レントロール(賃料一覧表)には法律で決まった書式がありません。だから売主から届く表は毎回形が違い、自分で作るときも「どの欄を入れればよいか」で手が止まります。この記事では、登録不要でそのまま使えるExcelの雛形(数式入り)を配布したうえで、入れる項目と作り方、銀行に出す2種類の書式、売主から届く表で確認したい欠けを、計算例つきで書きます。
雛形は3シートです。①現況レントロール(買主に渡す・自分の管理用)、②契約状況表(決算書と一緒に金融機関へ出すときの形式)、③号室別の月別入金表3年分(融資の相談で金融機関に出すときの形式)。買う側として売主の表を読む7項目、サブリース物件で利回りを出すときの受取賃料の見方、スルガ銀行事件で金融庁が認定した「数字の盛り方」まで、レントロールを作る・読む・出すの3場面を1本にまとめました。入居率の計算そのものは入居率の計算方法|戸数・賃料・稼働の3つを入金表の計算例で出し、日管協・総務省の平均と比べる(Excel雛形)に分けています。
- レントロールの雛形をExcelで探していて、メールアドレス登録なしでダウンロードしたい方
- 売却や融資に備えて、自分の物件のレントロールを作りたい大家
- 銀行にレントロールを求められ、どの形式・どの期間で出せばよいか知りたい方
- 売主から届いたレントロールに何が欠けているかを確認したい買主
- サブリース物件やスルガ銀行事件のように、レントロールの数字が実態とずれる仕組みを知りたい方
- 雛形はExcel3シート・登録不要。現況表は月額合計・㎡単価・戸数と賃料の2つの稼働率・現況と満室想定の表面利回り・承継する敷金合計が自動計算
- 必須項目は12:号室・間取り・面積・用途・現況・契約者区分・契約形態・賃料・共益費・敷金・契約開始日・備考。空室は想定賃料を入れて「想定」と明記する
- 雛形に入れた金融機関向けの形式は2種類:決算書と一緒に出すときは「契約状況表」(保証会社・火災保険・滞納の備考つき)、融資の相談では「号室別の月別入金表3年分」に入居率・返済・差引を付けたもの
- 売主の表は欠けを見る:契約開始日や敷金の額がない、欄はあるのに空欄、太陽光売電や水道代が家賃と同じ列に混ざっている、の3つを確認する
- サブリース物件は受取賃料で利回りを出す(入居者が払う賃料ではなく、オーナーが受け取る借上賃料)。スルガ銀行事件では「賃料や入居率を実勢より高く想定・改ざんして収益還元法で割増評価」が処分理由に明記された
📥 レントロール雛形(Excel・xlsx・約15KB)をダウンロード ※メール登録なし。Excel・Googleスプレッドシート・Numbersで開けます。数式は黄色以外のセルに入っているので、黄色のセルだけ入力してください。
①現況表に賃貸借契約書から転記し、空室には想定賃料を入れて備考に「想定」と書く。②③は銀行に求められたときに使う。自分の物件なら、まず3章の記入例を見てから①に入力するのが早いです。
- 📥 1. 雛形の中身と使い方|3シート・数式入り・登録不要
- 📋 2. レントロールに入れる項目|必須12と推奨8(決まった書式はない)
- 🛠 3. 作り方|契約書から転記して稼働率と利回りを出す(記入例:6戸のアパート)
- 🏦 4. 銀行に出すレントロールの2つの形式|契約状況表と号室別・月別入金表3年分
- 📂 5. 売主から届く表で確認する3つの欠け
- 🔍 6. 買主として売主の表を読む7項目|欠けている欄こそ質問する
- 🏢 7. サブリース物件のレントロール|利回りはオーナーの受取賃料で出す
- ⚖ 8. スルガ銀行事件で金融庁が認定した「数字の盛り方」|レントロールは誰が盛るのか
- ❓ 9. よくある質問
- 🎯 まとめ
- 📖 この記事の根拠(出典・参考)
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📥 1. 雛形の中身と使い方|3シート・数式入り・登録不要
配布している雛形の構成です。他の配布元と違うのは、現況表のほかに、金融機関に出すときの2種類の書式(契約状況表・月別入金表)が入っている点です。
| シート | 用途 | 自動計算される項目 |
|---|---|---|
| ①現況レントロール | 売却時に買主へ渡す表、購入検討時に売主の表を転記する表、自分の管理用。20行・20列 | 月額合計、㎡単価、総戸数、入居戸数、戸数ベース稼働率、現況月額と満室想定月額、賃料ベース稼働率、現況年額と満室想定年額、物件価格を入れると表面利回り(現況・満室想定)、承継する敷金合計 |
| ②契約状況表(銀行提出用) | 決算書と一緒に金融機関へ出すときの形式。部屋・属性・賃貸料・共益費・入居日・更新日・火災保険(所有者/入居者・期間)・賃貸保証会社(・期間)・備考 | 賃貸料と共益費の合計 |
| ③月別入金表(3年分) | 融資の相談で金融機関に出すときの形式。号室×12か月を3年分、返済額の行つき | 号室ごとの入居率(入金があった月÷12)、年合計、物件合計、合計−返済の差引 |
使い方は3手順です。(1)賃貸借契約書と管理会社の月次明細を手元に置き、①の黄色いセルに号室ごとに転記する。(2)空室の行には直近の成約賃料と同額の想定賃料を入れ、備考に「想定」と書く。(3)物件価格を入れて、表面利回りが「現況」と「満室想定」でいくら違うかを見る。買主に渡すときはどちらの利回りかを欄外に明記します。他の配布元では、大家DXとクレビアス株式会社は登録不要、ミカタストアとスマッチュはメールアドレス登録が必要でした(2026年9月に各ページを確認)。ノムコム・プロとFaciloの記事は国土交通省の様式を案内していますが、ノムコムが載せている国土交通省のExcelのリンク先は、2026年9月19日時点で404(ページなし)でした。
📋 2. レントロールに入れる項目|必須12と推奨8(決まった書式はない)
レントロールに法定の書式はなく、作成義務もありません(株式会社いい生活、武蔵コーポレーション、Facilo、ノムコム・プロの各解説が同じ説明をしています)。だからこそ、「何が書かれているか」より「何が書かれていないか」を見る欄を、最初から雛形に用意しておくのが実務です。①現況表の20列は、次の必須12と推奨8をもとに構成しています(作成日は表の上の欄に入力)。
| 区分 | 項目 | なぜ要るか |
|---|---|---|
| 必須 | 号室・階・位置 | 契約書と突き合わせる基準。4号室を欠番にする物件があるので号室から戸数を数えない |
| 間取り | 同じ間取りで家賃差があるかを見る | |
| 専有面積(㎡) | ㎡単価を出して相場と比べる。坪しかなければ1坪=3.3058㎡で換算 | |
| 用途(住居・店舗・事務所) | 住居以外の賃料は消費税課税。テナント退去時の収入減も大きい | |
| 現況(入居中・空室・退去予定・入居予定) | 現況と満室想定の差がここで出る。退去予定を落として満室に見せる表がある | |
| 契約者区分(個人・法人) | 同じ法人が複数室なら一斉退去のリスク。氏名は書かない | |
| 契約形態(普通借家・定期借家・サブリース) | 家賃が続く前提の強さが変わる。定期借家は満了で終わる | |
| 月額賃料 | 収入の基本。空室は想定と明記 | |
| 共益費・管理費 | 賃料と分けて書き、比較は合算で行う。配分を動かして見え方を変えられる | |
| 敷金・保証金 | 買主が返還債務を承継する(民法605条の2第4項・622条の2)。合計額=将来返す金額 | |
| 契約開始日 | 入居期間と入居日の偏りを読む。古い契約ほど家賃が高止まりしやすい | |
| 備考 | 想定賃料・フリーレント・特約・告知事項。口頭合意はここに書かないと消える | |
| 推奨 | 駐車場・その他収入 | 家賃と別の行・別の列にする。太陽光売電や自販機を家賃に混ぜない |
| 礼金 | 一時金。毎月の実力に入れない | |
| 契約満了日・更新日 | 満了が近い戸の集中を見る | |
| 保証会社 | 滞納時に誰が立て替えるか。「なし」「失効中」も書く | |
| 滞納の有無 | 「入居中」は「契約中」の意味で、入金の保証ではない | |
| ㎡単価(自動) | 部屋ごとの割高・割安を客観的に見る | |
| 火災保険(所有者・入居者) | 雛形では①ではなく②の契約状況表に入れている欄 | |
| 作成日 | 半年以上前の表は「現況」ではない |
🛠 3. 作り方|契約書から転記して稼働率と利回りを出す(記入例:6戸のアパート)
手順は次の6つです。売主の表をそのまま使わず、必ず自分の雛形に転記するのは、欠けている欄が空白として見えるようにするためです。
- 原資料をそろえる:賃貸借契約書(全戸)、管理会社の直近12か月の送金明細、募集中の部屋の募集図面
- ①現況表に号室ごとに転記する:賃料と共益費は契約書の数字を使い、送金明細と一致しない戸は備考に「要確認」と書く
- 空室の行に想定賃料を入れる:同じ間取りで直近に決まった賃料と同額にし、備考に「想定」と明記する
- その他収入を分ける:駐車場・太陽光・自販機は家賃の列に足さず、専用の列か別行にする
- 集計を見る:戸数ベースと賃料ベースの稼働率、現況年額と満室想定年額、物件価格を入れて2つの表面利回りを比べる
- 前提を欄外に書く:作成日、「現況」か「満室想定」か、単位(円・千円)、共益費込みか
記入例として、仮に木造2階建て・1K×6戸のアパートで、売主側から受け取ったレントロールを①に転記したとします(数字はすべて架空)。
| 号室 | 契約開始日 | 賃料 | 共益費 | 月額合計 | 入替後の月額 |
|---|---|---|---|---|---|
| 101号(1F) | 2016年3月1日 | 50,000円 | 3,000円 | 53,000円 | 48,000円(入替後) |
| 102号(1F) | 2019年4月1日 | 45,000円 | 3,000円 | 48,000円 | 48,000円 |
| 103号(1F) | 2021年3月1日 | 45,000円 | 3,000円 | 48,000円 | 48,000円 |
| 201号(2F) | 2018年2月1日 | 47,000円 | 3,000円 | 50,000円 | 50,000円 |
| 202号(2F) | 2020年9月1日 | 46,000円 | 3,000円 | 49,000円 | 49,000円 |
| 203号(2F) | 2022年3月1日 | 46,000円 | 3,000円 | 49,000円 | 49,000円 |
| 合計 | — | 279,000円 | 18,000円 | 297,000円 | 292,000円 |
- 表面利回り:月額合計297,000円×12=年3,564,000円。仮に売出価格を4,000万円とすると8.91%。これは「現況」で、空室ゼロなので満室想定と同じ数字です
- 家賃の高止まりが落ちる例:101号は2016年契約で53,000円(共益費込み)ですが、入替後に1階の他の2室と同じ45,000円+3,000円=48,000円で決まると、1室で月5,000円、年60,000円の減収で、6戸合計の月額は297,000円から292,000円に下がります。表面利回りも8.91%から8.76%に下がります。買う側は「いちばん古い契約が今の相場に落ちたらいくらか」で利回りを引き直す必要があります
- 家賃以外の欄:売主の表に年間の税金、管理費率、ごみ回収費、共用部の電気代、火災保険、修繕履歴、告知事項などの欄が付いていれば、実質利回りの計算に使うので別に控えておきます
🏦 4. 銀行に出すレントロールの2つの形式|契約状況表と号室別・月別入金表3年分
雛形には、現況表とは別に、金融機関に出すときの「契約状況表」(決算書と一緒に出すときの形式)と「号室別・月別の入金表3年分」(融資の相談で出すときの形式)を②③として入れています。どちらを出すかは、銀行から求められた形式に合わせます。
4-1. 契約状況表(決算書と一緒に出すとき)
雛形②の欄は、部屋・属性(個人/法人)・賃貸料・共益費・入居日・更新日・火災保険(所有者)・火災保険(入居者)・火災保険加入期間・賃貸保証会社・賃貸保証加入期間・備考です。滞納中の部屋や、保証契約が失効している部屋があれば、備考にそのまま書いて出します。銀行は後で通帳の入金と突き合わせられる立場なので、ここで隠す意味がありません。
4-2. 号室別・月別入金表3年分(融資の相談で出すとき)
号室×12か月の入金額(千円)、号室ごとの入居率、物件の合計、返済額、差引を3年分並べる形式です。記入例として、3章の6戸(101号は入替後の月48千円)で、仮に102号が9月末に退去して10〜12月が空室、返済(元利)が月150千円だったとします。1年分はこうなります(単位:千円、共益費込みの入金額。数字はすべて架空)。
| 号室 | 入居率 | 1〜9月(各月) | 10月 | 11月 | 12月 | 年合計 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 101号 | 100% | 48 | 48 | 48 | 48 | 576 |
| 102号 | 75.0% | 48 | 0 | 0 | 0 | 432 |
| 103号 | 100% | 48 | 48 | 48 | 48 | 576 |
| 201号 | 100% | 50 | 50 | 50 | 50 | 600 |
| 202号 | 100% | 49 | 49 | 49 | 49 | 588 |
| 203号 | 100% | 49 | 49 | 49 | 49 | 588 |
| 合計 | 95.8% | 292 | 244 | 244 | 244 | 3,360 |
| 返済(元利) | — | 150 | 150 | 150 | 150 | 1,800 |
| 差引 | — | 142 | 94 | 94 | 94 | 1,560 |
この形式だと、102号が9月末に退去して3か月空いたこと、その間も返済150千円は変わらず差引が142から94に落ちたことが、1枚で読めます。満室想定の年額3,504千円に対する実収は3,360千円で、賃料ベースの稼働率は95.9%、戸数ベース(入金があった戸月÷72戸月)は95.8%です。実際の表では、退去月と入居月に入金が0や2か月分(礼金・日割りを含む)に振れる行も出ます。時点の入居率では見えない「どの部屋が空きやすいか」が、3年分の表なら銀行にも自分にも見えます。

銀行に出す表に、滞納中の部屋や保証会社が失効している部屋まで書いたら、審査で不利になりませんか?

滞納中の部屋も保証契約が失効している部屋も、備考にそのまま書いて出すことをおすすめします。銀行は後で通帳の入金と突き合わせられる立場なので、書かずに出して、あとで入金と合わないほうがはるかに悪いと考えます。現況表の「入居中」は入金の保証ではないので、滞納の有無は備考で補います。
📂 5. 売主から届く表で確認する3つの欠け
売主から届いたレントロールは、雛形の項目に照らして次の3つを確認します。
- 契約開始日や敷金の額が書かれていない。敷金の額がない表からは、買主が承継する敷金の合計が読めません。契約書を見るまで「返す金額」は分からない前提で動きます
- 家賃以外の収入が家賃の列に混ざる(太陽光売電、大家が徴収する水道代など)。計算例:仮に住戸賃料の合計が月300,000円の表に、太陽光売電の月60,000円が同じ列で入っていると、利回り計算では住戸賃料に対して2割の上乗せになります。売電は設備の寿命と買取価格で減る収入なので、必ず別行にします
- 欄があっても空欄で出てくる(契約者・敷金・契約期間など)。空欄は「無い」ではなく「まだ出していない」。雛形に転記すると空白が見えるので、そこを質問リストにします
🔍 6. 買主として売主の表を読む7項目|欠けている欄こそ質問する
読むときの確認項目は次の7つです。売主の表を雛形に転記した時点で、空欄と違和感の両方が見えるので、7項目はその空欄を埋める質問として使います。
| 項目 | 見るところ | 聞き方・確認のしかた |
|---|---|---|
| ①同じ間取りの家賃差 | 最も高い部屋と直近成約の差 | 最も高い部屋は、直近成約の賃料で引き直して利回りを見る。3章の記入例なら、101号の賃料50,000円を1階の他の2室と同じ45,000円で引き直すと年60,000円の減収 |
| ②契約開始日の偏り | 直近3か月に集中していないか、繁忙期以外の同月入居がないか | 契約開始日が無い表は、まず「各戸の契約開始日と契約書のコピー」を依頼する |
| ③空室の想定賃料 | 直近成約と同額か、周辺の成約賃料と比べて高くないか | 想定賃料が現行賃料より高めに置かれていたら、同じ間取りの現行賃料で最も低い額で満室想定を組み直す |
| ④法人の集中 | 同じ法人が複数室を借りていないか | 「法人」とだけ書かれた表には、社数と何室ずつかを聞く。1社で半数以上なら撤退時の空室を収支に入れる |
| ⑤敷金の承継額 | 敷金合計と、売買代金で精算するか持ち回りか | 敷金の返還債務は買主に移る(民法605条の2第4項)。売買代金で精算せず返還義務だけ引き継ぐ持ち回りもあり、法定の基準ではないので売買契約書の定めで確認 |
| ⑥書かれていない収支 | 滞納、敷地外駐車場、大家負担の水道・ネット、太陽光や自販機 | 管理会社の管理費と振込手数料、大家が徴収する水道代、太陽光の売電収入は、表に無くても収支を動かす。「入居中」でも滞納があれば入金はゼロ |
| ⑦入金明細との突合 | 直近12か月の送金明細や通帳と、表の賃料が一致するか | 管理会社の月次報告書が出てくれば、そのまま12か月分を並べて雛形③に写す |
🏢 7. サブリース物件のレントロール|利回りはオーナーの受取賃料で出す
サブリース物件では、入居者が払う賃料(転貸賃料)と、オーナーがサブリース会社から受け取る借上賃料が別の数字です。計算例として、仮に月額査定賃料の合計が300,000円、オーナーが受け取る借上支払賃料の合計が270,000円だとします。受取は査定の90.0%で、この10.0%の差(月30,000円)がサブリース会社の取り分になります。買う側は「入居者が払っている賃料」ではなく「オーナーが受け取る賃料」で利回りを出し、さらに借上賃料の見直し条項と解約条項を契約書で確認します。
サブリース会社への規制は、2021年6月に全面施行された賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(賃貸住宅管理業法)にあります。国土交通省のポータルサイトによると、特定転貸事業者(サブリース業者)と勧誘者には、誇大広告の禁止、不当な勧誘の禁止、契約締結前の書面交付と説明、業務・財産状況の書類の閲覧(法32条)が義務づけられ、違反には業務停止命令や罰金があります。管理業者側は200戸以上で登録が義務、200戸未満は任意登録で、委託者への定期報告が義務です。オーナー側から解約するときの手順と家賃減額への対処はサブリースは解約できない?オーナー側から解約する条件・正当事由・立退料と手順|家賃減額への対処と新法の実務にまとめています。
⚖ 8. スルガ銀行事件で金融庁が認定した「数字の盛り方」|レントロールは誰が盛るのか
金融庁は2018年10月5日、スルガ銀行に対して業務改善命令と、2018年10月12日から2019年4月12日までの新規の投資用不動産融資の停止を命じました。処分理由の第1項に書かれているのが、レントロールの数字の扱いです。
- 不動産関連業者(チャネル)が、賃料や入居率について実勢より高く想定し、または実績値より高い数値に改ざんして、収益還元法で不動産を評価することで割り増された価格を算出し、その価格に基づいて多額の融資が実行された
- チャネルは融資審査を通すため、預金通帳の残高の改ざん、所要自己資金の振り込み(見せ金)、所得確認資料の改ざん、売買契約書の二重作成を行っていた
- 投資用不動産融資を扱う相当数の営業職員が不正を認識または疑いながら業務を行い、改ざんを働きかけた事例や自ら改ざんした事例もあった
- 審査部は本部長ミーティングで妥当とされたシェアハウス向け融資をほぼ全件(99%)承認しており、審査が形骸化していた
その後スルガ銀行は、業務改善計画に基づきシェアハウス関連融資債権の一括譲渡と元本一部カットの手続を進め、2021年3月1日に「同年8月末までに民事調停または認証ADR機関への申立てを」と手続終了の案内を出しています。レントロールを盛るのは売主だけではなく、仲介・販売会社・銀行員が加わることがあり、盛られた数字で融資を受けた買主も債務者として残る。だから買う側は入金明細との突合を省かず、売る側と借りる側は自分の表に盛らない。この2つが、事件から今も変わらない実務です。

売主がレントロールを出してくれません。「個人情報だから」と言われました。諦めるしかないですか?

氏名は要りません。号室・賃料・共益費・契約開始日・契約形態・敷金だけの表で足りるので、その形で依頼してください。それでも出ないなら、管理会社の直近12か月の送金明細を代わりに求めます。どちらも出ない物件は、買付を出す前に見送る判断で構いません。
❓ 9. よくある質問
Q1. レントロールは誰が作りますか?
売主本人か、賃貸管理を委託している管理会社です。法令上の作成義務も様式もないため、物件によっては作られていません。
Q2. 区分マンションや戸建てにもレントロールは要りますか?
借主が1人なら賃貸借契約書がその役割を果たすので、1行のレントロールで足ります。複数戸になると契約書を並べるだけでは全体が見えないので、一覧表が必要になります。
Q3. 銀行にはどのレントロールを出せばよいですか?
求められた形式に合わせます。決算書と一緒に出すときは契約状況表(保証会社・火災保険・備考つき)、融資の相談では号室別の月別入金表3年分に入居率・返済・差引を付けたものが使えます。雛形の②③がその形式です。滞納や保証契約の失効は備考に書き、あとで入金と突き合わされても一致する表にします。
Q4. 空室の想定賃料はいくらで書けばよいですか?
同じ間取りで直近に決まった賃料と同額にし、備考に「想定」と明記します。売主の立場でも同じで、周辺の募集賃料ではなく成約賃料を根拠にします。想定を高く書いた表は、買主が転記した時点で直近成約との差として見えます。
Q5. 契約者の氏名は載せるべきですか?
買主に渡す表には載せません。個人か法人かの区分で足ります。整形にAIを使う場合も、氏名・連絡先・建物名と賃料明細の組み合わせは貼り付けず、号室と金額だけの表にしてから使います。
Q6. 家賃以外の収入(駐車場・太陽光・自販機)はどこに書きますか?
家賃の列に足さず、専用の列か別行にします。太陽光売電が住戸と同じ列に入っていると、5章の計算例のように住戸賃料に対して2割の上乗せになることもあります。設備収入は買取価格や契約終了で減るので、利回りは住戸賃料だけでも出しておきます。
Q7. レントロールに載っていない情報で、購入前に必ず確認するものは?
滞納の有無(直近12か月の送金明細で確認)、敷地外駐車場の契約承継、大家負担の水道・ネット・共用電気、修繕履歴、告知事項、サブリースなら借上賃料の見直し条項です。現地で確認する項目は収益物件の現地調査チェックリスト|内見で見る建物の劣化サイン・周辺環境・入居者の質と夜間/雨天の確認ポイントにまとめています。
🎯 まとめ
レントロールに決まった書式はなく、売主から届く表も作成者によって欄の数や、契約開始日・敷金の有無が違います。だから作る側も読む側も、同じ雛形に転記して空欄を見える化するのが最初の一手です。配布している雛形は、現況表に加えて、金融機関に出すときの契約状況表と3年分の月別入金表を入れています。
読むときの軸は、同じ間取りの家賃差、契約開始日の偏り、空室の想定賃料、法人の集中、敷金の承継額、書かれていない収支、入金明細との突合の7つ。記入例の6戸でも、古い契約の53,000円が入替後に48,000円へ落ちると、表面利回りは8.91%から8.76%に下がります。サブリース物件では、入居者が払う賃料とオーナーの受取賃料が別の数字です。数字は表の外で動きます。
出すときは盛らない。スルガ銀行事件で金融庁が処分理由の先頭に書いたのは、賃料と入居率を実勢より高く想定・改ざんして評価を割り増したことでした。滞納中の部屋も保証契約の失効も備考に書いて出せば、後で入金と突き合わされても表と同じ数字です。雛形の黄色いセルを埋めるところから始めてください。
📖 この記事の根拠(出典・参考)
- 金融庁「スルガ銀行株式会社に対する行政処分について」(平成30年10月5日)/スルガ銀行「シェアハウス関連融資債権の一括譲渡および元本一部カットのお手続終了について」(2021年3月1日)(2026年9月参照)
- 国土交通省「賃貸住宅管理業法ポータルサイト|制度解説」(特定転貸事業者の行為規制・管理業者の登録と義務)(2026年9月参照)
- 民法第605条の2(不動産の賃貸人たる地位の移転・第4項の敷金返還債務の承継)、第622条の2(敷金)(e-Gov法令検索)
- 参考にした解説・配布元:株式会社いい生活「レントロールとは?不動産取引における位置づけや記載されている項目」、武蔵コーポレーション「レントロールとは?問題物件を回避するためにチェックすべき5つのポイント」、Facilo「レントロールとは?【テンプレート付】」、ノムコム・プロ「レントロールとは?プロが教える見方、作り方」(2025年12月1日)、スマッチュ「レントロール(現況賃料表)Excel雛形」、大家DX「レントロール雛形・テンプレート集」、クレビアス株式会社「レントロールひな形」、ミカタストア「レントロールテンプレート」、Anire Works「銀行融資でも褒められた自作レントロール」(いずれも2026年9月に本文を確認。国土交通省のレントロール様式として案内されているExcelのリンクは2026年9月19日時点で404)
- 監修について:本記事は税理士・弁護士の監修を受けたものではありません。個別の契約・税務・融資の判断は専門家と金融機関にご確認ください
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