入居率の計算方法を知りたい人、自分の物件の入居率が全国平均と比べて高いのか低いのかを判断したい人に向けた実務記事です。入居率には戸数・賃料・面積という3つの計算方法(に「時点/稼働」の時間軸が掛かる)があり、同じ物件でも組み合わせ次第で約10ポイントも数字が変わります。賃貸管理会社の「平均入居率95%以上」という宣伝文句も、どの式・どの期間で計算したかが分からなければ判断材料になりません。
この記事では、入居率の計算方法3つ・空室率の出し方・全国平均との比べ方・空室保証(家賃保証)のデメリットまでを、机上の作例ではなく筆者が保有する物件の実数で検証します。「入居率」という言葉には法律上の定義も表示義務もないからこそ、自分で計算して確かめる軸を持つことが、すべての出発点になります。管理会社選びの全体像は賃貸管理会社の選び方と使い分け|仲介・管理・サブリースの違い・囲い込み・近畿レインズで扱っています。
- 入居率の計算方法(戸数・賃料・面積/時点・稼働)を具体例で確認したい方
- 自分の物件の入居率が全国平均と比べて高いか低いかを判断したい方
- 空室率の出し方・計算方法と、入居率との関係を正しく整理したい方
- 管理会社の「入居率95%」という宣伝文句の正しい見方を知りたい方
- 空室保証(家賃保証)のデメリットを実数で判断したい方
- 物件購入時のシミュレーションで現実的な入居率・空室率をどう置くか整理したい方
- 入居率には「2つの軸」がある:①単位軸(戸数/賃料/面積ベース)②時間軸(時点/稼働=期間平均)。同じ物件でも組み合わせ次第で時点87.5%・稼働98.3%・賃料97.9%と約10ポイント開く(出典:ファミリーアセットコンサルティング)
- 入居率に法的定義・表示義務はない:作為的に高く見せられる余地が制度上残っています。大手の公表値も各社独自定義(例:大東建託は「家賃ベース入居率」で居住用98%)
- 全国の実勢はおおむね94〜95%:日管協の委託管理物件で全国平均94.2%・首都圏95.6%・関西圏95.0%。総務省の賃貸用空き家率6.8%から逆算すると入居率約93.2%
- サブリースは常に「満室扱い」:契約構造上、入居率が実態より高く出る。10年後に家賃を約33%減額された楽待の実例もある。本来の客付け力は「サブリース除く・通常管理の入居率」で見る
- 空室率データは入居率の単純な裏返しではない:タスTVIは満室物件を分母から外すため空室率が倍に膨らむ。指標の作り方を理解して読む
- 面接で必ず聞く5項目:①算出方法 ②サブリース除外/含む ③時点/期間平均 ④同等物件の実績 ⑤退去後の空室期間平均
📊 1. 入居率の計算方法──3つの式を「2つの軸」(戸数・賃料・面積/時点・稼働)で整理
入居率を正しく読むには、「何を数えるか(単位軸)」と「いつ・どの期間で測るか(時間軸)」を分けて考えるのが要点です。世間で「入居率の3つの計算方法(時点・稼働・賃料)」と説明されることが多いですが、これは2つの軸が混ざった呼び方です。まず単位軸(戸数/賃料/面積)から整理します。
📋 1-1. 戸数ベース(最も標準的)
戸数ベース入居率 = 入居中戸数 ÷ 管理戸数
例:管理戸数100戸のうち95戸が入居中 → 95%
最も一般的な算出方法。計算が単純で比較しやすい反面、戸ごとの賃料水準・面積を無視するため、「家賃が安い物件ばかり満室で、高い物件が空室」というケースを反映できません。
📋 1-2. 賃料ベース(CF実態に近い)
賃料ベース入居率 = 実収賃料合計 ÷ 満室時賃料合計
例:満室時月100万円のところ実収92万円 → 92%
キャッシュフロー実態に最も近い指標。戸数ベースより低くなる傾向です(高賃料物件が空室の影響が大きい)。金融機関や不動産投資のプロは、返済原資となる実収入に着目するため賃料ベースを重視します。実際、大手の大東建託は入居率を「家賃ベース入居率=1−(空室の借上家賃支払額÷家賃総額)」と定義して公表しており(居住用98%・事業用99.2%/同社IR資料)、これも賃料ベースの一種です。同じ「入居率」でも各社で定義が異なる好例です。
📋 1-3. 面積ベース
面積ベース入居率 = 入居中専有面積合計 ÷ 管理専有面積合計
例:1,000㎡のうち850㎡が入居中 → 85%
大規模物件・オフィスビルで使われることが多い指標。広い部屋の空室の影響を強調しやすいため、住居系では戸数・賃料ベースより不利な数字になりがちです。
📊 1-4. 時間軸──「時点」か「稼働(期間平均)」か
もう一つの軸が時間です。同じ単位(戸数)でも、ある瞬間を切り取る「時点入居率」と、一定期間の延べ稼働で見る「稼働入居率」では数字が変わります。
稼働入居率 = {(総戸数×365日)−延べ空室日数} ÷ (総戸数×365日)
例:年間の延べ空室日数が少なければ、時点より高く出やすい
稼働入居率は年間の実態を均すため、投資判断には最も使いやすい指標です。一方の時点入居率は「特定の瞬間」しか映さず、季節要因や一時的な空室で大きく振れます。後述する「繁忙期直後の公表」はこの性質を逆手に取ったものです。
📊 1-5. 同じ物件でも数字はここまで開く
ファミリーアセットコンサルティングの試算では、同じ運営状況の物件を3方式で算出すると、約10ポイントもの差が生まれます。
| 算出方式 | 数字 | 性質 |
|---|---|---|
| 時点(戸数)ベース | 87.5% | 総戸数40戸・空室5戸の瞬間値((40−5)÷40) |
| 稼働ベース | 98.3% | 年間の延べ稼働日数ベース。空室期間が短いと高く出る |
| 賃料ベース | 97.9% | 年間満室賃料に対する実収。高賃料の空室で下がる |
重要なのは、「入居率」には法律上の定義も表示義務もないという制度的な事実です。だからこそ管理会社は、最も高く出る方式・期間を選んで広告に使えます。数字そのものより「どう数えた数字か」を確認することが、すべての出発点になります。


⚠️ 2. サブリース除外の重要性とサブリース新法
📋 2-1. サブリース物件は構造上ずっと「満室扱い」
サブリース(家賃保証)契約では、管理会社(サブリース会社)が大家から借り上げて転貸する形になるため、契約上は常に「満室扱い」です。実態の入居状況に関わらず、サブリース対象物件は入居率100%として計算されます。サブリース比率の高い管理会社ほど、公表入居率は実態より高く出やすい構造です。
📊 2-2. サブリース込みと除外の数字の違い
| 条件 | 入居率(戸数ベース) |
|---|---|
| サブリース50戸+通常管理50戸(うち通常管理40戸入居) | 公表値90%(50+40)÷100 |
| サブリース除く・通常管理のみ | 実質80%(40÷50) |
同じ管理会社でも、サブリース除外で計算すると数字が大きく変わります。本来の「客付け力」を示す指標は「サブリース除く・通常管理物件の入居率」です。
⚠️ 2-3. 「家賃保証」を過信できない理由
サブリースの「保証家賃」は永久ではありません。楽待の実例では、建築費1億500万円・想定利回り8%(月70万円)のアパートが、10年後に約33%の減額を迫られました。サブリース新法(賃貸住宅管理業法・2020年12月施行)で誇大広告・不当勧誘・リスク説明は規制されましたが、「借地借家法により減額され得る」事実は変わりません。家賃減額・中途解約できない仕組みとオーナーの代替策の詳細はサブリース2025年問題とは|家賃減額・解約できない仕組みとオーナーの代替策に集約しています。本記事では「サブリース戸が入居率の分母を歪める」一点に絞ります。
📊 2-4. 空室保証(家賃保証)のデメリット──保証料の損得は「入居率の計算」で見極める
サブリースと同じく「空室でも一定額が入る」安心を売りにするのが空室保証(家賃保証)です。ただし契約前に、次の空室保証のデメリットを必ず押さえてください。いずれも「保証で安心」の裏側にある構造的なコストです。
| 空室保証のデメリット | 内容 |
|---|---|
| 手取りが減る | 保証賃料は満室時の80〜85%程度。満室で回せる物件ほど「払い損」になりやすい |
| 免責期間がある | 契約直後や入退去のタイミングで、1〜数ヶ月は保証対象外になる契約が多い |
| 保証賃料は見直し・減額され得る | 借地借家法により、数年ごとに保証額の減額を提案され得る(永久保証ではない) |
| 解約・条件変更が難しい | オーナー側からの中途解約・条件変更は制約が大きい |
判断のうえで決定的なのは、空室保証が得か損かは「自分の物件の入居率・空室率を計算できて初めて分かる」ということです。たとえば本記事§3-3の保有物件は期間平均の入居率93.43%。この稼働水準なら、空室で失う賃料より毎月の保証料(満室時の15〜20%相当)のほうが大きく、保証は「払い損」に傾きます。逆に入居率が低く読めない物件ほど保証の価値は出ます。家賃減額・中途解約できない仕組みとオーナーの代替策はサブリース2025年問題とは|家賃減額・解約できない仕組みとオーナーの代替策で詳述しています。
⏰ 3. 時点ベースと期間平均──「繁忙期直後」公表の落とし穴
📋 3-1. 3つの時点・期間表記
| 表記 | 内容 | 数字の傾向 |
|---|---|---|
| 現時点入居率 | 特定日(例:月末)の入居率 | 月により変動大 |
| 直近6ヶ月平均 | 6ヶ月間の平均値 | 中庸な実態に近い |
| 年間平均(稼働) | 12ヶ月間の延べ稼働平均 | 繁忙期・閑散期を均す |
⚠️ 3-2. 「繁忙期直後」公表の落とし穴
不動産業界の繁忙期は1〜3月。3月末時点の入居率を公表すれば、年間で最も高い数字になるのが構造的に発生します。年間平均では80%台でも、3月末だけ95%という管理会社は普通にあります。広告の「時点入居率」は瞬間値であり、実態を過大表示している可能性があるため、年間平均(稼働)または直近6ヶ月平均を聞き出すのが本質的な評価です。
📋 3-3. 実物件のレントロールで「稼働の解像度」を上げる──西本の保有4戸の実数
理論だけでは「期間平均が大事」という話で止まりがちです。そこで、1棟ごとの数字を均す前に、1室ごとの入居開始日・解約日・空室日数まで分解すると何が見えるかを、実物件の数字で確認します。以下は、西本が2025年4月の会員セミナーで示した、自身の保有物件(4戸)の2025年3月末時点レントロールの実数です(西本本人の実体験・実感値であり、特定エリアの一般水準を示すものではありません)。
| 指標 | 実数(保有4戸・加重平均) | この数字が示すこと |
|---|---|---|
| 入居率(期間平均) | 93.43% | 満室の「時点100%」ではなく、実際に何割が回り続けたか |
| 平均入居期間 | 679日(約1年10ヶ月) | 入居者がどれだけ「居続けたか」=維持力 |
| 平均空室期間 | 72日(約2.4ヶ月) | 退去から次の入居までの「空白の実数」=募集力 |
| 加重平均賃料 | 53,458円 | 戸ごとの賃料差を均した、CF実態に近い1戸あたり単価 |
入居率「93.43%」という一つの数字も、平均入居期間679日と平均空室期間72日に分解して初めて「なぜその水準か」が読めるのが実数の強みです。同じ93%台でも、入居期間が短く空室期間も短い物件(=入れ替わりは多いが客付けは速い)と、入居期間が長く空室期間も長い物件(=定着はするが一度抜けると埋まりにくい)とでは、運営の中身がまったく違います。満室時点の数字だけを見ていると、この「維持力と募集力の内訳」を取りこぼします。
さらに、この空室期間72日という自分の実数を、株式会社タスの空室率TVI(空室期間/募集日数の地域水準)と突き合わせると、自物件の稼働が地域に対して相対的に良いのか悪いのかが判断できます。空室率データには「満室物件を分母から外すクセ」などの読み方の注意もありますが、ここで押さえたいのは、自分のレントロールを地域指標に重ねて初めて「この空室期間は長いのか短いのか」の絶対評価ができるという点です。買付前のシミュレーションでも、レントブック(家賃表)を時点入居率で眺めるのではなく、可能な範囲で各戸の入居開始日・解約日・空室日数まで開示を求め、期間平均で組み直すことを、西本は会員向けに繰り返し勧めています。
ここで読むのは自分(買主・オーナー)が保有・検討する物件の運営数字です。一方、売主が提示するレントロールの偽装(サクラ入居・相場超過家賃・名義貸し)を購入前に見抜く手順はレントロールの見方と偽装の見抜き方|一棟アパート購入前のチェック項目と相場家賃の引き直しに分けています。本章は「自分の運営数字を読む」、171は「売主の数字を疑う」と役割を分担します。
🏘 4. 入居率の平均と実勢相場──全国・関西エリア別
📊 4-1. まず全国・エリアの「実勢の地金」を押さえる
個別物件を評価する前に、母数となる市場平均を押さえます。公益財団法人日本賃貸住宅管理協会(日管協)の調査では、委託管理物件の全国平均入居率は94.2%、首都圏95.6%、関西圏95.0%。総務省「住宅・土地統計調査」の賃貸用空き家率6.8%から逆算すると入居率は約93.2%です。大手ハウスメーカー系(大東建託・積水ハウスグループ等)の公表値が98%前後と高いのは、サブリース・家賃ベース定義・広域の客付け網といった条件の差が効いているためで、「平均95%」は到達点ではなく、条件次第で上下する目安と捉えるべきです。
📊 4-2. 関西エリアの実勢入居率レンジ(実務上の目安)
下表は関西圏の地場管理会社・PMヒアリングをもとにした実務上の目安レンジです(2026年5月時点/物件個別差は大きい)。アンカーとなる関西圏平均約95%(日管協)に対し、築年・立地でどの程度下振れするかの感覚値として使ってください。
| 物件タイプ・エリア | 実勢入居率レンジ(目安) | 補足 |
|---|---|---|
| 築浅(10年以内)・大阪市内主要駅徒歩10分以内 | 93〜97% | 退去後の空室期間1〜2ヶ月 |
| 築中堅(10〜20年)・京都/神戸主要駅徒歩15分以内 | 88〜92% | 退去後の空室期間2〜3ヶ月 |
| 築古(20〜30年)・関西地方都市 | 82〜88% | 退去後の空室期間3〜6ヶ月 |
| 築古(30年超)・郊外 | 75〜85% | 家賃下落・募集難の常態化 |
築年・立地次第で実勢入居率は15〜25%変動します。なお大阪市場は、株式会社タスの調査によれば2025年4月時点で多くの間取りで空室率が改善・賃料単価が上昇しており、大阪・関西万博を背景に賃貸市況は上昇基調にあります。管理会社が「平均95%」と謳っていても、自分の物件タイプ・エリア・築年での数字を必ず確認します。
入居率は空室率と裏返しの関係にあります。関西8エリア別の空室率の全体像とリスク文脈は不動産投資10リスクと対策|やめた方がいい判断軸・関西の空室率実勢、ここで読んだ稼働率を税後キャッシュフローに織り込む実務は不動産投資のキャッシュフロー設計|DSCR・空室控除・税後CFを参照してください。本記事は「入居率という指標そのものの読み方」に責任範囲を絞ります。
🔬 5. 空室率の出し方・計算方法と「入居率の裏返しではない」落とし穴
入居率の対になる指標が空室率ですが、空室率は単純に「100%−入居率」ではありません。代表例が、市場分析で広く使われる株式会社タスの「空室率TVI」です。
📊 5-1. 空室率の3つの計算方法(出し方)
空室率も入居率と同様に「時点・稼働・賃料」の3つの計算方法(出し方)があります。基本の式は次のとおりです。
| 空室率の種類 | 計算式 |
|---|---|
| 時点空室率 | 空室戸数 ÷ 総戸数 × 100 |
| 稼働空室率 | (空室戸数 × 空室日数)÷(総戸数 × 365日)× 100 |
| 賃料空室率 | (満室想定の年間賃料 − 実収の年間賃料)÷ 満室想定の年間賃料 × 100 |
入居率と空室率は「100% − ◯◯」で換算できますが、計算方法(時点か稼働か賃料か)を揃えないと比較になりません。さらに市場分析でよく使われる空室率指標には、単純な裏返しにならない「クセ」があります。代表例が次のタスTVIです。
📊 5-2. タスTVIは「満室物件を分母から外す」
一般的な空室率は「空室数÷全戸数」ですが、TVIは入居者を募集中の建物だけを分母に入れ、満室稼働の建物を計算対象から除外します。同じ実態でも数字が倍になり得ます。
| 前提:24戸(4棟)中3室が空室 | 計算 | 空室率 |
|---|---|---|
| 一般的な空室率 | 3 ÷ 24 | 12.5% |
| タスTVI方式(満室2棟を除外) | 3 ÷ 12 | 25.0% |
日本銀行の金融システムレポートでも「満室稼働の建物が増えると指数の対象外となり、空室率指数はかえって上昇する」という矛盾が指摘されています。TVIは「募集中物件の競争の激しさ」を測る指標であって、地域全体の入居率の裏返しではない──この前提を外すと、エリアの実力を過小評価してしまいます。
🔍 6. 面接で必ず聞く5項目
📋 6-1. 入居率の真贋を確認する質問
- 算出方法は?──単位(戸数/賃料/面積)と時間軸(時点/稼働)の両方
- サブリース含む or 除く?──サブリース除く数字を必ず聞く
- 時点 or 期間平均?──直近6ヶ月平均または年間(稼働)平均を要求
- 同等物件の入居率は?──自分の物件タイプ(築年・エリア・間取り)と同等の物件群の数字
- 退去後の空室期間平均は?──繁忙期・閑散期別の平均月数
健美家のコラムでも、「掲載されている入居率に惑わされず、どう計算しているかの説明を受け、説明がなければ質問して根拠を明確にする」ことが繰り返し強調されています。
📊 6-2. 答えに含まれる「実態度」
| 回答のタイプ | 評価 |
|---|---|
| 「サブリース除く戸数ベース・年間平均で○%」と即答 | 透明性高・信頼可 |
| 「平均で○%です」とだけ答えて詳細を渋る | 透明性低・数字水増し疑い |
| 「同等物件で○%、退去後平均○ヶ月で次入居者決定」と具体回答 | 実績ベース・信頼可 |
| 「個別物件のデータは出せない」と拒否 | 情報非公開・対象から除外検討 |
📈 7. 入居率改善の打ち手──「募集力」より「維持力」
📋 7-1. 退去させない力=究極の空室対策
入居率を語るとき、つい「空室を埋める力(募集力)」に目が行きますが、健美家のコラムは「入居者の保持(テナント・リテンション)こそ究極の空室対策」と説きます。退去が出るたびに、①空室期間の収益ロス ②原状回復・リフォーム費 ③築年経過による家賃下落──という三重の損失が発生するためです。長く住んでもらうことが、入居率と家賃水準の両方を守ります。退去抑止の具体策は24時間ゴミ出しサービスの費用対効果|退去抑止と入居期間長期化を投資家視点で解説でも扱っています。
- 公表入居率の高さだけで管理会社を選ぶ
- 退去が出てから慌てて募集開始
- 「満室想定◯◯円・利回り◯%」の額面を鵜呑み
- 問い合わせ・申込対応の遅さを放置
- 退去予告が出たら即日募集開始
- 既存入居者への小まめな対応で長期化
- サブリース除く・年間平均で実数を共有
- 客付け仲介への反応速度が速い
📋 7-2. 大家ができる改善策──「募集系」は227へ、本章は「維持系」に絞る
入居率改善の打ち手は「募集系(埋める力)」と「維持系(退去させない力)」に分かれます。募集系(客付け仲介の流通範囲拡大・AD引き上げ・敷礼撤廃やフリーレント・写真と紹介文の見直し・大家による仲介直訪問)は、AD相場や優先順位の上げ方まで含めて仲介会社の客付け優先順位を上げる5観点|AD相場・コミュニケーション・関西の業者ネットワークに集約しています。ここでは169の核である維持系(平均入居期間679日を延ばす力)に絞ります。
- 更新時の小まめなフォロー:設備不具合・近隣トラブルの芽を退去前に摘む。入居期間が延びれば、空室期間ロス・原状回復費・築年経過による家賃下落の三重損失を回避できる
- 原状回復・小修繕の品質と速度:次の入居者の決定速度に直結。退去予告が出たら即日募集開始
- 家賃の市場価格化(下げ):即効性は高いが収益直結減のため最終手段。下げる前に募集系(→227)を尽くす
📋 7-3. 管理会社の力で入居率は大きく動く
同じ物件でも管理会社次第で結果は変わります。楽待コラムには、管理会社を変えただけで入居率を30%程度から90%まで引き上げた事例が紹介されています。空室が埋まらない原因は、物件の認知不足(営業力)・問い合わせ対応の遅さ・清掃不良・「電話に出ない/折り返しがない」といった管理体制そのものの問題であることが多いです。大家が定期的に担当者とやりとりして対応の質を見極め、改善が見込めないなら早めに管理会社を変えるのが合理的です(詳細は賃貸管理会社の選び方)。
❓ 8. よくある質問
Q1. 入居率の全国平均は何%で、「平均入居率98%」は信用できますか?
A. 委託管理物件の全国平均は約94〜95%(日管協)が目安です。そのうえで、宣伝値はまず算出方法を確認します。サブリース込み・戸数ベース・現時点(3月末等)の数字なら容易に達成可能。サブリース除く・賃料ベース・年間(稼働)平均で98%なら本物の優良管理会社です。入居率には法的定義がないため、「98%」という数字だけで判断せず、算出条件を必ず確認してください。
Q2. 入居率の計算方法(戸数・賃料・面積)はどう使い分け、自分の物件ではどう出しますか?
A. 直近12ヶ月の月別稼働状況(戸数ベース)を集計するのが最もシンプル。家賃台帳から月末入居戸数を抽出し、管理戸数で除して12ヶ月平均を取ります。より厳密には延べ空室日数から稼働入居率を、実収賃料から賃料ベースを計算します。
Q3. 物件購入時の入居率シミュレーションはどう置くべきですか?
A. 築年・エリアで保守的に設定。築浅都市部なら93%、築中堅なら90%、築古地方なら85%、築古郊外なら80%程度を起点に。マイソクの「満室時想定」を100%とせず、現実的レンジで税後CFを計算します。詳細は不動産投資のキャッシュフロー設計|DSCR・空室控除・税後CF・元利返済込みの実務を参照。
Q4. サブリース契約に切り替えたら入居率の心配は不要ですか?
A. サブリースは「契約上の入居率100%」を保証しますが、サブリース料率が家賃の80〜85%程度に低下するため実質収益は減ります。さらに保証家賃の見直し条項で数年後に減額提案されるケースが多く、楽待の事例では10年後に約33%の減額を迫られています。長期では収益が悪化し得る点に注意が必要です。
Q5. 入居率を改善する優先順位は?
A. ①現状の入居率と空室期間を実数把握 ②既存入居者の退去抑止(テナント・リテンション)③同等物件の競合家賃・条件をリサーチ ④客付け仲介の流通範囲拡大とAD見直し ⑤写真・紹介文・募集条件のテコ入れ ⑥必要なら家賃見直し・リフォーム。家賃下げは即効性高いが収益直結減のため最終手段です。
Q6. 大手管理会社と地場独立系、入居率はどちらが高い傾向ですか?
A. 一概には言えません。大手は客付け力・自社サイト集客・広域ネットワークに強み、地場独立系は地域密着・小回りに強み。「物件エリアでの管理戸数」が最も実態を表す指標で、エリア内の物件数が多い管理会社が結果的に高い入居率を出しやすいです。
Q7. 入居率と空室期間、どちらを重視すべきですか?
A. 両方重要ですが、「退去後の空室期間」のほうが管理会社の客付け力を直接的に反映します。入居率95%でも空室期間6ヶ月の物件と、入居率90%で空室期間1ヶ月の物件では、後者のほうが運営力は高いです。両指標をセットで確認します。
📝 9. まとめ──入居率・空室率の「計算方法」と「数字の解像度」が投資の精度を決める
賃貸管理会社の「平均入居率95%」という宣伝文句は、それ単体では何の意味も持ちません。入居率には法的な定義も表示義務もなく、単位軸(戸数/賃料/面積)・時間軸(時点/稼働)・サブリース込み/除く・対象物件タイプ──この複数の軸を分解して初めて、実態に近い数字が見えてきます。同じ物件でも方式次第で約10ポイント開くことを忘れないでください。
面接で必ず確認する5項目は①算出方法 ②サブリース除外 ③年間(稼働)または直近6ヶ月平均 ④同等物件の実績 ⑤退去後の空室期間平均。これらに具体数値で即答できる管理会社は信頼性高、曖昧な回答は数字水増しの疑いありです。空室率データ(タスTVI等)も、指標の作り方を理解したうえで読みましょう。
全国の実勢(日管協で全国94.2%・関西圏95.0%)を母数に、自分の物件タイプ・エリアの目安レンジを重ねて相対評価。物件購入時のCFシミュレーションでも、マイソクの満室想定ではなく現実的な稼働率で税後CFを計算するのが事故防止の基本です。そして運営局面では「埋める力」以上に「退去させない力(テナント・リテンション)」が効きます。「数字の解像度」を上げることが、不動産投資の精度を直接的に押し上げます。
📖 10. この記事の根拠(出典・参考)
- 公益財団法人 日本賃貸住宅管理協会「賃貸住宅市場景況感調査(日管協短観)」委託管理物件の入居率(全国94.2%・首都圏95.6%・関西圏95.0%)
- 総務省統計局「住宅・土地統計調査」賃貸用空き家率6.8%
- 国土交通省「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(サブリース新法・2020年12月15日施行)」「サブリース事業適正化ガイドライン」
- 大東建託 IR資料(FACT BOOK)「家賃ベース入居率」の定義と公表値(居住用98%・事業用99.2%)
- 株式会社タス「タス空室インデックス(空室率TVI)」算出方法と大阪市の市場データ(2025年4月)
- 日本銀行「金融システムレポート」空室率指数の集計上の留意点
- 楽待(楽待不動産投資新聞・大家さんの味方)サブリース減額の実例/管理会社変更による入居率改善事例(30%→90%)
- 健美家「テナント・リテンション(入居者保持)=究極の空室対策」入居率の計算根拠確認の重要性
- ファミリーアセットコンサルティング/武蔵コーポレーション入居率の3算出方式と同一物件での数字の開き(時点87.5%・稼働98.3%・賃料97.9%)
- 体験ベース:関西の地場管理会社・PMヒアリング(2026年5月時点)。エリア別レンジは実務上の目安であり個別差は大きい
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