皆さんは老後資金に不安はありませんか?
…少し胡散臭いですが、このようなことを聞かれると心配になる人も多いと思います。
2019年には「老後資金は平均で2,000万円不足するという問題」が表面化し、話題になりました。生活スタイルによって必要なお金は全然変わってきますが、僕個人的な意見としては「とても2,000万円程度では足りない」と考えています。
iDeCo(個人型確定拠出年金)と聞くと、どうしても「老後資金の不安を解消するための備え」のようなイメージが強いですが、老後資金が足りるか?足りないか?に関わらず、資産運用としてとても有効な手段なので、仕組みをしっかり理解して、是非、一度、検討してみて下さい。
ちなみに僕もiDeCoを活用して「ひふみ年金」という金融商品を「SBI証券」という金融機関を経由して購入しています。
- 老後資金に不安を感じている人
- iDeCo(個人型確定拠出年金)の仕組みを理解したい人
- iDeCo(個人型確定拠出年金)の注意点を知りたい人
iDeCoの仕組みを理解しよう
iDeCoとは「individual-type Defined Contribution pension plan」の略称で、個人型確定拠出年金のことです。個人型DCとも呼ばれます。
年金のもととなる掛け金を払うことを「拠出」といい「個人」が「決まった(確定した)」拠出額を積み立てる年金制度であるため「個人型確定拠出年金」と呼ばれます。
日本では厚生年金や国民年金への加入が義務付けられていますが、それだけでは老後資金として不十分であることが多く、それを補うために位置付けられているとも言えます。
iDeCoは誰でも活用できる?
iDeCoは国民年金保加入者であれば、ほとんど誰でも加入できます。例えば、以下のような属性の人は問題無くiDeCoに加入できます。
- 国民年金第1号被保険者
- 個人事業主、フリーランス、学生(20歳以上)
- 国民年金第2号被保険者
- 会社員、公務員
- 国民年金第3号被保険者
- 専業主婦(主夫)
一方、以下のような属性の人はiDeCoに加入することができません。
- 20歳未満、または、60歳以上の人
- 国民年金保険料が免除されている人
- 農業者年金に加入している人
- 企業年金のうち、企業型確定拠出年金に加入していてiDeCoとの併用が認められていない人
2017年の法改正前までは一部の限られた人しか加入できませんでしたが、2017年の法改正により対象者が拡大し、20歳以上〜60未満の国民年金保加入者であれば、ほとんど誰でも加入できるようになりました。
専業主婦は要注意?
2017年の法改正で専業主婦(主夫)もiDeCoに加入できるようになりましたが、もし所得特税を支払っていない場合は注意が必要です。
(配偶者ではなく)加入者本人が税金を支払っていない場合は節税(所得税控除)の恩恵を受けられないため、iDeCoの手数料などを踏まえると、逆に損してしまう可能性があります。
加入から給付までの流れ
iDeCoの加入から給付までの流れは以下の通りです。
- 加入…個人で任意に加入する
- 拠出…掛け金を毎月積み立てる
- 運用…加入者が金融商品を選んで運用する
- 給付…60歳以降に受け取る
ちなみに、iDeCoの最大のメリットは「拠出」「運用」「給付」の全てのタイミングで税金の優遇制度が受けられることです。
iDeCoの概要は?
- 自分自身で自由に掛金を設定し60歳以降に年金として受け取る
- 59歳までは年金を受け取ることができない
- 自営業者、会社員などの属性により拠出限度額が変わる
- 個人事業主、学生等の第1号被保険者の場合
- 68,000円/月(816,000円/年)
- 会社員、公務員等の第2号被保険者の場合
- 12,000円/月(144,000円/年)〜23,000円/月(276,000円/月)
- 専業主婦等の第3号被保険者の場合
- 23,000円/月(276,000円/月)
- 個人事業主、学生等の第1号被保険者の場合
- 税制上の優遇処置(非課税制度)が充実している
- 拠出時…掛金が全額所得税控除になる
- 運用時…運用利益が非課税になる
- 給付時…受取額が非課税になる
- 投資信託や定期預金などを運用できる
iDeCoのメリットとデメリット
iDeCoは非課税制度が充実したとてもお得な制度です。
NISAやつみたてNISAと同じく「活用しないと損なレベル」とまで言われる数少ない制度の一つです。
iDeCoのメリット
例えば以下のようなメリットがあります。
- 所得税や住民税が安くなる
- 掛け金を積み立てるとその分が所得から控除される
- 運用中の利益にも税金が掛からない
- 本来、銀行預金の利息や資産運用による利益には20%の税金が掛かる
- iDeCoやNISAなどの非課税制度には20%の税金が掛からない
- 受け取り時にも税金が安くなる
- 一時金で受け取る場合
- 退職所得控除により課税額が軽減される
- 年金で受け取る場合
- 公的年金控除により課税額が軽減される
- 一時金で受け取る場合
- 積み立て金を持ち運べる
- 転職時や退職時にもiDeCo契約を継続できる
iDeCoのデメリット
一方、少なからずデメリットもあります。特に中途解約できないことについては、人によっては大きなデメリットになるため、iDeCoのもっとも大きなポイントとも言えます。
- 積み立て金は60歳まで中途解約できない
- 60歳まではお金を引き出すことができない
- 加入期間が10年に満たない場合は受け取り可能年齢が引き上げられる
- 手数料が継続的に掛かる
- 加入時手数料…2,777円〜3,857円
- 口座管理手数料…年間で2,004円〜7,404円
- 投資信託の手数料
- 信託報酬…保有期間中ずっと掛かる手数料
- 信託財産留保額…解約時に掛かる手数料
- 還付事務手数料…還付のたびに1,461円〜2,109円
- 給付事務手数料…1回につき378円〜432円
- 移管時手数料…0円〜4,320円
個人的には「多少、デメリットはあるものの、それを覆す程の税金面での優遇が大きいため、絶対に活用するべき」と思います。
ですが、繰り返しになりますが「60歳までは中途解約できない」ことは、もっとも大きなポイントなので、必ず理解しておかねければいけません。
加入期間 | 受け取り開始可能年齢 |
---|---|
10年以上 | 60歳〜70歳まで |
8年以上〜10年未満 | 61歳〜70歳まで |
6年以上〜8年未満 | 62歳〜70歳まで |
4年以上〜6年未満 | 63歳〜70歳まで |
2年以上〜4年未満 | 64歳〜70歳まで |
1ヶ月以上〜2年未満 | 65歳〜70歳まで |
iDeCoには加入した方が良い?
まず、長期的に資産を増やし続けるという意味では、ほぼ間違いなく加入するべきだと考えています。
ただし、もう少し視野を広げるとこのような意見も正しいと言えます。
- 収入額と支出額を踏まえ生活費を圧迫するならば加入するべきではない
- iDeCoに加入するような資金があれば若い間に自己投資をするべきである
これらの意見は人によって価値観が変わるため一概には言えません。
非課税に伴う恩恵は収入によって変わりますし、運用成績は実際に年金を受給するタイミングにならないと結果が分からないです。
ただ、やっぱり僕個人的には「結果的にはやっておいた方が良い人の方が多くなる」と考えています。
iDeCoとつみたてNISAの違い
iDeCoと良く比較される制度にNISA(つみたてNISA)があります。比較してみると以下のようになります。
iDeCo | つみたてNISA | |
---|---|---|
掛金上限額 | 属性により異なる | 年間40万円まで |
加入対象者 | 20歳以上〜60歳未満 | 20歳以上 |
金融商品 | 定期預金 貯蓄型保険 投資信託 | 投資信託 |
期間 | 60歳まで | 20年間 |
手数料 | 口座管理手数料 金融商品の手数料 | 金融商品の手数料 |
中途解約 | 原則不可 | 可 |
掛金控除 | 全額が所得控除 | 控除無し |
配当控除 | 運用利益が非課税 | 運用利益が非課税 |
給付金控除 | 一時金…退職所得控除 年金…公的年金控除 | ー |
iDeCoかNISA(つみたてNISA)かどちらかを選択しても良いですが、どちらもとてもお得な制度なので、資金に余裕があればiDeCoとNISA(つみたてNISA)の両方を活用しても良いと思います。
ちなみに僕はiDeCoとNISA(従来NISA)の両方に対して、上限額ギリギリまで運用しています。
なお、NISA制度の仕組みや注意点についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
iDeCoを始めるには
iDeCoに加入するには、まず「金融機関」と「金融商品」を選択することになります。
- 金融機関
- 口座管理手数料、信託報酬、商品一覧などを確認する
- 金融商品を選択する
- 元本確保型
- 定期預金、貯蓄型の保険商品など
- 投資信託
- 想定利回り、運用実績、目論見書の内容などを確認する
- 元本確保型
実際には「金融機関で口座を開設」してから「投資対象の金融商品を選択する」ことになりますが、僕の場合は、まず最初に金融商品を「ひふみ年金」にすることを決めて、その後に「ひふみ年金を購入するためにSBI証券に口座を解説する」という流れになりました。
投資信託が一番おすすめ?
iDeCoで運用可能な金融商品は、主に「定期預金」か「貯蓄型の保険商品」か「投資信託」の3種類です。
定期預金や保険商品でも多少の金利は付きますし、非課税分を考慮すると、iDeCoに加入するメリットはある程度ありますが、口座管理手数料などが掛かることを考えると、個人的には良い選択とは思えません。
せっかくiDeCoに挑戦するのであれば、是非、(元本割れのリスクはあるものの)3%〜5%程の運用利回りが見込める投資信託を選択するべきだと思います。
iDeCoで購入可能な投資信託には優れたものが沢山ありますよ!
加入手続きの流れ
加入手続きの流れは以下の通りです。
- 必要書類の取り寄せ
- 書類の記入・提出
- 個人型年金加入申出書
- 預金口座振替依頼書
- 本人確認書類
- 分配指定書
- 書類の確認、加入資格の審査
- 書類の受け取り
- 国民年金基金連合会から届く書類
- 個人型年金加入確認通知書
- 個人型年金規約・加入者の手続き
- 記録関連運営管理機関から届く書類
- 口座開設のお知らせ
- 国民年金基金連合会から届く書類
- 掛け金引き落とし、運用開始
加入手続きの書類には沢山の記入項目があったり、勤め先に対して記入や押印などをお願いする必要(法令で義務付けられている)があったりと、正直、面倒だと思うこともありますが、一通りの内容は理解しておくべきです。
分配指定で投資先を決定
また「運用資金でどの金融商品を購入するか?」を決めるための「分配指定」は必ずしておく必要があります。※僕の場合は「ひふみ年金に100%」です。
分配先を指定しておかないと、せっかくiDeCoを活用しているにも関わらず、金融機関側が指定した、クソみたいな定期預金を運用することになってしまいます。
状況に応じた運用指図
iDeCoを契約する際に決定した購入対象(金融商品)は任意のタイミングで変更が可能です。これを「運用指図」といいます。運用指図には以下の2種類があります。
- 配分割合(運用割合)の変更
- 今後、積み立てる掛金の運用商品の割合を変更すること
- 手数料は不要
- スイッチング
- 現在、保有している金商品を入れ替えること
- 手数料は不要だが信託財産留保額や解約控除額が差し引かれる(場合がある)
- 回数制限がある(場合がある)
- スイッチングが完了するまでに7営業日〜14営業日程掛かる(場合がある)
個人的には「iDeCoやつみたてNISAで採用されている投資信託は十分にリバランスされていることが多く、運用開始後に配分割合の変更やスイッチングは必要無い」と考えていますが、このような対応が必要だと考えるFPが多いことも事実です。
受給手続きの流れ
年金を受給するための手続きは以下の通りです。
- 受給権の確認
- 受け取り方法の検討、決定
- 裁定請求書の提出
- 裁定請求書
- 本人確認書類
- 退職所得の源泉徴収票・特別徴収票など
- 裁定(書類確認、支払いの決定)
- 運用商品の売却
- 給付金の受け取り
年金を受け取る際は以下の2パターンになります。
- 一時金で受け取る
- 退職所得控除が利用できる
- 年金で受け取る
- 公的年金等控除が利用できる
どちらの受け取り方でも、それぞれ控除が適応されるため、控除枠内であれば税金は掛かりません。
退職所得控除の計算方法
退職所得控除は勤続年数に応じて決まりますが、iDeCoの場合も同様で、加入期間が長い程退職所得控除の枠は大きくなります。
iDeCoで運用した資産を一時金として受け取る場合の計算方法は以下の通りです。
- 退職所得控除を計算する ※退職所得控除額の表を参照
- 加入期間20年までは1年毎に40万円控除
- 20年を超えると1年ごとに70万円控除
- 退職所得を計算する
- 退職所得=(退職による収入ー退職所得控除)✕1/2
- 税額を計算する ※所得税控除額(超過累進税率)の表を参照
- 所得税及び復興特別所得税=(退職所得✕所得税率ー控除額)✕102.1%
- 住民税=退職所得✕10%
勤続年数(加入年数) | 退職所得控除額 |
---|---|
20年以下 | 40万円✕勤続年数 ※iDeCoは加入期間 |
20年超 | 800万円✕(70万円✕(勤続年数ー20年)) |
課税対象額 | 税率(所得税) | 控除額 |
---|---|---|
~195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円超~330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円超~695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円超~900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円超~1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円超~4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
加入期間20年までは1年ごとに40万円、20年を超えると1年ごとに70万円控除される、少しでも長い期間加入することで退職所得控除額を増やすことができます。
年金受給時の注意点
iDeCoで運用した投資信託を年金として受給する場合はもう少し複雑になります。
まず大前提として「資産を年金として受け取る場合は運用状況によって年金額が増減する」ことになります。「分割取崩年金」とも呼ばれます。
一時金(退職金)として受け取る歳は給付事務手数料が1回だけで済みますが、年金の場合は資産を全部受け取るまで、「口座管理手数料」「信託報酬」「給付事務手数料」などがが継続的に掛かります。
また、年金の取り崩し方としては以下の2パターンがあります。
- 均等払い
- 資産を均等に受け取る方法
- 割合指定
- 年度ごとに割合を指定する方法
なお、年金として運用資産を受け取る場合、公的年金や企業年金と同様に「雑所得」として受け取ることになりますが、その年の公的年金や企業年金と合算して「公的年金等控除」を適応した上で受給することになります。
- 雑所得(年金受給額)を計算する ※公的年金等控除額の表を参照
- 雑所得=iDeCoや公的年金等の総収入ー公的年金等控除額
公的年金等の収入金額 | 公的年金等控除額 | |
---|---|---|
65歳未満 | 130万円未満 | 70万円 |
130万円超〜410万円未満 | (年金収入✕25%)+37万5000円 | |
410万円超〜770万円未満 | (年金収入✕15%)+78万5000円 | |
770万円以上 | (年金収入✕5%)+155万5000円 | |
65歳以上 | 330万円未満 | 120万円 |
330万円超〜410万円未満 | (年金収入✕25%)+37万5000円 | |
410万円超〜770万円未満 | (年金収入✕15%)+78万5000円 | |
770万円以上 | (年金収入✕5%)+155万5000円 |
「雑所得」は「総合課税」の対象に含まれます。所得税法では「利子所得」「配当所得」「不動産所得」「事業所得」「給与所得」「譲渡所得」「一時所得」「雑所得」の8種類の所得が「総合課税」の対象となります。
これらの総所得から「基礎控除」「配偶者控除」などの所得控除を差し引いた金額に所得税率(釣果累進課税率)を掛けることで所得税の金額を計算します。
受給直前に大暴落が起こったら
iDeCoでしっかり資産を運用し満足できる金額になったとしても、受給直前になってリーマンショック級の大暴落により資産が大きく減ってしまうこともあります。
ですが、このような場合も心配はいりません。
60歳以降〜70歳までの間は運用指図者として運用を続けられるため、仮に大暴落になったとしても、10年の期間があれば、ある程度、損失を取り返せる可能性が高いです。
受給直前に大暴落に遭遇し、受給額に満足できない場合は、受給開始期間を延長して、様子を見ることで被害額を軽減することが可能です。
iDeCoは最強の資産運用術
僕は「株式投資」「投資信託」「不動産投資」など、さまざまな金融商品を保有していますが、その中でもiDeCoによる資産運用が一番おすすめだと考えています。正しい金融商品を運用することで「税金の優遇制度を考慮すると元本割れする可能性が極めて低い」と言い切れると思います。
制度の性質上、運用期間は長くなり、それまでの間、お金を引き出すことができないことは大きな不安要素かと思いますが、近い将来に利用する予定の無い「余裕資金」があれば、(利息がほぼゼロである)銀行の定期預金なんかに金を預けるより、よっぽど正しい判断だと思います。
「年金を納めることは国民の義務」ですが「iDeCoの活用は国民の権利」だと言えます。
なお、この記事は、書籍「はじめてでもスイスイわかる! 確定拠出年金[iDeCo]入門」の内容をベースとして、僕なりの考え方をまとめてみました。ページ数は200ページ程と簡潔にまとめられていますが、iDeCoの仕組みや考え方、加入から受給までの具体的な流れなどが丁寧に解説された初心者でも理解しやすい内容になっています。
これからiDeCoを始めたい人にはとてもおすすめな本なので、是非、一度、読んで頂ければと思います。
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