タックスプランニングの理解でFP試験は楽しくなる!出題範囲を徹底解説

雑記
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タックスプランニングと聞くととても難しいイメージがあります。

タックス(tax)は税金、プランニング(planning)は計画や企画立案という意味です。

税金については少し複雑で覚えることが多いのも事実です。ですが、必要となる範囲を整理した上で、体系的に学習すれば全体像が見えてきます。

この記事はかなり長い文章ですが、ファイナンシャルプランナー試験である3級FP技能検定や2級FP技能検定の受験勉強をされている人にとってタックスプランニングの試験範囲を網羅的に解説した内容です。ただ、税金関係の知識は私生活を送る上でも重要な知識ですし、これから個人での事業や不動産経営などをしたい人などにとっては是非覚えておいてほしい内容です。

是非、最後まで読んで頂ければと思います。

  • 税金についての基本的な知識を体系的に学びたい人
  • 個人での事業や不動産経営などに興味がある人
  • 3級FP技能検定または2級FP技能検定の受験勉強をしている人
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タックスプランニングを理解すればFP試験は楽しい

3級FP技能検定および2級FP技能検定の試験範囲は以下の6つの分野から出題されます。

  • ライフプランニングと資金計画
  • リスク管理
  • 金融資産運用
  • タックスプランニング
  • 不動産
  • 相続・事業承継

そして、過去に2級FP技能検定を合格した僕の意見としては「出題範囲の中でタックスプランニングがもっとも私生活で役立ち、かつもっとも勉強しがいのある分野」だと断言できます。

タックスプランニングの重要性

勿論、職業によって優先順位は変わるため「保険会社に勤務していればリスク管理が重要」ですし「証券会社に勤務していれば金融資産運用が重要」です。

ですが、タックスプランニングは税金の知識なので、私生活を送る上でほぼ必ず必要となる内容です。またその他の5つの分野とも関連性の高い分野なので、是非とも頑張って理解して頂きたいです。

僕も個人事業主であり、同時に不動産経営者でもあるため「リスク管理」「不動産」「相続・事業継承」などの分野はとても重要ではありますが「タックスプランニング」の知識が役に立つ場面がもっとも多いです。

また将来的に税理士などの受験を目指す予定のある人は、少なくとも2級FP技能検定のタックスプランニングの試験範囲は全て確実に理解しておくべきです。

なおタックスプランニングの出題範囲は主に以下の3分野に分けられます。

  • 所得税の仕組み
  • 10種類の所得の内容
  • 所得控除と税額控除

タックスプランニングの主な目的は税金の仕組みを理解することですが、中でも所得税は仕組みはとても複雑です。

それは所得を得る手段によって納税するべき税率が変わるからです。

そしてその所得は細かく10種類に分けられます。

また所得によって控除される仕組みも変わります。

とても範囲が広いように思うかもしれませんが、タックスプランニングの試験範囲の中には「給与所得」「源泉徴収」「住宅ローン減税」のように会社員にも聞き馴染みはあるものの、イマイチ仕組みが分かりにくいというものも沢山含まれます。

是非、この機会に覚えておきましょう。

タックスプランニングの分野には日常生活で役立つ知識が充実しています。
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所得税の仕組み

タックスプランニングの試験範囲は主に所得税のしくみが中心になり、主に以下の項目がポイントになります。

  • 所得税の計算の基本的な流れの把握
  • 所得税が課されない非課税所得の確認
  • 総合課税および分離課税の計算方法の理解
  • 申告から納税までの一連の流れの理解

所得税は個人が1年間に得た所得に対して課税されるものです。所得税の特徴として次のような点があげられます。

  • 暦年単位課税
    • 個人の1月1日から12月31日までの1暦年間の所得に対して課税される
  • 所得の分類
    • 所得の種類(10種類)により計算方法が異なる
  • 総合課税と分離課税
    • 10種類に区分した所得を総合して課税される総合課税
    • 他の所得と総合しないで課税される分離課税
  • 所得控除
    • 個人的な事情を考慮した課税が行われる
  • 超過累進税率
    • 所得が大きくなるに従い課税される税率が高くなる制度を採用している
    • 復興特別所得税として所得税額の2.1%が追加的に課税される
  • 申告納税制度
    • 翌年2月16日から3月15日の期間に申告・納税を行う
  • 源泉徴収制度
    • 一定の所得の支払をする際に支払者(源泉徴収義務者)が税金を天引きし納税者に変わって納付する
  • 非課税所得
    • 所得の性格や担税力、社会政策的立場や課税技術上の要請から課税対象としない所得
      • 出張等にともなって支給される旅費で通常必要であるもの
      • 通勤手当のうち一定額までの金額
      • 職務上必要な制服等の現物給与
      • 強制換価手続き等による資産の譲渡による所得
      • 遺族の受ける恩給および年金
      • 損害賠償金、慰謝料
      • 宝くじの当せん金など

会社員や公務員の人達は、主に勤め先の会社から給与所得を得ていて、税金の支払いについても会社を通じて源泉徴収されるため、普段は意識することがありません。ただ、自分の働いたお金がどのような仕組みで税金として納税されているのかは、やっぱり知っておくべき内容です。

超過累進税率とは

所得税は各個人の課税総所得金額に対して、超過累進課税により課税されます。

課税対象額税率(所得税)控除額
~195万円以下5%0円
195万円超~330万円以下10%97,500円
330万円超~695万円以下20%427,500円
695万円超~900万円以下23%636,000円
900万円超~1,800万円以下33%1,536,000円
1,800万円超~4,000万円以下40%2,796,000円
4,000万円超45%4,796,000円

超過累進課税は所得の大きさに応じて階段状の税率が適応される仕組みです。

所得が大きければ多いほど、その分、課税される税率が高くなる制度です。

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所得税の計算手順

所得税の具体的な計算方法を解説します。

まず初めに課税所得金額を計算します。課税所得金額については次のような流れで計算されます。

各種所得の金額の計算

まずは各種所得の金額を計算します。

実は所得の種類は全部で10種類あります。まずはそれぞれの所得内容を整理し10種類の所得金額がどのように計算されているのかを把握します。

利子所得

利子所得とは主に銀行に預けている預貯金や公社債(国債、地方債、社債)などに係る所得のことで利子支払いの歳に金融機関が20%を源泉徴収することで課税し納税が終了します。

  • 所得税…15%
  • 住民税…5%
  • 合計…20%

ただ銀行預金の金利は本当に低いです。にも関わらずここからさらに20%の課税が課せられます。もともとあって無いような利率なので、20%課税されたとしても、もはやどうでも良いレベルの課税額だと思います。

銀行にお金を預けても利子は全然増えないので、もし預貯金が沢山あるのであれば、少しずつ配当所得を得られる投資信託などに積立投資していきましょう。

配当所得

配当所得とは株式売買による配当や投資信託などによる収益のことです。

配当所得は配当金額に関わらず一律で以下の税率が課せられます。

  • 所得税及び復興特別所得税…15.315%
  • 地方税…5%
  • 合計…20.315%

また、配当所得の課税方法は以下の3パターンより選択が可能です。

  • 総合課税
  • 申告分離課税
  • 申告不要

総合課税を選択した場合は超過累進税率が適応されるためその他の所得金額によって税率が変わります。

配当所得を含めた課税所得が695万円以下の場合は超過累進課税を適応した方が税率を低く抑えられますが、配当所得を含めた課税所得が695万円以上の場合は申告分離課税を選択した方が税率を低く抑えられます。また、申告不要制度を適用することで配当金支払い時に源泉徴収されるため確定申告しない場合はこれで課税関係が終了します。

なお、2014年から開始されたNISA(少額投資非課税制度)や、2018年から開始されたつみたてNISAを利用することで一定の投資額まで税金を免除できます。

NISAやつみたてNISAは使っておいて損しない制度です。是非、積極的に活用していきましょう。

不動産所得

不動産所得とは不動産の賃貸により得られる所得のことです。

不動産所得の金額の計算方法は次の通りです。

  • 不動産所得の金額=総収入金額ー必要経費

不動産所得を安定させるには空室対策が最も重要ですが、それと同じように経費計上などの知識も大切になります。

なお、不動産収入の必要経費には次のようなものが認められています。

  • 貸付不動産等の修繕費
  • 租税公課(税金と各種賦課金の総称)
  • 管理費
  • 損害保険料
  • 減価償却費
  • 仲介手数料
  • 借入金利子

不動産所得の金額は総合課税され総所得金額に含まれます。

また、必要経費として計上できる項目が多いので、上手く活用すれば節税効果が期待できます。

ただし、計上できる必要経費は年を重ねるごとに、徐々に縮小されるため、仕組みを正しく理解していなければ将来的に損をしてしまうため注意が必要です。

事業所得

事業所得とは会社員以外のフリーランスや個人事業主が得る収入のことです。

事業所得の金額の計算方法

  • 事業所得の金額=総収入金額ー必要経費

収入金額の計上時期は収入すべき日、原則として商品を販売した日となります。

なお、事業所得の必要経費には次のようなものが含まれます。

  • 保険料
  • 減価償却費
  • 商品の売上原価
  • 製品の製造原価
  • 租税公課
  • 水道光熱費
  • 旅費交際費
  • 通信費
  • 修繕費
  • 広告宣伝費
  • 交際費
  • 福利厚生費
  • 賃金給料
  • 地代家賃

家事関連費(一つの支出が家事上と業務上の両方にかかわりがある費用)のうち必要経費となるのは主たる部分が業務の遂行上必要であり、かつ業務に必要である部分を明らかに区分することができる場合のその区別できる金額です。

事業所得の金額は総合課税され総所得金額に含まれます。

給与所得

給与所得とは会社員の給与や賞与などのことです。

また給与所得は源泉徴収の対象となります。

給与所得の金額の計算方法

  • 給与所得の金額=収入金額ー給与所得控除
給与所得控除速算表(平成25年分以降)
給与等の収入金額給与所得控除額
~180万円以下収入金額×40%(最低65万円)
180万円超~360万円収入金額×30%+18万円
360万円超~660万円収入金額×20%+54万円
660万円超~1,000万円収入金額×10%+120万円
1,000万円超~1,500万円収入金額×5%+170万円
1,500万円超~245万(上限)

給与所得は総合課税の対象となりますが給与の支払いのつど所得税が源泉徴収されます。

※全ての給与所得者、納税税者本人が所得税を計算し申告・納付をすることは現実的に不可能なので申告手続きが簡略化されています。

会社員などの給与所得者については給与所得以外の所得が無い場合、源泉徴収税額のみで納税を終了させ、年末に年末調整(正しい所得税額と源泉徴収額の精算手続き)を行います。

譲渡所得

譲渡所得とは資産の譲渡による所得で次のようなものが含まれます。

  • 土地・建物等の資産の譲渡による所得
  • 土地・建物等以外の資産(貴金属、ゴルフ会員権など)の譲渡による所得

譲渡所得の計算は譲渡した資産を次のように短期譲渡所得と長期譲渡所得に区別して行います。

譲渡所得(譲渡区分と長期・短期の区分)
譲渡所得所有期間課税区分
土地・建物等の資産の譲渡所有期間5年以下分離短期譲渡所得
所有期間5年超分離長期譲渡所得
土地・建物等以外の資産の譲渡所有期間5年以下総合短期譲渡所得
所有期間5年超総合長期譲渡所得

譲渡所得は土地・建物等の譲渡と土地・建物以外の譲渡で計算方法が異なります。

土地・譲渡等以外の譲渡所得の金額の計算方法

  • 譲渡益=短期譲渡所得の総収入金額(所得費+譲渡費用)+長期譲渡所得の総収入金額(所得費+譲渡費用)
  • 譲渡所得の金額=譲渡益ー特別控除額(最高50万円)

当区別控除額は50万円でまず先に短期譲渡所得の譲渡益から控除します。土地や建物以外の資産を譲渡したことによる所得は他の所得と合計して総所得金額に含めて計算します。

なお合計する金額は短期譲渡所得は全額ですが、長期譲渡所得の金額はその2分の1に相当する金額です。

土地・建物等の譲渡による譲渡所得の金額は次のように計算します。

  • 課税譲渡所得金額=収入金額ー(取得費+譲渡費用)ー特別控除額

土地や建物の譲渡による所得は他の所得とは合計せず分離して課税する分離課税制度が採用されています。

取得費は取得に要した金額に設備費や改良費を加えて計算します。建物や車など原価する資産はさらに減価償却累計額・減価額を控除して計算します。

また譲渡費用とは資産の譲渡に要した費用(仲介手数料や運搬費用など)です。

なお、マイホームを売却する場合は一定の年数が経過していることが多いはずなので余り意識しないかもしれませんが、投資用物件の場合は数年間で物件を売却するケースのあるはずです。その場合は売却した資産が「長期譲渡所得になるのか?」または「短期譲渡所得になるのか?」で意外と大きな影響を与えることがあります。

物件を売却する場合は、その物件の所有期間が「5年超なのか?」「5年以下なのか?」を意識しましょう。

一時所得

一時所得には以下のようなものが含まれます。

  • 懸賞の賞金品、福引の当選金品
  • 競馬の馬券の払戻金、競輪の車券の払戻金
  • 生命保険契約に基づく一時金
  • 損害保険契約に基づく満期返戻金
  • 法人からの贈与により取得する金額

一時所得の金額の計算方法は次の通りです。

  • 一時所得金額=総収入金額ー収入を得るために支出した金額ー特別控除額

特別控除額として最高50万円を控除することができます。

一時所得の金額は総合課税され一時所得の金額の2分の1が総所得金額に含まれます。

雑所得

雑所得は「公的年金」と「公的年金以外」に分類されます。

公的年金の雑所得には次のようなものが含まれます。

  • 過去の勤務先から支給される年金、恩給
  • 公的年金(国民年金、厚生年金保険等)
  • 適格退職年金契約に基づく年金
  • 確定拠出年金の年金払いの老齢給付
  • 公的年金等以外の雑所得には次のようなものが含まれます。
  • 生命保険契約に基づく年金
  • 損害保険契約に基づく年金
  • 公社債の償還差益

雑所得の計算方法は次の通りです。

  • 雑所得の金額=(公的年金等の雑所得の収入金額ー公的年金控除額)+(公的年金等以外の雑所得の総収入金額ー必要経費)
公的年金控除額速算表(65歳以上)
公的年金等の収入金額公的年金等控除額
330万円未満120万円
330万円以上 410万円未満収入金額✕25%+37.5万円
410万円以上 770万円未満収入金額✕15%+78.5万円
770万円以上収入金額✕5%+155.5万円
公的年金控除額速算表(65歳未満)
公的年金等の収入金額公的年金等控除額
130万円未満70万円
130万円以上 410万円未満収入金額✕25%+37.5万円
410万円以上 770万円未満収入金額✕15%+78.5万円
770万円以上収入金額✕5%+155.5万円

雑所得の金額は原則として総合課税され総所得金額に含まれます。

退職所得

退職所得は退職により受け取る給与(退職手当)のことをいいます。

退職所得の金額の計算方法は次の通りです。

  • 退職所得の金額=(収入金額ー退職所得控除)✕1/2

退職所得控除は退職手当等を取得した者の勤続年数を基礎として次の計算式によって計算されます。

  • 勤続年数20年以下の場合
    • 40万✕勤続年数(最低80万円)
  • 勤続年数20年以上の場合
    • 800万+70万✕(勤続年数ー20年)

退職所得の金額は分離課税され退職所得金額に区分されます。

一般に退職所得はその支給時に所得税、住民税が源泉徴収されて納税が完了します。

山林所得

山林所得とは(保有期間が5年以上の)山林の伐採または譲渡による所得です。

※保有期間が5年以下の山林の伐採・譲渡については事業所得または雑所得に分類されます。

山林所得の金額の計算方法

  • 山林所得の金額=総収入金額ー必要経費ー特別控除額

山林の譲渡による所得は過去の累積費用が必要経費となり特別控除枠として最高50万円を控除することができます。

山林所得の金額は分離課税され山林所得に区分されます。

損益通算・損失の繰越控除

損益通算は一定の所得に損失が生じた場合、その損失分を他の所得の黒字から他の特定の所得の赤字とを一定の順序に従って差し引きしして計算することです。以下の所得の損失が対象となります。

  • 不動産所得
  • 事業所得
  • 山林所得
  • 譲渡所得

また損益通算を行っても残ってしまった損失のことを純損失と言います。

純損失の金額は特定の場合に限り翌年以降3年間繰り越して、その年の所得金額から控除することができます。これを純損失の繰越控除といいます。

所得の合算・課税標準の算出

総合課税金額(総合課税される所得を合算)と分離課税のそれぞれの金額を算出します。

総合課税については総所得金額を計算します。

  • 利子所得+配当所得+不動産所得+事業所得+給与所得+総合短期譲渡所得+雑所得+
    (総合長期譲渡所得+一時所得)✕1/2

分離課税については総合課税されるものと別に計算します。

  • 分離短期譲渡所得
  • 分離長期譲渡所得
  • 株式等に係る譲渡所得
  • 山林所得
  • 退職所得

所得控除・課税所得金額の算出

所得控除とは各所得の金書きでは考慮されない個人の生活上の支出を考慮したものです。

所得控除の控除額は課税標準から控除され控除した後の金額が課税所得金額となります。

所得控除には次のようなものが含まれれます。

雑損控除

雑損控除とは納税者または納税者と同一生計の親族で総所得金額等が38万円以下の者の有する資産について災害または盗難等により損失を受けた場合に一定額が控除できるものです。

医療費控除

医療費控除とは納税者本人または配偶者、その他同一生計の親族の医療費を支払った場合一定額が控除されるものです。

医療費控除として控除される金額は次のように計算されます。

  • 控除額=(医療費ー保険金等で補填される金額)ー10万円

通常10万円を超える部分が対象となりますが、その控除額が200万円を超える場合は200万円が限度となります。

医療費控除の申請は年末調整では無く確定申告により申請します。

社会保険料控除

社会保険料控除とは納税者が各年において事故または自己と同一生計の親族の負担すべき社会保険料を支払った場合や給与から控除された場合に支払った金額または控除された金額(全額)を控除するものです。

控除の対象となる社会保険料には次のようなものがあります。

  • 健康保険の保険料
  • 国民健康保険の保険料
  • 国民年金の保険料
  • 厚生年金保険の保険料
  • 雇用保険の保険料

小規模企業共済等掛金控除

小規模企業共済等掛金控除とは納税者が各年において小規模企業共済等の掛け金を支払った場合に支払った金額(全額)を控除するものです。

小規模企業共済契約、心身障害者不要共済の掛金に基づく掛金のことを言います。

小規模企業共済は僕も個人事業主として独立したタイミングで加入しました。節税効果も高く、仕組みを理解しておけば損する心配も無いためとてもおすすめです。

生命保険料控除

生命保険料控除とは一般的に民間の保険会社と契約している生命保険料から一部の金額が控除される仕組みです。民間の保険会社で代表的な会社は以下のような会社があります。

  • 日本生命保険相互会社
  • 住友生命保険相互会社
  • 明治安田生命保険相互会社

これらの生命保険会社に対して年間に支払っている生命保険料が控除される訳ですが、生命保険料と一言に言っても実はその中でも大きく3つの項目に分けれられています。

  • 生命保険料控除
  • 介護医療保険料控除
  • 個人年金保険料控除

細かな計算方法は割愛しますが、「生命保険料控除」「介護医療保険料控除」「個人年金保険料控除」のそれぞれに対して上限が4万円まで控除されています。なので「生命保険料控除」「介護医療保険料控除」「個人年金保険料控除」を全て上限額まで控除されていれば控除額は最大で12万円になります。

ちなみに、個人的には生命保険契約はほとんど必要無いと考えています。勿論、家族構成にもよりますが「本当に生命保険は必要なのか?」「どのリスクに対してどの程度の保険が必要か?」を見極めなければ、無駄な支出になってしまうかもしれません。

実は過去に生命保険に加入していた時期もあるのですが、2015年頃から生命保険への加入に疑問を持つようになり、また賃貸物件の購入に伴い団体信用生命保険に加入したことも踏まえ、それ以降は生命保険には加入していません。

生命保険料控除は年末調整または確定申告時に申請します。

地震保険料控除

地震保険料控除とは納税者が各年において地震保険等に係る保険料等を支払った場合に一定額が控除されるものです。

地震保険についても基本的には加入する必要は小さいと思います。地震のリスク地域により違いますが「本当に地震保険の加入が必要か?」「地震保険に加入したとして満足できる保証が受けられるか?」など適切な判断が必要です。

地震保険料控除は年末調整または確定申告時に申請します。

ちなみに、以前は火災保険も所得控除の対象とされていましたが、2006年(平成18年)の税制改正により損害保険料控除が廃止されたことにより、2007年(平成19年)以降は所得控除の対象外となってしまいました。

寄附金控除

寄付金控除とは納税者が各年において特別寄付金を支出した場合に一定額を控除するものです。

障害者控除

障害者控除とは納税者が障害者である場合、もしくは障害者である控除対象配偶者または扶養親族を有する場合、一定額を控除するものです。

障害者控除の金額は次の通りです。

  • 一般の障害者:27万円
  • 特別障害者:40万円

障害者控除は年末調整または確定申告時に申請します。

寡婦控除と寡夫控除

障害者とは一定以上の精神または身体に障害がある者等をいいます。特別障害者とは障害者のうち精神または身体に重度の障害が有るものをいいます。

寡婦控除および寡夫控除とはとは納税者が寡婦または寡夫(夫を無くした妻、または妻をなくした夫)である場合に一定額を控除するものです。

寡婦控除、寡夫控除の金額は次の通りです。

  • 寡婦または寡夫:27万円
  • 特定の寡婦:35万円

寡婦控除および寡夫控除は年末調整または確定申告時に申請します。

勤労学生控除

勤労学生控除とは納税者が勤労学生である場合に一定額を控除するものです。

勤労学生控除は年末調整または確定申告時に申請します。

配偶者控除

配偶者控除とは納税者が控除対象配偶者を有する場合に一定額が控除されるものです。控除対象配偶者には一般控除対象配偶者と老人控除対象配偶者があります。控除対象外配偶者とは生計を一にする配偶者のうち合計所得金額が38万円以下の者かつ原則として青色申告の事業専従者として給与の支払いを受けていないこと、または白色事業専従者でないことが要件です。

老人控除対象配偶者とは控除対象配偶者のうち年齢が70歳以上である者をいいます。

配偶者控除の金額は次の通りです。

  • 一般の控除対象配偶者:38万円
  • 老人控除対象配偶者:48万円

配偶者特別控除

配偶者特別控除とは納税者と同一生計の配偶者でその年分の合計所得金額が76万円未満である者を有する場合に一定額(最高38万円)が控除されるものです。ただし同一生計の配偶者が控除対象配偶者に該当する場合は適応されません。

配偶者特別控除は納税者本人の合計所得金額が1,000万円以下でなければ適用を受けることができません。

扶養控除

扶養控除とは納税者が扶養親族を有する場合に一定額を控除するものです。扶養控除の対象となる扶養親族は扶養親族の合計所得金額が38万円以下のものかつ青色事業専従者でないこと等が要件です。

扶養控除は年末調整または確定申告時に申請します。

基礎控除

基礎控除とは納税者であれば一定額(38万円)が控除されるものです。

税額控除

税額控除は算出税額から一定額を控除するもので次のようなものが含まれます。

  • 配当控除
  • 住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)
  • 認定NPO法人寄附金特別控除
  • 公益社団法人等寄付金特別控除
マイホーム購入の最強の味方!住宅ローン減税とすまい給付金の仕組み
2014年4月より消費税が5%から8%に引き上げられます。住宅を購入する場合も購入金額が高くなると思われますが、場合によっては得するケースもあります。その主な理由は以下の2つの住宅政策です。 住宅ローン減税 すまい給付金意外と知られていない...

年末調整の提出

会社員や公務員のような給与所得者は11月頃までの間に勤務先に対して年末調整の書類に情報を記入の上、提出しなければなりません。

年末調整の目的は「納める税金を確定させるため」です。

通常、所得税の金額はその年の1月1日〜12月31日までの所得額に基づいて計算されます。

基本的には毎月給与が支給されるタイミングで源泉徴収されることによって適切な処理がされるのですが、以下のような理由により年間の納税額が変動するため微妙に差額が出ることがあります。

  • 生命保険や地震保険の加入状況の変化
  • 配偶者、扶養親族の人数の増減

つまり「会社側では把握しきれない個人の細かな情報を集約し適切な納税(控除)をする」ための手段のことで、このような情報を1年間の最後に整理することで、適切な納税をしている訳なんですね。

なお必要な提出書類には主に以下の3点です。

  • 給与所得者の保険料控除申告書
    • 生命保険料控除、地震保険料控除、社会保険料控除、小規模企業共済控除を受けるために必要な書類
    • 生命保険料控除には生命保険料控除、介護医療保険料控除、個人年金保険料控除が含まれる
  • 給与所得の扶養控除等(異動)申告書
    • 配偶者控除、扶養控除、障害者控除、寡婦控除、寡夫控除、勤労学生控除などを受けるために必要な書類
    • 該当者がいない場合も提出が必要になる
  • 給与所得者の配偶者控除等申告書
    • 配偶者控除を受けるために必要な書類
    • 該当者のみが提出する

他にも住宅ローン減税の申告書(住宅借入金等特別控除申告書)や途中入社の場合は前職での源泉徴収票を提出しますが、会社員や公務員でも個人で確定申告をする場合は保険料控除申告書の提出は不要です。理由は保険料控除申告書に記載する全ての情報を確定申告書に記入できるからです。

ただし、扶養控除等(異動)申告書については確定申告書の提出するしないに関わらず、必ず提出しなければいけません。

源泉徴収

一定の所得の支払者はその支払の際に所定の所得税を徴収しその徴収の日の翌月10日までに
国に納付しなければなりません。この一定の所得の支払者を厳選徴収義務者といいます。

給与、報酬、利子、配当などの支払者は支払先の住所、氏名、支払金額などを記載した書類を所轄税務署に提出しなければなりません。

この書類を法定調書といいます。法定調書の主なものに支払調書、源泉徴収票があります。

源泉徴収票を読み返してみました〜実績値をもとに解説します〜
新年と言う事で少し気が早いですが、確定申告の準備をしないとなぁ…と思いつつ去年の申告内容を見返していました。去年は不動産会社の方に作成して頂いたので正直余り理解できていなかったのです。※今回は確定申告については記載致しません。源泉徴収票の見...
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所得税の申告と納付

所得税の納付義務は原則として1年の終了時に確定します。

ただしその時点ではまだ具体的な納付税額は決定していません。

実際に納付すべき所得税の金額、または還付を受けるべき所得税の金額を確定する手続きが確定申告です。

確定申告

確定申告とは(前年分の)1年間の収入に対して、支払うべき所得税および住民税の金額を確定させる手続きの事です。

前年分の収入に対して、その翌年の2月16日~3月15日までの一ヵ月間で確定申告を行い合わせて所得税を納付しなければなりません。

なお、コロナウイルスの影響により、2019年度分の確定申告に限り、申告期限が2020年の4月16日(木)までに延長されました。

  • 所得税の確定申告期限
    • 2020年3月16日(月)→2020年4月16日(木)に延長
  • 消費税の確定申告期限
    • 2020年3月31日(火)→2020年4月16日(木)に延長

※「青色申告申請書の提出期限」や「贈与税の申告期限」については、特に申告期限の延長は無く、2020年3月16日(月)のままです。

会社員等の確定申告

給与所得者は通常、年末調整により税額が精算されます。

ただし次の場合などには給与所得者も確定申告が必要になります。

  • 不動産所得や事業所得のように給与所得以外の所得があった場合
  • 給与所得が年間2,000万円を超えている場合
  • 給与所得以外の所得(副業所得)が年間20万円以上の場合
  • 2ヶ所以上の会社などから給与を受け取っている場合
  • 住宅ローン減税を受ける場合(1年目のみ確定申告が必要)

個人事業主の場合は確定申告はほぼ必ず必要になりますし、会社員でも不動産所得やその他の副業所得があれば確定申告を提出しなければいけません。

電子申告(e-Tax)

所得税の確定申告を電子申告により行う場合は医療費の領収書や源泉徴収票等はその記載内容を入力して送信することにより提出または提示を省略できます。

※確定申告期限から5年間は税務署から書類の提出または提示を求められる場合があります。

青色申告

青色申告制度とは納税者に正しい申告を行わせるため記帳習慣を確立させることを目的とする制度です。青色申告には次のような特典が認められています。

  • 青色申告特別控除
  • 青色事業専従者給与
  • 各種引当金繰入
  • 純損失の繰越控除または繰戻還付

青色申告特別控除とは不動産所得、事業所得または山林所得の金額から10万円または65万円が控除できる制度です。10万円の控除は青色申告者であれば誰でも適用されますが65万円の控除は一定の要件を満たしている必要があります。

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個人住民税

住民税とは道府県民税と市町村民税の両方を合わせた税金のことをいいます。道府県民税には都民税が市町村民税には特別区民税が含まれます。

住民税の特徴

住民税には次のような特徴があります。

前年所得課税

前年の所得をもとに課税される。前年の所得に対して当年度に税額を支払う。

利子割、所得割、均等割

個人引退する住民税には、利子割、所得割、均等割などがある

  • 均等割:所得の大小に関係なく均一に課される
  • 所得割:前年の所得金額を基礎として計算される
  • 利子割:預貯金の利子の支払の際に特別徴収される5%の住民税のこと。

賦課課税方式

住民税は賦課課税方式を採用(原則として納税者本人が申告する必要はない)

住民税の計算

住民の所得金額の計算では前年分の所得税における所得金額が使用され、ほぼその金額が住民税の所得金額となります。

住民税における所得控除も所得税と同じようにあります。所得控除は所得税と同じ扱いをするものと異なる扱いをするものとがあります。また住民税においても税額控除、外国税額控除などがあります。

住民税の納付

住民税の納付方法は以下の2種類に分けられます。

  • 普通徴収
    • 給与所得分の住民税は会社経由(給与からの天引き)で住民税を納税する
    • 副業収入(不動産収入など)分は自分で住民税を納税する
  • 特別徴収
    • 会社経由(給与からの天引き)で住民税を納税する

普通徴収は原則として6月、8月、10月、翌年1月の4回に分割納付する方法です。特別徴収は給与所得者については12回に分割し毎月の給与から徴収していくという方法です。

ちなみに「会社員をしながら不動産収入や副業収入を得ているが、できれば会社にはばれたくない」と考える人も多いと思います。その場合は確定申告をする際の納付方法で「普通徴収」を選択しなければいけません。

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さまざまな分野と関わりをもつ税金の知識

かなり長文の記事になりましたが、最後まで読んで頂き大変有難うございます。

ここまでのボリュームの多さからも分かるように、タックスプランニングの分野は覚える範囲ととても多いです。恐らく、FP技能検定の他の5分野と比べても最も多い分野であり、また毎年のように法改正され、その度に覚え直す必要があります。

ただそれでもタックスプランニングの分野で覚えた知識は極めて役に立つ内容が多く、家族や友人に対して「ちょっとしたアドバイスができる」まさにすぐに使える知識が沢山あります。

また、タックスプランニングの知識を持っていれば、もし以下のような職業の人と何かやりとりをすることになっても、とてもスムーズに会話を進めることができます。

  • 生命保険会社の営業、保険募集人
  • 不動産販売会社の営業
  • 税理士
  • 勤め先の会社の経理担当者
  • 個人事業主
  • 不動産経営者、投資家

過去にAFPを取得した僕ですら「○○の税率はどうだったかな?」と覚えきれない部分もありますが、今までも何度も役に立ってきました。

このブログを継続する上でも結構お世話になった知識の一つです(笑)。

今後も、自分の大切な資産を守るために、しっかり理解したいと思います。

不動産経営とファイナンシャルプランナーの繋がりについて
最近よく「ファイナンシャルプランナー」と言う肩書きの方とお話しする機会が増えてきています。個人的にもどのような業務内容なのか興味があり少し調べてみることにしました。そもそもファイナンシャルプランナーとはファイナンシャルプランナーとは、顧客(...

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