中古不動産(特に築22年超の木造アパート)の減価償却は、不動産投資家にとって給与所得との損益通算で当年度の所得税・住民税を一気に圧縮できる節税エンジンです。一方で、出口(売却)と運営期のデッドクロス(減価償却<元金返済の黒字倒産パターン)を設計せずに使うと、節税どころか融資が止まり破綻します。本記事は中古不動産の減価償却を投資家視点で網羅した実務ガイドです。
計算式・法定耐用年数(木造22年/鉄骨34年/RC47年)・中古簡便法による築22年超4年償却・建物と土地の按分・デッドクロスの発生時期・売却時の取得費控除(譲渡所得への跳ね返り)まで、国税庁タックスアンサーと所得税基本通達ベースで整理しました。投資家としての「減価償却を取りに行く物件選定」「節税の年数を読む設計」「出口での譲渡所得計算」までを、楽待・健美家コラムの実勢と税理士事務所の公開解説で裏取りしながら解説します。
- 📐 減価償却の基本|法定耐用年数と計算式
- 🏗 中古資産の簡便法|築22年超で4年償却
- 🧩 建物本体と附属設備の区分|耐用年数を分ければ節税効果は跳ね上がる
- 📐 取得時の土地建物按分|固定資産税評価額・路線価・契約書の3手法
- 💼 少額減価償却資産・特別償却・繰延資産の使い分け
- ⚠️ デットクロスの仕組み|減価償却<元金返済の罠
- 💰 売却時の譲渡所得|減価償却累計が取得費から控除
- 🧠 減価償却は「節税」か「課税繰り延べ」か|楽待税理士コラムの警鐘
- 🪤 損益通算の落とし穴|土地分の借入利子は損益通算不可(措置法41条の4)
- 🏦 関西の地銀・信金は減価償却をどう評価するか
- 🆚 Before/After|築22年超木造アパートの節税×売却シミュレーション
- ✅ NG/OK|減価償却の活用パターン
- 🩺 セルフチェック|減価償却節税の適性
- 🚨 注意点|減価償却の落とし穴
- ❓ よくある質問
- 📝 まとめ――減価償却は「築22年超の木造で4年集中節税」と「出口の譲渡所得」をセットで設計する
- 📖 この記事の根拠(出典・参考)
- 🔗 あわせて読みたい関連記事
📐 減価償却の基本|法定耐用年数と計算式
減価償却は、固定資産の取得価額を耐用年数にわたって費用計上する会計処理です。建物・設備は法定耐用年数で分割計上され、所得税・住民税の計算で経費として控除されます。
📊 法定耐用年数(住宅用建物)
| 構造 | 法定耐用年数 | 定額法償却率 |
|---|---|---|
| RC造(鉄筋コンクリート) | 47年 | 0.022 |
| SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート) | 47年 | 0.022 |
| 重量鉄骨造(厚さ4mm超) | 34年 | 0.030 |
| 軽量鉄骨造(厚さ3mm超4mm以下) | 27年 | 0.038 |
| 軽量鉄骨造(厚さ3mm以下) | 19年 | 0.053 |
| 木造 | 22年 | 0.046 |
📐 定額法による減価償却費の計算
減価償却費(年額) = 取得価額 × 定額法償却率
注意:建物本体は定額法のみ(2007年4月1日以後取得分)。設備は定率法も選択可能。
🏗 中古資産の簡便法|築22年超で4年償却
中古不動産は法定耐用年数ではなく、簡便法で算出した「短い耐用年数」を使えるのが、節税戦略の核心部分です。
📐 簡便法の2つの計算式
【法定耐用年数を全部経過した中古資産】
耐用年数 = 法定耐用年数 × 20%(年端数切捨て)
【法定耐用年数を一部経過した中古資産】
耐用年数 =(法定耐用年数 − 経過年数)+ 経過年数 × 20%(年端数切捨て)
📊 構造別の中古耐用年数早見表(築年数別)
| 築年数 | 木造(法定22年) | 軽量鉄骨(27年) | 重量鉄骨(34年) | RC(47年) |
|---|---|---|---|---|
| 10年 | 14年 | 19年 | 26年 | 39年 |
| 20年 | 6年 | 11年 | 18年 | 31年 |
| 22年超 | 4年 | 10年(築23年想定) | 17年 | 30年 |
| 27年超 | 4年 | 5年 | 14年 | 27年 |
| 47年超 | 4年 | 5年 | 6年 | 9年 |
💴 築22年超木造の節税効果(建物3,000万円のケース)
- 耐用年数:22年×20%=4年
- 償却率:0.250
- 年間減価償却費:3,000万円×0.250=750万円/年×4年
- 給与所得との損益通算:給与所得900万円超(税率33%)の投資家なら年間約250万円の節税


🧩 建物本体と附属設備の区分|耐用年数を分ければ節税効果は跳ね上がる
中古不動産の減価償却でもっとも取りこぼされやすい論点が、建物を「躯体(本体)」と「附属設備」に分けて減価償却する処理です。附属設備の法定耐用年数は本体よりずっと短いため、分離すれば年間の減価償却費が大きく増えます。
| 区分 | 法定耐用年数 | 償却方法 |
|---|---|---|
| 建物本体(木造) | 22年 | 定額法のみ |
| 建物本体(RC・SRC造) | 47年 | 定額法のみ |
| 給排水・電気設備 | 15年 | 定額法(2016年4月以降取得) |
| 冷暖房・空調設備 | 6〜13年 | 定額法 |
| エレベーター | 17年 | 定額法 |
| 消火・排煙・災害報知設備 | 8年 | 定額法 |
分離の効果は劇的です。築16年・建物価額1,000万円のRC造マンションを例に取ると、本体一括(耐用年数47年想定)なら年間減価償却費は約33万円ですが、躯体8:設備2で按分し附属設備15年で別途償却すると年間約99万円に跳ね上がります。年間70万円の経費増=税率30%帯なら年21万円の節税差が生まれます。
附属設備の分離は取得初年度の確定申告で明示する必要があります。後年に「やっぱり分けたい」と修正申告しても税務署は原則認めません。中古物件取得時は売買契約書を作る段階から「躯体と附属設備の内訳」を意識し、契約書に金額按分を明記しておくのが鉄則です。
📐 取得時の土地建物按分|固定資産税評価額・路線価・契約書の3手法
減価償却の前提となる取得価額の土地建物按分には、税務上認められた3手法があります。建物比率が高いほど減価償却費が増えるため、合理的根拠の範囲で建物比率を取りに行くのが投資家の腕の見せ所です。
| 按分方法 | 手順 | 実務適性 |
|---|---|---|
| ①売買契約書記載 | 契約書に土地・建物価額が明記されていればそれを使用 | 大手業者の売却物件向き |
| ②固定資産税評価額按分 | 課税明細書の土地・建物評価額の比率を取得価額に掛ける | 個人売主の中古物件で現実的 |
| ③消費税からの逆算 | 建物にのみ消費税が課されるため「消費税÷税率=建物価額」で逆算 | 業者売主で消費税が明示されている時に有効 |
個人売主から築古物件を買うと契約書に土地建物の内訳がないことが多く、その場合は②固定資産税評価額按分が標準です。固定資産税評価額は物件取得時点で売主から課税明細書を取得し、土地・建物の比率(例:土地60%・建物40%)を取得価額に当てはめます。なお按分の正当性が税務調査で問われる可能性があるため、課税明細書のコピーは申告書類と一緒に長期保管が必須です。土地建物の取得関連税の整理は 不動産投資の税金|不動産取得税・減価償却・譲渡所得税・相続税の実務ガイド も参照してください。
💼 少額減価償却資産・特別償却・繰延資産の使い分け
減価償却の周辺には「少額減価償却資産」「特別償却」「繰延資産(開業費)」という3つの制度があり、それぞれ使いどころが異なります。
| 区分 | 取得価額 | 処理方法 |
|---|---|---|
| 少額減価償却資産 | 10万円未満 | 取得年に全額経費(消耗品扱い) |
| 一括償却資産 | 10万円以上20万円未満 | 3年均等償却(償却資産税の対象外) |
| 中小企業者等の少額減価償却資産特例 | 10万円以上30万円未満 | 取得年に全額経費(年300万円上限・青色申告者) |
| 特別償却・割増償却 | − | 認定長期優良住宅・グリーン投資減税等の上乗せ償却 |
| 繰延資産(開業費) | 開業前の支出 | 任意償却(黒字年に集中投入可) |
賃貸経営で実務的に効くのは「中小特例の30万円未満一括」と「開業費の任意償却」の2つです。エアコン・給湯器・洗濯機といった単品が30万円未満なら、青色申告で取得年に全額経費化できます(年300万円上限)。開業費は黒字に振れた年に集中償却して所得を圧縮する戦略が取れます。償却資産税(固定資産税の一部)との関係は 大家のための固定資産税・都市計画税|住宅用地特例・償却資産税・解体6倍リスク・関西の実務ガイド で詳説しています。
⚠️ デットクロスの仕組み|減価償却<元金返済の罠
デットクロスとは「減価償却費<ローン元金返済額」になる状態です。会計上は黒字でも実際のキャッシュフローは赤字になり、最悪「黒字倒産」につながるリスクがあります。
📉 デットクロス発生のメカニズム
| 時期 | 減価償却費 | 元金返済 | 税引前CF | 課税所得 |
|---|---|---|---|---|
| 取得初期(4年以内) | 大(築古簡便法) | 小(元利均等は元金少) | プラス | マイナス(節税) |
| 中期(5〜10年) | 中 | 中 | プラス | プラス |
| 償却終了後 | ゼロ | 残債分継続 | マイナス | 大幅プラス(黒字倒産) |
💡 デットクロス対処法
- 5年超で長期譲渡20.315%適用後に売却:減価償却終了前の5年目以降がベストタイミング
- 減価償却資産の買い増し:別物件で減価償却費を継続的に確保
- 繰上返済:ローン元金を減らして利息部分を圧縮(CFは改善するが資金繰り消費)
- 法人化:法人なら任意償却で減価償却を翌期以降に繰り延べ可能(個人は強制償却)
💰 売却時の譲渡所得|減価償却累計が取得費から控除
不動産売却時の譲渡所得は「譲渡価額 − 取得費 − 譲渡費用 − 特別控除」で計算されます。取得費は購入価額から減価償却累計額を控除するため、節税で取った減価償却分は売却時に課税対象として戻ってきます。
📐 譲渡所得の計算式
譲渡所得 = 譲渡価額 − 取得費 − 譲渡費用 − 特別控除
取得費 =(購入価額 − 減価償却累計額)+ 諸費用
譲渡費用 = 仲介手数料 + 登記費用 + 印紙税 等
📊 長期譲渡 vs 短期譲渡(5年判定)
| 区分 | 所有期間 | 税率 |
|---|---|---|
| 長期譲渡所得 | 5年超(売却年1月1日基準) | 20.315%(所得税15%+住民税5%+復興特別所得税0.315%) |
| 短期譲渡所得 | 5年以下 | 39.63%(所得税30%+住民税9%+復興特別所得税0.63%) |
🧠 減価償却は「節税」か「課税繰り延べ」か|楽待税理士コラムの警鐘
減価償却を語るとき、もっとも誤解されているのが「節税」という言葉の中身です。減価償却は本質的に「節税」ではなく「課税の繰り延べ」──楽待の税理士コラム(2025年・大野税理士の解説)でも明確に指摘されています。
減価償却費は「経費になるけど現金は出ていかない」特殊な性質を持つため、一時的に税負担を軽減できますが、これは本来の税額を先送りしているにすぎません。減価償却期間が終わったとき、手残りがいくらになるかをあらかじめ計算しておくことが大事です。
では、なぜ「節税」と言われるのか。仕組みは次の通りです。
- 保有期間:損益通算で総合課税の最高税率(住民税込み最大55%)で控除を取る
- 売却時:減価償却累計を取得費から控除した「圧縮後の取得費」で譲渡益が計算され、分離課税(長期20.315%/短期39.63%)で精算される
- 長期保有(5年超)の場合:保有時55%控除→売却時20.315%精算で差額(最大34.685%)が真の節税分として残る
- 短期譲渡(5年以下)の場合:保有時55%控除→売却時39.63%精算で差額が縮小し、最悪「節税どころか追加納税」も
つまり減価償却の節税効果は「保有時の高い限界税率と売却時の分離税率の差」から生まれる時間差利益です。これを「ただの繰り延べ」ではなく「真の節税」に変えるには、必ず5年超保有(=長期譲渡)で出口を取る必要があります。短期で売って税率39.63%が当たると、保有時の節税効果は大幅に目減りします。税金全体の俯瞰は 不動産投資の税金|不動産取得税・減価償却・譲渡所得税・相続税の実務ガイド も併読してください。
“減価償却は節税ではない。『高税率時代の経費化』と『低税率時代の精算』の時間差利益を取る投資技術である。”
— 減価償却の本質を一言で
🪤 損益通算の落とし穴|土地分の借入利子は損益通算不可(措置法41条の4)
給与所得との損益通算は減価償却の最大の利点ですが、ここに租税特別措置法41条の4による重大な制限があります。「土地の取得に要した借入金の利子部分は、不動産所得の損失に含めて損益通算できない」というルールです。
| 借入利子の内訳 | 不動産所得の必要経費 | 損益通算(給与等との通算) |
|---|---|---|
| 建物分の借入利子 | ○ | ○(通算可) |
| 土地分の借入利子 | ○ | ×(赤字部分は通算不可) |
| 運営経費(管理費・修繕費等) | ○ | ○ |
実務的には、銀行の融資明細に「土地分」「建物分」と分かれて記載されることはまず無いため、取得時の土地建物按分比率を借入金にも適用して土地分利子を計算するのが一般的です。例:5,000万円借入・土地建物比率60:40なら、土地分借入3,000万円相当の利子(年率2%なら年60万円)が損益通算不可分となります。土地比率の高い物件(都心商業地・好立地住宅地)ほど、損益通算で取れる赤字の幅が制限される点は要注意です。
🏦 関西の地銀・信金は減価償却をどう評価するか
不動産投資家にとって、減価償却は税務だけでなく融資戦略にも直結する論点です。金融機関ごとに耐用年数残の評価が異なり、出口戦略の融資可能期間を左右します。
- 大手アパートローン(オリックス銀行・SBI新生・楽天銀行等):法定耐用年数残=融資期間の上限が標準。築古RC残20年なら融資期間も最長20年
- 地方銀行(関西みらい・池田泉州・京都銀行等):耐用年数残を概ね尊重するが、収益還元法で物件評価が高い場合は延長交渉余地あり
- 信用金庫プロパー(京都中央信金・大阪信用金庫等):耐用年数を超えた期間設定の柔軟性がある。実勢評価・取引履歴・代表者属性で総合判断
- ノンバンク(セゾンファンデックス等):耐用年数残ではなく物件評価で期間設定。築古でも長期融資の例
築古木造で4年集中節税を狙う場合、「節税は取れたが次の融資が組めない」という出口の融資詰まりが発生しがちです。融資の組み方とノンバンクからの卒業設計は ノンバンク不動産投資ローンの出口戦略|実質コストと銀行への借り換え・属性別の使い分け も併読してください。関西で築古一棟の出口を取りに行くなら、取得時点で「耐用年数残が10年を割る前に売却 or 借換」のシナリオを描いておくのが安全です。
🆚 Before/After|築22年超木造アパートの節税×売却シミュレーション
築23年木造アパートを建物3,000万円・土地2,000万円・計5,000万円で取得し、4年保有後に売却する場合:
- 4年間の減価償却累計:3,000万円
- 節税効果(税率43%):約1,290万円
- 売却価額:5,000万円(横ばい)
- 取得費:5,000万円−3,000万円=2,000万円
- 譲渡所得:3,000万円
- 短期譲渡税率39.63%:約1,189万円
- 差引:節税1,290万−譲渡税1,189万=+101万円
- 5年保有:減価償却終了+デットクロス1年
- 節税効果:1,290万円(変わらず)
- 売却価額:5,000万円
- 取得費:2,000万円(減価償却累計3,000万)
- 譲渡所得:3,000万円
- 長期譲渡税率20.315%:約609万円
- 差引:節税1,290万−譲渡税609万=+681万円
5年超まで保有して長期譲渡20.315%を適用するだけで、差引キャッシュが約580万円改善します。築古減価償却戦略の出口は「5年超で売却」が王道です。
✅ NG/OK|減価償却の活用パターン
- 新築RC造を節税目的で購入(償却率0.022で効果薄)
- 4年償却終了直後に短期譲渡39.63%で売却
- 建物価格を意図的に過大計上(税務調査リスク)
- 土地と建物の按分を不適切(按分根拠なし)
- 給与所得と損益通算前提で買ったが、年収500万円で税率20%
- 年収1,200万円超で築22年超木造を購入
- 4年償却+5年保有後に長期譲渡で売却
- 固定資産税評価額の比率で土地建物按分
- 減価償却資産の買い増しで継続節税
- 2026年度税制改正の影響(5年ルール)も織り込み
🩺 セルフチェック|減価償却節税の適性
- ☐ 給与所得900万円超(課税所得900万円超で税率33%以上)
- ☐ 築22年超木造アパートを取得検討中
- ☐ 5年超の保有計画+出口戦略を持っている
- ☐ 法人化または資産管理会社の選択肢を検討
- ☐ 土地建物按分の根拠(固定資産税評価額比率等)を整理済み
- ☐ デットクロス発生後の対応策(売却・買い増し)を計画
→ 4個以上当てはまったら築22年超木造の節税戦略が有効
🚨 注意点|減価償却の落とし穴
- 建物・土地按分の根拠不備で税務調査リスク(固定資産税評価額の比率が標準)
- 建物附属設備(給排水・電気・空調等)は別途15年償却で按分必要
- 個人は強制償却(取得初年度から計上必須)/法人は任意償却(繰り延べ可)
- 節税効果は税率に依存:年収500万円層では効果半減
- 2027年以降の譲渡所得増税(高額所得者向け)も視野に
❓ よくある質問
Q1. 木造アパートの減価償却で築何年から「4年償却」になりますか?
A. 築22年超から。法定耐用年数22年を全部経過しているため、簡便法で「22年×20%=4.4年→年端数切捨てで4年」が適用されます。築22年ぴったりは「(22−22)+22×20%=4.4年→4年」、築23年でも同じく4年です。
Q2. RC造マンションで減価償却節税は可能?
A. 築47年超なら9年償却で節税可能。ただし築40年代のRCは構造寿命に近く、修繕費・大規模修繕の負担も大きい。木造築22年超のほうが節税効率は高いことが多いです。
Q3. 土地と建物の按分はどう計算しますか?
A. 固定資産税評価額の比率が最も標準的。売買契約書に建物価格が明記されている場合はそれを使用。消費税額から逆算する方法もあり(土地は非課税)。税務調査で否認されないよう、按分根拠を必ず文書化。
Q4. デットクロスはいつ起きますか?
A. 減価償却終了後+元金返済継続中のタイミング。築22年超木造で簡便法4年償却なら5年目以降。元利均等返済の場合、返済が進むほど元金返済割合が増えるため、デットクロスが深まります。
Q5. 法人化すると減価償却で何が変わる?
A. 個人は強制償却、法人は任意償却。法人なら利益が大きい年に多く償却し、利益が小さい年は償却を繰り延べる調整が可能。デットクロス対策にも有効。ただし設立費用・維持費・税理士報酬で年30〜50万円のコスト増。
Q6. 売却時の取得費はなぜ減価償却累計額を控除する?
A. 毎年の経費計上で課税所得を減らした分、売却時の取得費は減らされるのがルール。例:3,000万円の建物を4年で全額償却(経費3,000万円計上)→売却時の取得費は0円(全額減価償却済)。譲渡所得が膨らみます。
Q7. 建物附属設備の減価償却も別計算?
A. YES。給排水設備・電気設備・空調設備・エレベーター等は建物本体と別に15年(給排水)等の耐用年数で償却。築古中古でも建物本体と附属設備を区別して計上できれば、初年度の減価償却額を増やせます。
Q8. 2026年度税制改正で減価償却に影響は?
A. 減価償却ルール自体は変わらず。ただし「相続発生前5年以内取得の賃貸不動産は時価80%評価」という改正で、相続税対策としての築古節税の旨味が縮小。節税目的なら2026年中の取得+6年経過待ちが現実的です。
Q9. 土地分の借入利子は損益通算できますか?
A. できません。租税特別措置法41条の4により、不動産所得が赤字の場合、土地の取得に要した借入金の利子部分は損益通算(給与所得等との通算)から除外されます。実務的には取得時の土地建物按分比率を借入額にも適用して土地分利子を計算し、その金額分は通算不可として扱います。土地比率の高い物件(都心商業地等)ほど、損益通算で取れる赤字幅が制限される点に注意が必要です。建物分の借入利子は通常通り損益通算可能です。
Q10. 減価償却は「節税」ですか「課税繰り延べ」ですか?
A. 厳密には「課税繰り延べ+税率差利益」です。保有期間中は総合課税の最高税率(住民税込み最大55%)で控除を取り、売却時は分離課税の長期20.315%(または短期39.63%)で精算されるため、「保有時の高い税率」と「売却時の低い税率」の差が真の節税分として残ります。5年超保有(長期譲渡)で初めて節税効果が確定し、5年以下の短期売却では税率差が小さくなり、最悪「節税どころか追加納税」になる場合があります。出口を必ず長期譲渡で設計するのが鉄則です。
- 取得時 土地建物按分(固定資産税評価額比率)/建物本体と附属設備の区分/当初申告で必ず分離
- 1〜4年目(築22年超木造の場合) 簡便法4年で集中償却→給与所得との損益通算で年最大100万円超の節税
- 5年経過時 長期譲渡(分離20.315%)の境界線到達。譲渡所得が出る局面では売却検討
- 5年目以降 減価償却終了→デッドクロス突入の可能性/キャッシュフローと税負担のバランスを再計算
- 出口(売却) 譲渡所得=譲渡収入−(取得費−減価償却累計)−譲渡費用/取得費圧縮の影響を必ず試算
- 次の物件取得 築古サイクル投資なら再び1〜4年集中節税を狙う/法人化との比較も検討

関西を中心に活動する不動産投資家・15年以上の実務経験。楽待新聞コラムニスト。築22年超の木造アパート・RC造マンション・建物附属設備区分の処理を法人運営で実装してきた経験と、国税庁タックスアンサー・所得税基本通達・楽待/健美家の税理士コラムを基に本記事を構成しています(2026年6月時点で確認)。
📝 まとめ――減価償却は「築22年超の木造で4年集中節税」と「出口の譲渡所得」をセットで設計する
不動産の減価償却は、所得圧縮だけ見ていては必ず失敗します。中古簡便法を使った築22年超の木造アパート4年償却は、所得税率33〜45%の高所得サラリーマンや法人代表にとって即効性のある節税エンジンですが、4年が終わると一気に経費が消え、デッドクロス(減価償却<元金返済)が顕在化します。
さらに売却時には、減価償却累計額が取得費から控除されるため譲渡所得が膨らみ、税率20%(長期)・39%(短期)で課税されます。「節税で得した分は譲渡時に取り返される」が原則で、本当の節税効果は所得税率差(累進税率 − 譲渡税率)×減価償却額に圧縮されます。年収帯ごとに損益が反転するため、出口の譲渡所得計算と運営期のCFを同じExcelシートに並べて判断する設計が必須です。
投資家にとっての減価償却は、節税の道具ではなく「築年代×構造×売却時期」の3軸で設計する戦略変数です。デッドクロスのタイミングで売却するか、繰上返済で減速させるか、法人化して所得分散するか――出口とCFのシミュレーションをセットで組んだうえで、減価償却の使い方を決めてください。
本記事は減価償却を深く掘り下げた専門ガイドですが、不動産取得時の不動産取得税・登録免許税、保有期間の固定資産税、相続・贈与時の小規模宅地等の特例、法人化のタイミング、確定申告の実務までを通覧したい場合は 不動産投資の税金|不動産取得税・減価償却・譲渡所得税・相続税の実務ガイド を併読してください。減価償却の周辺税務(住宅ローン控除・3,000万円特別控除・買換特例)も同記事で網羅しています。減価償却の節税効果を最大化するには、青色申告65万円控除(電子帳簿保存・e-Tax要件)の取得も並行が前提です(詳細:大家のための青色申告65万円控除|不動産投資の事業的規模・e-Tax・電子帳簿と2027年75万円改正)。築古木造を集中償却で回す築古サイクル投資戦略の場合は、出口の融資戦略も並行設計が必要で、ノンバンク不動産投資ローンの出口戦略と役員借入金とDESで自己資本比率を改善もあわせて検討するのが実務の定石です。減価償却は単独で完結する論点ではなく、青色申告・融資戦略・出口設計の3本柱と組み合わせて初めて「真の節税」として実現します。減価償却の最大の落とし穴は、節税の数字に酔って出口を考えずに買ってしまうことです。取得時点で売却までのCF表をExcelに引き、毎年見直す習慣を持ってください。
📖 この記事の根拠(出典・参考)
- 法定耐用年数:国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表」(建物・建物附属設備)
- 中古資産の簡便法:耐用年数省令第3条/国税庁「No.5404 中古資産の耐用年数」
- 築22年超木造の4年償却:健美家「減価償却の基礎」/GoldTrust/HOME4U/不動産投資スクエア
- デットクロス:ベルテックス/武蔵コーポ/スマイティ/健美家/オリックス銀行のお役立ち情報
- 譲渡所得税:国税庁「No.3211 短期譲渡所得」「No.3202 譲渡所得の計算」
- 2026年度税制改正大綱:内閣府/PwC Japan/健美家/楽待
- 体験ベース:執筆者(楽待新聞コラムニスト)の関西エリアでの15年の不動産投資・複数物件での減価償却実務
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コメント
今後資産持つ場合はすごく為になる記事ですね。
コメント有難う御座います!
経費の計上には良い部分だけでは無く、長期的に考えると注意点も多いと感じ、この辺りをまとめてみました。
もし参考にして頂けそうであれば、大変嬉しく思います!