賃貸経営を始める場合、資産家や親からの相続で無い限り、ほとんどの人が金融機関から融資を受けることになります。
そして金融機関には「その人のお金を貸しても良いのか?ダメなのか?」を判断するための融資審査があります。もし、その人がお金をちゃんと返してくれなかったら、その融資額は貸し倒れとなり、大きな損失になってしまうからです。
今回は金融機関から融資を受ける際の考え方や事前に準備することで、融資審査を有利に進められる注意点を纏めました。これから不動産投資を始めたい人には参考になる内容だと思います。
- 金融機関へ融資の依頼を申し込みたい人
- 金融機関へ提出するための関連書類や注意点を知りたい人
- 少しでも良い条件で融資を受けたい人
融資戦略は超重要!
金融機関に融資の依頼を申し込む場合、事前準備はとても大切です。例えば以下のような知識は知っているのと知らないのとでは融資条件や融資の可否に大きな影響を与えます。
- 融資を受ける際の紹介人の有無、紹介人の過去の経営実績
- 金融機関へ提出が必要となる資料
- 金融機関の融資が承認されやすい時期
当然ですが、融資が下りないと物件は購入できません。
当然ではあるのですが、意外と融資を軽視している家主(これから家主を目指す家主予備軍?)は多いです。
また、仮に融資を受けれたとしても希望している貸出金利や貸出期間での融資が実現できるかが変わってきます。
「貸出金利の1%なんてそれ程大きな違いは無い」と思うかもしれませんが、それは間違いです。
投資用物件の購入するために融資を受ける場合、その融資額は数千万円〜数億円になります。
融資額が大きくなれば、その分、貸出金利や貸出期間による返済総額は大きく変わります。
少しでも良い条件で融資を受けれるように最大限の努力をするべきです。
金融機関へのアプローチ
金融機関へのアプローチは融資を受けるための最初の一歩です。具体的な方法としては以下のような手段が考えられます。
先輩大家の紹介が一番
最も有効なのは新規の一見さんとして融資を申し込むのでは無く、既にその銀行を利用している先輩大家や関係者から紹介して貰う事です。
銀行側からしてもVIPなお客様の紹介者であれば、やはりその方もVIP対応です。
できれば、自分自信が優良顧客になれれば、それが一番良いのですが、それには投資規模が大きいことやある程度の必要になります。
契約規模を大きくしたり自分を将来性があるように見せかけるような振る舞いは、はっきり言って難しいです。日々、融資の審査に携わっている百戦錬磨のプロの銀行員からすれば、そのようなハッタリはすぐに見破られてしまいます。
不動産経営には人脈が大切と言われますが、その人脈は銀行で融資を受ける場合も例外ではありません。
融資の場合も大家同士の横の繋がりが影響する事はとても自然なことです。金融機関に紹介してもらうために「人脈を作る」のはイメージが悪いと思われるかもしれません。ですが、紹介人の有無でその後の投資家としての成功が大きく左右するのも事実です。
普段から先輩大家と関われるような人間関係を確立することが大切です。関西の場合だと「がんばる家主の会」のような、大家さんのコミュニティに所属することも有効です。
不動産会社のパイプは信用できる?
まだ物件を所有していなかったり、事業規模がそれ程大きく無い段階では、取引のある金融機関は少ないはずです。その場合は販売元の不動産会社から金融機関を紹介してもらうことになります。
不動産販売会社としては「自社は○○金融機関と関係性が深いため○○金融機関がおすすめです」と言われるかもしれませんが、総融資額が数千万円〜数億円程度であれば、金融機関からすれば「ただの一般的な顧客のひとつ」に過ぎません。
その場合は自分の力で金融機関を探した方が良い融資を引くことができるかもしれません。
不動産会社である以上、どこかの金融機関と繋がりがあるに決まっていますが「優良顧客として認識されているか?」は別問題です。会社の規模や総融資額(物件戸数やお客様の人数)などを確認し、本当に優良顧客として扱われているのかは考えなければいけません。
また、可能性は極めて低いですが、もしその不動産業者が過去に「エビデンス改ざん」のような偽装工作をしていて、それが金融機関にバレてしまっていた場合、その不動産業者は出入り禁止になっているはずです。もし過去にこのような不祥事 を繰り返しているような業者であれば、金融機関との関わりが乏しい可能性もゼロではありません。
具体的な偽装工作の手口は書籍「現役融資担当者がかたる 最強の不動産投資法」に具体的に解説されています。他にも不動産業界の裏側が分かりやすくまとめられているため、興味のある方には是非おすすめの書籍です。
最初は一本の電話から
もし知人や販売会社からの紹介が得られなかったり、より良い条件の金融機関を開拓した場合、まずは電話で融資担当者に対して、融資審査を依頼します。
この時に融資基準や融資姿勢などを確認できれば、今後の対応がスムーズになりますし、もし自分にとって融資の基準が高すぎたり、融資に対して消極的な金融機関であれば、早いタイミングで候補対象として外せるので、融資元を効率的に選別できます。
訪問時の準備資料は?
金融機関に融資依頼のため訪問する場合、何も準備をせずに出向いてしまうと、その後の処理が非効率になりますし、貴重な時間を作ってくれた担当者にも対してもマイナスな印象を与えます。
提出書類を準備するメリット
金融機関に融資依頼のため訪問する際は、提出を求められる可能性がある資料を準備することで以下のようなメリットがあります。
- 融資審査のための期間が短縮される
- 提出依頼があっと後に資料を準備しているようでは対応が後手後手になる
- 属性評価が高くなる
- 事前に資料を準備しておくことでビジネスマンとしてプラス評価になる
どれも単純な話ですが、意識するのとしないのでは大きな差があります。特に人気物件の場合、数日間での準備の遅れで、他の家主に購入されてしまうことも考えられますし、訪問時からしっかりと準備をしていくことで「真剣に物件を購入したい」つまり「本気で融資を受けたい」前向きな姿勢が伝わります。
必要な提出書類
提出を求められそうな資料は基本的にどこの金融機関でも同じなので、一度、準備してしまえば、今後、別の金融機関に融資の依頼をする際も効率良く出向くことができます。
具体的にはには以下のような資料を準備します。
- 物件資料
- 物件概要書、レントロール
- 法務局資料(登記簿謄本、構図、地積測量図、建物図面等)
- 売買契約書(契約締結の場合)、固都税明細(または固定資産評価証明書)
- 融資評価依頼書
- 希望融資額、希望融資期間、借入主体(個人または法人)等を記載
- 本人確認資料
- 経歴書、金融資産一覧表、身分証明書
- 源泉徴収票および確定申告書(直近3年分)
- 住宅ローンの返済予定表
- 配偶者(連帯保証人)資料
- 身分証明書
- 源泉徴収票および確定申告書(直近3年分)
- 所有物件情報(既に所有物件がある場合)
- 保有物件情報、レントロール
- 登記簿謄本、固都税明細(または固定資産評価証明書)
- アパートローン(投資マンションローン)の返済予定表
- 法人登記簿謄本、決算書(直近3期分)
もし他にも追加で提出を求められるとしたら「事業計画書」や「収支シュミレーション」などが考えられます。
僕の最初に投資用物件を購入した際は、最新の源泉徴収票のみの提出を求められましたが、金融機関などによっては過去3年分の提出が求められる場合もあるそうです。
なお、金融機関に対して事前に準備するべき資料については「初心者から経験者まですべての段階で差がつく!不動産投資 最強の教科書」にとても詳しく書かれていました。著者は楽待コラムニストとしても活躍されている「鑑定士×投資家」さんなので、とても読みやすい内容にまとめられています。
訪問時のタイミングは?
銀行の融資スタンスはタイミングにより多少変化することがあります。
同じ属性で同じ物件であるにも関わらず、融資が下りる場合と下りない場合があります。
金融機関により判断基準や重要視するポイントが違うのは分かりますが、面白いことに、同じ金融機関でも時期によってそのようなことがあります。
融資が緩むタイミング
一般的に金融機関の融資が緩むタイミングは以下の時期と言われます。
- 決算期末(3月)
- 半期末(9月)
- 四半期末(6月、12月)
ただし、実際には融資の承認が降りるのに少し時間が掛かるため、決算期末、半期末、四半期末の一ヶ月程前に融資の依頼をすると良いと思います。
融資承認に影響を与える例外ケース
ただし、決算期末、半期末、四半期末のタイミングで融資の依頼をすれば必ず承認が降りる可能性が高くなるとも限りません。例えば以下のようなケースも想定されます。
- 景気動向により融資スタンスが変わる
- 2019年は「かぼちゃの馬車とスルガ銀行不正融資」問題により融資は厳しい
- 金融機関側の内部事情
- 金融機関の基本方針の転換
- 担当者(支店長・審査部長など)の配置替え
- 決算期末目標の達成が難しい場合
- 12月~3月頃でも融資基準が緩くなる
- 既に目標が達成された場合
- 次期のノルマを達成するために目標額以上の融資を控えることもある
- 新規顧客として融資の依頼をする場合
- 期初の閑散期である4月または10月頃の方が時間に余裕がありスムーズになる
融資基準に絶対は無いため、一概には言えませんが、元金融期間の方からもこのような内部事情を伺うことがありました。
どの支店に出向くかも重要
意外かもしれませんが、実は「どの支店に行くか?」はかなり重要です。
例えば「三菱UFJ銀行」「三井住友銀行」「みずほ銀行」のようなメガバンクで融資を受けようと考えた場合、どこの支店に出向いても審査結果が同じになるかといえばそうではありません。
例えば大阪の中心地である梅田やなんば周辺の法人向け店舗の場合、主に法人顧客向けの融資業務が多く、個人の小規模な融資業務は引き受けてもらいずらい傾向にあります。
一方、周辺に法人が少ない小規模な個人向け店舗の場合、中小零細企業や個人を相手とした融資業務が中心になるため、積極的に対応してくれる可能性が高いです。
融資の承認は分担されている
融資に対する承認の流れについては、一人の担当者に権限が集中することで独断での融資の許可を出させないため、各担当者ごとに権限が分離されています。
そのためゴールデンウィークやお盆休みのような長期休暇の時期になると、銀行員もタイミングをずらしながら休暇を取るため、担当者ごとの承認処理が進まず、必要以上に時間が掛かってしまう場合もあります。
ちなみに銀行員は金融庁の指導により年間で1度は長期休暇(一週間の休み)を取得する事がルール化されています。
あくまで噂レベルですが、休んでいる間に不正のチェック(場合によっては金融庁などによるガサ入れ?)などが行われたりする事もあるそうです。
優秀な営業担当が好条件の融資に繋がる
融資についての話などを進める場合、決まった営業担当者が相談(ヒヤリング)や対応する事が一般的です。出来れば優秀な営業担当者に対応して頂きたいですが、銀行側も「大切なお客様」に対して優秀な人材を割り当てたいはずです。
逆に余り優秀では無い営業担当の場合、融資条件が悪くなるだけでは無く、対応の遅れがそのまま機会損失に繋がってしまうかもしれません。
ただ紹介なら何でも良いのでは無くて、出来れば優秀な営業担当者に対応されている優秀なお客様に紹介してもらう事です。
冒頭でもご説明した通り、小規模経営のフェーズでは、優良な融資条件を獲得するためには、優良な人脈が不可欠になります。
優良顧客として認められるには
何を基準に「大切なお客様」とするかは状況によりますが、主に以下のようなことが考えられます。
- 情報や書類を遅延なく速やかに提出する
- 堅実で誠意のある対応をする
- 契約の規模(融資額)が大きい
- 将来性があり今後も長期的な付き合いが期待できる
- 金融機関側にとってメリットがあり利益に貢献できる
ここで重要なのが、少し言い方は悪いですが…「担当者に恩を売る」ことです。
例えば担当者に勧められた金融商品を購入することは効果的です。金融機関では以下のようなさまざまな金融商品を取り扱っています。
- 定期預金、積立預金
- クレジットカードの作成
- 投資信託、生命保険、外貨建金融商品
ですが、銀行などで取り扱われている金融商品は、はっきり言って優良なものは少ないです。
ですが、担当者の売上に貢献するつもりで、あえてこれらの金融商品を購入することで、信頼関係は蓄積されるものです。
金融商品の運用成績自体はそれ程期待できませんし、もしかしたら多少のマイナスになってしまうかもしれません。ただ、仮にマイナスになったとしても、その僅かな犠牲で優良な融資を受けることができれば、そんなマイナス分なんて一瞬で回収できます。
融資を受けれないと何も始まらない
投資用物件を検討する時は、同時に「この物件なら融資してもらえるかな?」という考え方は常に必要ですし「その上でどのような準備をする必要があるか?」は視点は大切です。
自分では「この物件は儲かる!」と確信してても、金融機関がお金を貸してくれないのでは手が出ないです。
不動産融資に積極的な金融機関
不動産の世界には融資に積極的な金融機関がいくつか存在します。例えば以下のような金融機関が挙げられます。
- スルガ銀行
- 静岡銀行
- オリックス銀行
- 日本政策金融公庫(公庫)
勿論、メガバンクなどで融資を受けられるのであれば、その方が融資条件は良くなる傾向になりますが、もし潤沢なキャッシュフローが期待できるのであれば、多少、金利が高かったり、返済期間が短くなったとしても、積極的な金融機関に融資を依頼するのも有効です。
自分自身が優良顧客に
優良な条件で融資を受けるためには「自分自身が優良顧客」として認められる必要があります。そのためにはやはり「個人の実績」が必要であり、それを証明するには以下の項目を少しずつ増やしていく必要があります。
- キャッシュフロー
- 純資産
- 個人の属性
また、逆に「融資に不利になってしまう要因」も意外とたくさんあったりします。
小手先のテクニックは意外と重要?
個人の実績は大切ではありますが、それは一朝一夕では良くならないですし、家主としての経験もやはり少しずつ時間を掛けて成長していくものです。
残念ながら、そう簡単に結果は出ないのです。
ですが「必要な準備資料」や「融資を受けるタイミング」などは知っているか?知らないか?だけの問題です。
つまり「小手先のテクニック」で改善できる訳です。
「小手先」と聞くと余り良い印象を与えないですが、投資規模を拡大していくためにも、使える武器は何でも使うべきです。頑張っていきましょう。
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