「家賃を払い続けるのはもったいない。買えば資産になる」。この言葉が本当なのか嘘なのかは、家賃を払う側の帳簿と、家賃を受け取る側(大家)の帳簿を並べると見えてきます。「家賃がもったいない」が本当になるかどうかは、感覚ではなく、物件価格が月額家賃の何倍かで決まります。
この記事では、計算例として、自分で住むために買う中古3LDKと、大家が買って貸している新築ワンルームの毎月の支出を分解し、「家賃のうち本当に消えている部分はいくらか」「同じ部屋を買ったら消える部分はいくらか」を数字で示します。そのうえで、200倍の法則と損益分岐点、住宅ローン控除、機会費用、金利感応度、投資家の8割が自宅を持っているという調査まで、賃貸か持ち家かを判断する材料を並べます。統計や制度の数字は、国土交通省・国税庁の公表資料と、末尾に挙げた民間の公開資料に基づきます。
- 「家賃がもったいない」と言われて家を買うべきか迷っている方
- 家賃のうち本当に消えている部分がいくらなのか、大家側の内訳で知りたい方
- 200倍の法則や損益分岐点を、具体的な計算例で確かめたい方
- 住宅ローン控除(2026年の枠)と機会費用を判断に入れたい方
- 不動産投資家として、自宅を先に買うか投資を先にするかを決めたい方
- 大阪市の家賃と新築マンション価格の水準を知りたい方
- 「家賃がもったいない」は嘘でも本当でもなく、物件価格÷月額家賃が200倍を下回るなら本当、上回るなら嘘に近づく
- 計算例A:価格2,700万円・相場家賃15万円の中古3LDKは180倍。毎月の支出約11.7万円のうち消えるのは約6.8万円で、残り約4.9万円は元本返済
- 計算例B:大家が貸している新築ワンルーム(価格2,000万円・家賃8万円)は250倍。入居者の8万円より大家の月コスト91,294円の方が高く、借りる側の方が月約1.1万円安い
- 入居者の家賃8万円のうち、大家の手元で消える費用は4.5万円。残り3.5万円は大家のローン元本に回る
- 計算例Aと同じ部屋でも、価格が3,900万円なら260倍。持ち家が得になるかどうかは、価格が家賃の何倍の時期に買えるかで決まる
- 不動産投資家の約8割は自宅を所有(健美家アンケート2025年6月・114名)。融資の順番と団信・相続まで含めて決める
物件価格が月額家賃の200倍を下回る部屋なら本当、上回る部屋なら嘘に近い、が2つの計算例から出る答えです。180倍の計算例Aなら、借りるより毎月約8.2万円分の支出が消えずに済みます。250倍の計算例Bなら、入居者は大家が持つより安く住めます。「もったいないから買う」ではなく、「何倍で買えるか」と「何年住むか」を先に決めるというのが、払う側と受け取る側の両方の帳簿から見た結論です。
- 📐 1. 「家賃がもったいない」を、2つの計算例で先に検算する
- 🏠 2. 計算例A|自分で住む部屋の毎月11.7万円のうち消えるのは6.8万円、借りれば15万円が消える
- 🏢 3. 計算例B|大家が貸している部屋では、入居者の8万円のうち消えるのは4.5万円
- 🧮 4. 「家賃がもったいない」を3つに分解する
- 📏 5. 200倍の法則の使い方と限界
- 📐 6. 一般試算|大阪市内2LDK・35年の賃貸コストと購入コスト
- 💴 7. 住宅ローン控除|2026年の枠は世帯で違う
- 📈 8. 機会費用と金利感応度|頭金を投資に回したら、金利が上がったら
- 🤝 9. 不動産投資家は本当に「賃貸」なのか|8割が自宅を所有
- 🧓 10. 老後と出口|賃貸派の反論と持ち家の3つの換金手段
- ✅ 11. NG/OK|判断で失敗しないために
- ❓ よくある質問
- 📝 まとめ|「もったいない」ではなく「何倍で買えるか」と「何年住むか」で決める
- 📖 この記事の根拠(出典・参考)
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📐 1. 「家賃がもったいない」を、2つの計算例で先に検算する
計算例として、仮に次の2つの部屋を置きます。1つは自分で住むために買う中古の3LDK(計算例A)、もう1つは大家が買って人に貸している新築ワンルーム(計算例B)です。数字はすべて説明のための仮の値で、実在の物件ではありません。
📊 計算例:自分で住む部屋と、大家が貸している部屋
| 項目 | 計算例A:自分で住む中古3LDK | 計算例B:大家が貸している新築ワンルーム |
|---|---|---|
| 取得と借入 | 価格2,700万円。頭金なしで全額を借入(35年・金利1.5%・元利均等返済) | 価格2,000万円。頭金200万円+借入1,800万円(25年・金利2.0%・元利均等返済) |
| 毎月のローン返済 | 82,670円(返済1回目の内訳:元金48,920円・利息33,750円) | 76,294円(返済1回目の内訳:元金46,294円・利息30,000円) |
| 固定資産税・都市計画税 | 年120,000円(月10,000円) | 年60,000円(月5,000円) |
| 管理費・修繕積立金 | 国土交通省の令和5年度マンション総合調査の平均(管理費11,503円+修繕積立金13,054円=24,557円)を置く | 管理費と修繕積立金の合計で10,000円 |
| 同じ部屋の家賃 | 周辺の相場で150,000円 | 入居者が払う家賃(共益費込み)80,000円 |
| 物件価格÷月額家賃 | 180倍(2,700万円÷15万円) | 250倍(2,000万円÷8万円) |
2つの計算例は、片方が180倍、片方が250倍です。この倍率の差が、そのまま「家賃がもったいない」が本当か嘘かの差になります。次の2章で、それぞれの毎月の支出を「消える部分」と「残る部分」に分けます。
🏠 2. 計算例A|自分で住む部屋の毎月11.7万円のうち消えるのは6.8万円、借りれば15万円が消える
計算例Aの毎月の支出は、ローン82,670円+固定資産税・都市計画税10,000円+管理費・修繕積立金24,557円=117,227円です。これを「戻ってこない部分」と「自分の資産になる部分」に分けます。
📊 計算例Aの月額支出の内訳(返済1回目)
| 区分 | 項目 | 月額 |
|---|---|---|
| 消える部分(家賃と同じ性質) | ローン利息 | 33,750円 |
| 固定資産税・都市計画税 | 10,000円 | |
| 管理費・修繕積立金(国交省調査の平均) | 24,557円 | |
| 残る部分 | ローン元金(残高が減る=資産になる) | 48,920円 |
| 合計 | 消える部分 68,307円+残る部分 48,920円 | 117,227円 |
同じ広さの部屋を借りると、相場は15万円です。借りれば15万円が丸ごと消え、持てば消えるのは約6.8万円。差の約8.2万円が、この計算例で「家賃がもったいない」が本当になる部分です。ここに火災保険、いずれ来る大規模修繕の一時金、売るときの値下がりが加わるので、8.2万円がそのまま得ではありませんが、方向は動きません。なお、元利均等返済では返済が進むほど利息が減り、元金の割合が増えていきます。
住宅ローン控除も、持ち家の側だけに付く数字
住宅ローン控除を受けられれば、年末残高に応じた額が所得税・住民税から戻ります。これも賃貸にはない持ち家側の数字です。2026年入居の枠は、7章で表にしています。
同じ部屋でも、買うときの価格で倍率は変わる
倍率180倍は、価格2,700万円で買えた場合の値です。仮に価格が3,900万円まで上がっていれば、家賃が同じ15万円でも3,900万円÷15万円=260倍になり、同じ部屋でも賃貸圏に入ります。「持ち家が得」になるかどうかは、買う人の判断力より、価格が家賃の何倍の時期に買えたかで決まります。
🏢 3. 計算例B|大家が貸している部屋では、入居者の8万円のうち消えるのは4.5万円
次に、家賃を受け取る側の帳簿です。計算例Bでは、大家が新築ワンルームを2,000万円で買い、頭金200万円と借入1,800万円で支払ったとします。入居者は家賃と共益費の計8万円を払っています。大家が毎月払う費用は、ローン返済76,294円+管理費・修繕積立金10,000円+固定資産税・都市計画税5,000円=91,294円です。
📊 入居者が払う8万円は、大家の帳簿でどこへ行くか(返済1回目)
| 大家の支出 | 月額 | 性質 |
|---|---|---|
| ローン利息(残高1,800万円×年2.0%÷12) | 30,000円 | 消える |
| 管理費・修繕積立金 | 10,000円 | 消える |
| 固定資産税・都市計画税 | 5,000円 | 消える |
| 消える部分の小計 | 45,000円 | 入居者の家賃のうち、本当に「掛け捨て」になっている部分 |
| ローン元金 | 46,294円 | 残る(大家の残高が減る) |
| 合計 | 91,294円 | 入居者の8万円との差11,294円は大家の持ち出し |
入居者の8万円のうち、大家の手元で消えている費用は4.5万円です。残りの3.5万円は大家のローン元金に回り、足りない約1.1万円は大家が毎月足しています。つまり「家賃は大家の資産形成を手伝っている」という賃貸派の指摘は、この部屋では本当です。ただし同時に、入居者は大家がこの部屋を持つのにかかる費用より月11,294円安く住んでいます。新築2,000万円を250倍の家賃で貸すとこうなります。
2つの計算例から言えること
- 180倍の計算例Aでは、持つ方が借りるより毎月約8.2万円分の支出が消えずに済む
- 250倍の計算例Bでは、借りる方が持つより毎月約1.1万円安く、持つ側は元本を積む代わりに現金を持ち出す
- どちらも「家賃がもったいない」という言葉ではなく、倍率が答えを決めている


🧮 4. 「家賃がもったいない」を3つに分解する
「家賃は掛け捨てでもったいない。買えば資産になる」という通説は、次の3点に分解すると、どこが本当でどこが嘘かが見えます。
- 持ち家にも「掛け捨て部分」がある:利息・固定資産税・管理費・修繕積立金・保険料は家賃と同じく戻りません。計算例Aでは月約6.8万円、計算例Bの大家の側では月4.5万円がこれです。資産として残るのは元金返済分だけで、建物の価値は年々減ります
- 「もったいない」が本当になる条件:物件価格が家賃の200倍を下回る、長く住む、土地値が残る場所、金利が低い。この4つがそろうほど購入が有利になります
- 嘘に近づく条件:新築プレミアムを払う(計算例Bは250倍)、転勤や住み替えの可能性が高い、頭金を投資に回した場合の収益(機会費用)を無視する。このときは「もったいないから買う」が損になります
経済学では「ローン返済も家賃」(帰属家賃)
GDP統計では、持ち家に住む人も「自分自身に家賃を払っている」とみなして計算します(帰属家賃)。住むこと自体の費用は、借りても買っても必ず発生していて、違いはそれを大家に払うか、金融機関(利息)と自治体(固定資産税)と建物(減価)に払うか、だけです。計算例Aの表で言えば、消える部分約6.8万円が「自分に払っている家賃」に当たります。
📏 5. 200倍の法則の使い方と限界
「物件価格が月額家賃の200倍以下なら購入圏、大きく上回れば賃貸圏」という経験則を200倍の法則と呼びます。米国ではプライス・トゥ・レント比(物件価格÷年間家賃)で表し、20倍超は賃貸が割安、15倍以下は購入が割安と説明されます(月額換算で240倍と180倍)。計算例Aの180倍と計算例Bの250倍も、この経験則どおりに結果が分かれます。
📊 計算例と大阪市の平均で200倍の法則を当てはめる
| ケース | 物件価格 | 月額家賃 | 倍率 | 判定 |
|---|---|---|---|---|
| 計算例A(中古3LDK・2章) | 2,700万円 | 15万円(相場) | 180倍 | 購入圏 |
| 計算例Aと同じ部屋が3,900万円の場合 | 3,900万円 | 15万円 | 260倍 | 賃貸圏 |
| 計算例B(新築ワンルーム・3章) | 2,000万円 | 8万円(入居者が払う額) | 250倍 | 賃貸圏 |
| 大阪市内の新築マンション(2025年度平均) | 4,974万円 | 16.2万円(2LDK平均) | 307倍 | 賃貸圏(新築は300倍を目安にする説明もある) |
限界も書いておきます。倍率は「今の家賃」で計算するので、家賃が上がる局面では持ち家が有利に、下がる局面では賃貸が有利に動きます。また、200倍を切っていても短期で住み替えるなら取得費用を回収できません。倍率は入口の判定で、居住年数と出口を次章で重ねて初めて結論になります。
📐 6. 一般試算|大阪市内2LDK・35年の賃貸コストと購入コスト
2章・3章の計算例とは別に、大阪市内の平均値でも試算します。大阪市の2LDK平均家賃は約16.2万円(CHINTAI・2026年4月時点)、大阪市内の新築分譲マンションの平均価格は2025年度で約4,974万円(日本経済新聞・2026年4月)です。家賃は月15万円、購入は5,000万円で35年を置きます。
📊 賃貸35年(大阪市内2LDK・月15万円)
| 項目 | 金額 | 備考 |
|---|---|---|
| 家賃 | 月15万円×12×35年=6,300万円 | 家賃据置きの前提(賃貸に不利な置き方) |
| 更新料 | 15万円×17回=255万円 | 2年に1回 |
| 敷金償却・引越費用 | 約135万円 | 35年で3回の引越しを想定 |
| 合計 | 約6,690万円 | 手元に残る資産は0円 |
📊 購入35年(新築マンション5,000万円・金利1.5%)
| 項目 | 金額 | 備考 |
|---|---|---|
| 頭金+ローン総返済額 | 500万円+5,787万円 | 借入4,500万円・35年・利息1,287万円・月返済13.8万円 |
| 固定資産税 | 15万円×35年=525万円 | 住宅用地の特例適用後 |
| 管理費・修繕積立金・一時金 | 月3.5万円×12×35年+200万円=1,670万円 | 国交省調査の平均は月24,557円。タワーマンションは月5万円超 |
| 取得時の諸経費 | 200万円 | 登録免許税・不動産取得税など |
| ▲住宅ローン控除 | ▲約343万円 | 長期優良住宅(一般世帯・限度額4,500万円)の場合。13年・年末残高×0.7% |
| 純コスト | 約8,339万円 | 35年後に1,500万円で売れれば実質約6,839万円 |
35年の総額は賃貸6,690万円、購入6,839万円(売却後)でほぼ互角です。勝敗を分けるのは総額ではなく、何年住むか、頭金を投資に回したらどうなるか、金利がどう動くかの3つです。
📊 損益分岐点|居住年数で結論は変わる
| 居住年数 | 傾向 | 理由 |
|---|---|---|
| 〜5年 | 賃貸有利 | 取得諸経費と新築プレミアムを回収できない |
| 10〜20年 | ほぼ拮抗 | 金利・売却価額・管理費の上昇で前後する |
| 25〜35年(完済前後) | 購入有利 | 完済後は家賃ゼロの期間が累積コストを押し下げる |
FPの試算例では、固定金利1.9%・35年・5,000万円の中古住宅を30歳で購入すると、完済の数年後(おおむね38年目)に購入が賃貸の累計を逆転し、90歳時点で持ち家が約5,148万円有利という結果があります(中古住宅のミカタ)。一方、居住25年・35歳のファミリーでは購入が賃貸より約1,048万円割高という試算もあります(武蔵小山ウィローズ)。何年住むかを決めずに損得は出ません。
💴 7. 住宅ローン控除|2026年の枠は世帯で違う
📊 2026年入居の住宅ローン控除
| 物件種別 | 借入限度額 | 控除率・期間 | 最大控除額 |
|---|---|---|---|
| 新築 長期優良・低炭素住宅 | 5,000万円(一般世帯4,500万円) | 0.7%・13年 | 455万円(一般409.5万円) |
| 新築 ZEH水準 | 4,500万円(一般3,500万円) | 0.7%・13年 | 409.5万円(一般318.5万円) |
| 新築 省エネ基準 | 3,000万円(一般2,000万円) | 0.7%・13年 | 273万円(一般182万円) |
| 中古 長期優良・低炭素・ZEH水準 | 4,500万円(一般3,500万円) | 0.7%・13年 | 409.5万円(一般318.5万円) |
| 中古 省エネ基準適合 | 3,000万円(一般2,000万円) | 0.7%・13年 | 273万円(一般182万円) |
| 中古 一般 | 2,000万円 | 0.7%・10年 | 140万円 |
- 5,000万円・最大455万円の枠は子育て世帯(19歳未満の子あり)と若者夫婦世帯の特例。一般世帯の長期優良は4,500万円・409.5万円です
- 要件は返済期間10年以上、合計所得2,000万円以下、床面積50㎡以上(合計所得1,000万円以下なら40㎡以上も可。ただし40㎡台では子育て世帯・若者夫婦世帯の上乗せは使えない)、取得後6か月以内の居住、2024年以降の新築は省エネ基準適合
- 以前の「年末残高の1%・10年」とは制度が違うので、自分の入居年の表で計算してください
📈 8. 機会費用と金利感応度|頭金を投資に回したら、金利が上がったら
📊 頭金1,000万円を35年運用した場合
| 運用先 | 想定年利 | 35年後 |
|---|---|---|
| 定期預金 | 0.1% | 1,036万円 |
| 国債(10年) | 1.0% | 1,417万円 |
| 株式インデックス | 5.0% | 5,516万円 |
| 収益不動産(中古アパート) | 表面8%・実効4% | 3,946万円 |
頭金と繰上返済に回すお金を投資に回せる人ほど、賃貸が有利になります。ただし米イェール大の長期データでは住宅価格の実質上昇率は年率約0.6%(1915〜2015年)にとどまるという指摘があり、住宅は「資産」というより「居住サービスの買い物」に近いという見方も、頭に入れておく価値があります。全体の順番は不動産投資と資産形成の全体像|何から始める?お金の順番・自分に合う進め方・他の投資との組み合わせで整理しています。
📊 金利感応度|借入3,000万円・35年
| 金利 | 月返済額 | 総返済額 | 利息合計 |
|---|---|---|---|
| 1.0% | 8.5万円 | 3,557万円 | 557万円 |
| 1.5% | 9.2万円 | 3,858万円 | 858万円 |
| 2.0% | 9.9万円 | 4,174万円 | 1,174万円 |
| 3.0% | 11.5万円 | 4,849万円 | 1,849万円 |
金利1.5%から3.0%で総返済額は約991万円増え、大阪の家賃5.5年分に相当します。変動金利で買うなら、金利感応度の表を自分の借入額で作ってから判断してください。変動には5年ルール・125%ルールがあり、当面の返済額は抑えられても利息の総額は増えます。
🤝 9. 不動産投資家は本当に「賃貸」なのか|8割が自宅を所有
「投資家は持ち家を買わず、賃貸+投資が定石」とよく言われます。健美家/LIFULLの不動産投資家アンケート(2025年6月・回答114名)では、自宅の形態は所有(戸建て)51.8%、所有(マンション)23.7%、所有(賃貸併用住宅)5.3%で、合計約80.8%が自宅を所有していました。自宅選びで「完全に投資目線」8.8%+「ある程度投資目線」42.1%と、5割超が投資の視点を持ち込んでいます。
机上論と行動が食い違う理由は4つあります。
- 融資の順番:住宅ローンを先に組むと与信枠を圧迫し、その後の投資ローンが受けにくくなる。投資物件は家賃収入が与信に算入されるため、投資を先行させて規模を作ってから自宅を買う投資家が多い。全体設計はサラリーマン大家の始め方と現実|1棟目から5棟目までの拡大戦略・家賃収入月20万円への道【現役が解説】
- 団信:住宅ローンの団信は残債を消す。家賃を生まない自宅ローンほど、その効果は大きい。不動産投資ローンは団信なしで借りてよいか|団信の記載を書類で確かめる方法と、上乗せ0.3%を残高で計算した例
- 相続評価:自宅の土地は相続税評価が時価の7〜8割に圧縮され、小規模宅地等の特例でさらに下がる。貸家の評価はアパートの相続税評価額の計算方法|6戸の計算例で貸家建付地・貸家を計算し、2027年の5年ルールを当てはめる
- 賃貸併用・住み替え戦略:自宅部分50%以上で住宅ローンを使い家賃で返済に充てる賃貸併用や、住んでから貸す手法。詳細はヤドカリ投資は違法?住宅ローン返済中に自宅を賃貸に出すと契約違反になる条件|転勤・区分マンション・3000万円控除の注意点、法人での保有は不動産投資の法人化はいくらから?デメリットと設立・相続・出口・保険・リスクの全体像
🧓 10. 老後と出口|賃貸派の反論と持ち家の3つの換金手段
賃貸派の最も強い反論は「老後は安い部屋に住み替えればよい」です。家賃を月5万円下げれば15年で900万円の圧縮になり、購入との差は大きく縮みます。ただし、高齢での入居審査は年齢を理由に厳しくなりやすく、「いつでも移れる」は健康と保証会社の審査次第です。
持ち家の出口は3つあります。①売却(居住用の3,000万円特別控除)、②リースバック(売って現金化し、賃料を払って住み続ける。売値は安く、家賃は割高になりやすい)、③リバースモーゲージ(自宅を担保に老後資金を借りる。担保評価の下落と金利上昇が弱点)。逆に、離婚や転勤では持ち家が足かせになり、残債が売却価格を上回ると身動きが取れません。買う前に見るべきは、出口の選択肢と、残債が売値を下回るまでの年数です。
✅ 11. NG/OK|判断で失敗しないために
- 月額家賃と月額ローンだけを比べる(利息・税・管理費を消える部分として数えない)
- 倍率を見ずに「もったいない」の一言で新築を買う(3章の計算例Bは250倍)
- 住宅ローン控除を一般世帯でも455万円と置く
- 機会費用と金利上昇を無視する
- 何年住むかを決めずに損得を語る
- 候補の物件価格÷同等の家賃で倍率を出し、200倍と300倍(新築)を目安に判定する
- 毎月の支出を「消える部分」と「元金」に分けて、家賃と比べる
- 住宅ローン控除は自分の世帯区分と入居年で計算する
- 金利感応度と機会費用を自分の借入額で試算する
- 関西なら中古も候補に入れる。減価償却は中古マンション・築古物件の減価償却の計算方法|簡便法で築22年木造は4年償却・附属設備の区分・土地建物の按分
❓ よくある質問
Q1. 「家賃がもったいない」は嘘ですか?
A. 嘘でも本当でもなく、物件価格÷月額家賃で決まります。200倍を下回る部屋では本当(2章の計算例Aは180倍)、上回る部屋では嘘に近い(3章の計算例Bは250倍で、借りる側の方が月約1.1万円安い)。倍率と居住年数を先に出してください。
Q2. 家賃のうち、本当に消えているのはいくらですか?
A. 借りる側から見れば全額が消えます。大家側の帳簿で言うと、3章の計算例Bでは入居者の8万円のうち4.5万円が大家の利息・管理費・税で消え、3.5万円が大家のローン元金に回ります。
Q3. 200倍の法則は今も使えますか?
A. 入口の判定には使えます。ただし都心の新築や人気エリアは200倍を超える物件が普通で、「200倍以内の物件が見つからない」という指摘もあります。その場合は新築300倍の目安と、何年住むかの損益分岐点を重ねて判断します。
Q4. 金利が上がったら賃貸が有利になりますか?
A. 相対的にはそうです。借入3,000万円なら金利1.5%から3.0%で総返済が約991万円増え、大阪の家賃5.5年分に当たります。家賃は需給で決まるため、金利上昇の影響は遅れて限定的に及びます。
Q5. 不動産投資家として自宅は買うべきですか?
A. 順番と前提次第です。健美家アンケートでは投資家の約8割が自宅を所有しています。投資を先行させて与信を温存し、自宅は長期居住前提で倍率と損益分岐を確認し、買うなら団信・住宅ローン控除・相続評価の圧縮を取り切る設計にする、という順番をおすすめします。
Q6. 住宅ローン控除はフルで使えますか?
A. 所得税から引き切れない分は住民税から控除します(上限9.75万円)。年収500万円程度なら控除額の7〜10割が実質還付され、年収800万円超ならフルに近づきます。2026年の枠は世帯区分で違うので7章の表で確認してください。
Q7. 賃貸の高齢時リスクはどう備えますか?
A. ①UR都市機構(年齢制限なし)、②サービス付き高齢者向け住宅、③家賃債務保証制度、④60歳前に手頃な中古を買う、の4ルートが現実的です。
📝 まとめ|「もったいない」ではなく「何倍で買えるか」と「何年住むか」で決める
計算例で家賃を受け取る側と払う側の帳簿を並べると、「家賃がもったいない」は嘘でも本当でもなく、物件価格が月額家賃の何倍かで答えが決まりました。180倍の計算例Aでは、借りれば15万円が消えるところ、持てば消えるのは約6.8万円です。250倍の計算例Bでは、入居者は大家が持つ費用より月約1.1万円安く住み、大家は元本を積む代わりに現金を持ち出しています。
ただし、計算例Aと同じ部屋でも、価格が3,900万円なら260倍の賃貸圏に入ります。倍率は入口の判定であり、何年住むか、頭金を投資に回したらどうなるか、金利がどう動くかを重ねて初めて結論になります。住宅ローン控除の枠は2026年に世帯区分で違い、以前の1%・10年とは別物です。
不動産投資家の約8割は自宅を持っています。融資の順番、団信、相続評価、家族の居住の安定まで含めて判断しているからです。自分の候補物件の価格を同等の家賃で割り、毎月の支出を消える部分と元金に分け、何年住むかを決める。この3つをそろえてから、買うか借りるかを決めてください。
📖 この記事の根拠(出典・参考)
- 管理費・修繕積立金の平均:国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果」(駐車場使用料等からの充当額を除く月/戸当たり管理費11,503円、修繕積立金13,054円)。2026年9月19日参照
- 住宅ローン控除:国税庁 タックスアンサーNo.1211-1(新築)・No.1211-3(中古)[令和8年4月1日現在法令等] https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1211-1.htm 、 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1211-3.htm /国土交通省「住宅ローン減税」(令和8年度税制改正後の借入限度額・控除期間・床面積要件) https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk2_000017.html (2026年9月29日参照)
- 大阪の新築マンション価格・家賃:日本経済新聞「大阪市の新築マンション6%安 25年度」(2026年4月)/CHINTAI「大阪市の2LDK家賃相場」(2026年4月時点)
- 投資家の自宅所有実態:健美家/LIFULL「不動産投資家アンケート」(2025年6月・回答114名)
- 損益分岐・200倍の法則:中古住宅のミカタ(FP試算)/武蔵小山ウィローズ(居住期間別試算)/住まいサーフィン「家賃がもったいないとか言って家を購入するバカって頭悪いよねって本当?」(2026年8月更新)/オープンハウス「家賃がもったいないと感じたら」
- 住宅の長期リターン:ダイヤモンド・オンライン(イェール大データ)
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