中古物件の減価償却費の計算方法と売買戦略の注意点について

節税方法

この記事を読むのに必要な時間は約 6 分 11 秒です。

賃貸経営の経費計上において、減価償却費はもっとも大きなボリュームを占めます。

勿論、賃貸経営を成功させるには「空室対策」や「融資条件」など大切なポイントがありますが、これら対応については「自分一人ではコントロールしずらい」側面も持っています。

つまり外的要因に左右される可能性がある訳です。

一方、減価償却費の経費計上については「(建物部分の)購入価格」や「法定耐用年数」をもとに算出するため、「○年後に○万円の減価償却費を計上できる」ということを、高い精度で見込むことができます。

今回は中古物件を中心に賃貸経営で重要となる「減価償却費を考慮した経費計上」について、まとめてみました。

  • 中古物件の法定耐用年数の計算方法を知りたい人
  • 減価償却費を上手く活用し賃貸経営を成功させたい人
スポンサーリンク

減価償却費とは

減価償却費とは不動産や車のように高額な固定資産を購入した場合、1年間で使い切るのでは無く、数年間〜数十年間の間継続して利用することになります。

マンションやアパート以外にも車や家電製品などにも適応されますが、逆に価値が下がらない「土地」については減価償却は適応されません。

  • 建物部分
    • 減価償却費の計算対象に含められる
  • 土地部分
    • 減価償却費の計算対象に含められない

なお、減価償却費の基本的な考え方についてはこちらの記事で詳しく説明しています。

中古物件の法定対応年数

建物の構造ごとに法定対応年数は変わります。基本的には「物件の品質が高ければ高い分、減価償却期間も長くなる」という考え方に基づいています。

具体的な法定対応年数は以下の通りになります。

減価償却の法定耐用年数
物件の種類耐用年数
鉄筋コンクリート(RC)47年
重量鉄骨34年
軽量鉄骨27年
木造22年

ただし、中古物件を新たに取得した場合、減価償却費の計算方法が少し変わります。

  • 物件取得時の使用可能期間をもとに算出する見積法
  • よりシンプルに算出できる簡便法

物件取得時の使用可能期間をもとに算出する「見積法」を採用することが一般的ですが、算出が難しい場合は「簡便法」で算出します。

簡便法による計算方法

簡便法による減価償却期間の計算方法は以下の通りです。

  • 法定耐用年数が経過していない中古物件の場合
    • (法定耐用年数ー経過年数)+経過年数✕20%
  • 法定耐用年数が経過した中古物件の場合
    • 法定耐用年数✕20%

法定耐用年数がまだ残っている(経過していない)場合と、既に法定耐用年数が経過してしまっている場合で若干計算方法が変わりますが、基本的な考え方は同じです。また、算出結果の1年未満の端数部分は切り捨てになります。

具体的な計算方法

例えば「築年数が15年経過した木造物件」と「築年数が25年経過した木造物件」の2パターンをもとに、減価償却期間を算出してみると以下のようになります。

  • 築年数が15年経過した木造物件の場合
    • (22年ー15年)+15年✕20%=10年
  • 築年数が25年経過した木造物件の場合
    • 22年✕20%=4.4年(1年未満を切り捨てるため4年)

設備の法定対応年数

減価償却費の内訳をもう少し細かく分けると、以下の2項目に分けることができます。

  • 建物部分
  • 備え付けの設備や付属品

新築物件の場合、設備や付属品の減価償却期間は15年で計算されますが、中古物件の場合は、建物部分と同じ減価償却期間となるのが一般的です。

スポンサーリンク

減価償却費の注意点

物件(厳密には建物部分)の購入価格が確定した時点で、減価償却費として計上できる合計金額も決まります。

後はその減価償却費を「何年間に分けて計上するか?」の問題になります。

減価償却期間は短い方が良い?

減価償却期間と経費計上額は以下のような関係性になります。

  • 減価償却期間が短い場合
    • 1年間で計上できる減価償却費は大きくなる
  • 減価償却期間が長い場合
    • 1年間で計上できる減価償却費は小さくなる

減価償却期間が短ければ、1年間で計上できる減価償却費が大きくなるため、その分、利益を抑えることができます。

利益を抑えることができれば所得税や住民税を抑えることにも繋がるため納税後のキャッシュフローは大きくなります。

ただし、(当然のことですが)減価償却期間が終わったしまえばその分の経費計上はできません。その結果、利益が拡大し、所得税や住民税の負担も大きくなってしまいます。

当然、キャッシュフローも悪くなります。

つまり「減価償却期間は短い方が良いか?」または「減価償却期間は長い方が良いか?」はケースバイケースであり、その後の戦略により変わります。

長期譲渡所得と短期譲渡所得

もし当初の見込み通り「希望の時期に希望の金額で売却できた」としても、もう一つの注意点があります。

それば譲渡所得です。

譲渡所得の計算方法は以下の通りです。

  • 譲渡所得=売却価格ー譲渡費用ー購入価格ー取得費用ー減価償却費の合計

たまに、購入価格(購入価格+取得費用)よりも売却価格(売却価格+譲渡費用)の方が安ければ、譲渡所得は発生しないと勘違いしている人がいますが、それは誤りです。

仮に購入価格と同じ価格で売却できたとしても、減価償却費を経費計上している場合、その分は譲渡所得として計上されてしまいます。

譲渡所得の所得税を計算する上で「譲渡(売却)する物件の所有期間」が大きなポイントになります。

  • 売却物件の所有期間が5年未満
    • 短期譲渡所得となり所得税および住民税が高くなる
  • 売却物件の所得期間が5年以上
    • 長期譲渡所得となり所得税および住民税が安くなる

具体的な税率については以下の通りです。

短期譲渡所得と長期譲渡所得の税率の違い
 短期譲渡所得長期譲渡所得
所有期間所有期間5年以下所有期間5年超
所得税30.63%15.315%
住民税9%5%
合計39.63%20.315%

なお、2013年〜2037年までの間は、復興特別所得税として「基準所得税額×2.1%」が追加で課されます。

つまり、仮に築古の木造物件を取得し、減価償却期間が4年で終了したとしても、そのタイミングで売却してしまうと、短期譲渡所得として40%近く(39.63%)の税金が課せられるため、譲渡所得が発生する場合は注意が必要です。

デッドクロスを避けるには?

不動産経営におけるデッドクロスとは「元金の返済額が減価償却費を上回ってしまうこと」です。

一般的に賃貸経営のために物件を購入するには、金融機関からの融資を受けることになります。

そして、中古物件のように減価償却期間が短い物件を購入する場合、減価償却期間よりもローン融資期間の方が長くなる傾向にあります。

つまり「経費計上できる減価償却費は残っていないにも関わらず、借金だけが残った状態」に陥ってしまいます。

その結果、キャッシュフローが回らなくなり、最悪の場合、黒字倒産に繋がってしまう恐れがあります。

なお、デッドクロスの仕組みについてはこちらの記事で詳しく説明しています。

スポンサーリンク

減価償却と出口戦略の関係性

減価償却を有効に活用するには「戦略」が重要です。

「戦略」と聞くと、とても高度な分析が求められそうですが、もう少しシンプルに表現すると「将来の見通し」と考えれば良いと思います。

より広い視野での戦略が必要

例えば以下のような戦略が考えられます。

  • 物件の追加購入を検討する
  • 物件の売却を検討する
  • 物件のリフォームを検討する

また、減価償却費はあくまで経費の中の一つなので、その他の経費計上項目も踏まえて総合的に戦略を立てる必要があります。

少し難しいですが、個人的にはここが「賃貸経営の面白いところ」の一つだと思います。

戦略の妥当性も大切

いくら立派な戦略を建てても、それが実現できなければ意味がありません。

そして、その「戦略の実現」には自分一人の努力ではどうにもならないことが多々あります。

例えば、減価償却期間の終了と同時に「対象物件を売却しよう」と考えるのは、ごく自然な考え方です。ですが、実際に「そのタイミングで希望価格に近い価格で物件が売却できるか?」は全く別の問題です。

仮に購入希望者がいたとしても、そのタイミングでスムーズに融資が下りるとは限りません。

不動産市場が冷え込んでいて、全体の相場が下がってしまっているかもしれません。

減価償却期間が終了するタイミングで売却を検討することは悪いことではありませんが「必ず売却することを前提」で物事を考え過ぎると、いざ、売却するタイミングでは希望額で売却できず、却って損失を拡大してしまう恐れもあります。

プロフィール

楽待新聞&不動産投資Libraryのコラムニストをしています。
普段、不動産投資家として考えていることや体験談などを掲載しています。
これから不動産投資を始めたい方や、賃貸経営初心者の方に対して、分かりやすい内容を心掛けています。

西本 豪をフォローする
この記事が気に入ったら
いいね!しよう
最新情報をお届けします。
節税方法
スポンサーリンク
不動産投資ライフ

コメント