賃貸経営において最も重要な指数は「キャッシュフロー」です。
「利回り」「空室率」「販売価格」など他にも大切な指数は沢山あります。
ですが、僕の肌感覚としては賃貸経営者が一番大切にしているポイントはキャッシュフローだと感じていて、そして僕自身もキャッシュフローが一番大切だと考えています。
この記事では賃貸経営におけるキャッシュフローの基本的な考え方を解説します。
- キャッシュフローの仕組みや計算方法を知りたい人
- キャッシュフローの重要性を知りたい人
キャッシュフローの考え方は?
賃貸経営において一番良く使われる指数は「利回り」です。
利回りには表面利回りや実質利回りのようにいくつかの種類がありますが、投資初心者がまず最初に意識するのは、恐らく「利回り」だと思います。
ですが、賃貸経営において「利回り」以上に大切な指数が「キャッシュフロー」です。
キャッシュフローの計算方法
キャッシュフローの計算方法は以下の通りです。
- キャッシュフローの計算方法
- 家賃収入ー金融機関への返済ー必要経費(諸経費)
一方、表面利回りや実質利回りの計算方法は以下の通りです。
- 表面利回り(グロス利回り)の計算方法
- 年間の家賃収入÷物件価格✕100
- 実質利回り(ネット利回り)の計算方法
- (年間の家賃収入ー必要経費)÷総投資額(物件価格+購入諸経費)✕100
表面利回りや実質利回りの単位は「%」であるのに対して、キャッシュフローの単位は「円」です。
キャッシュフローが大切な理由
「表面利回りが20%の物件」と聞くととても優良物件のようなイメージですが、もし物件価格が100万円の物件であれば、年間家賃収入は20万円しかありません。(良い条件であることには変わりませんが。)
一方、キャッシュフローの場合、単位が「円」なので「毎年、手元に何円残るのか?」が分かります。もし「将来、会社員を辞めてセミリタイアを目指したい」と考える場合も「キャッシュフローが何円になるか?」が分からなければ、目標設定は定められないはずです。
当然、利回りもキャッシュフローも「想定値」なので「空室率」や「修繕費用」により振れてしまうことは事実ですが、より直感的に分かりやすいキャッシュフローの方が重要だと考えられます。
キャッシュフローを算出するには
キャッシュフローは家賃収入から金融機関への返済と諸経費を差し引いた金額なので、算出するには以下の3項目を算出する必要があります。
入居者からの家賃収入
入居者からの家賃収入は購入前にある程度の概算価格を把握することができます。
不動産販売会社のシュミレーション
ただし、不動産販売会社が作成したシュミレーションデータについては、正直、信ぴょう性が疑われます。数年後〜数十年後の家賃の下落率が考慮されていない場合もありますし、考慮されていてもかなり甘い見通しであることがほとんどです。
また「平均入居率」の算出方法も不動産会社によって異なる場合があります。例えば以下のような算出方法があります。
- 過去1年間(365日)での平均入居率(部屋ごとに集計)
- あるタイミング(例えば4/1時点)での平均入居率(建物全体で集計)
例えば、過去1年間(365日)での平均入居率が100%であることは十分に考えられるのですが、その前後で退去が発生した場合、入居者の募集や部屋のクリーニングの期間を踏まえると1ヶ月〜2ヶ月程の空室期間が発生します。
また引っ越しの繁忙期である4月は1年の中で最も入居付けが安定する時期です。なので、4/1の平均入居率が高かったとしても、それだけでその物件が空室リスクが低いとは判断できない訳です。
販売会社側にとって都合の良いように平均入居率の条件を変えることで、空室率を低く算出することはいくらでも可能です。「空室率は○○%」という言葉を鵜呑みにするのでは無く、算出方法が妥当かどうかを含めて判断する必要があります。
部屋ごとのレントロール
1棟マンションやアパートの場合、入居時期や部屋の設備(スペック)によって家賃が変わることが良くあります。
そのため、1棟マンションやアパートのように複数の部屋がある場合は全ての部屋の家賃収入を把握する必要があります。
レントロールを精査することで「部屋ごとの賃料」「管理費」「空室リスク」がより正確に分かります。疑問点や不審な箇所が見つかった場合は販売会社へ問い合わせすることで、物件の特徴やリスクがより鮮明に分かるはずです。
HOME’Sのような賃貸サイトの家賃相場
HOME’Sのような賃貸サイトを確認することで地域ごとの家賃相場が分かります。
注意点としては「物件の募集金額は現時点で入居者を確保できていない金額」であることです。
そのため、仮に賃料だけで勝負する場合は「現時点での募集金額よりもさらに安い金額」を設定しなければ空室が埋まらない可能性が高いです。
賃貸経営に必要となる諸経費
賃貸経営で必要となる経費には以下のようなものが含まれます。
- 管理費、修繕積立金
- 固定資産税、都市計画税
厳密には金融機関への返済金額のうち、利息部分も経費となりますが、キャッシュフローを計算する上では「金融機関への返済金額」が含まれるため、余り意識する必要は無いはずです。
また、税務上は「減価償却費」はとても重要な経費の一つですが、実際に支出がある訳では無いため、キャッシュフローを計算する上では関係無い経費になります。
金融機関への融資
金融機関への年間の返済額は以下の要因によって変動します。
- 融資額(返済額)
- 融資期間(返済期間)
- 適応金利
- 返済プラン
- 変動金利、固定金利、固定金利選択型
- 返済方法
- 元利均等返済、元金返答返済
返済期間を伸ばせば、年間の返済負担が減らすことができます。
そのため、利回りが低く悪い条件の物件でも無理やり返済期間を伸ばすことでキャッシュフローを増やすことは可能ですが、本質ではありません。
本来であればキャッシュフローがマイナスになるような物件でも40年〜45年のように異常に返済期間を長くすることで、あたかもキャッシュフローがあるように見せかける不動産販売会社もいるようなので、騙されないように注意が必要です。
返済比率と返済後利回り
キャッシュフローを関連性のある指数に「返済比率」と「返済後利回り」があります。
返済比率
返済比率の計算方法は以下の通りです。
- 毎月の返済比率の計算方法
- 毎月の金融機関への返済額÷満室時の毎月の家賃収入×100
もし、満室時の毎月の家賃収入が100,000円、毎月の金融機関への返済額が50,000円の場合、毎月の返済比率は50%になります。
- 50,000円÷100,000×100=50%
返済比率から賃貸経営の安定度が分かります。
一般的に返済比率が50%程度に抑えることができれば比較的安定していると言えますが、もし返済比率が70%〜80%辺りを超えてくると、金融機関への返済が賃貸経営を圧迫していると言えます。
返済後利回り
返済後利回りの計算方法は以下のようになります。
- 返済後利回りの計算方法
- キャッシュフロー÷物件価格
具体的な金額をもとに返済後利回りの計算をしてみます。例えば以下のような投資用物件があったとします。
- 販売価格…1,000万円
- 年間家賃収入…100万円
- 金融機関への年間返済…50万円
- 年間の必要経費…20
この場合、キャッシュフローは30万円、返済後利回りは3%です。
- キャッシュフロー
- 100万円ー50万円ー20万円=30万円
- 返済後利回り
- 30万円÷1,000万円=3%
返済後利回りは2%〜3%辺りが一般的なようです。逆に2%を大きく下回ると投資対象としてはあまり適切では無いかもしれません。
CCR(Cash on Cash Return)
「キャッシュフロー」「返済比率」「返済後利回り」が理解できれば、基本的なお金の流れや考え方が分かってきます。
初心者としては十分なレベルだと思います。
そして、さらにレベルアップを図りたい場合、最後に「CCR(Cash on Cash Return)」を理解することで、より効率的な資産規模の拡大を目指すことができます。
「CCR(Cash on Cash Return)」とは自己資本配当率のことで、以下のように計算することができます。
- 自己資本配当率(CCR(Cash on Cash Return))の計算方法
- 税引前キャッシュフロー(BTCF)÷自己資本✕100%
返済比率や返済後利回りと比べると少し複雑な計算式ですが、一流の不動産投資家の中にもこの考え方を大切にしている人は沢山いるはずです。
もし余裕のある人は是非覚えて頂ければと思います。
コメント