不動産登記の重要性と登記事項証明書の種類について

住宅全般
この記事は約12分で読めます。

不動産登記とは『自分が土地や建物の権利を持っていることを証明する』ために必要です。

この記事は以下のような方におすすめです!
  • 不動産登記の仕組みを知りたい人
  • 不動産登記関係の専門用語を理解したい人

なお、登記には『不動産登記』と『法人登記(商業登記)』の2種類がありますが、この記事では不動産登記について解説します。

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不動産登記と基本的な関連用語

不動産登記には関連する専門用語がたくさん出てきます。

この後の内容を理解するためにも、まずはじめに基本的な専門用語をおさえましょう。

専門用語説明
不動産登記不動産の状態、所有者、権利関係などを記録する手続き全般
登録事項証明書(登記簿謄本)登記情報が幅広くまとめられた書類
登記事項要約書(登記簿抄本)登記情報がまとめられた書類(登記事項証明書と比べ内容は限定的)
登記識別情報通知書(登記済権利書)登記時に発行される12桁の番号(名義人を証明)
抵当権融資に伴い金融機関が設定する権利(担保)
登録免許税登記手続きの際に国に納める税金
印紙税売買契約書や金銭消費貸借契約書に貼付する印紙代
司法書士登記手続きを依頼する先の専門家
法務局登記情報を管理する組織

当初、登記簿の情報は紙で取り扱われていましたが、2008年以降はコンピュータにより電子データとして管理されています。

登記簿謄本と登記事項証明書の違い

電子データ化に伴い『登記簿謄本』は『登記事項証明書』と呼ばれるようになりました。

登記簿謄本と登記事項証明書の違い
  • 登記簿謄本
    • 紙(原紙)をコピーしたもの
  • 登記事項証明書
    • コンピュータにより電子データ化された情報を印刷したもの

実際には登記簿謄本と登記事項証明書には同じ内容が書かれているため、それぞれの違いを意識することはありません。

基本的には登記事項証明書のことを登記簿謄本と呼んでも特に問題はありません。

登記事項証明書と登記事項要約書の違い

『登記事項要約書』は登記事項証明書である『現在事項証明書』や『一部事項証明書』と同じような内容が含まれていますが、『発行法務局名の記載』や『登記官の証明文』、『公印』などはありません。

登記事項証明書と比べると情報量や証明力もやや限定的です。

登記事項要約書は、もともと『登記簿抄本』と呼ばれていたものですが、登記事項証明書と同様、電子データ化によって名前が変わりました。

登記事項証明書の種類

登記事項証明書には以下の4種類があります。

全部事項証明書

全部事項証明書には、対象物件が登記されてから現在に至るまでの所有権の移転や抵当権の設置や抹消などが記録されています。

現在事項証明書と一部事項証明書の内容が全て網羅されているため、基本的に登記事項証明書が必要な場合、全部事項証明書を取得すれば問題ありません。

現在事項証明書

全部事項証明書から現在効力のある情報のみが記載されているのが現在事項証明書です。

過去の所有権の移転や抵当権の設置や抹消などの情報は含まれていません。

一部事項証明書

全部事項証明書から一部の情報を抜粋したものが一部事項証明書です。

分譲マンションの場合、全部事項証明書には全ての部屋の所有者が記載されているため、膨大なデータ量になってしまいます。最低限の情報が必要な場合には一部事項証明書の内容でも問題ありません。

閉鎖事項証明書

既に閉鎖された土地や建物の情報が記載されているのが閉鎖事項証明書です。閉鎖の条件は以下の通りです。

  • 土地の閉鎖
    • 2筆以上の土地を1筆に合筆した場合
    • 1筆の土地を2筆以上に分筆した場合
  • 建物の閉鎖
    • 建物を解体した場合

閉鎖事項証明書はその土地や建物を管轄する法務局でのみ取得することが可能で、保存期間はそれぞれ以下の通りです。

  • 土地登記の保存期間…50年
  • 建物登記の保存期間…30年

閉鎖事項証明書はコンピュータでデータ化される前の情報であるため、保存期間の終了後は情報が破棄されてしまいます。

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登記手続きと登録免許税

登記の種類とタイミング

登記内容実施時期設定箇所登録免許税負担先
表示登記建物が完成した時表題部非課税
所有権保存登記最初の所有者が決まった時権利部甲区買主
所有権移転登記移転した時(売買、相続、贈与など)権利部甲区買主
抵当権設定登記融資を受ける時権利部乙区買主
抵当権抹消登記融資を完済した時権利部乙区所有者
住所変更登記所有者の住所が変わった時権利部甲区所有者
土地分筆登記土地を複数に分ける時表題部所有者
土地合筆登記複数の土地を一つにする時表題部所有者
建物滅失登記建物を取り壊した時消去される所有者

表示登記(建物表題登記)

表示登記とは登記簿(登記事項証明書:全部事項証明書)の表題部を新しく作成する登記のことです。

新築の建物が完成したタイミングで作成され、主に以下の情報などが記録されます

  • 建物の住所、地番(家屋番号)
  • 建物の地目ちもく(種類)、地積ちせき(構造、階層、床面積など)
  • 登記された日(原因およびその日付)
  • 建物の所有者(住所と氏名)

表示登記(建物表題登記)は土地家屋調査士とちかおくちょうさしが作成します。また、登録免許税は非課税です。

土地や建物の調査は土地家屋調査士または測量士が実施しますが、登記ができるのは土地家屋調査士のみです。

所有権保存登記

所有権保存登記は、不動産の最初の所有者を登記簿の権利部(甲区)の先頭にする記録する登記です。

権利部(甲区)の一番下の欄には必ず現在の所有者の情報が記録されます。

所有者が自身の不動産の所有権を主張することを対抗力たいこうりょくと呼びます

所有権移転登記

一方で、所有権移転登記は(新築以外の)中古物件の売買などにより不動産の所有者を変更になった時に記録する登記です。

不動産の引き渡しによるトラブルを避けるため、売主、買主、不動産会社、金融機関(融資担当者)双方の司法書士などの関係者が集まり1日のうちに以下のすべての手続きを行います。

  • 金融機関から買主への融資の実行
  • 買主から売主への売買金額の支払いおよび入金確認
  • 売主側の抵当権抹消登記
  • 買主側の所有権移転登記

引き渡しにともない、まずは売買金額の支払いをすませます。

無事に入金(着金)できたことを確認した後、売主側と買主側の双方の司法書士によりその日のうちに登記を実施します。(所有権移転登記が完了するのは申請してから1週間~2週間ほどかかります。)

戸建や区分マンションのしょうな小規模な不動産の場合はそれぞれ書面による手続きだけで完了する場合もありますが、1棟物件のように一定規模の不動産の場合は関係者が一箇所に集まり、情報共有しながら手続きをすすめるのが一般的です。(※僕は両方経験したことがあります。)

抵当権抵設定登記の流れと計算方法

融資を利用して不動産を購入する場合、融資元の金融機関側はその物件を担保として抵当権を設定します。

抵当権設定登記の流れ

金融機関から融資を受けるとその不動産を借入金の担保として設定します。

もし借主が予定通りに融資を返済できない場合、金融機関はその不動産を競売にかけることにより貸付金を優先的に回収します。この金融機関側の権利を『抵当権』と呼びます。(不動産登記簿に抵当権を設定することを『抵当権設定登記』と呼びます。)

抵当権設定登記に必要な費用

抵当権設定登記に必要となる費用は主に以下の通りです。

抵当権設定登記に必要な費用
  • 抵当権設定時の登録免許税
    • 借入額の0.4%
    • 一定条件(下記参照)を満たす場合は借入額0.1%
  • 収入印紙代(契約金額により変動)
    • 500万円超〜1,000万円以下…10,000円
    • 1,000万円超〜5,000万円以下…20,000円
    • 5,000万円超〜1億円以下…60,000円
  • 司法書士への報酬
    • 50,000円〜200,000円程

抵当権設定の軽減税率

抵当権設定時の登録免許税は通常は「借入額の0.4%」ですが、以下の条件を満たせば軽減税率が適応され「借入額の0.1%」に抑えることができます。

軽減税率が適応される条件
  • 2020年(令和2年)3月31日までに取得した住宅
  • 不動産の新築または引渡しから1年以内に登記する
  • 自己住居用の住宅
    • 投資用物件は対象外
  • 床面積が50㎡以上
  • 住宅用家屋証明書を取得している
  • 耐震性が確保されている(築年数の制限)
  • 既存住宅売買瑕疵保険に加入しているなど

また、抵当権を設定する金融機関が複数になる場合は、その分、司法書士への報酬金額などが高くなる可能性があります。自分で登記することも可能ですが、専門知識が必要な上、トラブルを避けるため不動産販売業者から許可されない場合もあります。

当権抹消登記

抵当権抹消登記の流れ

一度、抵当権が登記されると、基本的にはローンを返済し終わるまで抵当権が抹消されることはありません。

また、仮にローンの完済しても抵当権は自動的には抹消されず、不動産の所有者が抵当権の抹消手続きを実施する必要があります。

ローンを完済すると融資元の金融機関から抵当権抹消に関する書類が届きます。(または受け取りに行きます。)

金融機関から送られてくる抵当権抹消に必要な書類
  • 金銭消費貸借契約
  • 抵当権設定契約書(抵当権解除証書)
  • 抵当権者である金融機関の登記識別情報通知書
  • 金融機関(保証会社)の委任状

抵当権抹消登記は自分で対応するか、難しい場合は司法書士などに依頼することも可能です。

なお、抵当権抹消手続きに関するよくある質問は以下のとおりです。

Q
登記識別情報通知書を紛失しました。どうすれば良いですか?
A

登記情報識別情報通知書を紛失した場合、再発行はできません。『事前通知制度』『資格者代理人による本人確認情報の提供』『公証人による本人確認の認証』のどれかにより本人確認が必要です。

Q
抵当権抹消手続きを実施しなければ何か問題がありますか?
A

対象の不動産を売却するためには抵当権の抹消が不可欠です。また抵当権が残っている間は新たなローンを組むのも難しくなります。

抵当権抹消に関する書類は金融機関から送られてきますが、もし紛失してしまった場合、(所有者側での対応ができないため)金融機関側で再度手続きが必要となり大きな負担になります。

売却や譲渡をしなければすぐに必要となる手続きではありませんが、なるべく早く対応しましょう。

抵当権抹消登記に必要な費用

抵当権付きの物件は自由に購入者が住むことができます。

抵当権は物件に紐付いているため、売却しただけでは抵当権は抹消されません。売却時には、売却代金で住宅ローンを完済することに加え、以下の対応が必要になります。

  • 抵当権抹消登記
  • 所有権移転登記

抵当権抹消登記については、抵当権設定登記と比べると割安ですが、主に以下のような費用が掛かります。

抵当権抹消登記にかかるひよう
  • 抵当権抹消時の登録免許税
    • 土地…1筆1,000円
    • 建物…1筆1,000円
  • 司法書士への報酬
    • 10,000円〜20,000円程

仮に売却せずにコツコツとローンを完済した場合も、やはり抵当権を抹消する必要するべきです。

所有者側としては「ローンは完済済みなので抵当権自体に効力は無い」と考えるかもしれませんが、売却時に購入希望者に対して「まだ抵当権が残っているのか?」と間違った認識を与える原因になりますし、増改築のため追加融資を受ける場合も金融機関に誤解され、融資が不利になる可能性があります。

住所変更登記(変更登記)

不動産の所有者の住所が変わった場合、住所変更登記が必要です。

現実的には引越しのタイミングなどでわざわざ住所変更登記をすることは少なく、不動産の売却時など必要に迫られたタイミングであわせて実施することが多いです。

不動産を売却する場合、住所の変更があれば住所変更登記が必要になります。(古い住所のままでは売却ができません。)

土地分筆登記と土地合筆登記

土地の筆数が変わる場合、以下のような手続きが必要になります。

  • 土地分筆登記とちぶんぴつとうき…1筆の土地の区画を2筆以上に分ける時に必要
  • 土地合筆登記とちがっぴつとうき…2筆以上の土地の区画を1筆にまとめる時に必要

建物滅失登記

建物滅失登記たてものめっしつとうきとは、建築物を取り壊したり、火災により焼失などで建物が無くなってしまった場合に行う登記です。

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登記簿謄本の取得事項とチェックポイント

不動産登記簿の取得方法

不動産登記簿(登記事項証明書)は登記所で一般的に公開されているため、所有する不動産以外でも誰でも取得可能です。

登記所窓口には『法務局(登記所)』の他に『法務局の支局』『出張所』などがあります。

管轄する法務局以外のエリアにある登記簿の取得も可能ですが、データ化されていない登記簿については対象の不動産を管轄する法務局へ出向く必要があります。

法務局での登記簿取扱時間は取扱時間は平日の午前8時30分から午後5時15分までです。休日や夜間は取得できないため注意が必要です。

インターネットでの交付申請は『登記・供託オンライン申請システム』の『かんたん証明書請求』から取得ができます。

登記・供託オンライン申請システム 登記ねっと 供託ねっと
登記・供託オンライン申請システムは、不動産登記、商業・法人登記、動産譲渡登記、債権譲渡登記、供託、成年後見登記及び電子公証に関する手続をオンラインにより申請するシステムです。

「登記情報提供サービス」も利用可能

登記事項証明書の内容を確認したいだけであれば『登記情報提供サービス』も手軽です。こちらも手数料は掛かりますが、実際の不動産登記簿を取得するよりも費用は抑えられます。

不動産登記簿のチェックポイント

不動産登記の情報は不動産登記簿と呼ばれる帳簿に記録されています。

「土地登記簿」と「建物登記簿」は、それぞれ「表題部」と「権利部」に分かれています。

また「権利部」には「甲区」と「乙区」の2種類に分かれています。

登記簿表題部(物理的な状態)
  • 土地登記簿
    •  1筆(1区画)ごとに登記される
    • 所在地の番地、地目(土地の状態)、地積など
  • 建物登記簿
    •  1個(1戸)ごとに登記される
    • 家屋番号、構造、床面積、築年数など
登記簿権利部(法的な権利情報)の甲区
  • 所有者、所有時期、所有した経緯(売買、相続)など
  • 所有権移転登記、仮登記、差押え、仮処分など
登記簿権利部(法的な権利情報)の乙区
  • 抵当権者(根抵当権者)
    • 融資元の金融機関の情報がわかる
    • 債権額から当初借り入れをしていた金額がわかる
    • 債権額、設定時期、極度額、金融機関(およその金利)から現在の残債が推測できる
      • 価格交渉に役立つ(残債以下の指値交渉は現実的に難しいケースが多い)
  • 借地権、地上権、地役権など

融資の返済が完了し、一度設定した抵当権(根抵当権)が抹消されると抵当権(根抵当権)の部分に下線が引かれます。逆に下線が引かれていない場合はその抵当権(根抵当権)にともなう融資の返済が完了していないことを意味します。

抵当権に関する細かな情報は以下の記事にまとめています。

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登記情報の重要性

登記情報が正しく記録されていなければ、土地や建物の所有者が所有権を証明できません。物件を所有していることを証明できなければ、物件を売却することもできなくなってしまいます。

登記事項証明書の所有者情報の変更(名義変更)は法務局で手続きできます。自分で対応しても良いですし、難しければ司法書士に依頼することになります。

相続などにより物件の所有権が移転した際も、なるべく早めに変更をするべきです。

逆に、自分が不動産を購入する際には、登記情報を確認することで「販売元の相手が物件の正当な所有者なのか?」を判断することができます。販売元の相手が正当な所有権を持っていなければ、例えお金(購入費用)を支払ったとしても、物件の所有権を得ることはできません。

プロフィール

楽待新聞&不動産投資Libraryのコラムニストをしています。
普段、不動産投資家として考えていることや体験談などを掲載しています。
これから不動産投資を始めたい方や、賃貸経営初心者の方に対して、分かりやすい内容を心掛けています。

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