外は3つ──入居者の善管注意義務違反/供給元の都合による停止/全壊等で契約が終了した場合
この記事は以下のような方におすすめです!
  • エアコン・給湯器が故障したとき、家賃をいくら減額すべきか実額で知りたい大家
  • 民法611条の「当然減額」が自分の物件にどう効くのか条文で確認したい方
  • 減額の目安がA群・B群でどう分かれるのか、適用の順序を正確に理解したい方
  • 入居者から減額や損害賠償を求められたとき、どこまで応じるべきか判断したい方
  • 設備が大家負担か入居者負担か、残置物の扱いを含めて整理したい方
  • 関西で修繕業者をどう確保し、繁忙期の遅れをどう避けるか知りたい関西大家
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⚖️ 1. 結論──減額は「請求された時」ではなく「使えなくなった時」に始まる

1-1. 民法611条1項の条文

民法第611条第1項

賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料は、その使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて、減額される。

2020年3月までの条文は賃借人が「減額を請求することができる」という書き方でした。改正後は「減額される」という結果を述べる形になっています。つまり大家が知らないあいだにも減額は成立しており、満額を受け取り続ければ超過分を返す立場になります。同条2項は、残った部分だけでは借りた目的を達せられないときに入居者から契約を解除できると定めています。

1-2. 606条と611条は役割が違う

混同されやすいので分けておきます。

条文 定めていること 大家にとっての意味
606条1項 賃貸人は使用収益に必要な修繕をする義務を負う。ただし賃借人の責めに帰すべき事由による修繕は除く 直す義務がある。入居者の過失なら義務の外
611条1項 使えなくなった部分の割合に応じて賃料が減額される 減額の根拠はこちら。請求は要件ではない
607条の2 通知したのに相当の期間内に修繕しないとき、または急迫の事情があるとき、賃借人が自ら修繕できる 放置すると入居者が勝手に手配し、費用を請求してくる

607条の2は見落とされがちですが、初動が遅い大家にとっては実害の入口です。入居者側の修繕権については「賃貸の修繕義務はどこまで?|大家が直す範囲・入居者の自力修繕・立入り拒否への対応」で詳しく扱っています。

1-3. 連絡を受けたら大家がやること

  1. 使えないのが何かを特定する——電気なのか、ガスなのか、水なのか、個別の設備なのか。ここで減額割合が変わります
  2. 3つの日付を記録する——故障日・通知日・修理完了日。免責日数の計算はこの3点で決まります
  3. 免責日数の内に直せるかを見積もる——内に収まれば減額の対応は不要、超えれば協議に入ります
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📊 2. 減額はいくらか──A群→B群の順に見る

日本賃貸住宅管理協会のガイドライン(令和6年10月4日運用開始)は、不具合をA群とB群に分け、必ずA群から確認するという構造になっています。この順序を書いている記事は多くありません。

2-1. A群──生活の基盤が止まったとき

状況 賃料減額割合 免責日数
電気が使えない 40% 2日
水が使えない 30% 2日
ガスが使えない 10% 3日

2-2. B群──A群のいずれにも当たらない場合

状況 賃料減額割合 免責日数
トイレが使えない 20% 1日
風呂が使えない 10% 3日
エアコンが作動しない 10% ※ 3日
テレビ等通信設備が使えない 10% 3日
雨漏りによる利用制限 5%〜50% 7日

※エアコンについては、発生した季節・地域、間取りや設置台数等を考慮して割合を調整するという注記が付いています。真夏の関西で1台しかない部屋と、春先に複数台のうち1台が止まった部屋を同じ10%で処理しなくてよい、という含みです。免責日数のほうにも、代替物や部品の調達日数を考慮して調整する旨の注記があります。

2-3. 見落とされる順序──A群が優先される

ガイドラインの使用方法には、まずA群のいずれかに該当するかを確認し、該当すればA群の割合と免責日数で算出する、A群のいずれにも該当しない場合にB群を確認する、と書かれています。両方に当てはまりそうなときはA群が先ということです。

これが効いてくるのが給湯器です。ガイドラインに「給湯器」という項目はありません。当てはめは状況で分かれます。

起きていること 当てはめ 目安
ガスの供給自体が止まっている(コンロも使えない) A群「ガスが使えない」 10%・免責3日
ガスは来ているが給湯器の故障で入浴できない B群「風呂が使えない」 10%・免責3日
電気温水器の故障でお湯が出ない(ガスは無関係) B群「風呂が使えない」
※電気全体が止まっていればA群
10%・免責3日

いずれも目安は10%・免責3日に落ち着きますが、どちらの群で説明するかで入居者への説明の筋が変わります。ガス供給の話になるなら、そもそもの契約形態や料金体系の論点に踏み込むことになります。プロパンガス物件の契約・設備費の扱いは「プロパンガススキームとは?無償貸与の終了で大家が負う設備費と関西の実額・都市ガス化の損益分岐」で整理しています。

2-4. 2024年10月の改定で変わったのは1項目だけ

現行版は令和6年10月4日運用開始で、協会が公表した改定内容は「エアコンが作動しない」の減額割合を、月あたり5,000円の定額から10%に変更したという1点です。それ以外の項目は改定の対象になっていません。

実務上の意味は家賃帯によって逆転します。家賃5万円なら10%は5,000円相当で旧定額と同じ水準ですが、家賃が高いほど10%のほうが大きく、低いほど小さくなる。定額から率へ変わったことで、物件によって有利にも不利にも動いたということです。

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🧮 3. 計算する──日割りの式と実額

3-1. 計算式

🧮 減額の算出

月額賃料 × 賃料減額割合 ×(使えなかった日数 − 免責日数)÷ 30日

例:家賃100,000円でガスが6日間使えなかった場合
100,000円 × 10% ×(6日 − 3日)÷ 30日 = 1,000円(1日あたり約333円)

ガイドライン自身がこの計算例を示しています。数字が小さく見えるかもしれませんが、割合の大きい項目に当たると様相が変わります。

3-2. エアコン故障の実額早見表(10%・免責3日)

家賃\使えなかった日数 5日 7日 10日 14日
5万円 約333円 約667円 約1,167円 約1,833円
6万円 400円 800円 1,400円 2,200円
8万円 約533円 約1,067円 約1,867円 約2,933円
10万円 約667円 約1,333円 約2,333円 約3,667円

3-3. 電気と水が止まったときの実額──桁がひとつ違う

ここが本記事でいちばん伝えたい比較です。エアコンの10%に慣れていると、A群に当たった瞬間の重さを見誤ります。家賃6万円で並べます。

状況(家賃6万円) 3日 5日 7日 10日
電気(40%・免責2日) 800円 2,400円 4,000円 6,400円
水(30%・免責2日) 600円 1,800円 3,000円 4,800円
トイレ(20%・免責1日) 800円 1,600円 2,400円 3,600円
エアコン・風呂・ガス(10%・免責3日) 0円 400円 800円 1,400円

同じ家賃・同じ5日でも、電気は2,400円、エアコンは400円で6倍の開きがあります。しかも電気の免責は2日と短い。漏電やブレーカー・分電盤のトラブルを「電気系だから電力会社の話だろう」と構えていると、減額が静かに積み上がります。優先して手配すべきはA群だということが、この表から読み取れます。

3-4. 雨漏りは幅が広く、免責も長い

雨漏りは5〜50%と幅があり、免責日数は7日と最も長く設定されています。範囲が広いのは、天井のシミ程度から居室が使えない状態までを同じ項目で扱うためです。家賃6万円で14日間、割合を30%とみると 60,000円 × 30% ×(14 − 7)÷ 30 = 4,200円、50%なら7,000円になります。割合の決め方そのものが協議事項になるため、被害範囲の写真と日付の記録が金額を左右します。

読者
入居者から「真夏にエアコンが止まったのだから10%では足りない」と言われました。ガイドラインに書いてある以上、10%で押し通していいものでしょうか。
著者
押し通す前提で構えないほうがいいです。ガイドラインは冒頭で「法的拘束力はなく目安を示しているもの」と自ら断っており、エアコンの項目には季節・地域・間取り・設置台数を考慮して割合を調整するという注記まで付いています。真夏の関西でワンルームに1台、というのは調整が想定されている典型です。数字で殴り合うより、代替手段の提供と修理の着地日を先に示すほうが結果的に安く収まります。
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⏳ 4. 免責日数とは何か──「待ってもらえる日数」ではない

ガイドラインは免責日数を、代替物の準備や業務の準備にかかる時間を一般的に算出し、賃料減額割合の計算日数に含まない日数と定義しています。あくまで計算から除く日数であって、その間なら何もしなくてよい猶予ではありません。

そしてもう一段、重要な仕組みがあります。ガイドラインのフローチャートでは、不具合が免責日数の内に解消されれば「賃料減額の対応不要」、免責日数を超えて解消された場合に「ガイドラインを基に貸主・借主と協議のうえ、減額対応(代替措置の提供も可)」へ進む形になっています。

つまり免責日数の内に直しきれば、金銭の減額そのものが発生しない。エアコンなら3日、電気なら2日です。ここが大家にとっての実利で、初動を早める最大の経済的理由になります。「代替措置の提供も可」と明記されている点も見逃せません。冷風機や窓用エアコンの貸し出し、近隣入浴施設の費用負担といった現物対応が、協議の選択肢として想定されています。

項目 内容
故障日 8月1日
通知日 8月2日
免責日数(エアコン) 3日
8月4日までに修理完了 減額の対応は不要
8月10日に修理完了 協議のうえ減額対応へ
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🚫 5. 減額の対象外になる3つの場合

ガイドラインの注意事項には、対象から外れる場合が明記されています。ここを知らずに全部を減額に応じてしまう大家がいます。

場合 扱い
入居者の善管注意義務違反による不具合 減額の対象から除かれる
電気・ガス・水道が供給元の都合で止まった 貸室・設備の不具合ではないため対象外
全壊等で使用・収益ができなくなった 賃貸借契約が当然に終了するためガイドラインの対象外

逆に、台風や震災などの天災で、貸主・借主どちらにも責任がない場合は減額が認められます。ただし電気・ガス・水道等の停止が設備の不具合ではなく供給元の帰責事由による場合は、この限りではありません。台風で自分の建物の屋根が飛んで雨漏りしたなら対象、地域一帯が停電しただけなら対象外——この線引きです。

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🔍 6. 割合を動かす4つの考慮事由

ガイドラインの数値は目安であり、実際の協議では次の4点で上下します。数字だけを突きつけ合うのではなく、この4点を材料に話すほうが着地が早くなります。

  • 使用できなかった期間——長引くほど重い。免責日数を超えた分が計算対象
  • 使用できない程度——まったく使えないのか、性能が落ちた状態で使えるのか
  • 使用できない面積——居室全体か、一室か、水回りだけか
  • 代替手段・代替品を提供したか——冷風機の貸与、入浴費の負担など。フローチャートにも代替措置が明記されている

4点目は大家側が能動的に動かせる唯一の変数です。修理までに時間がかかると分かった時点で代替手段を出し、その事実を記録しておけば、協議の前提が変わります。

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🏠 7. 負担区分──大家・入居者・残置物

7-1. 判定は付帯設備一覧から

修理費を誰が持つかは、賃貸借契約書・重要事項説明書の「付帯設備一覧」の記載で決まります。記載があれば設備=大家所有、記載がなければ残置物=前入居者の置き土産で、大家に修繕義務はないのが原則です。

故障の状況 付帯設備一覧 原因 負担
経年劣化・自然故障 記載あり(設備) 通常使用 大家
経年劣化・自然故障 記載なし(残置物) 通常使用 入居者
落下・水没・清掃不足 記載の有無を問わず 故意・過失・善管注意義務違反 入居者
小さな不具合を放置して悪化 記載あり(設備) 初期故障+放置 大家(初期)+入居者(悪化分)
第三者による破損・盗難 記載あり(設備) 第三者 大家(火災保険の適用余地あり)

7-2. 典型ケースで覚える

判定に迷う時間そのものが減額を積み上げます。よく出る形を先に頭に入れておきます。

大家が負担するのが原則の例

起きたこと 理由
設置10年のエアコンが自然に止まった 経年劣化・通常使用の範囲
給湯器が12年目に着火しなくなった 経年劣化
コンロの片側バーナーが点かない 経年劣化
水栓のパッキンが傷んで水が漏れる 経年劣化
サッシのゴムが硬化して隙間風が入る 経年劣化

入居者の負担になる例

起きたこと 理由
移動させようとして落とし、破損させた 故意・過失
リモコンを水没させた 過失
清掃を怠り内部が詰まって停止した 善管注意義務違反
小さな水漏れを報告せず放置し、床下まで傷めた 善管注意義務違反(悪化分)
無断で業者を呼んで修理させた 契約違反(607条の2の要件を満たす場合を除く)

とくに注意したいのが「報告せず放置して悪化させた」型です。初期の不具合そのものは大家負担でも、放置によって広がった分は入居者負担になり得ます。不具合を見つけたら速やかに通知する義務を契約書に明記しておくことが、この線引きを使える状態にします。

7-3. 契約と募集の段階で決めておく

  • 付帯設備一覧を空欄のまま渡さない——設備か残置物かを1点ずつ書き切る
  • 残置物は「残置物・故障時は入居者負担」と明記する——記載がなければ後から主張しにくい
  • 通知義務の条項を入れる——不具合を知ったら速やかに連絡する旨
  • 減額の目安を契約書に取り込むなら現行版で——2024年10月の改定でエアコンが定額から率に変わっており、旧版のままだと食い違う
  • 緊急連絡先を明示する——連絡が届かない時間帯があると、入居者が自ら業者を呼ぶ根拠になる

7-4. 残置物は減額の話にも効く

残置物のエアコンが壊れた場合、修理義務が大家にない以上、そもそも「貸室・設備の不具合」として減額を論じる前提が崩れます。募集時に「残置物・故障時は入居者負担」と明記し、契約書の付帯設備一覧にも反映しておくことが、後の協議での立ち位置を決めます。逆に、次の募集で設備として訴求したいなら、修理して付帯設備一覧に格上げする判断もあります。

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❄️ 8. エアコンの修理と交換

8-1. 直すか替えるかの判断軸

状況 判断 理由
設置5年・修理3万円 修理 残りの寿命がまだ長い
設置8年・修理8万円 交換を検討 修理費が交換費に近づく
設置12年・修理5万円 交換 寿命超過。再故障で再び減額リスク
残置物 入居者の判断 大家に修繕義務なし

目安は修理費が交換費の半分を超えたら交換。賃貸のワンルーム・1Kで使う2.2〜2.8kW帯なら、本体と標準工事で総額9〜15万円が目安です。

8-2. 症状から原因と費用のあたりをつける

業者を呼ぶ前に症状を聞き取っておくと、修理で済むのか交換になるのかの見当がつき、免責日数の内に着地できるかの判断が早くなります。

症状 主な原因 修理か交換か 費用の目安
冷えない・暖まらない 冷媒漏れ・コンプレッサー不調 修理または交換 5〜15万円
水が垂れてくる ドレンの詰まり・配管不良 修理 1〜3万円
異音がする ファンモーター不良 修理 2〜5万円
リモコンが効かない リモコン故障・受光部不良 修理 5千〜2万円
電源が入らない 基板・電源回路 修理または交換 3〜10万円
設置10年超で不調 複数部品の劣化 交換 10〜20万円

リモコンの電池切れや受光部の不良は数千円で当日に解決することがあるので、最初の聞き取りで必ず確認します。ここで切り分けができると、免責日数を使わずに終われます。

8-3. 交換するときの費用相場

能力 本体 標準工事費 総額 主な用途
2.2kW(6畳) 5〜8万円 2〜3万円 7〜11万円 ワンルーム・寝室
2.8kW(10畳) 7〜12万円 2〜3万円 9〜15万円 1K・1DKの居室
4.0kW(14畳) 12〜18万円 3〜4万円 15〜22万円 1LDK・2DKのリビング

1棟10戸で全戸を入れ替えると100万円規模になります。同じ機種でまとめて発注するほうが単価も工期も有利なので、寿命の近い部屋をまとめて計画するのが基本です。

8-4. 2027年4月からの省エネ基準──公式が否定している誤解も多い

エアコンには2027年4月から新しい省エネ基準(2027年度基準)が適用されます。省エネ・非化石転換法に基づくトップランナー制度によるもので、世間では「エアコン2027年問題」と呼ばれています。ただし資源エネルギー庁が公式に打ち消している誤解が混ざっているので、大家として押さえる点を分けて整理します。

よく言われていること 公式の説明
今使っているエアコンが使えなくなる 誤り。トップランナー制度は製造・出荷するメーカーに適用される制度で、家庭で使用中の機器を買い替える必要はなく、引き続き使える
基準を満たさない低価格機は販売できなくなる 誤り。基準値を満たさない製品の製造・出荷を禁止するものではない。メーカーが年度ごとに出荷する製品全体の平均で評価される仕組み
古い機種は修理できなくなる 製造が完了した後の部品保有期間はおおむね10年間が設定されており、その期間は修理が可能とされる
値上がりする 可能性はある。メーカーによるが、省エネ性能の向上に伴い販売価格が上がる可能性があると公式も認めている

大家にとっての実利は別のところにあります。資源エネルギー庁の試算では、6畳用(2.2kW機)で2027年度基準を満たした製品は、現行の2010年度基準の製品と比べて年間約2,760円の光熱費削減が見込まれます。入居者の電気代が下がるということは、募集時の訴求材料になるということです。

調達面で効くのは部品保有期間のほうです。設置から10年を大きく超えた機体は、故障しても部品が出ず、修理ではなく交換一択になり得ます。それが真夏に判明すると、減額と割高な緊急工賃を同時に負う。設置10年超の機体は、閑散期にまとめて替えておくほうが総額で安くなりやすい、という結論はここから出ます。

8-5. 夏が来る前に、入居者へ試運転を頼む

エアコンの不具合は、使い始めた初日に発覚します。つまり真夏の猛暑日に一斉に発覚する。業者が最も捕まらない日に、最も多く壊れるわけです。

これを外す方法は単純で、梅雨に入る前に入居者へ試運転をお願いしておくことです。文面は難しくありません。「冷房を最低温度で10分ほど動かし、冷たい風が出るか・水漏れや異音がないかを確認してください。不具合があればこの連絡先へ」で足ります。

  • 5月〜6月上旬に案内する——繁忙期前なら部品も業者も確保できる
  • 不具合の申告先を明記する——連絡が遅れるほど免責日数の3日を使い切る
  • 案内した事実を残す——後日の協議で「対応の姿勢」を示す材料になる

この一手間で、7〜8月の緊急対応と、それに伴う減額・割高な工賃・入居者の不満を同時に減らせます。

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🚿 9. 給湯器の修理と交換

給湯器はエアコンに次いで故障が多く、しかも冬場は生活への影響が大きい設備です。寿命の目安は10〜15年。故障の型と費用感を整理します。

症状 主な原因 修理か交換か 費用の目安
お湯が出ない 点火不良・センサー 修理 3〜8万円
お湯がぬるい・温度が安定しない 水量・温度センサー 修理 2〜5万円
エラー表示が続く 制御基板 修理または交換 5〜15万円
設置10年超で不調 複数部品の劣化 交換 15〜35万円
タイプ 本体 工事費 総額 主な用途
給湯専用16号 8〜12万円 3〜5万円 11〜17万円 単身・シャワー中心
給湯専用20号 10〜15万円 3〜5万円 13〜20万円 標準的なワンルーム・1K
追い焚き付き20号 15〜22万円 4〜6万円 19〜28万円 1LDK以上
追い焚き付き24号 20〜28万円 5〜7万円 25〜35万円 2LDK以上・ファミリー
エコジョーズ(高効率) +3〜5万円 同上 +3〜5万円 補助制度の対象になり得る

賃貸の標準解は16号の壁掛けガス給湯器で、本体と標準工事で15〜20万円が目安。給湯器の交換費用が「7〜35万円」と幅広く語られるのは、号数と追い焚きの有無で別物だからで、単身向けの16号を最小構成で入れる場合と、ファミリー向け24号の追い焚き付きとでは4倍以上ちがいます。自分の物件の間取りに必要な号数を先に決めないと、見積の高い安いは判断できません。冬季の給湯器故障は部品調達で待たされやすく、免責日数の3日を超えやすいのが実務上の難所です。免責の内に直せるかどうかで減額の有無が変わる以上、繁忙期前の予防交換が効きます。

あわせて押さえたいのが、その給湯器が誰の所有物かです。プロパンガス物件では、ガス会社が設備を無償で貸与し費用を入居者のガス料金で回収する形が長く使われてきました。この商慣行は2024年の省令改正で新規契約について規律が入りましたが、施行日前に締結された契約には計上禁止が適用されません。給湯器を交換しようとして初めて「この機器は自分のものではなかった」と分かることがあります。契約の見方は「プロパンガススキームとは?無償貸与の終了で大家が負う設備費と関西の実額・都市ガス化の損益分岐」にまとめました。設備交換の周期と費用の全体像は「アパート・賃貸の修繕費はいつ何にいくら?大家が負担する費用の全体像と設備交換の相場【2026年版】」、築古物件の水回り予算は「築古アパート購入前の修繕費見積もり|水回り予算の上乗せ率と回収年数で買付を判断」で扱っています。

エアコンと給湯器以外も、周期と費用をまとめて持っておくと予備費の精度が上がります。1棟10戸なら、年に2〜5戸で何らかの修繕が出る前提で組みます。

設備 修理 交換 寿命の目安
ガスコンロ(ビルトイン) 2〜8万円 5〜15万円 10〜15年
IHクッキングヒーター 3〜10万円 10〜20万円 10〜15年
換気扇・レンジフード 1〜3万円 3〜8万円 10〜15年
浴室換気扇 1〜3万円 3〜8万円 10〜15年
温水洗浄便座 1〜3万円 3〜8万円 7〜10年
水栓・蛇口 5千〜2万円 2〜8万円 10〜15年
インターホン 1〜3万円 3〜10万円 10〜15年
給湯器リモコン 5千〜2万円 2〜5万円 10〜15年
玄関ドア(蝶番・錠前) 5千〜3万円 10〜30万円 20〜30年

このうちトイレ・水回りはA群やB群の上位項目に直結するので、優先度を上げて管理します。温水洗浄便座の故障そのものは減額項目ではありませんが、便器ごと使えなくなればB群のトイレ(20%・免責1日)です。

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⚡ 10. 初動対応フロー

10-1. 5段階で動く

減額を発生させないための行動は、免責日数の内に直すことに尽きます。逆算すると動きは決まります。

段階 目安の時間 やること
① 受領 連絡から数時間以内 「確認します」ではなく「いつまでに対応するか」を返す
② 切り分け 同日 A群かB群か。供給元の停止でないかも確認
③ 業者手配 24時間以内 免責日数の内に着地できる業者を優先。繁忙期は即決も可
④ 代替手段 免責日数を超えそうと判明した時点 冷風機の貸与や入浴費の負担を申し出て記録に残す
⑤ 協議 復旧後すみやかに 3つの日付をもとに計算し、書面で合意する

各段階で押さえるところを具体的にしておきます。

  • 受領——「確認します」で止めない。いつ誰が行くかまで返すと、その後の要求の強さが変わります
  • 切り分け——ブレーカー・元栓・リモコンの電池といった一次確認を電話で済ませる。ここで解決する件が一定数あります
  • 業者手配——見積は価格だけで比べない。着工日を同じ重さで比べる
  • 記録——故障日・通知日・修理完了日の3点を、やり取りの原本ごと残す
  • 協議——計算式と根拠を示して書面にする。口頭合意は退去精算でほぼ必ず蒸し返されます

③で妥協して「来週なら安く入れます」を選ぶと、免責日数を超えて減額が発生し、値引き分を失うことがあります。免責日数の内に入るかどうかが、費用比較の隠れた基準です。

10-2. 協議は必ず書面にする

減額そのものは条文上あたりまえに発生しますが、いくらで合意したかを残さないと、退去精算で必ず蒸し返されます。難しい書式は要りません。次の項目が揃っていれば足ります。

賃料減額に関する確認書(記載する項目)

  1. 対象の設備と部屋(例:居室のエアコン)
  2. 故障日・通知日・修理完了日の3つの日付
  3. 該当する群と項目(例:B群「エアコンが作動しない」)
  4. 減額割合と免責日数、およびその根拠
  5. 計算式と減額金額(月額賃料 × 割合 ×(日数 − 免責日数)÷ 30日)
  6. 代替手段を提供した場合はその内容と期間
  7. どの月の賃料から差し引くか
  8. 本書をもって当該不具合に関する精算を終える旨
  9. 日付と双方の署名

6番を入れておくのが実務の勘どころです。冷風機を貸した、入浴費を負担した、といった事実を金額と並べて記録しておくと、後から「何もしてもらえなかった」という主張が立ちにくくなります。

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💰 11. 修繕費を抑える3つの型

  • 相見積もり——緊急時を除き3社。価格・着工日・保証を並べる。着工日は減額の有無に直結するので必ず比較項目に入れる
  • 修繕の積立——家賃収入の5%程度を目安に、運転資金と分けた口座で管理する
  • 予防交換——エアコンは設置8〜9年目、給湯器は12年目を目安に、繁忙期を外して計画的に替える
規模 月家賃の合計 積立の目安(月) 年間
区分1室 10万円 5千円 6万円
アパート6戸 36万円 1.8万円 21.6万円
アパート10戸 60万円 3万円 36万円
アパート20戸 120万円 6万円 72万円

予防交換は「寿命の何年目に手を付けるか」を先に決めておくと迷いません。

設備 寿命の目安 交換に動く時期 先送りした場合の損
エアコン 10年 8〜9年目 真夏の緊急工賃と減額が重なる
給湯器 10〜15年 12年目 冬季は部品待ちで免責3日を超えやすい
ガスコンロ 10〜15年 13年目 緊急対応の単価が上がる

修理で処理するか資産として計上するかは税務の分かれ目になります。判定の手順は「修繕費と資本的支出のフローチャート|見積書の計算例で判定する原状回復・給湯器交換・外壁塗装と、資産計上した後の償却年数」で整理しています。

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🗾 12. 関西で実際に困るところ

関西の賃貸経営で効いてくるのは、金額よりも着工までの日数です。都市部は業者の数が多く動きやすい一方、郊外や繁忙期は手配に時間がかかりやすくなります。夏のエアコン繁忙期(7〜8月)と冬の給湯器繁忙期(12〜2月)は手配が一気に詰まります。免責日数が3日しかない以上、繁忙期に故障してから探し始めると、その時点で減額はほぼ確定します。

使い分けの目安も置いておきます。1社に寄せきらず、性格の違う先を併用するのが現実解です。

依頼先の型 強み 弱み
地場の中小工務店・設備業者 単価が安く、日程の融通が利く 品質にばらつき。繁忙期は埋まる
家電量販店 機器の在庫が厚く保証が付く 工事日が先になりやすい
エネルギー系のサービス店 ガス機器に強く価格が標準的 取扱機種が限られる
メーカーのサービス窓口 純正部品で確実 費用が高く日程も遅い

費用や着工までの日数は業者・機種・繁忙期によって差が出ます。複数の業者から見積りを取り、金額と着工日の両方を比べておくと、繁忙期に慌てず判断できます。

業者によって金額差はありますが、その差は、免責日数を超えて発生する減額や空室リスクに比べれば小さいことが多いです。安さだけで遠方の業者を呼んで着工が遅れるより、近くで早く動ける先を確保するほうが、総額では有利になりやすいと考えます。

対策は単純で、繁忙期に入る前に1社と関係を作っておくことです。優先して動いてもらえる関係が1社あるかどうかで、夏の対応速度は大きく変わります。関西での募集・管理の実務全般は「大家の賃貸管理は大変?賃貸経営でやることの全体像|募集・入居審査・契約・退去精算の6工程と自主管理・委託の分かれ道」、高齢入居者への対応は「孤独死保険5選を大家目線で比較|家主型vs入居者型・原状回復300万円補償・保証料と関西の選び方」を併読してください。

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💬 13. 賠償を求められたときの線引き

13-1. 「ホテル代を出せ」と言われたら

紛争として多いのは減額の金額そのものより、宿泊費や旅行のキャンセル代といった損害賠償の要求です。整理すると、民法611条の賃料減額と損害賠償は別の制度で、宿泊費が当然に大家負担になるわけではありません。

ただし対応の遅れに過失があれば賠償のリスクは現実化します。防波堤になるのは3点です。①連絡への即日返信、②修理と代替手段の手配記録、③やり取りの書面化。とくに②は、ガイドライン自身が代替措置の提供を協議の選択肢として挙げている以上、やっておく価値があります。家賃そのものの引き下げを求められた場合の考え方は「不動産投資家が家賃交渉される時の対応5パターン|借地借家法32条・訴訟リスク」で扱っています。

13-2. 猛暑・厳寒は「金額の話」で終わらせない

高齢の入居者、乳幼児のいる世帯、持病のある方の部屋で、真夏にエアコンが止まったときは、賃料減額の計算より先に、健康被害を出さないことを優先してください。熱中症は屋内でも起こり、判断が遅れれば生命に関わります。

ガイドラインのエアコンの項目に「発生した季節・地域、間取りや設置台数等を考慮して割合を調整する」という注記が置かれているのは、まさにこうした状況を想定してのことです。10%という数字は、涼しい時期に1台のうち1台が止まった場合も、猛暑日に唯一の冷房が止まった場合も同じ、という意味ではありません。

状況 先にやること
猛暑日・高齢者または乳幼児世帯 当日中に代替の冷房手段を届ける。安否確認も兼ねて連絡を取る
修理まで数日かかると判明 窓用エアコンや冷風機の貸与、宿泊費の負担を検討し、記録に残す
厳寒期に給湯器が停止 入浴手段の確保を申し出る。高齢者は入浴できない期間が健康に直結する

費用を惜しんで代替手段を出さず、健康被害が生じた場合に問われるのは賃料減額ではなく損害賠償です。減額は月数千円の世界ですが、賠償はその比ではありません。季節と入居者の属性によって、初動の優先順位を変える——これが実務上いちばん重要な判断です。

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❓ 14. よくある質問

Q1. エアコンが故障したら、家賃はいくら減額されますか?

A. 業界の目安では10%・免責日数3日です。計算は「月額賃料 × 10% ×(使えなかった日数 − 3日)÷ 30日」。家賃6万円で10日間なら1,400円、8万円なら約1,867円です。ただしエアコンの項目には季節・地域・間取り・設置台数を考慮して割合を調整するという注記が付いており、真夏に1台しかない部屋では上振れの協議になり得ます。

Q2. 入居者から請求されなければ、減額しなくてよいのですか?

A. いいえ。民法611条1項は「減額される」と定めており、請求は要件ではありません。満額を受け取り続ければ超過分を返す立場になります。請求がないことは、減額が発生していないことを意味しません。

Q3. いちばん減額が大きい故障は何ですか?

A. 電気が使えない場合で、40%・免責2日です。水が30%・免責2日、トイレが20%・免責1日と続きます。エアコンやガス、風呂は10%なので、感覚的に「エアコンが一番もめる」と思っていると金額の重みを読み違えます。家賃6万円で5日間なら、電気2,400円に対してエアコンは400円です。

Q4. 給湯器が壊れてお湯が出ません。減額割合は何%ですか?

A. ガイドラインに「給湯器」という項目はありません。ガスの供給自体が止まっているならA群の「ガスが使えない」で10%・免責3日、ガスは来ていて給湯器の故障で入浴できないだけならB群の「風呂が使えない」で10%・免責3日に当てはめるのが筋です。目安の数字は同じですが、A群から先に確認するという順序がガイドラインの使い方です。

Q5. 免責日数の内に直せば、減額しなくてよいのですか?

A. ガイドラインのフローチャートでは、免責日数の内に不具合が解消された場合は「賃料減額の対応不要」と整理されています。免責日数を超えて解消した場合に、協議のうえ減額対応(代替措置の提供も可)へ進みます。初動を早める最大の経済的な理由がここにあります。

Q6. 台風で停電しました。これも減額の対象ですか?

A. 分かれます。天災であっても貸主・借主の双方に責任がなければ減額が認められるのが原則ですが、電気・ガス・水道等の停止が貸室設備の不具合ではなく供給元の帰責事由による場合は対象外とされています。地域一帯の停電なら対象外、自分の建物の受電設備や屋根の損傷が原因なら対象、という見方になります。

Q7. 残置物のエアコンが壊れた場合はどうなりますか?

A. 残置物は大家の所有物ではないため、原則として修繕義務がなく、入居者が自費で修理または撤去します。修繕義務がない以上、賃料減額を論じる前提も基本的に立ちません。判定の根拠は賃貸借契約書の付帯設備一覧に記載があるかどうかなので、募集と契約の段階で明確にしておくことが重要です。

Q8. このガイドラインには従わなければいけませんか?

A. ガイドライン自身が冒頭で「法的拘束力はなく目安を示しているものであり、賃料減額割合や免責日数は状況に応じて調整可能であり、必ず使用しなくてはならないものではない」と明記しています。強制ではありませんが、協議や紛争解決の場で事実上の基準として参照されるため、知らずに交渉に臨むと不利になります。

Q9. 契約書にあらかじめ減額の条件を書いておけますか?

A. 可能です。むしろガイドラインを賃貸借契約書に盛り込んでいる場合は、改定内容を確認して差し替えるよう協会自身が呼びかけています。2024年10月の改定でエアコンの項目が定額から率に変わっているため、旧版の数値を引用したままの契約書は現行版と食い違います。手元の雛形を一度確認してください。

Q10. 「免責期間」とは何日ですか?その間は何もしなくていいのですか?

A. 免責日数は項目ごとに異なり、電気と水が2日、トイレが1日、ガス・風呂・エアコン・テレビ等が3日、雨漏りが7日です。ただし「その間は放置してよい猶予」ではありません。減額の計算から除く日数という意味であり、しかも免責日数の内に直せば減額の対応自体が不要になります。実質的には「この日数以内に着地させれば金銭負担がゼロで済む期限」と捉えるほうが実務に合います。

Q11. 完全に壊れてはいないが効きが悪い場合も減額対象ですか?

A. 一律には決まりません。減額を決める際は、使用できなかった期間・程度・面積、そして代替手段を提供したかどうかが考慮されます。まったく動かない場合と、能力が落ちた状態で使える場合とでは「使用及び収益をすることができなくなった部分」の評価が変わります。効きが悪い段階で申告を受けたら、その時点の状態を記録しておくことが、後の協議で効きます。

Q12. 真夏にエアコンが止まり、高齢の入居者から体調不良を訴えられました。

A. 減額の計算より先に、当日中の代替手段の確保と安否の確認を優先してください。健康被害が生じた場合に問われるのは賃料減額ではなく損害賠償で、金額の桁が変わります。ガイドラインのエアコンの項目にも、季節・地域・間取り・設置台数を考慮して割合を調整する旨の注記があり、猛暑下の単身高齢世帯は調整が想定される典型です。対応した内容と日時は必ず記録に残してください。

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🧭 15. まとめ

設備故障の対応は、2020年の民法改正で「起きたら困る」から「起きた時点で賃料が減り始める」に構造が変わりました。減額の根拠は民法611条であり、入居者の請求は要件ではありません。606条は修繕義務の条文で、役割が違います。

金額の目安はまずA群(電気40%・水30%・ガス10%)を確認し、当たらなければB群(トイレ20%・風呂10%・エアコン10%・テレビ等10%・雨漏り5〜50%)を見るという二段構え。もっとも重いのは電気で、エアコンの感覚で構えていると読み違えます。そして免責日数の内に直しきれば、減額の対応そのものが不要になる——これが初動を早める最大の理由です。

関西で実際に効くのは金額よりも着工までの日数で、夏と冬の繁忙期には免責日数の3日が一気に厳しくなります。繁忙期前に業者との関係を作り、設置10年超の機器は閑散期に計画交換しておく。数字を覚えることより、3日で動ける体制を先に作っておくことが、結果として減額もクレームも最小にします。

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📖 16. この記事の根拠(出典・参考)

  • 民法606条(賃貸人の修繕義務)・607条の2(賃借人による修繕)・611条(賃借物の一部使用不能による賃料の減額等):e-Gov法令検索 原文(2026年9月17日参照)
  • 賃料減額割合・免責日数・A群B群の区分・計算例・免責日数の定義・対象外の整理・フローチャート:公益財団法人日本賃貸住宅管理協会「貸室・設備等の不具合による賃料減額ガイドライン」(令和6年10月4日運用開始)改定のお知らせ
  • 2024年10月改定の内容(エアコンの減額割合を月5,000円の定額から10%へ変更):同協会の公表による
  • エアコンの2027年度省エネ基準(トップランナー制度)、使用中の機器は買い替え不要、基準未達製品の製造・出荷を禁止するものではないこと、部品保有期間おおむね10年、6畳用2.2kW機で年間約2,760円の光熱費削減試算:資源エネルギー庁「27年4月からエアコンの新たな省エネ基準がスタート!」(2026年9月17日参照)
  • 減額の実額:本文中の計算式に基づく試算。前提値は記事内に明示
  • 給湯器・エアコンの価格帯(本文・9章表・8章表の金額):公的な統計にもとづく数字ではなく、機種・設置条件・業者によって幅が大きい概算の目安です。実際の金額は見積もりで確認してください

※ガイドラインの数値は同協会が公表している事実として引用しています。ガイドライン本体の複製・転載には同協会の事前許諾が必要とされているため、本記事では原本の様式をそのまま再現せず、大家の判断手順として再構成しています。実際の運用にあたっては必ず原本をご確認ください。

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🔗 17. あわせて読みたい関連記事

執筆者:西本 豪(楽待新聞コラムニスト)

関西の不動産投資家。賃貸経営の体験と、法令・公的機関の資料をもとに、税務・融資・賃貸経営・法人運営の実務ガイドを発信しています。

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