賃貸収入を得て不労所得を稼ぎたいと考える人は多いと思います。最近では一般の会社員が不動産投資で成功し、セミリタイア生活(早期退職)する話題も珍しくなくなってきました。
とても夢のある話ですね。
その一方で「勤め先の会社に自分が賃貸経営をしていることがばれたらどうしよう?」と不安を感じる人も多いはずです。
結論を先にお伝えすると「賃貸経営がばれる原因は住民税の金額の差異」です。
賃貸経営や副業収入があると、その分、納税するべき所得税や住民税が高額になるのですが、それが理由でばれてしまうのです。
そして、その解決方法は「住民税の支払方法を普通徴収に変更すること」です。
この記事では主に税金関係の話を中心に「会社に副業収入がばれてしまう仕組み」について解説します。「これから不動産投資に挑戦はしたいけど、税金の仕組みがいまいち分からない」という方には参考になる内容だと思います。
- 副業規定の考え方について知りたい人
- 会社にばれずに賃貸経営をしたい人
- 賃貸経営以外の副業収入にも挑戦したい人
会社員は副業したらいけない?
そもそも会社員(サラリーマン)や公務員は副業をしてはいけないのでしょうか?
まず、憲法では「職業選択の自由」があります。
勿論「一人の人間は一つの仕事しかしてはいけない」なんてルールはありません。
また2018年には厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」の「モデル就業規則」から「副業禁止」の文言が削除されています。
今後、日本全体としても「一つの会社に依存するのでは無く自ら副収入を得ることの必要性」が強まっていきます。
ですが、ですが…
残念ながら現時点では多くの企業で副業規定が定められているのが実情です。例えば、副業規定が定められる主な理由には以下のようなものがあります。
- 本業に支障を与えないか?
- 情報漏えいに繋がらないか?
- 自社の管理配下以外で何かトラブルにならないか?
- 副業が理由で自社が社会的な信用低下に陥らないか?
中でも最も一般的な理由は「本業に支障を与えないか?」です。
余り無責任なことは言えませんが…逆に言えば「本業でしっかりしたパフォーマンスが出せていれば多少のことは目をつぶる」なんてところも(特に中小企業では)意外とあります。
社内規定と公務員法
基本的には、会社の社内規定(就業規則)に「副業禁止」が規定されているかがポイントになります。ですが、その場合でも「自ら事業を起こすこと」や「会社に申請をせずにアルバイトをすること」などがNGだとしても「株式投資」や「不動産投資」が規定されることはまず無いはずです。
少なくとも、株式投資がダメな会社なんて聞いたことがありませんよね?
一方、公務員の副業規定は一般的な会社員と比べて厳しいです。
明確に「副業規定」という文字は使われていませんが、国家公務員法や地方公務員法では主に以下のように定められています。
- 営利目的としての事業の禁止
- 精神的、肉体的に本業に支障を与える行為の禁止
それでは「公務員は株式投資や積立投資もできないのか?」というと、そんなことはありません。こちらも会社員同様、特に問題は無く、公務員の場合も一定の規模の不動産投資であれば「事業」とは判断されないため、国家公務員法や地方公務員法に抵触することはありません。
社内規定は要チェック
基本的に賃貸経営が副業として判断される可能性は極めて低いですが、どの程度のレベルであれば事業的規模であると判断されるかも、(最初のうちは不要かもしれませんが)予め確認しておきましょう。
賃貸経営の場合、一般的に「5棟10室」が事業的規模だと言われますが、あくまで目安であり、厳密な基準ではありません。
いずれにしても勤め先の社内規定は理解しておくべきです。
万が一、不動産投資が社内規定で明確に禁止されている場合はその後の方針も変わってきます。変わってくる…と言っても「最悪の場合、クビを覚悟で挑戦するか?」「怖気付いて諦めるか?」の2パターンですが…
どこの会社でも社内規定は一般社員でも閲覧できる状態になっているはずですし、総務部や管理部に問い合わせれば、情報は得られるはずです。
中には「相続などにより実家の物件を引き継ぐことは問題無いが、自分で新規で物件を購入して賃貸経営を始める場合は許可申請が必要」のような会社ごとに独自のルールがあるかもしれません。
当初は居住用の住宅として購入したものの、転勤になってしまい、その間、賃貸に出す人もいるでしょう。
「面倒臭い」「調べても良く分からない」という人もいるかもしれませんが…
正直、その場合はそもそも賃貸経営や副業は向いていないかもしれません。
社内規定や自社の副業規定が理解できないレベルでは、はっきり言って賃貸経営やその他の副業で成功することはちょっと難しいです。
少し難しく感じるかもしれませんが、いざという時に自分の身(権利)を守るための大切な知識です。全て理解するのは難しいかもしれませんが、副業に関する部分だけでも、是非、頑張って調べてみて下さい。
人間関係に配慮する
会社員にしても公務員にしても、余程、大規模では無い限りは、不動産経営をしても良いことが分かりました。
ですが、それはあくまでルール上での話です。
その上で「会社に賃貸収入を得ていることは伝えても良いか?伝える必要は無いか?」と考えるかもしれませんが、はっきり言って、伝える必要は無いと思います。
仮に賃貸経営が順調で一定の家賃収入を得ることになったとして、それを知った上司や先輩はどのように感じるでしょうか?
表面上は「全然、気にしない」「仕事は仕事、投資は投資」と言ってくれるかもしれませんが、内申、不満に感じる人は多いはずです。僕の肌感覚としては、株式投資はともかくとして、不動産投資については、余り良い印象を持たない人も一定数います。
最悪の場合、人間関係が悪化したり、人事評価に影響が出ないとも言い切れません。
また先輩や同僚に対して賃貸経営の話題を持ちかけたり、何か相談をしたとしても、恐らく基調な意見が得られる可能性は低いです。
勤め先の会社に対して、不動産収入を得ていることを伝えるのは、百害あって一利なしだと言い切れます。
例え、ルールとして不動産投資が問題視されていなかったとしても、何かトラブルなどがあった時に、それを理由に不利な立場に立たされることもあるかもしれませんし、僕個人的には可能な限り、会社の同僚には伏せておいた方が良いと思います。
賃貸経営が会社にばれる仕組み
前置きが長くなりましたが、いよいよ本題です。
賃貸経営が勤め先の会社にばれてしまう理由としては主にいかのようなものがあります。
- ついつい同僚に話してしまう
- SNSやブログで情報を発信しばれてしまう
- 経理担当が住民税を計算する過程でばれてしまう
当然ですが、賃貸経営に関わらず、副業などにより収入が増えると、それに伴い支払うべき所得税や住民税が増えてしまいます。
確定申告は必ず提出
確定申告とは個人の1年間(1月1日から12月31日)の所得に対して、国に納付するための税金を計算して税務署に申告する手続きのことです。
また申告とあわせて計算した税金を収める必要があります。
確定申告の提出期限は所得が確定した翌年の2月16日から3月15日の間で、この間に作成した確定申告書と計算した税金(納付金額)を支払うことになります。
給与所得者の場合でも所得が2,000万円を超えていたり、その他の所得(不動産所得や事業所得)などが年間20万円以上ある場合は確定申告が必要になります。
つまり会社員でも会社員以外でも不動産所得がある場合は必ず確定申告が必要になる訳です。
もし不動産収入やその他の副業収入があるにも関わらず、確定申告を提出しなかったり、過少申告が発覚した場合は、厳しいペナルティが課せられます。「小規模の経営であればわざわざ申告しなくてもばれないだろう」と思うかもしれませんが、税務署側の情報収集能力はとても優秀です。
また不動産収入があるにも関わらず、もし確定申告をしなければ、勤め先の職場に副業分の通知が送られることもあります。最悪ですね…
賃貸経営をする以上、確定申告は必ず提出する必要があります。
なお、コロナウイルスの影響により、2019年度分の確定申告に限り、申告期限が2020年の4月16日(木)までに延長されました。
- 所得税の確定申告期限
- 2020年3月16日(月)→2020年4月16日(木)に延長
- 消費税の確定申告期限
- 2020年3月31日(火)→2020年4月16日(木)に延長
※「青色申告申請書の提出期限」や「贈与税の申告期限」については、特に申告期限の延長は無く、2020年3月16日(月)のままです。
確定申告のポイント
会社員が労働者として収める税金には、主に所得税と住民税があります。
- 所得税
- 毎月の給与支払い時に収入額をもとに概算額が計算される
- 正式な確定額は年末調整や確定申告によって決定される
- 税率は収入額をもとに超過累進課税によって計算される
- 住民税
- 前年分(1月1日〜12月31日)の所得を基準をして計算される
- 税率は収入額には関わらず概ね10%程になる
所得税も住民税も給与から天引き(源泉徴収)されるという点では同じです。
ただし、所得税は月々の給与が確定するタイミングで概算額が算出されますが、住民税は前年度の収入を基準に算出され、翌年の給料から差引かれる事になります。
普通徴収と特別徴収
住民税の納め方には「普通徴収」と「特別徴収」の2種類に分けられます。
- 普通徴収
- 給与所得分の住民税は会社経由(給与からの天引き)で住民税を納税する
- 副業収入(不動産収入など)分は自分で住民税を納税する
- 特別徴収
- 会社経由(給与からの天引き)で住民税を納税する
一般的には会社員の住民税は特別徴収です。
そのため特別徴収のままだと勤め先の経理担当者は「あれ?去年の○○さんの給与は○○万円のはずなのに、何で住民税がこんなに高いの?」というふうに不信に思われてしまいます。
その解決方法は住民税の納税方法を普通徴収にすることです。
納税方法を普通徴収に変更すると、住民税を自分で支払うことになるため、勤め先の経理担当者に気付かれることはありません。
住民税の納税方法を特別徴収から普通徴収へ変更するのは簡単で、確定申告書の住民税の支払い方法を「自分で納付」を選択するだけです。
そうすることで給与分についての住民税は通常通り給与から天引き(源泉徴収)され、副業分だけ役所が別口に計算して自宅に納付書を送ってくれます。
赤字経営の場合は注意が必要
賃貸経営の収益が赤字収益の場合は注意が必要です。
「賃貸経営をしているのに赤字になるなんてありえない」と思う人もいるかもしれませんが、物件購入から数年間は不動産収支が赤字になることは普通にあります。
特に投資用物件を購入した年には必要経費として計上できるお金が沢山あるため、築浅の物件であればむしろ赤字になります。
- 購入時に必要となる経費
- 印紙税
- 登録免許税
- 司法書士への報酬
- 不動産取得税
- 購入後に必要となる経費
- 減価償却費
- 固定資産税・都市計画税
- ローン手数料、ローン保証料
そして、これらの経費を計上し赤字収益になった場合、住民税は安くなります。
先程、住民税の納税方法を「普通徴収」にすることで、不動産収入分の住民税は自分で納税することができると説明しましたが、もし不動産の収益がマイナスの場合は、給与所得分と相殺された住民税を会社経由で納税されるため「あれ?去年の○○さんの給与は○○万円のはずなのに、何で住民税がこんなに安いの?」というふうに疑問を持たれるかもしれません。
先程の逆のパターンですね。
もし赤字経営になってしまい、それでも副収入(この場合はマイナスだけど)がばれることを防ぎたい場合は、確定申告の経費計上を工夫してどうにか黒字経営として申告できないか検討しましょう。
どうしても難しい場合は、費用は掛かりますが税理士に相談する方が無難です。
税務の知識は必要
税理士の指示通りに確定申告書を提出すれば安心できます。心配であれば税理士に確定申告の作成を依頼することも検討しましょう。
これは不動産投資だけでなく、その他の投資やアフェリエイトなどの広告収入の場合も使える方法なので、覚えておいて損はないです。
ただ、インターネットなどでは普通徴収にすれば、ばれずに済むと言う内容が出回っていて、それを十分に確認せずに安易に進めた結果、副業がばれてしまったと言う方も少なからずいるようです。
会社を解雇されても大丈夫と言える程の収入があるならともかく、不動産収入が稼げていない時点で、会社に居づらくなったり解雇されてしまえば、楽しい不動産投資が一気に地獄行きです。
せっかく調査に調査を重ねて不動産投資をするのであれば、最初のうちは確定申告の仕組みも正しく理解して、できればプロの税理士に支援してもらいながら進めた方が無難です。
副業が解禁されてからだとダメなの?
この先、日本の終身雇用制度や年功序列制度はどんどん崩壊していきます。
日本を代表するような上場企業でさえ次々と早期退職者の募集を発表しています。
また、それと平行して個人の副業も徐々に解禁されていきます。
そう聞くと「副業が解禁になってから始めよう」と考える人もいるかもしれません。当然、その方が安心できますからね。
ですが「禁止されているから挑戦しない」「トラブルは避けたいので安全な手段しか選ばない」のは、無難ではあるものの、最大の成果を目指す上では足かせになります。
勿論、法律違反や社会的に許されない行為はしてはいけませんが、そのような安全志向な考え方だけでは「例え副業規定に抵触したとしても絶対に実現したい!」と考えている人には勝てません。
自分が本当に挑戦したいことであれば「どの方法なら実現できるか?」「何か抜け道や打てる手は無いのか?」など、さまざまな方法を模索することで知識が付き、それが自分の武器になるのです。
副業規定の厳しさやルール違反を犯した場合のペナルティは会社ごとに変わりますし、人それぞれ事情があると思いますが、何かに取り組むにはリスクは付き物です。
安全な環境を待ち続けるだけで5年も10年も時間を無駄にしてしまうのは、余りにももったいないです。
若干、感情論になってしまいましたが、自分にできることから少しずつ情報収集していけば良いと思います。
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