「楽待」のような収益物件の検索サイトで物件を調べていると「土地の権利」について記載されています。
建物の敷地となる土地を扱う場合、以下のどちらかの権利形態には分類されます。
- 所有権…土地を自身で所有して、その上に建物を建築する
- 借地権…土地を地主から借りて、その上に建物を建築する
今回は借地権の特徴や注意点について解説します。
ちなみに、あなたは「賃借人」とか「賃貸人」と聞いて、すぐにその人の立場を把握することはできますでしょうか?
僕は少し苦手です。どっちがどっち?ってなってしまいます。。。
この記事では「賃貸人」「賃借人」という言葉をなるべく使わず「土地を貸す人」や「土地を借りる人」という分かりやすい言葉を心がけています。
専門知識を持っている人からしたら、文章が無駄に長くなるためストレスに感じてしまうかもしれませんが、普段から「賃貸人」「賃借人」という言葉に馴染みのない人のためにも、なるべく分かりやすく解説したいと思います。
- 借地権の仕組みについて知りたい初心者の人
所有権と借地権の違いは?
自分で土地を購入することで「所有権」を得ることができます。土地の所有権があれば、土地を自由に活用することができますし、登記簿謄本の所有者情報も自分の情報を記載することになります。
一方、「借地権」とは他人の保有している土地を借りて、その土地の上に自分の建物を建てる権利のことです。「土地の所有権」は土地所有者が保有したままで、建物の所有者はあくまで「土地を利用する権利」だけを得ることになります。
借地権は「建物の所有」を目的とする土地を借りる権利に限られるため、以下の権利の総称するものです。
- 地上権
- 土地の借地権
一方、以下のようなケースでは借地権は適応されません。
- 一時使用目的の場合(仮設住宅など)
- 使用借地の場合(無償の賃借など)
- 建物所有を目的としない場合(屋外駐車場など)
僕が最初に「借地権付き物件」という言葉を聞いた時の印象は以下のようなものでした。
土地の所有者側の一方的な都合で立ち退きを強いられたり更新契約を拒否されたりとマイナスの影響が出るんじゃ無いだろうか?
ですが、いろいろ調べてみることで同じ「借地権」でも「普通借地権」と「定期借地権」で全然話の内容が変わることが分かりました。
普通借地権と定期借地権
平成4年8月1日に借地借家法が施行され、以下の法律が一本化されました。
- 改定前(平成4年7月31日以前)…旧借地借家法
- 建物保護法
- 借地法
- 借家法
- 改定後(平成4年8月1日以降)…新借地借家法
- 普通借地権
- 定期借地権
- 一般的借地権
- 建物譲渡特約付借地権
- 事業用定期借地権等
- 一時利用目的の借地権
旧借地借家法は、本来立場が弱くなってしまう賃借人(土地を借りる側)を保護するために生まれた法律でした。
ですが、その結果、一度、地主が土地を貸すと、その土地を取り返すのに賃貸人(土地を貸す側)は、とても苦労してしまい、土地を供給してくれる土地所有者が減ってしまいました。
その対策として、今度は土地所有者側の権利を守るために、新借地借家法が生まれました。
土地の引き渡しルールの明確化
改定後の改正借地借家法では、これまでの「普通借地権」ではなく「定期借地権」が一般的になります。また「事業用借地権」「建物譲渡特約付借地権」「一時利用目的の借地権」などにより、土地の引渡しのルールをより明確化することができるようになりました。
旧借地借家法は賃借人(土地を借りる側)が有利になる法律であったことに対して、改定後の改正借地借家法は土地の貸し主(借地人)を守る法律と言えます。
借地権付き物件のメリットとデメリット
借地権付きの物件でも賃貸経営は可能です。
特に大きな問題はありませんが、それぞれにメリットとデメリットがあります。
借地権付き物件のメリット
借地権付き物件のメリットには以下のようなものがあります。
- 販売価格や安くなり高い利回りが見込める
- 人気物件の場合は競合が減る
土地代が含まれていないため価格が安くなります。
勿論、その分、利回りも高くなりますし、土地代分の固定資産税や都市計画税が不要になるため、その分、税金が安くなります。
逆に言えば「販売価格が安いな?」「利回りが高いな?」と思った場合は、まず借地権付き物件であるかどうかを疑います。
借地権付き物件であることに気付かずに契約を進めてしまうなんてことが無いように注意が必要です。
また、人気物件の場合、競合が減ることも魅力の一つです。
仮に良い条件の物件を見つけたとしても、借地権付き物件だという理由で敬遠する家主も一定数いるため「借地権付き物件でも条件が良ければ購入する」と考えられるのであれば、その分、選択肢は増えます。
借地権付き物件のデメリット
一方、借地権付き物件にはデメリットも存在します。以下のようなことが該当します。
- 物件評価額が下がる
- 地代と更新料が必要となる
- 利用用途の自由度が制限されることがある
物件評価額が下がる
万が一、物件所有者側が土地所有者に対して地代を支払わない等のトラブルがあれば、最悪の場合、借地権契約が解除される恐れがあります。
借地権契約が解除されてしまうと、物件所有者側も正常に賃貸経営を行えなくなるため、融資元の金融機関側からすると懸念点となり、その分、物件評価額が下がる可能性があります。
地代と更新料が必要になる
勿論、地代は契約時に意識すると思います。
当然、入居者から得られる月々の賃料から地主に支払うべき地代を差し引いた金額をもとに利回り計算を進めます。
ですが、意外と見落としがちなのが更新料です。
地域によっては更新料が不要なエリアもありますが、一般的には土地の価格の5%〜10%であるため、土地の価格によっては、数百万単位での出費になることもあるため、正確に把握しておく必要があります。
また更新料の他にも、状況の応じて、以下のような一時金が必要になるケースもあります。
- 譲渡承諾料
- 建て替え承諾料
- 増改築承諾料
これらの一時金も土地ごとにそれぞれ異なるため、必ず契約前に確認しておかなければ、とても大きな負担になってしまいます。
自由度の制限も?
もし、契約内容に用途の制限があれば、その範囲での利用に限られてしまいます。
例えば土地賃貸借契約書に以下のような記載があるケースもあります。
- 共同住宅(アパート、マンションなど)の建築不可
- 増改築不可、再建築不可、リフォーム不可
もし賃貸経営を想定した共同住宅の建築ができないにも関わらず、入居者を募集し部屋を貸した場合は「無断転貸」になりますし、増改築や再建築ができない場合は、建物が老朽化したタイミングで打てる手がかなり限られてしまいます。
土地の所有者と交渉することで条件を緩和できる場合もありますが、承諾料が必要になることもあります。
契約内容の合意が重要
借地権付き物件で賃貸経営を行う場合、土地所有者と契約内容についてしっかりと認識合わせをしなければいけません。
例えば以下のようなことは必ず合意を取り明確にしておくべきです。
- そもそも賃貸経営をしても良いのか?
- 契約期間満了時のルールはどのようになっているのか?
- 更新期間や更新の可否のルールは?
- 原状回復やのルールは?
- 土地代や更新料の値上げの可能性はあるのか?
利用用途や契約期間についてはなるべく明確な合意を取っておかないと後からトラブルになってしまうと契約が打ち切られてしまったり、物件を取り壊さなくなってしまうかもしれません。
土地代や更新料については、将来の景気や物価によって変動しますし、土地所有者としても固定資産税や都市計画税が値上がりしたしまう場合もあるため、確実に約束することは難しいかもしれませんが、土地代や更新料にそれなりの必然性や合理性を求めることはできるはずです。
これは僕の個人的な意見ですが、これまで何度も物件の購入を経験している家主であれば良いと思いますが、経験値が浅い新米大家が手を出すのは少し参入障壁が高いと思います。
ただでさえ「利回りはどうか?」「空室リスクは許容範囲内か?」「修繕費用は莫大にならないか?」という賃貸経営の基本的な項目を網羅するだけでも大変な上に、借地権付き物件の注意点までしっかりと把握するのは大変だと思います。
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