賃貸経営の最も有名なリスクは空室です。
ただし、それ以上に大きな問題として「家賃の滞納問題」があります。
空室問題と比べると発生頻度としては全然低いですが、万が一、家賃滞納が発生したらとても大変な事態になります。
いつの時代でも家賃を滞納してしまう入居者は一定数存在します。
今回は家賃滞納トラブルについて簡単に纏めました。
- 家賃滞納トラブルを未然に防ぎたい人
- 家賃滞納トラブルの影響を知りたい人
家賃滞納トラブルに陥ったらどうなる?
もし入居者が家賃を滞納し、回収ができなくなってしまうと賃貸経営に大きな影響を与えます。
- 家賃が回収できない
- その期間の家賃収入を得ることができない
- 滞納者と連絡が取れなければ賃貸借契約の解除が難航する
- 滞納者の荷物が部屋に残り続ける
- 次の入居者を募集することができなくなる
- 最終的には裁判で争うことになる
- 必要に応じて弁護士を雇う必要がある
そのため、万が一、家賃滞納トラブルに遭遇してしまうと、空室とは比べ物にならない程の大きなマイナス要因になってしまいます。
家賃滞納トラブルの予防策は
家賃滞納のトラブルにあわないためには、主に以下のような予防策があります。
- 入居審査を厳しくする
- 収入や勤続年数などを考慮する
- 万が一、家賃滞納が発生した場合の処置を明記する
- 連帯保証人や緊急連絡先として家族などの連絡先を取得しておく
- 家賃保証会社を契約する
- 家賃保証会社と契約すると滞納金を保証会社が肩代わりしてくれる
- 滞納保証期間が定められていることがあるため注意が必要
- 必ず銀行口座からの自動引き落としにする
- 入居者がうっかり振込みを忘れるような環境を作らない
- 生活保護の場合、直接振り込まれるような仕組みにする
ただし入居審査を厳しくしたり、連帯保証人の確保を必須とすると、入居のためのハードルが上がってしまい、入居者が決まらない(つまり空室が継続する)期間が長期化する恐れもあります。
家賃滞納が発生した場合の対応
予防策を徹底することで、家賃滞納トラブルを抑えることはできますが、それでもどのような理由で家賃滞納が発生するかは分かりません。
つまり家賃滞納トラブルを完全に防止することはできないのです。
それでは実際に家賃滞納が発生した場合はどのような対策が可能でしょうか。
それは「とにかく迅速に対応」することです。
具体的には家賃の入金が一日でも送れたら、すぐに確認を取り、事情を伺います。対応方法としては主に以下のような順番になります。
- 1日でも家賃滞納が発覚したら速やかに対応する
- 数日間、様子を見るようなことはしない
- とにかく迅速に家主側から第一報する
- 家賃滞納者に連絡を取り家賃支払いの意思確認をする
- 期日を明記した支払い確約書を記載してもらう
- 必要に応じて連帯保証人や家族へも連絡する
- 改めて滞納者の給与明細等の経済状況を把握しておく
- 部屋の明け渡し請求の訴訟手続きを行う
- 内容証明郵便をもとに家賃支払い請求や賃貸契約の解除を要求する
- 通達の実績を記録(エビデンス)として残す
- 裁判所に対して公示送達の申し立てをする
- 宛人の住所不明時に裁判所で掲示することで送達効果が生じる
- 少額訴訟、または支払督促を簡易裁判所へ申立てる
- 少額訴訟は請求額は60万円以下になるが即日判決となる
- 支払督促は送達後2週間が経過すると仮執行宣言が可能となる
- 裁判結果をもとに強制執行を申立てる
少し大袈裟のように感じるかもしれませんが、対応が後手に回れば、その分、被害もリスクも大きくなります。的確な対応が求められます。
入居者に歩み寄り解決策を模索する
まずは入居者に連絡を取り、家賃を払う意志があるか?どのような問題点があるのか?などをヒヤリングします。
もし家賃を支払う意志がある場合は、可能な限り歩み寄って現実的な落とし所としてどのような対応が可能かを検討することになります。
入居者の状況や経済事情などを考慮し、場合によっては連帯保証人にも呼びかけ、関係者を含め、解決策を模索します。
連帯保証人に滞納分の家賃や原状回復費を請求できるのであれば、問題はありませんが、もし連帯保証人も含めて、家賃や原状回復費を支払う意志が無い、または経済的な理由で家賃を支払うことができない場合は苦労することになります。
自力救済は許されない
仮に、入居者が家賃を返済する意志が無かったとしても、それを理由にすぐにに退去させる(追い出す)ことはできません。
いくら家賃を滞納しているとしても法律で保護されているのです。
また、以下のような強硬手段は「自力救済」として、日本では住居侵入罪、不動産侵奪罪、窃盗罪のような不法行為とみなされてしまう可能性があります。
- 部屋の鍵を交換し室内に入れなくする
- 契約している以上は不動産略奪罪になる可能性がある
- 鍵の交換のため室内に入っていれば住居侵入罪にもなる
- 力尽くで追い出したり、朝夜問わず、頻繁に家賃の回収に訪れる
- 張り紙などの嫌がらせや職場に出向くなども権利侵害になる可能性がある
- 悪質な場合は恐喝や威力業務妨害罪になる可能性もある
- 入居者の所有物を無断で撤去処分する
- 逆に住居侵入罪や窃盗罪になる可能性がある
- 所有物に高級品が含まれていた場合は膨大な損害賠償になる恐れもある
以下のように一部、常識的な(限度を超えない)範囲内で、例外的に許されるケースもありますが、基本的には自力救済は法律違反であるため認められません。
- 権利に対する違法な侵害に対抗して現状を維持することが不可能な場合
- 緊急やむを得ない特別の事情が存する場合
こっちはお金を回収したいだけなのに、逆に訴えられて損害賠償請求を受ける可能性もあります。
万が一、処分した所有物の中に高額なモノが含まれていたりすると、膨大な損害賠償額になってしまう恐れもあります。
感情的には納得がいかないことも多いはずですが、もし自力救済で訴えられた場合、家主側が裁判に勝てる可能性は極めて少ないと言えます。
内容証明郵便とは
また内容証明郵便には以下の項目を記載するのが一般的です。
- 滞納家賃の金額、支払期限、振込先の情報
- 支払い先の住所、または、銀行、支店、口座情報など
- 期日内に支払われなかった場合の処置
- 基本的には賃貸借契約の解除する旨を記載
また、内容証明郵便を送付することで「〇年〇月〇日に誰から誰宛にどのような通達をしたかを記録として残す」ことができます。これにより「そんな通達は受けていない」「手元には届いていない」と言うような言い逃れを防げます。
契約解除後に退去を促す
入居者や連帯保証人などの関係者を交えて、問題が解決できれば良いのですが、仮に連帯保証人と連絡が取れたとしても、連帯保証人にできることは「滞納金を保証すること」であって、賃貸借契約を解約する権利は持っていません。
それが難しい場合はどのように対応するのが正しいのでしょうか?
家主側としては「家賃を回収すること」は大切なのですが、それ以上に大切なのは以下の2点です。
- 賃貸借契約を解除する
- 部屋を清掃し次の入居者を募集する
勿論、家主として家賃を回収できないことは、大きな痛手なのですが、それと同じくらい(場合によってはそれ以上に)、空室(未収入期間)が続くことによる機会損失の方が、経済的には大きなマイナスになります。
未回収の家賃は退去後にでも回収できる可能性がありますが、空室期間(家賃収入が発生しない期間)は二度と戻って来ません。まずは滞納者に退去してもらうことを最優先に考えるべきです。
裁判結果をもとに強制執行
どうしても契約を解除できない場合は、残念ながら、最終的には裁判を行うことになります。
そして、その裁判結果をもとに強制執行になります。
それでも、最悪の場合、半年以上の期間が費やすことになりますし、当然その間の家賃収入は入ってきません。
裁判費用も滞納者に請求したいところですが、そもそも家賃を滞納するような経済状況なので、十分に費用を回収できる可能性は低いです。
同じ家賃対応問題でも、入居者と連絡が付き、迅速な対応ができる場合と、長期間、連絡が取れず、部屋を賃貸に出すこともできず、ずっと空室期間になってしまうのとでは、経営に与える影響が比べ物になりません。
公正証書による強制執行
通常、裁判の判決によって、強制執行に踏み切ることになりますが、もし公正証書によって賃貸借契約書を作成していた場合は、裁判を行わずに強制執行が可能です。
さすがに入居前の段階で公正証書による賃貸借契約書を作成するのは難しいですが、もし家賃滞納が発生し、将来的に強制執行に繋がりそうな場合は、早いタイミングで公正証書を作成するのも有効です。
夜逃げ問題に発展させないために
家賃滞納を長期間継続させ続ける入居者の次の行動パターンとしては、主に以下の2パターンに分けられます。
- そのままずっと居座ってしまう
- 催促や督促にストレスを感じて夜逃げしてしまう
家賃をずっと滞納した状態でそのままずっと居座られてしまうのも大変ですが、それ以上に対応に困るのが夜逃げです。
もし夜逃げされてしまったら、そもそも連絡や意思疎通さえできなくなってしまうかもしれません。
逆に言えば、家賃を滞納し続けているものの、コミュニケーションさえ取れる状態であればいろいろと打開策は見つかるのです。
家賃滞納は夜逃げの前触れとも考えられます。
例え、回収できな家賃があったり感情的に不満を感じる状況だとしても、とにかく(場合によっては採算度外視で)早急に解決することが大切です。
ちなみに、夜逃げに遭遇した場合の対応や被害を軽減するための情報については以下の記事で分かりやすく解説しています。もし良かったら、あわせて読んで頂ければと思います。
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