アパート投資で買ってはいけない物件10選|見抜き方チェックリストと表面/実質利回りの罠・回避策

アパート投資で買ってはいけない物件10選|初心者大家が見抜くべき落とし穴と回避策 物件取得・評価・収益計算
この記事は約31分で読めます。

戸建てや区分マンションの次に「一棟アパート投資」を検討する初心者大家にとって、「買ってはいけない物件」を見抜く力が投資の成否を分けます。表面利回りの高い物件には、旧耐震基準・再建築不可・サブリース契約・借地権・市街化調整区域・擁壁・接道不良・プロパンガスの契約など、後で気づいても取り返しのつかない落とし穴が潜んでいます。

この記事では、買ってはいけない物件を「物件そのもの・エリア・道路・契約・その他」の5つに分け、何をどの書類で確かめれば落とせるかを整理します。同じ「再建築不可」でも、接道が2mに足りないのか、2mはあるが条例で共同住宅が建たないのか、登記は共同住宅でも建築基準法上は長屋なのかで、建て替えの可否と規模が変わります。

この記事は以下のような方におすすめです!
  • 戸建て・区分マンションの次にアパート一棟投資を検討している初心者大家
  • 高利回りに惹かれて再建築不可・接道不良・市街化調整区域の物件を見ている方
  • サブリース契約・借地権・プロパンガス無償貸与の落とし穴を知りたい方
  • 事故物件の告知義務(国交省ガイドライン・2021年10月策定)の運用ルールを知りたい方
  • 2024年公表の消滅可能性自治体744件と賃貸需要の実態を把握したい方
  • 接道2mはあるのに「アパートは建て替えられない」と言われる理由と、擁壁・検査済証の確認方法を知りたい方
🎯 30秒でわかる本記事の要点(買ってはいけない物件10選)
  1. 旧耐震基準(1981年5月31日以前の建築確認):融資と保険の条件は金融機関・保険会社ごと。確認日は確認済証で確かめる
  2. 再建築不可:建築基準法上の道路に2m以上接していない土地。43条2項の許可は建物ごとで、次の買主が同じ許可を取れる保証はない
  3. 建て替えで同じ規模が戻らない物件:接道2mはあっても、条例の接道(共同住宅は4m)・前面道路の容積率・防火地域・北側斜線で、今の戸数が建たないことがある
  4. 20㎡以下の極小物件:需要が単身に限られ、家賃下落の圧力が強い
  5. 擁壁あり(高さ2m超):工作物として確認と検査の対象。検査済証と現況を確認
  6. 事故物件:賃貸は事案発生から概ね3年で原則告知不要、売買は期間の定めなし(国交省ガイドライン・2021年10月策定)
  7. 市街化調整区域:建てられるかは都市計画法34条・43条の許可の枠で決まる。建て替えも役所で可否を確認
  8. 消滅可能性自治体(744):人口戦略会議が2024年4月に公表。賃貸需要の局所性を確認
  9. サブリース契約あり:借地借家法32条の減額請求があり、「30年一括借上げ」でも賃料は見直される
  10. 借地権・プロパンガス:借地は旧法/新法の違い。LPガスは2024年7月2日施行の省令改正で過大な利益供与が禁止
読者
再建築不可って利回りが高いから、修繕しながら持ち続ければ問題ないんじゃないですか?
著者
持ち続ける間の家賃は取れます。効いてくるのは次の2点です。

  • 融資が付きにくい。担保は「道路に接する土地」として評価されにくく、買うときも売るときも現金の比重が上がる
  • 出口で買主が限られる。43条2項2号の許可は建物ごとで、次の買主が同じ許可を取れる保証がない

共同住宅として建て替えるなら、大阪府では接道4m、兵庫県(神戸市を除く)でも共同住宅部分200㎡超なら4mが要ります。まず、ここを満たす物件から見ます。

❓ 先に答え:買ってはいけない物件、最初に弾く3条件

10選の中でも即NGは①再建築不可で、許可の見込みを役所の事前相談で確かめられない(出口がない)②告知事項があり、価格に織り込まれていない ③表面利回りだけ高く、実質利回りが崩れているの3つです。表面利回りから経費・空室を引いた「実質」で判断し直すだけで大半の落とし穴は避けられます。チェックリスト全10項目と回避策を本文で解説します。

📕 Before:利回り・価格・築年数で候補を絞る
  • 「接道2m以上」と「アパートを建て替えられる」を同じことだと思っている
  • 登記の「共同住宅」を、建築基準法の用途だと思っている
  • 今と同じ戸数で建て替えられる前提で出口を考えている
  • サブリース・借地・LPガスの契約書は決済の直前に読む
📘 After:書類で落としていく順番を持つ
  • ①前面道路が42条のどの道路で、敷地が何m接しているか(道路種別の判定表)
  • ②建築基準法の用途(共同住宅か長屋か)を建築計画概要書で確かめる
  • ③建て替えたとき同じ規模が建つか(前面道路の容積率・条例の接道・防火地域・北側斜線)
  • ④サブリース・借地・LPガスの契約書を買付の前に読む
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🏠 1. 物件自体の問題|旧耐震・再建築不可・極小物件・擁壁・事故物件

📅 旧耐震基準(1981年6月1日が境界)|判定は建築確認の日で行う

新耐震基準は、1981年(昭和56年)6月1日以降に建築確認を受けた建物に適用されています。国土交通省は、それより前の旧耐震基準を「大地震時の検討が行われていない基準」と説明しており、新耐震基準は震度6強〜7程度の地震でも倒壊しないことを目標にしています。

  • 判定基準:建築確認を受けた日(確認済証・確認通知書の日付)が1981年6月1日以降か。登記の新築年月日は竣工の日付で、確認の日より後になるので判定には使わない
  • 確かめ方:確認済証の写しを売主から取り寄せるか、役所で建築計画概要書・台帳記載事項証明を閲覧する
  • 融資と保険:旧耐震の扱いは金融機関・保険会社ごとに違う。買付の前に事前審査と保険の見積で条件を確かめる
  • 耐震診断と補強工事:費用は建物ごとの見積で決まる。事業計画に先に入れておく
  • 木造は2000年基準も見る:2000年6月以降の基準で、地盤に応じた基礎・接合金物・耐力壁の配置が明確になった。見分け方は旧耐震・新耐震・2000年基準の違いと中古木造の見分け方で解説しています

🚧 再建築不可|初心者が手を出すべきでない3つの理由

再建築不可の物件とは、建築基準法上の道路に敷地が2m以上接していないため(43条1項)、今の建物を解体すると新築できない物件です。価格は相場より安く出ますが、次の3つの理由で初心者には向きません。

  1. 災害で建物を失うと建て替えられない:地震・火災で建物を失っても、43条2項の認定・許可が取れる見込みがない限り、土地の使い道が限られる
  2. 融資と出口が狭い:担保は道路に接する土地として評価されにくく、買主は現金で買える投資家に限られやすい
  3. 修繕で建物を維持し続ける前提になる:建て替えの選択肢がないので、雨漏り・傾き・配管の更新費用を先に見込む必要がある

43条2項2号の許可で建て替えられるか、許可の流れ・同意書・関西の包括同意基準・担保評価は再建築不可物件は投資で買えるか|43条2項2号の許可・融資・担保評価・出口とボロ物件の3大リスクで扱っています。

📐 20㎡以下の極小物件|ワンルーム投資の構造的弱点

  • 需要面:単身者しか住めず、ファミリー層を取り込めない。地方では単身需要そのものが薄い立地がある
  • 家賃下落リスク:空室時は同じ単身向けの競合と家賃で比べられる。周辺の募集事例で下落幅を確かめる
  • 例外的に検討できるケース:駅至近・大学/病院/工場の近く・学生街/オフィス街など、単身需要が局所的に厚い立地

🧱 擁壁あり(高さ2m超)|検査済証と現況を確かめる

高さ2mを超える擁壁は、建築基準法の工作物として確認と完了検査の対象です(法88条1項・施行令138条1項5号)。宅地造成や開発許可を受けて造った擁壁は、その許可の側で検査を受けます(法88条4項)。宅地造成は2023年5月26日施行の「宅地造成及び特定盛土等規制法」で規制され、区域名は「宅地造成等工事規制区域」「特定盛土等規制区域」です。

  • 検査済証:擁壁の工作物としての検査済証、または宅地造成・開発許可の検査済証があるか。建物の検査済証とは別の書類
  • 現地で見る項目:ひび割れ/はらみ/水抜き穴の詰まり/傾き/工法(重力式・もたれ式・L型など)/擁壁の所有者(自分・隣地・共有)
  • 古い擁壁:間知ブロック・大谷石・玉石積みなどは現在の基準に合わないことがある。造り直しが必要になったときの費用は、専門家の見立てで買付の前に把握する
  • 融資:検査済証の有無を含め、可否は金融機関の審査で決まる。事前審査で先に確かめる

👻 事故物件(心理的瑕疵)|国交省ガイドラインの告知義務

国土交通省は2021年10月8日に「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を策定しました(同年5〜6月に意見公募)。宅建業者が告げる必要のある人の死と、告げなくてもよい期間の考え方が整理されています。

死因・状況 賃貸契約 売買契約 備考
自然死・日常生活の中での不慮の死(転倒・誤嚥など) 原則告知不要 原則告知不要 特殊清掃などが行われた場合は告げる(賃貸は発覚から概ね3年経過後は原則不要、売買は期間の定めなし)
自殺・他殺など上記以外の死 事案発生から概ね3年経過後は原則不要 期間の定めなし 社会的影響が大きい場合は3年を超えても告げる
買主・借主から問われた場合 期間や死因にかかわらず告げる 同左 —
  • 告げる内容:事案の発生時期・場所・死因、特殊清掃などが行われた場合はその旨。氏名・年齢・住所・家族構成などは告げない
  • 投資判断:告知事項のある物件は、家賃の下落幅を近隣の募集事例で置き直してから利回りを引き直す。価格に織り込まれていなければ見送る
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🌏 2. エリアの問題|市街化調整区域・人口減少・ハザードマップ

🚫 市街化調整区域|建てられるかは都市計画法34条・43条の許可の枠で決まる

市街化調整区域は市街化を抑える区域で、建物の新築や建て替えは、開発許可(都市計画法29条・34条)か建築許可(同43条)の枠で決まります。開発許可を受けた区域以外では、都道府県知事等の許可がなければ、建物の新築・改築・用途変更ができません(43条1項。農林漁業用の建物や公益上必要な建物などの例外を除く)。

  • 34条11号(いわゆる50戸連たん):市街化区域に隣接・近接し、おおむね50以上の建築物が連たんしている地域のうち、条例で指定した区域での開発が対象。予定建築物の用途は条例で除外できるので、アパートが建つかは自治体の条例しだい
  • 既存建物の建て替え・用途変更:許可の対象になり得る。「今アパートが建っているから同じものを建て替えられる」とは限らない
  • コンパクトシティ政策:市街化調整区域での新規開発は抑制の方向
  • 判断基準:原則として購入対象から外す。検討するなら、都市計画課・開発指導課で建て替えの可否と条件を先に確認する

📉 人口減少地域・消滅可能性自治体744件(2024年)

2024年4月、民間有識者でつくる「人口戦略会議」は、全国の市区町村のうち4割超にあたる744自治体が「消滅する可能性がある」との報告書を公表しました。20〜39歳の女性人口が2050年に半減する見込みの自治体が「消滅可能性自治体」と定義されています。

  • 賃貸需要への直撃:人口減少地域では住宅需要が低下し、空室率上昇+家賃下落の連鎖
  • 確認すべきデータ:①住民基本台帳人口(直近5年の推移)/②20〜39歳女性人口の動向/③有効求人倍率/④地元産業(工場・大学・病院)の継続性
  • 例外的に検討可能:消滅可能性自治体でも、特殊立地(駅前/大学前/病院前/工場前)で需要が局所的に維持される物件は個別判断
  • 避けるべき:駅から遠く、地元産業が衰退傾向で、若年女性人口が継続減少しているエリアの物件

🌊 ハザードマップが不安な地域|浸水・土砂・液状化

  • 浸水想定区域:浸水深と避難所の位置を重ねるハザードマップで確認。火災保険の水災補償の条件は保険会社に確認する
  • 土砂災害警戒区域(イエロー/レッド):特別警戒区域(レッド)は建築物の構造に規制がある。融資の可否も金融機関に確認する
  • 液状化リスク:埋立地・河川氾濫域・砂質土+高地下水位の地点で発生しやすい
  • 確認方法:国交省「重ねるハザードマップ」/各自治体の防災マップ/J-SHIS地震ハザードステーション
  • 重要事項説明:2020年8月28日施行の宅建業法施行規則の改正で、水害ハザードマップにおける対象物件の所在地が重要事項説明の項目に加わった(売買・賃貸とも)
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🛣 3. 道路の問題|道路種別で「買える・条件付き・買わない」を分ける

道路は購入後に変えられない要素の筆頭です。しかも「公道か私道か」では判定できません。判定の軸は「建築基準法42条のどの道路に、何m接しているか」で、それによって再建築の可否、融資、出口が決まります。まず種別ごとの判定表を置き、続けて接道義務・43条但し書き・私道・2項道路・位置指定道路の順に、何を確認して何で切るかを整理します。

📋 道路種別の判定表|チラシの「接道」欄をこの表に当てる

前面道路の種別 判定 買付前に確認すること
42条1項1号(道路法の道路=国道・府道・市道)幅員4m以上 買える 接する長さ2m以上(共同住宅は大阪府で規模を問わず、兵庫県〈神戸市を除く〉で共同住宅部分200㎡超なら4m以上。長屋は原則2mのままで、各戸の出入口の通路条件がかかる。神戸市は耐火・準耐火でない長屋を路地状敷地に建てられない)。道路境界の確定
42条1項2号(開発道路)・3号(基準時からある道)・4号(2年以内の事業予定道路) 買える 開発道路が公道に採納されているか私道のままか。私道なら維持管理の負担者
42条1項5号(位置指定道路=私道) 条件付き 持分の有無と形(共有か短冊状か)、通行・掘削の承諾書と承継条項、指定図と現況幅の一致、私道上の放置物
42条2項(幅員4m未満の既存道) 条件付き 中心線の位置と後退面積、反対側が川・崖・線路なら一方後退、後退後の敷地で建ぺい・容積を再計算
43条2項1号の認定を受けた敷地(幅員4m以上の道に接する一戸建て・長屋など) 条件付き 認定は建築物ごとで延べ500㎡以内。令144条の4の基準を満たす道なら一戸建て・長屋・兼用住宅だけ。条例で接道が上乗せされる用途(大阪府の共同住宅など)は対象外。次の建て替えでも認定が要る
43条2項2号の許可が要る敷地(旧43条但し書き) 原則買わない(投資として買うなら許可の見込みを文書で) 包括同意基準に乗るか、通路所有者の同意、許可は建築物ごと、担保評価
未接道・通路のみ・接道2m未満 買わない 隣地の買い増しで2mを確保できる場合だけ例外
自動車専用道路・河川や林道の管理用の道・遊歩道 買わない 公道でも接道義務の道路にならない(43条1項1号ほか)。道路管理課と建築指導課で分けて確認

🚷 接道不良(建築基準法43条)|2mは最低ライン、共同住宅は条例で4m・長屋は通路の条件

建築基準法43条1項は「道路に2m以上接すること」を求めます。ここでいう道路は42条の道路で、幅員4m以上が原則です(4m未満でも特定行政庁が指定した2項道路を含む)。これを満たさない敷地は、現存建物を解体すると新築できません。2mは建築物全般の最低線で、共同住宅は法2条2号の特殊建築物に入るため、43条3項に基づく条例で上乗せされます。大阪府は規模を問わず道路に4m以上(府条例66条)、兵庫県(神戸市を除く)は共同住宅部分200㎡超で4m以上(県条例4条)、神戸市は道路に4m以上(2階以下かつ延べ200㎡以下で、路地状敷地なら竿の幅2m以上かつ奥行20m以下のものは除く。市条例22条)です。長屋は特殊建築物の列挙に入らないのでこの4mの対象外で、代わりに各戸の主な出入口が道路か幅3m以上の敷地内通路に面することが求められます(大阪府条例6条:延べ300㎡以下なら道路から35m以内、または耐火・準耐火建築物/兵庫県条例26条:延べ300㎡以下かつ桁行25m以下で、幅3m×奥行20m以下か幅4m×35m以下。耐火構造建築物・準耐火構造建築物はこの条の対象外)。神戸市は例外で、耐火・準耐火でない長屋は路地状敷地(幅4m未満の通路状の部分だけで道路に接する敷地)に建てられず(市条例43条の2)、袋路状道路にだけ接して延べ150㎡を超えるものは4m接道の対象です(市条例22条1項10号)。接道2m台の旗竿地に建つ中古アパートが共同住宅として建っていれば、大阪府では原則として共同住宅として建て替えられません(例外は、周囲に広い空地があるなど特定行政庁が支障なしと認める場合〈府条例66条ただし書〉と、幅員4m以上の通路で43条2項2号の許可を受ける場合)。府県別の条文と長屋の扱いはアパート用地の探し方(接道4m・3m・2mと関西の条例)に整理しています。

  • 計測:接する長さは道路境界線に接する部分の実長。旗竿地は竿の最小幅が接道幅になる
  • 救済の順序:①隣地の買い増し・借地で2mを確保 ②2項道路なら後退して建てる(そもそも再建築不可ではない) ③43条2項の認定・許可。①が最も確実で、③は次項のとおり条件が厳しい
  • 2025年4月以降:木造2階建ての大規模な修繕・模様替えにも確認申請が要る。接道を満たさない既存不適格の建物は、用途を変えない大規模修繕なら特定行政庁の認定で43条1項が外れる規定がある(施行令137条の12第11項)が、運用は特定行政庁ごとに違う(再建築不可物件は投資で買えるかの第2章)

🏘 登記の「共同住宅」と建築基準法の「長屋」|建て替えのルールは用途で決まる

登記の建物の種類は、不動産登記規則113条で「居宅・店舗・寄宿舎・共同住宅・事務所…」と主な用途ごとに区分され、「長屋」はこの列挙にありません。つまり登記の種類は、建築基準法上の用途とは別の制度です。建築基準法では、共用の廊下・階段があるかどうかで共同住宅と長屋が分かれます。堺市の取扱い(3-1)は「共用部分が有るものは共同住宅、無いものは長屋」とし、屋根の無い廊下、手すり壁の無い廊下、土間コン仕上げだけの通路は共用部分とみなしません。大阪市の取扱い(6-1・2026年4月版)は、上下に住戸が重なる重層長屋を長屋の一形態として扱い、住戸間の床は界壁の規定と同等の仕様とすることが望ましいとしています。

どちらの用途かで、建て替えるときの接道条件が変わります。共同住宅なら上の4m、長屋なら各戸の出入口と通路の幅です。長屋を買うときは、竿の幅が3m未満だったり、通路の奥行が条例の上限を超えていたりすると、長屋としても同じ形では建て替えられません。大阪市では、各戸の出入口が通路をはさんで向かい合う配置なら敷地内通路は6m要り、その配置でも竿(専用通路)の部分は4mで足ります(取扱い6-3)。買う前に、役所で閲覧できる建築計画概要書で、建築確認を受けたときの用途(共同住宅か長屋か)を確かめます。

🆘 43条但し書き(建築基準法第43条第2項第2号)|実需は避ける、投資は許可の見込みを文書で

43条2項2号は、建築基準法上の道路に接していなくても、特定行政庁が交通上・安全上・防火上・衛生上支障がないと認め、建築審査会の同意を得て許可すれば建築できる制度です。「建てられる可能性がある」からこそ、注文住宅を建てる人には厄介な土地で、今回の許可・今回のローン・今の近隣の協力が揃っても、将来の売却・建て替え・所有者の交代で同じ条件が整う保証がありません。自分の意思だけで完結しないので、実需の土地としては検討対象から外すのが筋です。

投資の見方は逆で、避けられるから安いことが利益の源泉になります。ただしその前提は「許可が取れる見込みを、買う前に役所の事前相談で確認し記録を持つこと」です。確認の観点は次のとおりです。

  • 包括同意基準に乗るか:特定行政庁ごとに基準が違う。大阪府は幅員4m以上の通路なら用途制限なし、2.7m以上なら敷地300㎡以下・3階以下など。神戸市は敷地500㎡以下・2階以下・延べ300㎡以下、京都市は共同住宅なら用途部分200㎡以下かつ基準時の住戸数以下。戸数を増やす・3階にするほど包括同意から外れて個別審査になる
  • 同意:通路所有者から「通行」「存続と維持管理」「所有者交代時の承継」の同意(大阪府は協定書・認印可。20年以上建物が立ち並ぶ通路は不要)。所有者の数は公図と登記事項で先に数える
  • 許可は建築物ごと:土地が道路に接するようにはならない。次の建て替えも、次の買主も、同じ手続が要る。担保評価もこの前提で見られる
  • 費用:手数料は大阪府・京都市・兵庫県とも許可33,000円(認定は大阪府・京都市で27,000円)。図面作成・測量・同意取得の実費は別

許可の流れ・同意書の中身・関西3庁の包括同意基準の比較・許可後の担保評価は再建築不可物件は投資で買えるか|43条2項2号の許可・融資・担保評価・出口とボロ物件の3大リスクで掘り下げています。

🛤 私道の問題|持分の形と承諾書の4条項で判定する

私道でも位置指定道路や開発道路として建築基準法上の道路になっていれば、建築確認は取れます。持分の有無は建築確認の要件ではありません。それでも私道が問題になるのは、掘削(上下水道・ガスの引込)と通行の権利が所有者との関係で決まるからです。判定は「持分の形」と「承諾書の中身」で行います。

持分の形 特徴 判定
共有型(道路全体を関係者で共有) 各区画が道路全体に持分を持つ 買える(承諾書があればなお良い)
分筆型(短冊状に分けて各自が所有) 掘削が要る部分が他人名義になることがある。自分の持分が敷地の前ではなく飛び地の例もある 条件付き(他人名義部分の承諾書が要る)
持分なし 通行・掘削とも所有者の承諾に依存。所有者が数十人・所在不明のこともある 承諾書がなければ買わない

承諾書に要る条項は4つです。①無償かつ期限のない通行(車両を含む)②道路の掘削と上下水道・ガス管の設置・接続の無償承諾 ③自分が敷地を譲渡したとき承諾が買主に引き継がれること ④私道の所有者が私道を譲渡したとき承諾が新所有者に引き継がれること。③④の承継条項がない一代限りの承諾書は、出口で効きません。2023年4月施行の民法213条の2はライフラインの設備設置権を明文化しましたが、通知と償金を伴う権利であって、承諾書の代わりに工事が円滑に進むものではありません。位置指定道路は建築基準法上の道路なので、持分があっても私物を置いて幅員や通行をふさぐことは認められない(幅員が確保されていないと建築確認で是正を求められる)一方、私道の廃止は特定行政庁が制限できる(45条)ため、私道が勝手に消える心配は法的には小さい、という両面も押さえておきます。マイソクの「私道負担」「道」「通路」表記から持分と承諾書を読む手順は物件概要書(マイソク)の見方と落とし穴の私道の章で扱っています。

📏 2項道路(建築基準法第42条第2項)|セットバックの実質コストを数字にする

2項道路は、建築基準法の施行時(後から都市計画区域に入った土地では、その指定の時)に建物が立ち並んでいた幅員4m未満の道で、特定行政庁が指定したものです。道路の中心線から2m後退した線が敷地境界とみなされ、後退部分には建物も塀も建てられず、敷地面積にも入りません。実質コストは面積で数えます。

🧮 計算例:敷地100㎡・間口10m・前面が幅員3mの2項道路
  • 中心線から2m後退=現況1.5mから0.5m後退。後退面積0.5m×10m=5㎡。有効敷地95㎡
  • 建ぺい率60%なら建築面積の上限は60㎡→57㎡
  • 容積率は後退後の道路幅員4mで計算(前面道路が12m未満なら、住居系は幅員×0.4、その他は×0.6と指定容積率の小さい方。建築基準法52条2項)。4m×0.4=160%なので、指定容積率200%でも延床上限は95㎡×160%=152㎡(指定どおりなら190㎡)
  • 反対側が川や崖なら反対側から4mの一方後退=現況3mから1m後退で後退面積10㎡、有効敷地90㎡

30㎡の住戸で割ると、指定容積率どおり(190㎡)なら6戸、後退後(152㎡)なら5戸が上限の概算です(共用部分を除いた目安)。2項道路の物件は「後退後の面積と後退後の幅員」で戸数と利回りを引き直してから指値を決めるのが順番です。

  • 確認先:建築指導課で2項道路の指定と中心線の位置。中心線は現況の中央とは限らない
  • 既にセットバック済みの中古:後退部分が敷地に含まれたまま売られていることがある。公簿面積と有効面積を分けて価格を見る
  • 幅員1.8m未満:2項道路として指定するには建築審査会の同意が要り(42条6項)、指定がなければ道路ではない。「狭いが道」に見えても確認が要る

🚧 位置指定道路|基準を満たしていない古い私道は「通路」のことがある

位置指定道路(42条1項5号)は、私道でも特定行政庁の指定を受けて建築基準法上の道路になったものです。指定の基準は施行令144条の4で、行き止まりなら延長35m以下(超える場合は35m以内ごとに転回広場、または幅員6m以上)、交差・屈曲部に辺2mの隅切り、縦断勾配12%以下、側溝などの排水施設が要件です。この基準に合わない古い私道は指定を受けていないことがあり、その場合は見た目が道路でも「通路」です。指定図を建築指導課で取り、現況の幅と一致するかを測ります。私道上に植栽や物が置かれて幅員が確保されていないと、是正を求められ建築確認に進めないことがあるため、現地では最小幅を実測します。

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📜 4. 契約上の問題|サブリース・プロパンガス・長期賃貸借・借地権

🤝 サブリース|「30年一括借上げ」でも賃料は見直される

サブリース契約は、「30年一括借上げ」「家賃保証」と書かれていても、賃料が固定される契約ではありません。サブリース業者は借地借家法上の借主に当たり、賃料の減額を請求できます。

  • 賃料減額請求:借地借家法32条により、経済事情の変動などで賃料が不相当になれば、業者は減額を請求できる。契約書の「賃料改定」の条項と、見直しの周期・基準を読む
  • 解約:オーナー側からの解約・更新拒絶には正当事由が要る(借地借家法28条)。解約条件と違約金の定めは契約書で確認する
  • 原状回復:契約終了時の原状回復費用がオーナー負担になる契約がある
  • 2020年12月15日施行の規制:賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律で、サブリース業者の誇大広告の禁止(28条)・不当な勧誘の禁止(29条)・契約前の重要事項説明と書面交付(30条)・契約時の書面交付(31条)が義務になった。既存契約の中身は変わらないので、契約書そのものを読む

🔥 プロパンガス|設備の無償貸与と2024年7月の省令改正

プロパンガス(LPガス)の無償貸与契約は、ガス会社が給湯器などの設備を無償で設置する代わりに、設備費用をガス料金に上乗せして回収する仕組みです。オーナーの負担は見えにくく、入居者のガス料金が高くなります。

  • 契約期間中の解約:設備の残債の精算を求められることがある。金額と条件は契約書で確認する
  • 2024年7月2日施行の省令改正:LPガス事業者が不動産・建設関係者などに設備貸与や紹介料の形で過大な利益供与を行う行為が禁止され、賃貸集合住宅の入居希望者へのLPガス料金等の事前提示が努力義務になり、入居希望者から要請があれば情報提供に応じることが義務になった。2025年4月2日からは、基本料金・従量料金・設備料金を分けて示す三部料金制が新規・既存の契約とも義務になり、新規契約では、LPガスと関係のない設備(エアコン・インターホン・Wi-Fi機器など)の費用をガス料金に計上することが禁止され、賃貸住宅ではガス器具などの消費設備費用の計上も禁止された。既存契約は早期移行の努力義務にとどまるので、購入する物件の契約が2025年4月2日より前なら、設備料金の内訳と移行の予定を確かめる
  • 所有権の整理:ガスボンベ・メーター・調整器は販売店の所有。給湯器・配管が誰の所有かは契約書で確認する
  • 判断基準:購入前にガス会社との契約書を取り寄せ、残債の精算条件と入居者の料金水準を確認する

📝 長期の賃貸借契約が既に締結されている物件

  • 賃料の固定:5年・10年などの長期契約で賃料が固定されていると、家賃を上げる機会を失う
  • 立退き:建替え・売却時に立退き料が必要になることがある。額は個別の交渉で決まる
  • 転貸:民法612条により、賃借人は賃貸人の承諾がなければ転貸できず、無断転貸は解除事由になる。承諾済みの転貸や、転貸を認める特約がないかを確認する
  • 定期借家か普通借家か:普通借家は更新拒絶に正当事由が要り(借地借家法28条)、実質的に解約が難しい
  • 確認する書類:賃貸借契約書(全条項)/重要事項説明書/賃料改定の履歴/敷金の保管状況

🏞 借地権|旧法(借地法)と新法(借地借家法)の違い

借地権は、1992年8月施行の借地借家法を境に「旧法」と「新法」に分かれ、施行前に設定された借地権の更新には旧法(借地法)が適用され続けます(借地借家法附則)。

項目 旧法借地権(借地法) 新法借地権(借地借家法)
契約期間 建物の構造(堅固・非堅固)で存続期間の扱いが分かれる 30年以上(3条)。更新後は最初20年、その後10年(4条)
更新 普通借地は更新あり。地主は正当事由がなければ拒めない 普通借地権は同じ。定期借地権(22条・存続期間50年以上など)は更新なし
建替え・譲渡 契約や地主の承諾が要る場合がある。承諾料の有無と額は契約と地主との協議で決まる 同左
融資 担保評価は金融機関ごと。所有権より厳しく見られやすい 同左
流動性 買主が限られる 同左
  • 初期コストと長期コスト:地代・更新料・各種承諾料は契約書と地主との取り決めで確認する。合計が所有権物件との価格差を上回らないかを試算する
  • 定期借地権:更新がなく、期間満了で建物を撤去して返す契約が基本。残存期間が短いほど出口が狭い
  • 判断基準:所有権物件を優先する。借地権物件は、地代・承諾料・残存期間を入れた実質利回りと出口で判断する
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🔧 5. その他の問題|建て替え時の規模・境界・登記・税滞納

🏗 建て替えで同じ規模が建つか|前面道路の容積率・条例の接道・防火・北側斜線で足切りする

中古アパートは「今の戸数がそのまま建て替えられる」とは限りません。建て替え後の規模は、今の建物ではなく、今の法令と条例で決まります。次の5点を、買付の前に役所と書類で確かめます。

見る項目 どこで確かめるか 判定
前面道路の容積率 前面道路が12m未満なら、住居系は幅員×0.4、その他は×0.6と指定容積率の小さい方(建築基準法52条2項)。2本以上なら幅員の最大のもので計算 今の延床がこの上限を超えていれば既存不適格。建て替えで床が減る(容積率オーバー物件の融資と出口戦略)
条例の接道 共同住宅は4m(大阪府は規模を問わず、兵庫県は共同住宅部分200㎡超、神戸市は2階以下かつ200㎡以下を除く)。長屋は各戸の出入口の通路条件 2m以上4m未満の接道なら、共同住宅として建て替えられない地域がある(第3章)
防火地域・準防火地域 施行令136条の2。防火地域は3階建て以上か延べ100㎡超で耐火建築物等、準防火地域は地上3階(延べ1,500㎡以下)で45分準耐火(令107条の2)などが必要 同じ規模でも構造の仕様が変わり、建築費の前提が変わる
北側斜線・高度地区 56条1項3号。第一種・第二種低層住居専用地域と田園住居地域は5m、第一種・第二種中高層住居専用地域は10mに、真北方向の距離×1.25を足した高さが上限(日影規制が条例で指定された中高層住居専用地域は除く)。起算点は前面道路の反対側の境界線か隣地境界線なので、北側に道路がある敷地は緩い。高度地区は都市計画で自治体ごと 3階部分が北側で削られると、今の戸数が入らないことがある(アパート用地の探し方の高さ制限の章)
用途(共同住宅か長屋か) 共同住宅の共用廊下・階段は容積率に算入されない(52条6項2号)。長屋にはこの不算入がない 長屋で建て替えると、同じ容積率でも戸数が減る方向
  • 建ぺい率・容積率違反:違反建築物は再建築時に今の大きさでは建てられない。判定と融資の段階表は容積率オーバー物件の融資と出口戦略|罰則・既存不適格と違法建築の違い・超過率別の銀行対応を参照
  • 境界未確定:隣地との境界が確定していない物件は、将来の建替え・売却時にトラブルになる。確定測量の費用と期間を売主負担で進められるかを確認する
  • 登記未了の建物:未登記建物は固定資産税は課税されるが、所有権移転登記ができない場合がある。融資も付きにくい
  • 固定資産税・都市計画税の滞納:課税するのは市町村(地方税法342条)。売主の滞納で差押えの登記が入っていないかを登記事項で確認する
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💰 6. 数字で見抜く|利回りの罠と融資リスク

旧耐震や再建築不可のような「物・法律」の問題に加え、数字(利回り・融資)の罠で買ってはいけない物件になるケースがあります。

📉 見せかけの高利回りを見抜く|表面利回りと実質利回りの差

  • 表面利回り=年間家賃収入 ÷ 物件価格 × 100
  • 実質利回り=(年間家賃収入 − 年間諸経費)÷(物件価格 + 購入時諸費用)× 100

計算例:物件3,000万円・年間家賃144万円・購入時諸費用300万円・年間運営費14.4万円のとき、表面は144÷3,000=4.8%ですが、実質は(144−14.4)÷(3,000+300)=3.93%。この例では、実質は表面より約18%低くなります。空室・修繕・管理費・固都税・購入諸費用を入れた実質利回りで必ず引き直してください。

🏦 融資で「買ってはいけない物件」になる|返済比率と金利上昇耐性

返済比率(年間返済額 ÷ 満室想定家賃)が高いほど、空室と金利上昇に弱くなります。金利が上がったとき、返済がいくら増えるかを買付の前に試算します。

金利(借入1億円・30年) 月返済(概算) 年間負担増
2.0% 約37万円 ―
3.0% 約42万円 +約60万円/年
4.0% 約48万円 +約130万円/年

金利が1〜2%上がっても手残りが残るかを購入前に試算し、数か月分の返済額に相当する予備資金を残します(自己資金を使い切らない)。

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✅ 7. 買付前チェックリスト|10選を書類で落とす10項目

本文の10選を、買付前に書類で確かめられる10項目に組み替えました。1つでも当てはまれば価格交渉の材料にするか、見送りを検討してください。

  • ☐ 旧耐震(1981年5月31日以前の建築確認)→ 確認済証の日付と耐震診断の有無を確認
  • ☐ 再建築不可・接道2m未満→ 間口を実測し、公図・現況・道路種別を照合
  • ☐ 建て替えで同じ規模が戻らない→ 前面道路の容積率・条例の接道(共同住宅4m/長屋は通路条件)・防火地域・北側斜線と、建築基準法の用途(共同住宅か長屋か)を書類で確認
  • ☐ 43条但し書き・2項道路・私道→ 道路種別の判定表で「買える/条件付き/買わない」に分け、承諾書の4条項・持分の形・後退面積を確認
  • ☐ 市街化調整区域・人口減少エリア・ハザード→ 建て替えの許可の可否、将来の賃貸需要、融資を確認
  • ☐ 擁壁・がけ・極小地→ 擁壁の検査済証と造り直しの費用を確認
  • ☐ 事故物件→ 告知義務(賃貸は概ね3年・売買は期間の定めなし)と価格への織り込みを確認
  • ☐ サブリース・長期賃貸借・借地権・LPガス→ 解約条件・減額リスク・残債・承諾料を契約書で確認
  • ☐ 境界未確定・登記未了・税滞納→ 確定測量と登記・差押登記の有無を確認
  • ☐ 表面利回りだけが高い/返済比率が高い→ 実質利回りと金利上昇の試算で確認

🗺 買付前に確かめる順番

  1. 1物件資料を集める
    建築確認通知書(確認済証)・検査済証・登記事項・公図・地積測量図・重要事項説明書・賃貸借契約書(サブリース・借地・LPガスを含む)
  2. 2役所で道路と用途を確かめる
    道路管理課(道路法の道路か)→建築指導課(42条のどの号か・2項道路の後退線・位置指定図・43条2項の認定/許可の要否・条例の接道要件・建築計画概要書の主要用途)→都市計画課(用途地域・市街化調整区域・防火指定・高度地区)
  3. 3建て替え後の規模を試算する
    前面道路の容積率・条例の接道・防火・北側斜線で、今の戸数が建つかを設計者に机上で出してもらう
  4. 4現地を見る
    擁壁のひび・水抜き穴・傾き、接道幅の実測、私道の境界、隣地との関係、周辺環境(夜間・雨天も)
  5. 5金融機関の事前審査
    物件を特定してから複数の金融機関で事前審査。融資が付かない物件は購入対象から外す
  6. 6契約書を精読して指値を決める
    サブリース・借地・LPガスの解約条件・違約金・残債・更新料を確認し、修繕費と告知事項を織り込んだ価格で買付を出す
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❓ よくある質問――買ってはいけない物件の誤解

Q1. 表面利回りが高い物件ほどお得ではないのですか?

A. いいえ。表面利回りは「年間家賃÷物件価格」で、空室・諸費用・修繕・固都税・金利を一切引いていない数字です。第6章の例では、購入諸費用と運営費を入れただけで実質は表面より約18%下がります。高利回りをうたう物件ほど、旧耐震・再建築不可・借地権など「安いには理由がある」場合があり、利回りの高さは買う理由ではなく疑う理由として扱います。利回りの見方は物件の見極め方(評価3軸と真の利回り)で解説しています。

Q2. 再建築不可物件は価格が安いので、初心者でも買っていいですか?

A. 初心者にはおすすめしません。再建築不可は①火災・地震で建物を失うと建て替えられない②融資が付きにくい③出口で買主が限られる、という3つの構造があります。43条2項2号の許可で建て替えられる場合もありますが、許可は建物ごとで、包括同意基準の枠は特定行政庁ごとに違います。許可の見込みを役所の事前相談で確認し、記録を持っている場合に限り投資として検討できます。順番としては、道路種別の判定表で「買える」に入る物件から見ます。

Q3. 「30年一括借り上げ・家賃保証」のサブリース付き物件なら安心ですか?

A. 安心とは限りません。サブリース業者は借地借家法32条の賃料減額請求権を持ち、契約書に賃料の見直し条項が入っていることがあります。オーナーからの解約には正当事由が要り、違約金の定めがある契約もあります。契約書の「賃料改定」「解約条件」「原状回復負担」を必ず精読してください。

Q4. 市街化調整区域の物件は絶対に買ってはいけませんか?

A. 原則は購入対象から外すのが安全です。市街化調整区域では、開発許可を受けた区域以外での新築・改築・用途変更に都道府県知事等の許可が要り(都市計画法43条)、既存のアパートを同じ規模で建て替えられるかも許可の枠で決まります。都市計画法34条11号の区域(おおむね50以上の建築物が連たんし、条例で指定した区域)でも、アパートが建つかは条例しだいです。駅前・大学前など需要が局所的に維持される立地は個別判断の余地がありますが、建て替えの可否と融資を先に確かめます。

Q5. 私道に持分がない物件は買ってはいけませんか?

A. 持分の有無は建築確認の要件ではなく、位置指定道路や開発道路なら持分がなくても建築確認は取れます。問題は掘削と通行の権利が所有者の承諾に依存することです。無償通行・掘削と配管の設置更新・買主への承継・私道所有者交代時の承継の4条項を含む通行掘削承諾書が現物であり、署名者が登記名義と一致していれば検討できます。承諾書がない持分なし物件、他人名義の筆を掘る必要がある分筆型で承諾書がない物件は見送りです。2023年の民法改正で設備設置権は明文化されましたが、承諾書の代わりに工事が円滑に進む保証はありません。

Q6. 登記簿の建物の種類が「共同住宅」なら、建築基準法でも共同住宅ですか?

A. 別の制度なので、そのままは言えません。登記の種類は不動産登記規則113条の区分で、「長屋」という種類はありません。建築基準法では共用の廊下・階段の有無で共同住宅か長屋かが決まり、建て替えのときの接道条件(共同住宅は4m、長屋は各戸の出入口と通路の幅)が変わります。役所で閲覧できる建築計画概要書で、建築確認を受けたときの用途を確かめます(第3章)。

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📝 8. まとめ――買ってはいけない物件は「道路・用途・建て替え規模・契約」の順に書類で落とす

買ってはいけない物件は、表面利回りや築年数では見分けられません。最初に見るのは道路です。前面道路が建築基準法42条のどの道路で、敷地が何m接しているかで、再建築の可否と融資・出口が決まります。接道が2mに足りない再建築不可と、2mはあるが条例で共同住宅が建たない土地は別の問題で、後者は長屋なら建つ場合があります。

次に用途です。登記の「共同住宅」は建築基準法の用途ではなく、共用の廊下・階段の有無で共同住宅か長屋かが決まります。どちらかで建て替えの接道条件が変わり、前面道路の容積率・防火地域・北側斜線を重ねると、今の戸数がそのまま建て替えられるとは限りません。建て替え後の規模は今の建物ではなく今の法令で決まる、という前提で出口を組みます。

契約書は買付の前に読みます。サブリースは賃料の減額請求、借地は旧法・新法と承諾料、LPガスは設備の残債と2024年7月以降の規制、長期の賃貸借は転貸と定期借家か普通借家かを確かめます。道路・用途・建て替え規模・契約の4つを書類で確かめ、1つでも確かめられない物件は表面利回りが高くても見送る。これが、初心者が一棟目で致命傷を避ける順番です。

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📖 この記事の根拠(出典・参考)

  • 建築基準法(e-Gov):2条2号(特殊建築物)/42条(道路・2項道路)/43条1項〜3項(接道・認定と許可・条例による付加)/44条・45条/52条2項・6項(前面道路幅員による容積率・共用廊下等の不算入)/56条1項3号(北側斜線)/88条(工作物)/同施行令136条の2・107条の2(防火地域・準防火地域の構造)・137条の12第11項(接道の既存不適格の大規模修繕)・138条1項5号(高さ2m超の擁壁)・144条の4(位置指定道路の基準)/同施行規則10条の3(43条2項の認定・許可の基準)
  • 関西の条例と取扱い:大阪府建築基準法施行条例6条(長屋の出入口)・66条(共同住宅の接道4m)/兵庫県建築基準条例4条・26条(令和7年4月1日版の解説)/神戸市建築物の安全性の確保等に関する条例22条・43条の2/堺市建築基準法取扱い集3-1(共同住宅と長屋の判断)/大阪市建築基準法取扱い6-1〜6-3(長屋の定義・敷地内通路)/大阪府 43条2項2号許可の判断基準/神戸市 接道許可(包括同意基準)/京都市 43条2項に基づく認定・許可
  • 不動産登記規則113条(建物の種類)/民法209条・213条の2(2023年4月施行)・612条(転貸の制限)/借地借家法3条・4条・22条・28条・32条と附則/地方税法342条(固定資産税の課税主体)
  • 都市計画法29条・34条11号・43条(市街化調整区域の開発許可・建築許可)
  • 国土交通省「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」(2021年10月8日策定)
  • 国土交通省「水害ハザードマップにおける対象物件の所在地の説明を義務化」(宅地建物取引業法施行規則の改正・2020年8月28日施行)/住宅・建築物の耐震化に関する資料(旧耐震・新耐震の説明)
  • 賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律28条〜31条(サブリース業者の規制・2020年12月15日施行。国交省 賃貸住宅管理業法ポータルサイト)
  • 経済産業省「液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律施行規則の一部を改正する省令を公布しました」(2024年4月2日公布。過大な利益供与の禁止と料金の事前提示は2024年7月2日施行、三部料金制と設備費用の計上禁止は2025年4月2日施行)
  • 宅地造成及び特定盛土等規制法(2023年5月26日施行)と同施行令3条
  • 人口戦略会議「地方自治体『持続可能性』分析レポート」(2024年4月公表・消滅可能性自治体744)
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執筆者 西本豪
執筆者:西本 豪(楽待新聞コラムニスト)

関西の不動産投資家。賃貸経営の体験と、法令・公的機関の資料をもとに、税務・融資・賃貸経営・法人運営の実務ガイドを発信しています。

コメント

  1. けいすけ より:

    単純な相場ではなく長期的な運用を考えて投資物件を購入する。

    最終的な出口戦略もきちんと考えておく事が大事なんですね!

    参考になります。

    • 西本 豪 より:

      メッセージ、有難う御座います。

      そうですね。
      相場を理解すること、自分の購入可能額を把握すること、収益還元法などを基準としてどの程度が妥当なのかを算出すること、いろいろ考えることがあります。
      出口を想定していないといざと言う時、困ってしまいますね。

      どうも有難う御座います!

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