不動産投資の世界で、銀行融資は成功の鍵を握る重要な要素です。
特に、全国的な展開と不動産投資に特化したサービスで知られるオリックス銀行は、多くの投資家にとって最初の選択肢となり得ます。
オリックス銀行の特徴と適切な使い方
オリックス銀行は不動産投資の世界で最も有名な金融機関です。
2018年には融資残高が1兆円を突破するほどの信頼と実績を築いています。
一般の銀行が預金や為替など多様な業務を行うのに対し、オリックス銀行は不動産投資に極めて特化しているのが最大の特徴です。※ノンバンクであるため預金口座(バンク)を持ちません。
不動産投資におけるオリックス銀行の最大のポイントは『投資初期の物件で利用すること』です。
これは、オリックス銀行の融資審査に「既に累積の借入がある人は追加での借り入れが難しい」という独自の基準があるためです。
他の金融機関で先にアパートローンを組んでしまうと、オリックス銀行の融資枠が実質的になくなり、将来的に所有できる物件の戸数を増やす機会を逸してしまうことになります。
オリックス銀行は、特にサラリーマン属性の借り手を好む傾向にあり、審査がスムーズに進むことが多いです。自営業者でも融資は不可能ではありませんが、審査に時間がかかる場合もあり、比較的、サラリーマンが有利と言えます。
物件選びのポイントとしては、築浅で安定性があり、しっかりキャッシュフローが出せる物件が好ましいとされています。また、リスク分散の観点から、居住地とは異なるエリアで1棟目の物件を取得することも推奨されます。
オリックス銀行の融資上限額と審査基準
オリックス銀行の融資上限額は、2,000万円から2億円の範囲と言われます。
審査基準は、主に申込者の年収に連動しており、年収の8倍から14倍まで融資を受けられるとされています。以前は「年収の10倍」という目安も示されていましたが、これを上限としています。
既存の借入状況も審査に大きく影響します。住宅ローンを含め、他の金融機関からの借入はすべて審査の対象となります。例えば、年収1,000万円の方が既に6,000万円の借入がある場合、オリックス銀行からは残り4,000万円程度しか借りられない可能性があります。このため、融資枠を最大限に活用するためには、オリックス銀行を最初に利用することが非常に重要であると強調されています。
自己資金については、物件価格の5%から1割程度が目安とされています。ただし、年収が800万円から1,000万円以上で、かつ十分な金融資産の裏付けがあれば、フルローンも検討可能です。また、既存の不動産投資による家賃収入がある場合、その年間賃料の70%が年収に上乗せして評価されるため、融資可能額を増やすことができます。ただし、この評価を受けるためには、ネット申し込みではなく、必ず担当者を通じて対面で相談する必要があります。
年収の目安としては、1棟目のアパートローンは年収700万円以上、区分マンションは年収500万円以上が条件とされています。士業や上場企業勤務者など、今後年収アップが見込まれる場合は、500万円以上でも融資の可能性はあります。
オリックス銀行の融資対象エリア(主に関西エリア)
申込者の居住地に関しては、全国どこに住んでいても制限はありません。
しかし、物件の所在地には明確な制限があります。オリックス銀行が融資対象とするエリアは関西だと、大阪、京都、兵庫、奈良の比較的主要やエリアです。
物件が駅に近いことが好まれ、大阪から概ね1時間以内の距離とされていますが、これはあくまで目安であり、実際にはエリア外と判断されるケースも少なくありません。
これらのエリアは、人口が減りにくい、または増加傾向にある地域であり、資産価値が落ちにくく、入居者が入りやすいと評価されている地域です。
法人でのオリックス銀行利用について
オリックス銀行は、法人への融資も可能です。特に、不動産賃貸業を目的とした資産管理法人であれば問題なく利用できます。融資が承認された後、個人名義で物件を購入するか、新設した法人名義で借り入れるかを選択できるため、中長期的な規模拡大を目指す場合は、法人での購入が有効とされています。
ただし、法人の定款に資産管理以外の事業内容が記載されていると、融資が却下される可能性があるため、事前に確認し、必要であれば不動産賃貸業に関連する事業目的に絞ることを推奨します。
オリックス銀行の担保型ローンとその特徴
オリックス銀行は、提供する不動産担保ローンにおいて、以下の特徴を持っています。
金利と返済期間、物件の築年数による計算方法
オリックス銀行の金利は、変動金利と固定金利が選択可能で、固定金利では3年固定と5年固定があります。現在の金利は、おおよそ2.05%から3%程度とされています。(ノンバンクの中では比較的低い部類ですが、プロパー融資と比べると割高な印象です。)
ただし、返済期間は条件次第では長めに設定できるため、月々の返済額が抑えることができれば手元に残るキャッシュフローもしっかり確保できます。
オリックス銀行の融資期間は最長35年です。物件の築年数に応じた融資期間の計算方法は以下の通りです(ただし最長35年が上限)
この計算方法により、築古物件であっても比較的長く融資期間を設定できる可能性が高いです。
その他、事務手数料は借入金額の2.2%(消費税込み)がかかります。また、繰り上げ返済をする場合、全額・一部繰り上げ返済ともに、融資残高に対して2%の手数料がかかる場合があります。
オリックス銀行が融資を出さない物件
オリックス銀行は、健全な不動産投資を支援するため、特定の物件に対しては融資を出さない傾向があります。
不動産投資における融資の種類
不動産投資で利用できる融資は、大きく分けて以下の5種類があります。
- 住宅ローン: 自宅購入のためのローンであり、不動産投資目的では利用できません。
- アパートローン: 不動産賃貸業を目的とした物件購入に特化したローンです。オリックス銀行の融資はこのタイプに該当します。
- 保証協会付きローン: 各都道府県にある信用保証協会が保証することで、金融機関が融資をしやすくなる仕組みのローンです。
- プロパーローン: 金融機関が独自の審査基準とリスクで直接融資を行う、オリジナルのローンです。保証協会などの保証は付きません。
- 保証協会以外の会社が保証する仕組みのローン: 最近増加傾向にある融資形態で、セゾンファンデックス、日本保証、オリコなどの保証会社が保証することで、金融機関が融資を提供しやすくなります。オリックス銀行もこの形式で融資を行う場合があります。
アパートローンは、不動産投資の初期段階で利用されることが多いですが、長期的な視点で見ると「通過点」と捉えることもできます。最終的には、より有利な条件を引き出すために、一般の地方銀行や信用金庫のプロパーローンへと借り換えを検討することが推奨されます。
オリックス銀行の次のステップ:プロパー融資を目指そう
オリックス銀行で1棟目の不動産を取得し、実績を積んだ後、次の目標は地方銀行や信用金庫からのプロパー融資を目指すことです。
オリックス銀行は、不動産投資のスタートを切る上で非常に強力な味方となります。
その独自の融資基準と特性を理解し、賢く活用することで、その後の不動産投資における融資戦略を有利に進めることができるでしょう。関西の不動産投資家として、この情報をぜひあなたの資産形成に役立ててください。
オリックス銀行と法人口座
オリックス銀行は口座の取り扱いが無いため、利用するには他の金融機関で口座を開設する必要があります。
特に法人化をしたばかりの段階では比較的開設のハードルが低いとされているネット銀行を選択するケースが多いです。
僕が法人を設立した2020年の時点ではオリックス銀行と相互連携可能な銀行はこの中では旧ジャパンネット銀行しかありませんでした。(2025年現在では複数のネット銀行と連携ができるようです。)
ですが、法人を設立し、ある程度実績を重ねるとネット銀行以外の金融機関での法人口座が開設できるようになります。
例えば、僕の住んでいる兵庫県に本店があるor支店が多い地方銀行では以下の銀行がオリックス銀行と相互連携可能です。(2025年時点の情報となります。)
まずはこれらの地方銀行で法人口座を開設し、オリックス銀行との連携口座として取引実績を積むことで、最終的にプロパー融資獲得を目指すことも効果的かもしれません。
オリックス銀行と出口戦略
不動産投資における出口戦略を考える上で、オリックス銀行の融資基準を把握しておくことは非常に重要です。たとえご自身がプロパー融資を狙えるような属性であっても、将来的な物件の売却を見据えるならば、その基準を理解しておく必要があります。
なぜオリックス銀行の融資基準が不動産投資の出口戦略に重要なのか
オリックス銀行は、不動産投資に特化した最も有名な銀行の一つであり、アパートローンにおいては特に知られています。その融資基準は比較的安定しており、大きく変わることが少ない傾向にあるため、ご自身が融資を受けないとしても、次に物件を購入する投資家がオリックス銀行を利用する可能性が非常に高いからです。
物件を売却する際、購入希望者が融資を受けられるかどうかは、取引の成否や価格に大きく影響します。そのため、売却のタイミングで、購入希望者がオリックス銀行から融資を受けられるような物件の価格、エリア、築年数、その他の条件を満たしている必要があるのです。
以下に、出口戦略の視点から特に重要となるオリックス銀行の融資基準と、その考慮事項を解説します。
- 対象エリアの限定性 オリックス銀行は、首都圏、近畿圏、名古屋市、福岡市、札幌市、仙台市など、特定の主要都市やその周辺地域に物件の所在地を限定しています。これは、これらのエリアが人口減少の中でも資産価値が落ちにくく、賃貸需要が見込めるためです。将来的な売却を考える際、広範囲から購入希望者が現れる可能性のある、このような流動性の高いエリアの物件を選ぶことが、スムーズな売却と価格維持につながります。
- 物件の属性(築年数・構造・利回り) オリックス銀行は、木造・軽量鉄骨で築40年、鉄骨で45年、RCで55年から築年数を引いた期間まで融資期間を長く設定することができ、最長で35年まで貸し付けが可能です。これにより、購入希望者は月々の返済額を抑え、キャッシュフローを確保しやすくなります。また、オリックス銀行は積算評価よりも収益還元評価を重視するため、利回り7%以上(首都圏木造築浅の場合)の物件は特に融資を受けやすい傾向にあります。高利回りの物件は、将来的な購入希望者にとっても魅力的であり、売却のしやすさに直結します。
- 災害リスクへの厳格な評価 近年、オリックス銀行は洪水や土砂災害などの災害リスクを非常に厳しく評価しています。ハザードマップ上のイエロー・レッドゾーンに該当する物件や、浸水10m以上と想定される区域の物件は、融資の対象外となることが多いです。これは、災害リスクが高い物件は融資がつきにくく、結果として売却も困難になる可能性を示唆しています。出口戦略を考える上では、災害リスクの低い物件を選ぶことが、次の買い手を見つける上での重要な要素となります。
- 購入者の属性と年収倍率 オリックス銀行は、年収700万円以上のサラリーマン(区分マンションの場合は500万円以上)を主なターゲットとしており、融資額は年収の約10倍までが目安とされています。また、既存の家賃収入の70%を年収に上乗せして評価してくれるという特徴もあります。自分が購入した物件が、次にオリックス銀行を利用する層にとって魅力的な「融資枠」内であるかどうかも、売却時の価格交渉や流動性に影響を与える可能性があります。
- 資産管理法人への融資スタンス オリックス銀行は、個人のみならず資産管理法人への融資も可能ですが、その法人の定款に資産管理以外の事業が記載されていると、審査が通らない場合があるため注意が必要です。法人での不動産投資を検討している層は多く、売却時にその買手候補がオリックス銀行を利用できるよう、資産管理に特化した法人形態を維持していることが望ましいでしょう。
不動産投資において、物件の購入はスタート地点に過ぎません。最終的な利益を確定させるためには、適切なタイミングでの売却、すなわち「出口戦略」が不可欠です。オリックス銀行の融資基準を深く理解し、それに合致する物件を選ぶことは、将来の売却をスムーズにし、投資の成功確率を高めるための重要な戦略と言えるでしょう。
ご自身の属性と目標を考慮しつつ、物件選びの段階から売却を見据えた戦略的な視点を持つことが、不動産投資の成功には不可欠です。
まとめ
オリックス銀行は不動産投資に特化したノンバンクとして、初期投資の重要なパートナーになります。以下のポイントを押さえれば、融資戦略を有利に進められます。
- 不動産投資特化:預金口座を持たず、アパートローンに特化する専門性。
- 先行利用の重要性:「他行借入前提で不可」の独自基準から、投資初期に枠を確保。
- サラリーマン優遇:申込者の90%がサラリーマン属性、年収×8~14倍が目安。
- 融資上限と自己資金:2,000万~2億円、自己資金5~10%でフルローンも可能。
- 対象エリア制限:主に大阪・京都・兵庫・奈良などの関西主要エリア。
- 返済期間の計算方法:築年数に応じて最長35年、RCなら55年‐築年数で算出。
- 評価軸は収益還元:積算評価よりキャッシュフロー重視で、利回り7%超が融資に有利。
- 団信込みの金利設計:団体信用生命保険料を銀行負担、金利は約2.05~3%。
これらを理解し、サラリーマン属性で築浅高利回り物件を先に組み込むことで、オリックス銀行の融資枠を最大限活用しましょう。融資実績を積んだら、プロパーローンへとステップアップを検討してください。


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