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アパートの相続税評価額の計算方法|6戸の計算例で貸家建付地・貸家を計算し、2027年の5年ルールを当てはめる

アパートの相続税評価額の計算方法|6戸の計算例で貸家建付地・貸家を計算し、2027年の5年ルールを当てはめる 法人化・相続・出口
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アパートの相続税評価額は、土地を「貸家建付地」、建物を「貸家」として計算します。式は国税庁のタックスアンサーに載っていますが、自分の物件に当てはめると「路線価はどこで見るのか」「固定資産税評価額はどの欄か」「空室があるとどう変わるのか」で手が止まります。この記事では、木造アパート6戸の計算例で、土地と建物の相続税評価額を路線価と固定資産税評価額から実際に計算し、空室が1戸あるときの差、小規模宅地等の特例(貸付事業用宅地等・200㎡まで50%減)、そして2027年1月1日以後の相続から適用される「5年ルール」(課税時期前5年以内に取得した貸付用不動産は時価または取得価額の80%で評価)を、同じ計算例に当てはめて書きます。

結論を先に言うと、仮に敷地150㎡・路線価1㎡あたり10万円(借地権割合60%)・建物の固定資産税評価額1,200万円の6戸を個人で持っているなら、相続税評価額は満室で2,070万円、小規模宅地等の特例を使えば1,455万円という計算になります。一方、同じ物件を2025年7月に6,000万円で取得していた場合は、2027年1月以後2030年7月までに相続が起きれば、貸家建付地の式ではなく取得価額の80%で評価される対象です。相続税の基礎控除・税率・申告期限、法人で持っている場合の扱いまで、大家が自分で試算できる順番で整理します。固定資産税評価額の見方はアパートの固定資産税はいくら?|一棟アパートと区分の計算例で読む課税明細書の見方と住宅用地特例1/6の確認に分けています。

この記事は以下のような方におすすめです!
  • 自分のアパートの相続税評価額を、課税明細書と路線価図から概算したい大家
  • 貸家建付地・貸家の計算式と、賃貸割合(空室)の扱いを計算例で確認したい方
  • 2027年から適用される貸付用不動産の「5年ルール」が、自分の物件に当たるか知りたい方
  • 小規模宅地等の特例(貸付事業用200㎡50%、特定居住用330㎡80%、別居親族の要件)を整理したい方
  • 法人で持つアパートの相続(株式評価)と個人所有の違いを押さえたい方
🎯 30秒でわかる本記事の要点
  • 計算式:土地(貸家建付地)=自用地評価額×(1−借地権割合×借家権割合30%×賃貸割合)、建物(貸家)=固定資産税評価額×(1−30%×賃貸割合)。借地権割合は路線価図の記号A〜G(90〜30%)で読む
  • 計算例(木造アパート6戸・満室):土地の自用地評価1,500万円(路線価10万円×150㎡)→貸家建付地1,230万円、建物の固定資産税評価額1,200万円→貸家840万円、合計2,070万円。仮の購入価格6,000万円の34.5%。1戸が空室だと2,175万円に上がる
  • 小規模宅地等の特例:貸付事業用宅地等は200㎡まで50%減(相続開始前3年以内に貸し始めた土地は原則対象外)。計算例なら合計1,455万円
  • 2027年からの5年ルール:課税時期前5年以内に有償で取得・新築した貸付用不動産は、通常の取引価額(課税上の弊害がなければ取得価額を基にした価額の80%)で評価。計算例の6戸を2025年7月に6,000万円で取得していれば、2030年7月までの相続では、地価の変動等による調整を考えなければ取得価額の80%=4,800万円で評価される(従来の評価なら2,070万円)
  • 法人所有なら株式の評価:純資産価額の計算では課税時期前3年以内に取得した土地・建物は通常の取引価額で評価(財産評価基本通達185)。貸家建付地の減額はそのまま持ち込めない
❓ 先に答え:アパートの相続税評価額はどう計算するか

手順は3つです。①課税明細書の「価格」欄で建物の固定資産税評価額を見る、②国税庁の路線価図で土地の路線価と借地権割合の記号を見る、③土地は×(1−借地権割合×0.3×賃貸割合)、建物は×(1−0.3×賃貸割合)を掛ける。満室なら建物は固定資産税評価額の70%、土地は借地権割合60%の地域で82%になります。2027年以後の相続で、取得から5年以内の物件はこの式を使えず、取得価額の80%が基準になります。

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📐 1. 計算式|土地は貸家建付地、建物は貸家(国税庁タックスアンサーNo.4614・No.4602)

国税庁のタックスアンサーNo.4614(令和8年4月1日現在法令等)によると、貸家建付地とは「その宅地を所有する方が建築したアパートやビルなどを他に貸し付けている場合の、その敷地である宅地」で、次の式で評価します。

貸家建付地の価額 = 自用地としての価額 − 自用地としての価額 × 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合

貸家の価額 = 固定資産税評価額 × (1 − 借家権割合 × 賃貸割合)(タックスアンサーNo.4602・財産評価基本通達93) ※借家権割合は30%(全日本不動産協会の税務相談では「30%または40%」と記載。現在の財産評価基準書では全国30%)

要素 どこで見るか 補足
自用地としての価額 国税庁「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」の路線価×地積(路線価がない地域は固定資産税評価額×倍率) 毎年7月に公表。奥行や形状の補正がある
借地権割合 路線価図の路線価の末尾の記号 A90%・B80%・C70%・D60%・E50%・F40%・G30% 住宅地はD〜Eが多い
借家権割合 財産評価基準書(全国30%) —
賃貸割合 課税時期に賃貸している各独立部分の床面積÷全体の床面積 一時的な空室は賃貸中として扱える(後述)
固定資産税評価額(建物) 固定資産税の課税明細書の「価格」欄 家屋は価格=課税標準額

🧮 2. 計算例:木造アパート6戸で計算する|満室で2,070万円、小規模宅地等の特例で1,455万円

計算例:仮に、木造2階建・1K×6戸(各戸の床面積は同じ)のアパートを個人で持っていて、敷地150㎡、面する道路の路線価が1㎡あたり10万円(路線価図の表示は「100D」=借地権割合60%)、建物の固定資産税評価額(課税明細書の家屋の「価格」)が1,200万円、購入価格が6,000万円(2021年以前に購入し、以後ずっと賃貸中)とします。奥行や形状による補正はないものとします。自用地としての価額は、10万円×150㎡=1,500万円です。

ここから先の数字は、路線価・借地権割合・建物の評価額をすべて仮に置いた計算例です。自分の物件で出すときは、路線価図で実際の路線価と記号を読み、課税明細書で建物の価格を確かめます。

項目 計算 評価額
土地の自用地評価 路線価100,000円×150㎡ 15,000,000円
貸家建付地(満室) 15,000,000円×(1−0.6×0.3×1.0)=×0.82 12,300,000円
建物の固定資産税評価額 課税明細書の価格(仮定) 12,000,000円
貸家(満室) 12,000,000円×(1−0.3×1.0)=×0.7 8,400,000円
合計(満室) 12,300,000+8,400,000 20,700,000円(仮の購入価格6,000万円の34.5%)
小規模宅地等の特例(貸付事業用・50%減) 土地12,300,000円×0.5=6,150,000円+建物8,400,000円 14,550,000円(約24%)
1戸が空室のとき(賃貸割合5/6) 土地×(1−0.6×0.3×5/6)=×0.85、建物×(1−0.3×5/6)=×0.75 土地12,750,000円+建物9,000,000円=21,750,000円

この表から分かることが3つあります。①この例では相続税評価額は購入価格の34.5%で、建物の評価減(30%)より土地の評価減(18%)のほうが小さい、②小規模宅地等の特例が使えると土地がさらに半分になる、③空室1戸(6戸なので賃貸割合5/6)で評価額は105万円上がる。

読者

路線価図の見方が分かりません。課税明細書の数字だけで代用できますか?

著者

目安としては使えます。土地の固定資産税評価額は公示価格の7割、路線価は8割が目途なので、課税明細書の土地の価格を0.7で割って0.8を掛けると路線価水準に近づきます。ただし申告には使えません。国税庁の財産評価基準書で都道府県→市区町村→路線価図を開き、自分の土地が面する道路の数字(千円単位)と末尾の記号を読みます。記号Dなら借地権割合60%です。角地や不整形地は補正が入るので、そこは税理士に任せる領域です。

🏚 3. 空室で評価額が上がる|賃貸割合と「一時的な空室」の4条件

貸家建付地も貸家も、式の最後に賃貸割合を掛けます。空室の部屋の床面積分は減額されないので、相続のときに空室が多いほど評価額が上がります。ただしNo.4614は、継続的に賃貸されていた各独立部分が課税時期に一時的に空室だったにすぎない場合は、賃貸されていたものとして扱って差し支えないとし、その事実関係として次の4つを挙げています。

  • イ:各独立部分が課税時期前に継続的に賃貸されてきたものであること
  • ロ:賃借人の退去後速やかに新たな賃借人の募集が行われ、空室の期間中、他の用途に供されていないこと
  • ハ:空室の期間が、課税時期の前後の例えば1か月程度であるなど、一時的な期間であること
  • ニ:課税時期後の賃貸が一時的なものではないこと

たとえば退去から半年空いたままの部屋は「1か月程度」を超えるので、賃貸中とは扱えないと見ておくべきです。大家としてできるのは、退去後すぐに募集を始めた証拠(募集図面・媒介契約・掲載画面)を残し、空室を物置に使わないことです。入居率を年間で管理する方法は入居率の計算方法|戸数・賃料・稼働の3つを入金表の計算例で出し、日管協・総務省の平均と比べる(Excel雛形)に書いています。

🏠 4. 小規模宅地等の特例|貸付事業用は200㎡まで50%、自宅は330㎡まで80%

国税庁のタックスアンサーNo.4124(令和8年4月1日現在法令等)によると、被相続人等の貸付事業(不動産貸付業・駐車場業など)の用に供されていた宅地等は「貸付事業用宅地等」として200㎡まで50%減額されます。要件は、取得した親族が申告期限までに貸付事業を引き継いで営んでいること(事業承継要件)と、申告期限まで宅地等を有していること(保有継続要件)です。

区分 限度面積 減額割合 大家に関係する要件
貸付事業用宅地等 200㎡ 50% 相続開始前3年以内に新たに貸し始めた宅地等は原則対象外(3年を超えて特定貸付事業を行っていた被相続人等の宅地等は除く)
特定居住用宅地等 330㎡ 80% 配偶者は要件なし。同居親族は申告期限まで居住・保有。別居親族は下記6要件
特定事業用宅地等 400㎡ 80% 不動産貸付業は含まない

貸付事業用宅地等と他の区分を併用する場合は、(特定事業用等×200/400)+(特定居住用×200/330)+貸付事業用≦200㎡の枠で判定します。自宅330㎡で80%を使い切ると、アパートの敷地には枠が残らないので、どの宅地に使うかは減額される金額で比べます。2章の計算例(敷地150㎡)なら、単独で全部が200㎡に収まります。

別居の子が自宅の敷地を引き継ぐとき(いわゆる家なき子)の6要件

特定居住用宅地等を配偶者でも同居親族でもない親族が取得する場合、No.4124は次の6要件を挙げています。(1)日本国籍を有しない居住制限納税義務者等でないこと、(2)被相続人に配偶者がいないこと、(3)相続開始の直前に被相続人と同居していた相続人がいないこと、(4)相続開始前3年以内に、取得者・配偶者・三親等内の親族・特別の関係がある法人が所有する家屋に居住したことがないこと、(5)相続開始時に居住している家屋を過去に所有したことがないこと、(6)申告期限まで宅地等を有していること。大家に関係するのは(4)と(5)で、収益物件を何戸持っていても、自分が住んでいる家が賃貸なら要件に反しません。要介護認定等を受けて老人ホームに入所していた場合も、元の自宅は居住の用に供されていた宅地等に含まれます(事業や他人の居住に使った場合を除く)。

⏳ 5. 2027年からの5年ルール|取得から5年以内の貸付用不動産は取得価額の80%

令和8年度税制改正の大綱(財務省)の「相続税等の財産評価の適正化」は、次のように書いています。被相続人等が課税時期前5年以内に対価を伴う取引により取得または新築をした一定の貸付用不動産については、課税時期における通常の取引価額に相当する金額によって評価する。その金額は、課税上の弊害がない限り、取得価額を基に地価の変動等を考慮して計算した価額の100分の80に相当する金額によって評価することができる。適用は令和9年(2027年)1月1日以後に相続等により取得する財産の評価からで、改正を通達に定める日までに、その5年前から所有する土地に新築した家屋(建築中を含む)には適用しません。不動産特定共同事業契約などの小口化不動産は取得時期にかかわらず通常の取引価額で評価されます。

計算例 取得 2027年以後の相続での評価
例A(2章の6戸) 2021年以前 2027年1月1日時点で取得から5年超なので、貸家建付地・貸家の従来の評価(2章の2,070万円)
例B(同じ6戸を6,000万円で取得) 2025年7月 2027年1月1日〜2030年7月の相続なら5年以内に該当し、取得価額を基にした価額の80%(地価の変動等による調整を考えなければ4,800万円。課税上の弊害がある場合は通常の取引価額)。2030年8月以降は従来の評価

例Bの従来の評価は2章と同じ2,070万円ですが、取得価額を基にした80%は、地価の変動等による調整を考えなければ4,800万円で、従来の評価より2,730万円高くなります。つまり取得から5年以内の相続では、この例の評価は購入価格の34.5%ではなく80%になり、「アパートに換えたから評価が下がる」効果は大きく縮みます。2027年以降に相続を迎える可能性がある方は、保有物件の取得日を一覧にして5年ラインを引くところから始めてください。芦屋の不動産会社(高翔)の解説が指摘するとおり、取得日を契約日・決済日・引渡日のどれで見るかなど細部は通達で決まるので、断定せず税理士に確認します。

読者

法人でアパートを持っている場合も、貸家建付地の評価で相続税が下がりますか?

著者

相続の対象は不動産ではなく法人の株式(合同会社なら持分)です。相続では株式や持分を純資産価額方式などで評価し、その計算の中で法人が持つ土地・建物を相続税評価額で計算します。そこでは貸家建付地・貸家の評価が使えますが、財産評価基本通達185の括弧書きで、課税時期前3年以内に取得した土地・建物は通常の取引価額で評価します。2027年からの5年ルールが法人の純資産価額の計算にどう及ぶかは、通達が出るまで未確定です。法人化と相続の全体像は別記事に分けています。

📊 6. 相続税の計算手順|基礎控除3,000万円+600万円×法定相続人、税率10〜55%

評価額が出たら、相続税そのものはNo.4152・No.4155の手順で計算します。①各人の課税価格を合計する(小規模宅地等の特例は減額後の価額)、②基礎控除「3,000万円+600万円×法定相続人の数」を引いて課税遺産総額を出す、③法定相続分で仮に分けた取得金額に速算表を当てて合計し相続税の総額を出す、④実際の取得割合で各人に配分し、配偶者の税額軽減などの控除を引く。配偶者・父母・子以外が取得した分は2割加算です。

法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10% —
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

国税庁の例では、妻と子2人で課税遺産総額1億5,200万円なら、妻7,600万円×30%−700万円=1,580万円、子3,800万円×20%−200万円=560万円が2人で、相続税の総額は2,700万円です。暦年贈与の加算対象期間は、相続開始日が令和8年12月31日以前なら3年以内で、令和9年以後は段階的に7年へ延びます(No.4152・No.4155の注記)。贈与の使い分けは生前贈与の7年ルールはいつから?2027年に影響本格化・100万円控除・相続時精算課税110万円|不動産投資家の実務に書いています。

✅ 7. 大家が今やること|評価額の一覧・取得日の5年ライン・賃貸割合・納税資金

  1. 物件ごとに相続税評価額を出しておく:課税明細書の価格欄と路線価図で、2章の表を自分の物件で作る。毎年7月に路線価が更新されるので年1回見直す
  2. 取得日と5年ラインを引く:2027年1月1日以後の相続で5年以内に当たる物件は、取得価額の80%で評価される前提で試算する。法人所有なら3年以内は時価(通達185)
  3. 賃貸割合を守る:退去後すぐ募集し、募集の証拠を残す。空室を私物置き場にしない
  4. 小規模宅地等の特例の当てはめを決める:自宅330㎡80%とアパート200㎡50%は同じ枠を食い合う。減額される金額が大きい方から使う
  5. 納税資金を分けて用意する:相続税は原則現金で申告期限(相続開始を知った日の翌日から10か月)までに納める。生命保険金の非課税枠は500万円×法定相続人の数(相続税法12条)
  6. 法人なら株式評価の資料をそろえる:決算書、不動産の取得日・取得価額、固定資産税評価額。役員借入金や遺言の実務はアパートの相続はどうなる?現役大家が「自分の死」に備える実務|役員借入金・認知症・財産目録・受け取る側の初動にまとめています

❓ 8. よくある質問

Q1. アパートの相続税評価額は時価の何割くらいですか?

2章の計算例(購入価格を6,000万円と仮定)では、満室で34.5%、小規模宅地等の特例を使うと約24%でした。土地は路線価(公示価格の8割目途)に借地権割合×30%の減額、建物は固定資産税評価額の70%なので、建物の割合が大きい物件ほど下がります。ただし2027年以後の相続で取得から5年以内の物件は取得価額の80%が基準になります。

Q2. 貸家建付地の借地権割合はどこで確認しますか?

国税庁の財産評価基準書の路線価図で、土地が面する道路の路線価の末尾の記号を見ます。A90%からG30%まで7段階で、住宅地はDの60%やEの50%が多いです。路線価のない地域は評価倍率表を使い、借地権割合も同じ表に載っています。

Q3. 空室があると相続税は上がりますか?

上がります。空室部分の床面積は減額の対象外です。2章の計算例(6戸)で1戸が空室(賃貸割合5/6)だと、評価額は105万円上がります。ただし課税時期の前後1か月程度の一時的な空室で、退去後すぐ募集し他の用途に使っていなければ、賃貸中として扱えます(No.4614)。

Q4. 5年ルールはいつから、どの物件に適用されますか?

2027年1月1日以後に相続や贈与で取得する財産から、課税時期前5年以内に有償で取得または新築した貸付用不動産が対象です。相続や贈与で無償で取得した物件、5年を超えて保有した物件は従来の評価です。たとえば2025年7月に取得した物件なら、2030年7月までの相続で該当します。

Q5. 小規模宅地等の特例は、買ってすぐのアパートにも使えますか?

相続開始前3年以内に新たに貸付事業の用に供した宅地等は原則として対象外です。ただし、相続開始の日まで3年を超えて事業的規模の貸付事業を続けていた人の物件は、3年以内に買い足した宅地等でも対象になります(No.4124注2)。

Q6. 法人で持っているアパートの相続はどうなりますか?

相続財産は法人の株式や持分で、純資産価額方式などで評価します。その中で法人所有の土地・建物は相続税評価額で計算しますが、課税時期前3年以内に取得したものは通常の取引価額です(財産評価基本通達185)。法人化の判断は不動産投資の法人化はいくらから?デメリットと設立・相続・出口・保険・リスクの全体像を参照してください。

Q7. 相続税の申告期限と、期限内に分割がまとまらないときは?

申告と納付は相続開始を知った日の翌日から10か月以内です。小規模宅地等の特例は、原則として申告期限までに分割されていることが必要で、未分割の場合はNo.4208(相続財産が分割されていないときの申告)の手続で、分割後に適用を受けます。

🎯 まとめ

アパートの相続税評価額は、土地が自用地評価×(1−借地権割合×0.3×賃貸割合)、建物が固定資産税評価額×(1−0.3×賃貸割合)です。2章の計算例(敷地150㎡・路線価10万円・建物の評価額1,200万円の6戸)では、満室で2,070万円(仮の購入価格6,000万円の34.5%)、小規模宅地等の特例を使えば1,455万円、1戸が空室だと2,175万円でした。数字を出すのに必要なのは課税明細書と路線価図の2つです。

2027年1月1日以後の相続では、課税時期前5年以内に有償で取得した貸付用不動産は取得価額を基にした価額の80%で評価されます。計算例の6戸を6,000万円で取得して5年以内なら、地価の変動等による調整を考えなければ4,800万円が評価額になります。法人所有の場合は、株式評価の中で取得から3年以内の土地・建物を通常の取引価額で評価する通達185のルールもあります。「アパートに換えれば下がる」は5年超保有が前提の話になったので、保有物件の取得日に5年ラインを引くことが最初の作業です。

そのうえで、賃貸割合を守る募集の証拠、小規模宅地等の特例をどの宅地に使うかの比較、10か月以内の納税資金、法人なら株式評価の資料。この4つを相続の前に整えておけば、評価額は管理できる数字になります。細部の判定は相続に強い税理士と確認してください。

📖 この記事の根拠(出典・参考)

  • 国税庁タックスアンサー「No.4614 貸家建付地の評価」「No.4602 土地家屋の評価」(No.4602は2026年9月29日参照)「No.4124 小規模宅地等の特例」「No.4152 相続税の計算」「No.4155 相続税の税率」(いずれも令和8年4月1日現在法令等、2026年9月参照)/財産評価基本通達93(貸家の評価。第3章 家屋及び家屋の上に存する権利、2026年9月29日参照)・185(純資産価額・課税時期前3年以内に取得した土地等・家屋等の評価)/相続税法12条(生命保険金の非課税)
  • 財務省「令和8年度税制改正の大綱(2/9)」(4)相続税等の財産評価の適正化/全日本不動産協会 月刊不動産2026年2月号「令和8年度税制改正大綱 住宅・不動産関連の主な改正項目」(貸付用不動産の評価・適用時期)
  • 全日本不動産協会 税務相談「アパートやその敷地の相続税評価について教えて下さい」(井出真税理士・月刊不動産2003年1月号、評価減の考え方と一時的空室)/総務省「固定資産税の概要」(宅地は公示価格の7割目途)
  • 5年ルールの解説(2026年9月に本文を確認):寺田税理士・社会保険労務士事務所「アパートを建てても手遅れ?2026年『5年ルール』」、高翔「貸付用不動産の『5年ルール』とは?」、フジ相続税理士法人「アパートの相続税評価額はどう計算する?」、ネクスト・アイズ「アパートを相続したら税金はいくら?」
  • 監修について:本記事は税理士の監修を受けたものではありません。5年ルールの細目は改正通達で確定します。個別の評価・申告は相続税に詳しい税理士に依頼してください

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執筆者 西本豪
執筆者:西本 豪(楽待新聞コラムニスト)

関西の不動産投資家。賃貸経営の体験と、法令・公的機関の資料をもとに、税務・融資・賃貸経営・法人運営の実務ガイドを発信しています。

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