不動産経営などで売上げが発生した場合、翌年の2月16日から3月15日までのおよそ一ヶ月の間に確定申告を行われなければいけません。
ようやく、今年の確定申告を終えて一息付いている方もいるでしょうし、今も絶賛対応中の方もいるかもしれませんね。
なお、コロナウイルスの影響により、2019年度分の確定申告に限り、申告期限が2020年の4月16日(木)までに延長されました。
- 所得税の確定申告期限
- 2020年3月16日(月)→2020年4月16日(木)に延長
- 消費税の確定申告期限
- 2020年3月31日(火)→2020年4月16日(木)に延長
※「青色申告申請書の提出期限」や「贈与税の申告期限」については、特に申告期限の延長は無く、2020年3月16日(月)のままです。
不動産収入があると確定申告が必要になる
確定申告の提出が必要になるのは主に以下のような場合が考えられます。
- 不動産所得や事業所得のように給与所得以外の所得があった場合
- 給与所得が年間2,000万円を超えている場合
- 給与所得以外の所得(副業所得)が年間20万円以上の場合
- 2ヶ所以上の会社などから給与を受け取っている場合
- 住宅ローン減税を受ける場合(1年目のみ確定申告が必要)
給与所得者の場合でも所得が2,000万円を超えていたり、その他の所得(不動産所得や事業所得)などが年間20万円以上ある場合は確定申告が必要になります。
つまり会社員でも会社員以外でも不動産所得がある場合は必ず確定申告が必要になる訳です。
普段から、毎年確定申告をやっている方からすればもはや恒例行事ですが、去年、不動産投資家デビューを果たした会社員や、相続により両親などから不動産事業を受け継いだ新米大家の場合は、以外と対応が漏れてしまっていることも多いです。
なお、還付申告(納めた税金が戻ってくる制度)の場合の翌年の1月1日から5年間までは提出することができます。
新築物件や築浅物件を所有している場合は、初期費用や減価償却の経費が多いため、結果として還付申告になる可能性も多々あります。
まずは自分の申告すべき内容を把握することが必要です。
税務署側の情報収集の方法は?
ただ、確定申告については以下のように感じている方も多いのでは無いでしょうか?
何故、確定申告をしなかったことが税務署にばれてしまうの?
そもそも何故、確定申告をしないといけないの?
このように考えてしまうのはとても自然なことだと思います。
ただ、結論から先に言うと実際の収入より少ない金額を計上したり(過少申告)、そもそも確定申告をする必要があるのにしなかった(無申告)場合、いつか必ずバレてしまいますし、それは脱税であり犯罪です。
税務署側の情報収集の方法はさまざまだですが、無申告や過少申告が税務署側にばれてしまうケースには以下のようなパターンがあります。
反面調査による整合性の不一致
税務調査として最も一般的な情報収集の方法です。
例えば、ある会社や個人の申告内容に不自然な記載があった場合、その会社に対して税務調査を実施することになります。
そこで税務調査官はその会社が保管している経費等の領収書を入手します。
その会社にとって経費(支出)になるということは、別の誰かがその対となる売上げ(収入)があることを意味します。
例えば10万円分の賃料を経費(支出)として計上している場合、領収書などからその相手側として10万円分の賃料(収入)を得た会社や個人の情報が分かります。
当然、売上げ(収入)を得た会社側はその内容(同じ日時、金額)を確定申告書に記載しているはずなのですが、もし双方の申告内容で不整合があった場合はどちらかの申告に誤りがあることになります。
売上げ(収入)を正しく申告していない(漏れている)可能性もありますし、そもそも存在しない経費(支出)を申告している(架空計上)している可能性もあります。
ある会社が何か不正をしていた場合、そこから芋づる式で関係会社や取引相手の不正が発覚するケースもあるかもしれません。
このような調査方法を反面調査と呼びます。
無申告や過少申告が発覚してしまうその他の理由
それ以外にも無申告や過少申告が発覚してしまうケースはあります。
法定調書と資料せんによるチェック
法定調書およびとは各企業が誰にいくらの給与や報酬などを支払ったかを記録して税務署に提出するための書類です。
一方、資料せんも法定調書と同様に各企業が税務署に提出する書類です。
法定調書の提出は毎年、各企業ごとに義務付けられているのに対して資料せんの提出は税務署より依頼があった場合に提出します。
勿論、税務署側としても全ての企業の法定調書や資料せんをチェックすることは現実的に不可能ですが、それでもそのような情報を把握されていることは認識しておいた方が良いでしょう。
マイナンバーによる照合
マイナンバーについては数年前から導入が進んでいますが、現時点でどの程度の成果があるのかは公開されていないようです。
各個人の収入情報の紐付はマイナンバー制度が導入される前から可能ではありますが、マイナンバーを活用することでより一層、紐付けが簡素化されることになります。
マイナンバーについては以下の記事でもう少し詳しく説明しています。
登記簿情報の追跡
登記簿などから納税者の資産情報を把握することも可能です。
相続や贈与、もしくば売却などにより資産が移動した場合はその情報が登記簿に反映されるためその情報と照合されると確定申告の記載内容に誤りが無いかの確認が可能になります。
物件を所有していたり逆に手放したりするとそれに伴いお金が動くはずなので、そこで何か矛盾があれば調査対象となる可能性があります。
ブログやSNSによる発信
不動産経営に限らず株式投資や仮想通貨での運用成績をSNS(TwitterやFacebookなど)に投稿することで身元がばれてしまい調査を強化されることもあるそうです。
またアフェリエイトやGoogle AdSense(広告型収入)などによる収入を得ていると考えられる場合はこれらの提携会社から情報を入手することで判明することもあるらしいです。
税務署からお尋ねが来たら?
今まで税務署からお尋ね(問い合わせ)が無かったとしても数年後問題が発覚することもありますし、その場合はその過去の分までさかのぼって追微課税が課せられてしまいます。
一応、納税の時効は7年間ではありますが、過去にお尋ねが来なかったからと言って「これまでの申請内容に問題が無かったから」と言い切ることはできないです。
ただ仮に問い合わせ(お尋ね)があったとしても、それは必ずしも不正が認められた訳では無くあくまで内容確認のための聞き取りであることも十分にありえます。
税務署側は税金を沢山集めることが重要なミッションであり、この辺りはノルマを課せられた不動産販売会社や生命保険会社の営業と同じような考えのもと調査を行います。なので税務署の言われるがままに申告内容を作成すると本来であれば必要無い(または必要無い可能性のある)分まで税金を収めることになってしまいます。
また、それぞれの経理処理に対する解釈などは税務署の担当者によって見解が異なる場合もあります。このように曖昧な部分もありどのように判断するかが難しい場合も多いため、どうしても納税者側と税務署側の見解が分かれる場合は最終的には裁判(税務訴訟)になることもあり、その結果国税側が敗訴することも多いようです。
税務署側としては納税者の経理処理に対して節税に繋がるような制度やテクニックを指摘してくれることはありません。ですその一方で申告内容が少なければきっちりと指摘をしてきます。
もし自分の考え(意図)があって確定申告書を作成・提出しているのであれば、この辺り背景を理解した上で冷静に受け答えすれば良いと思います。
ちなみに、この辺りの税務調査については、こちらの書籍が参考になりました。
無申告や過少申告が発覚した場合のペナルティ
確定申告を正しく行わなかった場合の行政上の罰則として以下の3点があります。
無納付加算税(延滞税)
法定納期限(確定申告の期限)の翌日から実際に申告および納付した日数に応じて延滞税が発生します。延滞期間が2ヶ月を超えているか超えていないかによって以下の2パターンに分けられます。
- 納期限の翌日から2ヶ月を経過する日までは、年「7.3%」または「特例基準割合+1%」のいずれか低い方の割合が適応
- 納期限の翌日から2ヶ月を経過した日以降は、年「14.6%」または「特例基準割合+7.3%」のいずれか低い方の割合が適応
無納付加算税は延滞税や利子税などと呼ばれることもあります。
ちなみに特例基準割合とは、国税での延滞税、利子税や地方税等での延滞金、還付加算金の算定等に使用される数値のことです。
過少申告加算税と無申告加算税
過小申告や無申告の場合、以下のようなペナルティが課せられます。
修正申告の時期 | 過少申告加算税 | 無申告加算税 |
---|---|---|
事前通知前 | 0% | 5% |
事前通知後〜更生予知前 | 5%(10%) | 10%(15%) |
更生予知後 | 10%(15%) | 15%(20%) |
申告期限後に確定進行が必要であること(または申告内容に誤りがあること)に気付き自ら自主的に申告(再申告)した場合は比較的低い加算税で済むのに対して、税務調査により指摘されてから申告(再申告)する場合はより高い加算税が課さられます。
特に悪質な場合は重加算税が課せられる
隠蔽や偽造などにより税務署により特に悪質と判断された場合は無納付加算税(延滞税)、過少申告加算税、無申告加算税の変わりにさらに重い重加算税が課せられる場合があります。
重加算税 | |
---|---|
無納付加算税(延滞税) | 35% |
過少申告加算税 | 35% |
無申告加算税 | 45% |
税務調査によって申告内容を指摘される場合は重加算税として扱われる可能性が高いです。
※重加算税が適応される場合は無申告加算税との併用はありません。
刑事罰になることもある
またさらに悪質な場合は刑事罰として以下のような罰則があります。
- 故意では無いが申告をしていなかった場合「懲役1年以下または罰金50万円以下」
- 故意により申告をしなかった場合「懲役5年以下または罰金500万円以下、もしくはその両方」
- 故意により申告をしておらず、かつ不正行為を伴う場合、「懲役10年以下または罰金1000万円以下、もしくはその両方」
また確定申告が正しく行えてない場合、所得税だけでは無く住民税にも影響を与えます。そして住民税の脱税に対しても「懲役10年以下または罰金1000万円以下」の罰則が適応される場合があります。
ちなみに実は余り知られていないことなのですが、確定申告による納税は基本的に免除になることはありません。仮に自己破産した場合、基本的に全ての支払いを免除されるはずですが税金の返済については免除されません。
売上金額の過少申告は言い逃れできない
世の中には沢山の節税に関するノウハウがあります。
僕もこれまでに沢山の先輩家主の節税テクニックを聞いてきました。
ですが、それらのテクニックは全て「以下に支出を経費として計上するか?」に着目したものであり、実際に発生した売上げ(収入)を圧縮する方法を一つもありませんし、売上げ(収入)を少なく申請することを勧めてくる先輩家主はただの一人もいませんでした。
また仮に経費計上の仕方が不適切であったとしても(故意で無ければ)それは解釈の違いであり判断誤りとはなりますが少なくとも脱税にはならないはずです。
つまり経費については知識やテクニック次第でどのようにでも増やすことができるのかも
しれませんが、売上げについては人によって解釈が異なることは無く、基本的には決まった額を申告するしかありません。要するに言い逃れができない訳です。
少しでも税金を抑えたいと考える気持ちはとても良くわかりますし、僕も同じことを考えています。
なのでその場合は売上げ(収入)を減らすのでは無くて、いかに経費として計上できる金額を
増やせるかどうかに着目した勉強が必要になると思います。
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