継続融資を実現するための決算書作成の基本的な考え方

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不動産投資を成功させるためには、金融機関からの融資をいかに有利に引き出すかが極めて重要です。融資の可否や条件は、投資規模の拡大や資産形成のスピードに直結します。

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不動産投資家が知るべき決算書の重要性

金融機関が融資を判断する際に最も重視する資料の一つが「決算書」です。決算書は単なる税務申告のための書類ではなく、投資事業の健全性、収益性、そして将来性を示す羅針盤となります。

不動産投資における銀行融資の役割とレバレッジ効果

不動産投資において、自己資金だけで次の投資資金を貯めるには多大な時間を要します。ここで金融機関からの融資を活用する「レバレッジ効果」が、投資規模の拡大や複数物件の運用を可能にし、より多くの家賃収入を得て資産形成のスピードを格段に速める原動力となります。

法人名義で不動産投資を行う場合、個人投資に比べてより大きな規模での投資が可能となり、資金調達の選択肢も広がります。法人は個人よりも信用力が高く評価される傾向にあるため、より大きな融資枠の確保が期待できます。また、法人ローンは個人融資と比較して低金利で提供されるケースが多く、事業性融資として不動産投資以外の事業資金としても運用できる柔軟性も持ち合わせています。

銀行が融資審査で決算書を重視する理由

金融機関は、融資した資金が確実に回収できるか、すなわち「返済能力」を厳しく見極めます。決算書は、この返済能力を判断するための最も重要な資料であり、融資審査の大部分が決まると言っても過言ではありません。決算書からは、企業の財務状況、収益性、資金繰りの実態が詳細に読み取れます。

銀行は、決算書を通じて以下の4つのポイントを特に重視します。

  1. 財務の実態: 貸借対照表の資産の部を中心に、粉飾決算の有無や、事業に不必要な支出がないかを確認します。特に、経営者による私的流用(役員貸付金など)がないか、減価償却費の計上が適切かなどをチェックします 。
  2. 企業体力: 自己資本比率や手元流動性などから、企業の財務的な安定性を評価します 。
  3. 経営者の計画性: 来期の見通しや中期経営計画、財務戦略が明確であるか、また経営者自身が課題を認識し改善策を持っているかを評価します 。
  4. いつ借りたいのか?(いつ貸せるのか?): 銀行は決算報告を通じて、融資のタイミングと金額の妥当性を判断します。銀行員はリスクの少ない顧客にいかに多く貸せるかを重視するため、計画的な資金調達の意思表示が重要です 。
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銀行融資審査で求められる決算書の種類と期間

銀行融資を受ける際、単に決算書を提出するだけでなく、その内容と期間が重要になります。金融機関は、提出された書類から事業の過去、現在、そして未来を読み取ろうとします。

提出が求められる主な決算書類

銀行が融資審査で求める決算書類は多岐にわたります。主なものは以下の通りです。

  • 決算書:
    • 貸借対照表(B/S): 特定時点の財政状態(資産、負債、純資産)を示します 。銀行が最初に目にする帳票であり、会社の安定性と返済能力を見極める上で最も重要です 。
    • 損益計算書(P/L): 一定期間の経営成績(収益、費用、利益)を示し、会社の収益性を判断する材料となります 。
    • 株主資本等変動計算書: 株主資本の変動状況を示します 。
    • 個別注記表: 決算書に記載しきれない重要な事項を補足します 。
  • 勘定科目内訳書: 各勘定科目の詳細な内訳を示し、決算書の信頼性を裏付けます 。
  • キャッシュ・フロー計算書(C/F): 一定期間の現金の流れ(営業活動、投資活動、財務活動)を示します 。中小企業では作成義務がないものの、銀行によっては提出を求められる場合があります 。
  • 税務申告書類一式: 法人税申告時に作成する書類であり、決算書と合わせて提出されます 。

これらの書類は、法人税申告時に作成されているものが多いため、比較的容易に準備できます。

なぜ過去3期分の決算書が必要なのか

新規で金融機関と取引を開始する際、銀行は一般的に「過去3期分」の決算書を求めます。直近1期分だけでなく、複数期の決算書を比較することで、単年度では見えない財務・業績の傾向や、勘定科目の増減理由を把握しやすくなります。

これにより、金融機関はより多角的に企業の財務分析を行い、「返済能力」を正確に判断することが可能になります。例えば、売上高に比例しない売掛金や棚卸資産の急激な増減があった場合、その理由を説明できるよう準備しておく必要があります。過去の推移を時系列で示すことで、事業の安定性や成長性を客観的に示すことができ、これは銀行が融資の判断を下す上で非常に有効な情報となります。

銀行が決算書を1期分しか見ると、経費や負債を前後期にずらして当期の利益を水増しできますが、3期分を確認すれば、こうした小手先の粉飾は難しくなります。

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銀行が貸借対照表(B/S)で見るポイント

貸借対照表(Balance Sheet: B/S)は、特定の時点における企業の財政状態を示す「会社の健康診断書」とも言える書類です。不動産投資においては、このB/Sが銀行融資の可否に大きく影響します。

貸借対照表の基本構造と不動産投資における特性

貸借対照表は、「資産の部」「負債の部」「純資産の部」の3つの要素で構成されており、「資産=負債+純資産」という等式が常に成り立ちます。

  • 資産の部(左側): 「何に投資をして運用しているか」を示します。現金、預金、有価証券、不動産(土地・建物)などが含まれます 。不動産投資の場合、購入した不動産が主な資産となります。資産はさらに「流動資産」(1年以内に現金化できるもの)と「固定資産」(長期間保有するもの)に分類されます 。
  • 負債の部(右側上部): 「どのように資金を調達してきたか(他人資本)」を示します。不動産投資においては、銀行からの借入金がその大半を占めます 。負債も「流動負債」(1年以内に返済期限が来るもの)と「固定負債」(1年を超えて返済期限が来るもの)に分類されます 。
  • 純資産の部(右側下部): 「今ある本当の資産(自己資本)」を示します。資産から負債を差し引いたものであり、返済義務のない資金です 。不動産投資の成功は、この純資産をいかに増やしていくかにかかっています 。損益計算書で計上された利益は、最終的にこの純資産に「利益剰余金」として加算され、純資産を増加させます 。

各金融資産は流動性や価格変動リスクに応じて以下のようなイメージで担保評価額が算出されます。金融機関により評価率が変わることはありますが、iDeCoや暗号資産は譲渡性・換金性が否定されるため、原則として担保評価額は0%と扱われます。

資産の種類評価率(掛目)主な評価理由・備考
現金・普通預金100%流動性最上位。信用リスクなし。即時価値あり。
定期預金100%元本保証。担保設定や融資元行との関係次第で即時担保化可能。
国債・地方債100%信用リスク・価格変動リスクともに極めて低い。
上場株式(個別銘柄)60~70%市場価格が変動しやすいため。銘柄によって大きく異なる。
投資信託(公募・インデックス型等)70~80%分散投資により株式よりボラティリティが低い。換金に時間がかかる点などから若干控除される。
生命保険(解約返戻金)40~60%解約手続きが必要で即換金性に劣る。保険会社リスクも考慮。
iDeCo(個人型確定拠出年金)0%原則60歳まで引き出し不可。譲渡・担保化不可。
仮想通貨(暗号資産)0%高い価格変動リスク。担保設定の制度・実務未整備。
不動産(土地)70~90%地域・立地・流動性により変動。都市部は高評価、農地・山林は低評価。
不動産(建物)40~70%築年数・構造・再調達価額により大きく変動。木造は低め、RC造などは高評価。
収益不動産(賃貸物件等)60~80%賃料収入等から逆算した「収益還元法」で評価されることが多い。空室率・利回りで評価調整。

銀行が重視する安全性指標

銀行は貸借対照表から、会社の「安定性」と「返済能力」を判断します。そのために、いくつかの重要な安全性指標を分析します。

現預金(手元流動性)の十分性

手元流動性とは、会社がすぐに現金化できる資金の量を示します。銀行は、現金、預金、1年以内に換金できる有価証券の合計額が、月商の1か月分以上あるかを一つの目安として判断します。手元流動性が十分であれば、短期的な資金繰りの安定性が高いと評価され、不測の事態にも対応できると見なされます。

手元流動性比率 = (現金+預金+1年以内に換金できる有価証券) ÷ 月商  

自己資本比率と債務超過解消年数

自己資本比率は、総資産のうち自己資金で賄っている部分の割合を示し、会社の経営的な安定性を測る重要な指標です。自己資本比率が高いほど、負債が少なく、経営が安定していると判断されます。業種によって目安は異なりますが、一般的に40%以上が望ましいとされています。不動産投資においては、理想は30%超、少なくとも20%以上を目指すべきとされます。

自己資本比率 = 純資産 ÷ 資産の合計 × 100  

自己資本比率がマイナス、すなわち負債が資産を上回る「債務超過」の状態は、銀行融資において極めて不利に働きます。債務超過の場合、銀行は「債務超過解消年数」という指標を用いて、どれくらいの期間で債務超過を解消できるかを見ます。この年数が長ければ長いほど、倒産リスクが高いと判断され、融資を受けることが難しくなります。

債務超過解消年数 = 債務超過額 ÷ 利益  

債務償還年数

銀行は借入金を返済し終えるまでに要する年数である「債務償還年数」も重視します。これは、いま抱えている有利子負債を、将来のキャッシュフロー(賃料収入や営業キャッシュフロー)だけで何年で返せるかを示すものです。返済余力を的確に把握するため、次の式で算出します。この数値が短いほど、返済負担が軽く健全性が高いと評価されます。

債務償還年数 = 有利子負債 ÷ 年間営業キャッシュフロー(または賃料収入)

在庫回転率(不動産投資における応用)

貸借対照表の分析では、在庫の回転率も重要視されます。不動産投資においては、直接的な「在庫」の概念は薄いものの、空室物件をいかに早く埋めるか、入居率を高く維持できるかという点で、実質的な「回転」の速さが資金繰りに直結します。空室率が高止まりすると、キャッシュフローを圧迫し、ローンの返済に支障をきたす可能性があります。

債務超過についての補足事項

先ほどから何度か出てきた『債務超過』という言葉をもう少し補足します。

定義と会計上の位置づけ

貸借対照表(BS)上で「資産合計<負債合計」となり、純資産(資産-負債)がマイナスになる状態を指します。会計用語では「欠損超過」「純資産の部マイナス表示」とも呼びます。

役員貸付金の扱い

社長や役員からの追加貸付は「短期借入金」「長期借入金」などの負債として計上されます。純資産を埋める『みなし資本』とは扱われないため、債務超過解消には直結しません。

Debt‑Equity Swap(DES)による解消

負債を資本金・資本剰余金に振り替えることで、負債減・純資産増を実現し債務超過を解消できます。ただし、増資による株式希薄化や税務上の留意点があるため、実行には専門家の助言が必要です。

減価償却と純資産の推移

建物などの減価償却により資産簿価のみが毎期減少し、返済が進まないと純資産は年々目減りします。新規借入返済や追加資本注入を行わない限り、累積欠損(繰越欠損金)が拡大して債務超過が深刻化します。

損益(PL)と債務超過(BS)の関係

  • 損益計算書(PL)は「当期の利益・損失」を示し、貸借対照表(BS)は「累積資産・負債・純資産」を示します。
  • 当期赤字は繰越欠損金を増加させ純資産を減少させるため、黒字化を継続すると累積欠損金が減り、最終的に債務超過が解消されます。

単年度損失と累積欠損の区分

「単年度の債務超過」という専用語は用いず、当期純損失として扱います。累積欠損金が残る限り純資産マイナス状態が継続し、「累積債務超過」として経営健全性に影響を与えます。

回復のイメージフロー

  1. 設立~赤字期:当期純損失↑ ⇒ 繰越欠損金↑ ⇒ 純資産↓
  2. 黒字化開始:当期純利益↑ ⇒ 繰越欠損金↓(純資産↑)
  3. 累積欠損金を解消:純資産がプラス転換し、債務超過が解消される。

勘定科目の異常な増減と事業との関連性

銀行は、過去3期分の貸借対照表を比較し、特定の勘定科目の急激な増減がないかを詳細にチェックします。特に、売上高に比例しない売掛金や棚卸資産の異常な増減、あるいは仮払金や貸付金など、事業に直接関係ない科目が多すぎる場合、融資資金が事業目的以外に使われているのではないかと疑われる可能性があります。これらの科目については、合理的な理由を明確に説明できるよう準備しておくことが不可欠です。

実態貸借対照表への修正

銀行は、提出された決算書をそのまま鵜呑みにせず、企業の「財務の実態」を把握するために、決算書を修正して評価することがあります。例えば、資産価値のないもの、評価額が低いもの、不良在庫、架空在庫、不良債権などが計上されている場合、銀行はそれらの価値を実態に合わせて減額修正します。

特に不動産投資においては、決算書に記載されている不動産の金額(簿価)と、現在の市場価値(時価)や銀行独自の評価額(積算評価、収益評価)との乖離が問題となることがあります。銀行は、これらの実態評価に基づいて融資判断を行うため、投資家自身も自社の資産の実態価値を正確に把握しておく必要があります。  

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銀行が損益計算書(P/L)で見るポイント

損益計算書(Profit and Loss Statement: P/L)は、一定期間(通常1年間)の企業の経営成績を示す「会社の成績表」です。銀行はここから、企業の「収益性」と「利益を生み出す力」を判断します。

損益計算書の基本構造と収益性の評価

損益計算書は、売上高から各種費用を差し引いて利益を算出する構造になっており、「収益 - 費用 = 利益(損失)」という式が成り立ちます。不動産投資の場合、主な収益は家賃収入であり、費用には管理費、修繕費、各種税金、ローン利息などが計上されます。

銀行は、単に黒字か赤字かだけでなく、事業期間中にどれだけ安定的に収益を生み出すことができたか、そしてそれが融資の返済原資として十分であるかを重視します。安定的な利益の継続は、企業の持続可能性を示す重要な要素です。

利益の質と売上高利益率

銀行は、売上高に対してどれだけの利益を得られたかを示す「売上高利益率」を重視します。前期との比較で収益性の向上や安定性が見られるかを確認し、利益の「質」を評価します。例えば、一過性の利益ではなく、本業である賃貸事業から安定的に利益が出ているか、費用が適切に管理されているかなどが評価の対象となります。

不動産投資においては、賃料収入が売上の大半を占め、費用としては不動産取得税、管理委託費、水道光熱費、清掃費、修繕費、固定資産税などが計上されます。特に多額の借入を行う場合、借入金利息などの営業外費用の管理が重要となります。

減価償却費の適切な計上と融資への影響

減価償却費は、固定資産の取得費用を耐用年数に応じて費用計上する会計処理であり、実際には現金の支出を伴わない「非資金費用」です。

銀行は、利益を正確に判断するために、減価償却費が適正に計上されているかをチェックします。不動産投資では、減価償却費を多く計上することで帳簿上は赤字(「見かけの赤字」)となるケースが少なくありません。しかし、この「見かけの赤字」は、現実のキャッシュフローには影響しないため、金融庁の金融検査マニュアルに基づき、返済能力に問題がないと認められれば、融資に影響は及ぼしません。

むしろ、減価償却費を適切に活用することで、所得税や住民税の負担を軽減する「損益通算」のメリットを享受できます。不動産投資の損失を給与所得など他の所得から差し引くことで、課税所得を圧縮し、納税額を抑えることが可能です。損失が大きくその年に使い切れなかった場合は、「繰越控除」によって翌年以降に持ち越すこともできます。

減価償却費を最大化するためには、物件の土地と建物の比率が重要です。土地には減価償却が適用されないため、建物費用割合が大きいほど減価償却の効果を高められます。売買契約時に建物比率を大きく設定することで、より節税効果を高めることが期待できます。

キャッシュフローとの関係性

損益計算書は期間損益を示しますが、実際の現金の動きとは異なります。特に減価償却費のような非資金費用が含まれるため、損益計算書で利益が出ていても、手元に現金が残らない「黒字倒産」のような状況に陥ることもあります。

不動産投資におけるキャッシュフローの計算式は「家賃収入 - (経費 + ローン返済額 + 税金)」です。銀行は、この実際の現金の流れであるキャッシュフローを重視します。キャッシュフローが安定していれば、空室や滞納などのリスクにも対応しやすく、不測の事態に柔軟に対応できるため、リスク管理の観点からも重要です。

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銀行がキャッシュ・フロー計算書(C/F)で見るポイント

キャッシュ・フロー計算書(Cash Flow Statement: C/F)は、企業の現金の増減を「営業活動」「投資活動」「財務活動」の3つの区分で示す財務諸表です。損益計算書では見えない現金の流れを把握できるため、銀行融資審査において極めて重要な役割を果たします。

キャッシュ・フロー計算書の重要性

キャッシュ・フロー計算書は、企業の実際の資金繰り状況を明確にするものです。損益計算書が「儲け」を示すのに対し、キャッシュ・フロー計算書は「手元にどれだけ現金があるか」を示します。不動産投資においては、家賃収入という継続的な現金収入がある一方で、ローン返済や修繕費などの現金支出も発生します。この現金の流れを正確に把握することは、事業の継続性やリスク対応能力を評価する上で不可欠です。

安定したキャッシュフローは、ローンの繰り上げ返済を可能にし、完済時期を早め、総返済額を減らすことで収益性を向上させます。また、災害や設備の故障など予期せぬ出費が発生した場合にも、キャッシュがあれば事前に対策を講じることができます。

営業キャッシュフローの評価

営業キャッシュフローは、本業である賃貸事業からどれだけの現金が創出されたかを示します。銀行は、この営業キャッシュフローが安定的にプラスであるかを重視します。営業キャッシュフローがプラスであることは、企業が自力で資金を生み出す力があることを意味し、返済能力の高さを示す直接的な証拠となります。

不動産投資におけるNOI(Net Operating Income:純営業収益)は、満室賃料から空室損失や税金(固定資産税、都市計画税など)といった支出を差し引いたものであり、実質的な「営業キャッシュフロー」に近い概念です。NOIは物件の資産価値を評価する上でも重要な指標となります。

投資キャッシュフローと財務キャッシュフローの視点

  • 投資キャッシュフロー: 不動産の購入や売却、設備投資など、投資活動による現金の増減を示します 。新規に不動産を取得すればマイナスとなり、売却すればプラスとなります 。銀行は、この投資活動が事業戦略と整合しているか、過剰な投資をしていないかなどを確認します。
  • 財務キャッシュフロー: 借入金の返済や新たな資金調達(融資、増資など)による現金の増減を示します 。借入金の返済が進めばマイナスに、新規借入や増資があればプラスとなります 。銀行は、財務活動を通じて企業がどのように資金を調達し、返済しているかを評価します。

これらのキャッシュフローの動きを総合的に見ることで、銀行は企業の資金管理能力、成長戦略、そして返済計画の現実性を判断します。特に、営業キャッシュフローが安定的にプラスであり、その範囲内で投資活動や財務活動が行われている状態が、銀行から高く評価される傾向にあります。

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不動産投資における決算書最適化戦略

銀行融資を有利に引き出すためには、決算書を「融資に強い」状態に最適化する戦略的なアプローチが不可欠です。単に数字を並べるだけでなく、銀行が求める視点に合わせた決算書作成と、その裏付けとなる経営努力が求められます。

融資に強い決算書を作るための基礎戦略

融資を受けやすい決算書には、いくつかの共通する特徴があります。

安定的な利益の確保と債務超過の回避

銀行が最も重視するのは、事業が安定的に利益を生み出していることです。継続的な黒字経営は、返済能力の高さを示す直接的な証拠となります。また、貸借対照表において債務超過ではないこと、すなわち純資産がプラスを維持していることは最低限の条件です。債務超過の状態では、基本的に融資を受けることが困難になります。

自己資本比率の向上策

自己資本比率が高いほど、財務の安定性が高いと評価されます。自己資本比率を向上させるためには、利益を社内に留保し、純資産を増やすことが基本です。また、役員借入金は負債に計上されるものの、返済を急ぐ必要がないため、実質的に資本のような存在として扱われることがあります。ただし、役員借入金が過度に大きくなり、債務超過状態を招くことは避けるべきです。

当期利益と減価償却費の合計額の最大化

銀行は、当期利益と減価償却費の合計額が大きい決算書を好む傾向があります。これは、減価償却費が非資金費用でありながら、帳簿上の利益を圧縮し、節税効果をもたらすためです。この合計額は、実質的なキャッシュ創出能力を示す指標として捉えられます。

減価償却費を活用した節税と「見かけの赤字」の理解

減価償却費は、不動産投資において節税効果をもたらす重要な要素です。

減価償却費が融資に与える影響

前述の通り、減価償却費は現金の支出を伴わない経費です。そのため、減価償却費が多く計上されることで帳簿上は赤字(「見かけの赤字」)になったとしても、実際の返済能力に問題がなければ、銀行融資に悪影響を及ぼすことはありません。金融機関は、キャッシュアウトを伴わない経費による赤字であれば、「正常先」と判断することがあります。

損益通算と繰越控除の活用

不動産投資の損失(特に減価償却費によるもの)は、給与所得など他の所得と「損益通算」することで、所得税や住民税の負担を軽減できます。これにより、総合所得が減少し、納税額を抑えることが可能です。

さらに、損益通算で計上した損失が大きく、その年に控除しきれなかった場合は、「繰越控除」によって翌年以降に持ち越すことができます。個人事業主であれば過去3年間、法人であれば過去9年間の赤字を繰り越し可能です。これは、将来の収益に対する税負担を軽減する上で非常に有効な制度です。

土地・建物比率と減価償却費の最適化

不動産は土地と建物で構成されますが、減価償却の対象となるのは建物部分のみです。したがって、購入価格における建物部分の割合が大きいほど、計上できる減価償却費も大きくなり、節税効果が高まります。

中古物件の場合、売買契約書で土地と建物の価格が明確に区分されていないこともありますが、消費税の課税対象が建物のみであることなどを利用して、合理的な範囲で建物比率を高く設定する交渉が有効な場合があります。また、建物を「躯体」と「設備」に分けて評価することで、耐用年数の短い設備部分の減価償却を加速させ、より早期に大きな経費計上を行う戦略も考えられます。

役員借入金・役員貸付金の適切な管理

役員借入金とは、経営者などの役員が会社にお金を貸すことで、貸借対照表では負債の部に計上されます。中小企業では資金調達手段として利用されることが多く、事務手続きが簡潔で、返済条件も柔軟というメリットがあります。また、役員借入金は資本金の増加を伴わないため、中小企業に適用される税制優遇(法人税の軽減税率など)を継続して受けられる利点もあります。銀行融資審査において、役員借入金は「資本」のような存在としてあまり問題視されない傾向にあります。

しかし、役員貸付金(会社が役員にお金を貸すこと)は、銀行融資審査で非常に問題視されます。これは、融資資金が事業目的以外に流用されているのではないかという疑念を抱かせるためです。決算書に役員貸付金が計上されている場合は、速やかに解消するか、合理的な説明ができるようにしておく必要があります。

デット・エクイティ・スワップ(DES)の活用可能性

デット・エクイティ・スワップ(DES: Debt Equity Swap)とは、企業が抱える借入金(Debt)を、株式(Equity)に転換することです。これにより、負債が減少し、自己資本が増加するため、財務体質が大幅に改善されます。特に、債務超過に陥っている企業が財務状況を改善し、事業継続性を高めるために活用されることがあります。

不動産開発を行っていたランド社がリーマンショック後の業績悪化時にDESを実施し、財務状況を改善した事例があります。DESは、倒産リスクの低下や自己資本比率の向上といったメリットがある一方で、発行株式数の増加による株価の希薄化や、債務消滅益の発生による課税リスクなどのデメリットも存在します。不動産投資法人で財務体質の抜本的な改善が必要な場合に、検討の余地がある戦略です。

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銀行が物件評価で見るポイント

不動産投資における銀行融資では、投資家の財務状況だけでなく、融資対象となる不動産そのものの評価も極めて重要です。銀行は、万が一融資が返済されなくなった場合に、担保となる不動産を売却して資金を回収することを想定するため、物件の「価値」を厳しく評価します。

積算評価と収益評価の重要性

銀行の不動産評価には、主に「積算評価法」と「収益評価法」の二つの方法があります。

  • 積算評価法: 土地の価格と建物の現在の再調達価格(再建築費から減価償却分を差し引いたもの)を合算して評価する方法です 。土地評価額は原則として路線価に土地面積を掛けて算出されます 。積算評価が高い物件は、銀行から「資産価値のある不動産」と見なされ、融資が出やすく、低金利での借入や満額融資の可能性が高まります 。銀行が貸し倒れ時に資金を回収できるかという目線で重視される評価方法です 。
  • 収益評価法: 不動産が将来生み出すと期待される収益(家賃収入など)に基づいて評価する方法です 。不動産投資では、物件の収益性も重要な判断基準となります。

最近では、銀行が「積算評価」を特に重要視する傾向にあるため、できる限り資産価値の高い不動産を中心に物件を選定することが、融資を受けやすくするポイントとなります。ただし、積算評価額が高くても、必ずしもその通りの融資額が下りるとは限らない点には注意が必要です。

共同担保の活用と注意点

一つの不動産の評価額だけでは希望する借入額に満たない場合、複数の不動産に共同で担保権を設定する「共同担保」という方法を活用できます。これにより、担保評価額が高まり、希望額の融資を引き出しやすくなる可能性があります。自己資金が少ない場合でも物件購入の可能性を高める手段となり得ます。

しかし、共同担保にはデメリットも存在します。共同担保を設定すると、借入金を完済するまで、担保に入れたどの不動産も単独での売却や借り換えが困難になります。また、自己資金が極端に少ない状況での共同担保活用は、突発的な費用発生時に資金計画が破綻するリスクを高めるため、慎重な検討が必要です。ローンを完済している物件や、残債が半分以下の物件であれば、共同担保の活用を検討する余地があります。

エリア外物件や「訳あり物件」の評価リスク

融資対象となる物件の立地や特性も、銀行の評価に大きく影響します。都心から離れた郊外や地方にある物件、特に築年数が古くリフォームがされていない再建築不可物件などは、融資を受けることが難しくなる傾向があります。

「訳あり物件」と呼ばれる、心理的瑕疵や物理的瑕疵を抱える物件は、評価が低くなるリスクがあります。銀行は、万が一の売却時に市場で買い手が見つかりにくい、あるいは売却価格が想定より低くなるリスクを考慮するため、これらの物件への融資には慎重な姿勢を取ります。物件の購入を検討する際は、必ず現場確認を行い、リスクを十分に把握することが重要です。

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銀行融資を有利に進めるための折衝術と継続的な関係構築

銀行融資を成功させるためには、決算書の数字だけでなく、金融機関との良好な関係を築き、効果的なコミュニケーションを行うことが不可欠です。

融資担当者とのコミュニケーション戦略

融資担当者との信頼関係は、融資の可否や条件に少なからず影響を与えます。

社長自ら足を運び、事業への熱意を伝える

決算報告や融資相談の際には、社長自らが銀行に足を運ぶことが重要です。事前にアポイントを取り、自社のパンフレットや事業内容を説明できる資料を持参することで、事業に対する真剣な姿勢と熱意を伝えることができます。手書きの手紙を添えるなど、論理だけでなく情緒にも訴えかけるアプローチが、担当者との距離を縮めるきっかけとなることもあります。

決算報告時のポイント(現状説明、資金調達意思表示)

決算報告では、単に数字を読み上げるだけでなく、自社の現状を具体的に説明することが求められます。貸借対照表や損益計算書で数値が大きく変動した箇所については、その理由を明確に伝え、今後の対策やビジョンを示すことが重要です。

また、「いつ、いくら借りたいのか」という資金調達の意思を明確に伝えることも大切です。銀行は、経営者の計画性を重視するため、その場しのぎの運営ではなく、明確な財務戦略を持っていることを示す必要があります。

事業計画書の重要性

綿密に作成された事業計画書は、銀行融資の審査において極めて重要な資料です。特に法人ローンでは、企業の信用力や担保価値に加え、事業の収益性や将来性が審査対象となるため、事業計画書によってその実現可能性を具体的に示す必要があります。事業計画書には、不動産投資を拡大するためのビジョンや、資金使途、返済計画などを盛り込み、銀行が「この人を応援したい」と思えるような内容にすることが理想です。

信用スコアの改善と金融機関の選択

個人の信用スコアは、法人融資においても代表者の個人信用情報として重要視されます。信用スコアが高いほど、金融機関からの信頼を得やすくなり、審査通過の可能性が高まります。

信用スコアを改善するためには、既存の債務を計画的に返済し、クレジットカードの支払い遅延を避けることが基本です。不要なクレジットカードの解約や、短期間での複数のローン申し込みを控えることも有効です。

不動産投資ローンの審査に落ちた場合でも、他の金融機関への再申請は有効な対策です。金融機関ごとに審査基準や評価ポイントが異なるため、別の銀行や信用金庫に申し込むことで、審査に通る可能性が高まります。融資限度額は年収の7倍~10倍が目安とされますが、物件の収益性や担保性、個人の属性によって変動します。年収が高いほど融資に有利な傾向がありますが、年収が低い場合でも、他のローンの見直しや残債を減らすことで融資限度額を上げられる可能性があります。

関西エリアの金融機関の特徴と活用

関西エリアの不動産投資家にとって、地元の金融機関の特性を理解し活用することは、融資戦略上大きなメリットとなります。例えば、関西みらい銀行は不動産担保型フリーローンを提供しており、最大1億円、最長30年の返済期間で、事務手数料や登記費用等も含めて借入が可能です。住宅ローン返済中の自宅や親族名義の物件も担保設定可能であり、専任担当者による電話サポートも提供されています。

滋賀銀行のジャストサポート(不動産担保型ローン)も、収益物件を複数所有している投資家にも融資可能で、スマホで手続きが完結し、最長35年の返済期間が特徴です。金利は変動型で複数段階が設定されており、担保設定不動産は本人所有以外に家族所有の物件も対象となります。

これらの地域金融機関は、メガバンクと比較して地域に根差した審査基準を持つことが多く、個別の事情に柔軟に対応してくれる可能性があります。複数の金融機関に打診し、自身の投資戦略に最も合致する条件を見つけることが成功への鍵となります。

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不動産投資の成長を加速させる決算書活用の未来戦略

決算書は過去の経営結果を示すだけでなく、未来の投資戦略を立案し、事業成長を加速させるための重要なツールです。様々な経営指標を理解し、数値目標を設定し、計画的に資金繰りを管理することで、より強固な不動産投資基盤を築くことができます。

決算書から読み解く経営指標の活用

不動産投資の収益性や安全性を多角的に評価するためには、決算書から読み取れる様々な経営指標を理解し、活用することが重要です。

DSCR(デット・サービス・カバレッジ・レシオ)

DSCR(Debt Service Coverage Ratio:元利金返済カバー率)は、手元にあるキャッシュフローが借入金返済額の何倍であるかを示す指標です。数値が大きいほど、返済に余裕があると判断されます。

DSCR = 各年毎の元利金返済前のキャッシュフロー ÷ 返済総額(借入額+支払利息)  

DCR(Debt Coverage Ratio)とも呼ばれ、NOI(運営純収入)が年間返済(ADS)の何倍に値するかを表し、1.3が比較的安全な数値とされています。

LTV(ローン・トゥ・バリュー)

LTV(Loan To Value:借入金比率)は、物件の購入価格に対する借入額の割合を示す指標です。この割合が低いほど借り入れが少なく安全性が増すとされます。LTVが高いほど、成功時のリターンは大きくなりますが、リスク発生時の損失も大きくなるため、適切なバランスを見極めることが重要です。一般的には物件価格の80%程度の融資を受けることが多いと言われています。

FCR(フィックスド・チャージ・カバレッジ・レシオ)

FCR(Fixed Charge Coverage Ratio:固定費用カバー率)は、NOI(営業純利益)を物件価格と諸費用の合計で割ったもので、「真の利回り」とも言えます。アパート経営においては、80%以下が安心の目安とされます。

FCR = NOI(営業純利益) ÷ (物件価格 + 諸費用) × 100  

K%(ローン定数)

K%(ローン定数)は、ローン残高に対する年間返済額の割合を示す指標です。借入金額に対する年間返済額が分かるため、資金調達コストの試算に役立ちます。金利と期間のみで定まる定数であり、その借入をするのに年間どの程度キャッシュアウトしているか、という負担の度合いを示します。

K% = 年間元利返済額 ÷ 総借入額 × 100  

ROA(総資産利益率)とROE(自己資本利益率)

  • ROA(Return On Assets:総資産利益率): 総資産(借入れ+自己資本)に対して、どれだけ利益を生み出しているかを示す指標です 。一般的に5%以上であれば、資産を効率的に利用して利益を生んでいる優良企業とされますが、業種によって目安は異なります 。
  • ROE(Return On Equity:自己資本利益率): 投入した自己資本に対して、どれだけ利益を生み出しているかを示す指標です 。自己資金を少なくし借入れを増やすことで数値を上げることができ、レバレッジ効果を数値で表すものです 。ROE = 財務レバレッジ × ROA   

ROAが高くROEが低い場合は、企業が多くの負債を抱えている可能性があり、ROAとROEが同程度の場合は、自己資本の範囲内でしか事業拡大をしておらず、大きな成長に期待しにくい場合もあります。これらの指標の違いを理解し分析に用いることで、企業の経営状況をより正確に評価できるようになります。

ROIを追求できない不動産投資家はダメなのか?|楽待不動産投資新聞
レバレッジと安定経営のバランスについて思うこと

EBITDA(イービットディーエー)

EBITDA(Earnings Before Interest, Tax, Depreciation, and Amortization:税引前・利息支払前・減価償却費・償却前利益)は、銀行の融資決定の際、簡潔に融資対象となるのかを評価するために活用されます。税引前・利息支払い前・減価償却費と営業利益は基本的に公開されているため、時間をかけずに簡単に融資対象の有無を評価可能です。

EBITDAは、国ごとの税率や金利、会計基準の違いを排除して企業の収益力を比較できるというメリットがあります。特にM&Aなど企業価値評価の初期段階で利用されますが、設備投資や運転資金の考慮がないため、EBITDA単独での評価には注意が必要です。

数値目標の設定と予実管理の徹底

不動産投資を計画的に進めるためには、具体的な数値目標を設定し、それに対する実績を管理する「予実管理」が不可欠です。

  • 予算目標の設定: 達成可能な目標を設定し、各物件や事業全体での収入・支出の目標値を明確にします 。
  • 月次・週次でのチェック: 運用開始後は、定期的に目標値と実績値の乖離を確認し、早期に対処することで予実管理の精度を高めます 。月次決算を行うことで、常に現状を把握し、必要な軌道修正を行うことが可能になります 。
  • 資金繰り表の作成: 損益計算書だけでは見えない現金の流れを管理するために、資金繰り表を月次および日次で作成することが望ましいです 。特に銀行に提出する資金繰り表は、6か月程度先まで予見して正確に作成することが、融資の可否を左右する重要な要素となります 。

決算期と物件購入タイミングの戦略的検討

不動産投資法人の決算月は、必ずしも3月にこだわる必要はありません。例えば、9月末決算であれば確定申告は2ヶ月後の11月となり、税務署の調査時期が年明けから個人の確定申告準備に入る1~3月を避け、5~6月頃に調査が入ることで、比較的軽くなることが多いという見方もあります。

物件購入のタイミングも、決算書に影響を与えます。特に減価償却費の計上は、期末近くに購入することで初年度の費用計上額が少なくなる可能性があるため、税理士と相談しながら最適な購入時期を検討することが重要です。

資金繰り計画と未来決算書の作成

不動産投資は長期的な事業であるため、将来の資金繰りを見越した計画が不可欠です。単年度の決算書だけでなく、複数年先の「未来決算書」や「収支計画書」を作成し、長期的なキャッシュフローシミュレーションを行うことが、安定した経営と次なる投資機会の獲得につながります。

収支計画書では、家賃収入や経費だけでなく、空室率、家賃下落、大規模修繕費用、ローン返済額(元本含む)などを現実的な数値で設定し、将来的な手取り収入をシミュレーションします。不動産会社が作成した収支計画書を鵜呑みにせず、自身で賃料設定の妥当性、空室率の想定、修繕積立金の十分性、ローン返済期間の適切性などを厳しくチェックすることが重要です。

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まとめ:信頼される不動産投資家への道

関西の不動産投資家が銀行融資を成功させ、事業を拡大していく上で、決算書は単なる報告書以上の意味を持ちます。それは、自身の不動産投資事業の「通信簿」であり、「未来の設計図」となるものです。

本記事で解説したように、銀行は決算書を通じて、投資家の返済能力、事業の安定性、収益性、そして経営者の計画性を総合的に評価しています。貸借対照表における手元流動性や自己資本比率の健全性、損益計算書における安定的な利益創出、そしてキャッシュ・フロー計算書が示す現金の健全な流れは、融資判断の根幹をなします。

特に、減価償却費を活用した「見かけの赤字」による節税効果は、不動産投資ならではのメリットですが、その影響を正しく理解し、銀行に説明できることが重要です。また、役員借入金の適切な管理や、将来的な財務改善策としてのデット・エクイティ・スワップの知識も、大規模な投資を目指す上で役立つでしょう。

物件評価においては、積算評価と収益評価の両面から物件価値を把握し、必要に応じて共同担保の活用も検討することで、融資の可能性を広げることができます。一方で、エリア外物件や訳あり物件が持つ評価リスクも理解し、慎重な物件選定が求められます。

最も重要なのは、金融機関との継続的な信頼関係構築です。社長自ら銀行に足を運び、事業への熱意を伝え、明確な事業計画と正確な決算情報を提供することで、銀行は「応援したい」と感じるでしょう。信用スコアの改善や、関西エリアの金融機関の特性を活かした融資戦略も、成功への重要な要素となります。

決算書は、過去の数字をまとめるだけでなく、未来の目標設定と予実管理の基盤となります。DSCR、LTV、ROA、ROE、EBITDAといった経営指標を深く理解し、自身の事業に活かすことで、より洗練された投資判断が可能になります。

不動産投資は長期的な視点と計画性が求められる事業です。決算書を最大限に活用し、金融機関との良好な関係を築きながら、堅実かつ着実に資産を拡大していくことが、関西の不動産投資家が成功を掴むための確かな道となるでしょう。

プロフィール

楽待新聞&不動産投資Libraryのコラムニストをしています。
普段、不動産投資家として考えていることや体験談などを掲載しています。
これから不動産投資を始めたい方や、賃貸経営初心者の方に対して、分かりやすい内容を心掛けています。

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