自分の老後資金は自分で責任で持って計画的に運用する必要があります。
ですが、実際には「国や他人がどうにかしてくれる」と思い込んでいる人が多いように思います。
今回、金融審議会市場ワーキンググループ(WG)から提出された「高齢社会における資産形成・管理」の報告書の内容が話題になっています。
正直、何故、この内容が話題になるのか不思議なくらいですが、自分なりの考えをまとめてみました。
- 老後の自己資金は2,000万円あれば十分だと思っている人
- 年金制度の支給額や支給開始の時期が不安な人
- 老後に向けて具体的な解決策を検討したい人
金融審議会の報告内容と国民の反応
報告書の概要としては主に以下のような内容になります。とても細かく正確にまとめられていると思います。
- 95歳までの30年間で年金支給とは別に2,000万円必要になる
- 退職金は平均で平均で1,700万円~2,000万円程度になりピーク時から3割〜4割減る
- 今後、人口減少、少子高齢化が進みの年金支給額は下降傾向になる
- 現役機〜リタイヤ機前後〜高齢期と段階ごとの資産運用方針が必要になる
報告内容について、僕個人的には概ね適切だと感じていますが、逆に「特に目新しい発見は無く、以前から十分想定できていた内容」だという感想です。
そして「老後の安定した生活を考えると2,000万円では足りませんよ」と具体的な数字をもとに、アホでも分かるように、とても親切なアドバイスをしてくれているにも関わらず…
- 年金100年安心神話が崩れたぁー!
- 年金制度は崩壊だぁー!
- 豊かな老後生活が過ごせないー!
と騒いでいる人達の気持ちが全然理解ができません。
できるかどうかは別として「老後資金2,000万円準備しろ」と言われて騒いでる人達、節約ノウハウやその他の人的資産も持って無いのに、2,000万円すら準備しないつもりだったの?逆に急激な人口減少も無く想定通りの年金収入が見込めたとして、老後資金0円で挑むつもりだったの?えっ?算数できないの?
— 西本 豪 (@go_1101) June 13, 2019
2,000万円が不足していることについて驚いている人が一定数いるようですが、むしろ、その人達に対して驚きです。
100年安心は何が安心か?
「年金制度は100年安心」をいうキーワードも話題になっていますが、これは「年金だけで100歳まで自己資金無しで安心して暮らしていける」という意味ではありません。
あくまで、年金制度自体が100年間安心して存続できる制度だということです。
なので、ある程度、老後の自己資金が必要になったとしても「年金100年安心神話が崩壊した」と騒ぐのは不適切です。
そもそも、個人でちょっと老後のシュミレーションをすれば、それ位掛かることは予想できるはずですが、逆にこの報告が無ければ老後を0円で挑むつもりだったのでしょうか?
「どこまで自分の老後を他人頼みで考えているのだろう?」と心配になってしまいます。
資産形成の重要性
この報告書の本質は「2,000万円不足するからヤバイですよ」では無く「現役時代から計画的に資産形成をして老後に備えましょう」という趣旨のものです。
テレビやインターネットなどでは「金融機関側がタンス預金(貯蓄)を投資に回すよう促しているポジショントークなだけ」との指摘もありますが、それのどこがいけないのか疑問です。
長い時間を有効活用して分散した積立投資をすることは、安定的な老後資金を確保するための、もっともスタンダードな方法だと思うんですけどね。
年金制度は崩壊しない
僕は年金制度には割と楽観的な考え方なので余り心配はしていません。
ですが、そもそも「崩壊」の定義が人によって違うと思うので、現在の年金制度に対する僕の考えを簡単にまとめてみました。
- 年金だけで安定した老後生活を送ることは極めて難しい、と言うか無理
- 平均寿命付近まで長生きすることができれば支払った分の年金保険料を回収できる可能性が高い
- 近い将来、年金制度そのものが運用停止の状態に陥る可能性は極めて低い
個人的には「これまでに支払った年金保険料相当の金額が戻ってきたら十分ハッピーじゃない?」と思うのですが、今、年金制度を批判している人の中には年金収入だけで安定した老後生活を送るつもりだった人が沢山いるようで、その人達からしてみれば「崩壊」と解釈されてしまうのかもしれませんね。
ちなみに、僕の年金に関する基本的な考え方についてはこちらの記事で丁寧に解説しています。もし年金制度に不安を感じている人がいれば、是非、読んで頂ければと幸いです。
老後資金が2,000万円じゃ足りない4つの理由
繰り返しになりますが、報告書の記載内容は概ね適切なんだと思います。
ですが、その一方で、この報告内容を鵜呑みにして、全ての人が「2,000万円あれば老後は安泰だ」と考えるのは軽率だと思いました。
あくまで「平均値」なので、足りる人もいれば、足りない人もいる訳ですが、実際には「かなり多くの人が老後資金は2000万円では全然足りない」と理解するべきです。
「もし物価が上昇したら?」「ベーシックインカムが導入されたら?」とそれっぽい可能性を広げ過ぎても切りが無いですし、未来の予想をしても余り意味が無いので、あくまで現在の状況を前提として考えてみたいと思います。
年金支給額は緩やかに減少する
今後、年金の支給額が減少していくことは多くの人が覚悟しているはずです。
主な要因はやはりこの2つだと思います。
- 日本人の平均寿命は増加傾向
- 年金支給を必要としている高齢者が増えていく
- 平均出生率はどんどん減っている
- 年金保険料を支払ってくれる若者が減っていく
支給額が減ることもありますし、支給開始年度が繰り上げられることも想定できます。
調査対象は厚生年金の加入者
国民年金にしか加入していない人は、厚生年金に加入している人と比べて年金支給額も大きく下回りますし、同じようにニートやアルバイトなどで長年厚生年金に加入していない期間がある人も同様に年金支給額は低くなるため、その分の自己負担を強いられます。
ちなみに、国民年金と厚生年金の違いや年金制度の仕組みについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
誰に向けたメッセージかを考える
年収や貯金額のようなお金の話題になると、良く「平均値」をもとに話が進みます。
ですが、実際には、年収にしても貯金額にしても「極端に年収の高い人」や「極端に貯金額が高い人」が一定数存在するため、そのお金持ちの人達によって「平均値」は大きく押し上げられている傾向があります。
今回、老後資金が2,000万円足りないと言われているのは、厚生年金に加入して、比較的しっかりと稼いでいるプチエリート会社員に向けてのメッセージです。
このようなレポートを作成する以上、個人ごとの状況を適応することは現実的に難しいため、あくまで「平均値」を基準とした算出結果となることは当然ですが、「平均値」が自分にも当てはまると思い込むのは危険です。
ただし、今回の報告書に対して「平均値を算出しても全ての人に当てはまる訳では無いので余り意味が無い」との厳しい指摘もありますが、全ての人に当てはまるシュミレーションをするのは現実的にかなり難しく、適切な指摘とは思えません。
リストラされる人は確実に増える
リストラや早期退職を強いられる人は確実に増えるはずです。
経団連の中西宏明会長やトヨタ自動車の豊田章男社長も、今後、終身雇用が難しい趣旨の発言をしています。
もし、定年まで雇用が維持できなければ、その分、会社員として納める厚生年金の保険料も下がりますし、結果的に年金支給額も減ってしまいます。
今どき「終身雇用」なんて迷惑以外の何者でも無いはずです。
リストラや早期退職になってしまう可能性も頭の片隅に置いた上で、将来を考える必要があります。
具体的にどうすれば良い?
それでは具体的な解決方法は何があるでしょうか?
資産運用と節約の両方が必要
答えは報告書にも記載されている通り、つみたてNISAやiDeCoによる資産運用が正解だと言えます。
ですが、それと同じくらい、地道な節約も大切になります。まずはこのような思い込みを見直す必要がある気がします。
- 車を維持するには○○万円必要
- マイホームを購入するには○○万円必要
- 携帯電話の料金は月々○○万円必要
食費や教育費は中々削減するのは難しいかもしれませんが「そもそも車は購入する必要があるのか?」「マイホームでは無くずっと賃貸では駄目なのか?」のように、一つ一つの支出に疑問を持つところから始めれば良いと思います。
「2,000万円足りない」という意見にはとても敏感なのに、大手キャリアの携帯料金に違和感無く1万円以上も支払い続ける人達はどう考えてもおかしいです。
他人に過剰に頼らない
予想以上に人口減少や少子高齢化が進んでしまい、仮に「年金運用はもう限界だ!」との結論が出たとしても、その責任を国や誰か他の人に求めるのは建設的ではありません。
また、世代間格差を理由に、現在の老後世代に文句を言うのも少し違うと思います。
確かに年金支給額だけで比較すると、僕達の方が不利(不公平)かもしれませんが、先輩世代が頑張ってくれたおかげで僕達はさまざまな形で人生のショートカットができているはずです。
「年金だけでは老後の生活を全て賄うのは難しいから各自で頑張ってね」と伝える政府の意見と「いやいや年金だけで全ての生活を賄うべきで自己資金なんて準備したくない」と主張する個人の意見と、どちらが無責任なのかは意見が分かれると思いますが、僕は今回の警鐘はとても誠実で称賛すべきものだと思います。
勿論、家庭環境や身体的な問題で十分に収入を確保できない人もいますし、人それぞれ価値観や考え方は違います。
なので全ての人に対して「しっかりと自力でお金を準備するべきだ」とは思いません。
ですが、自分の将来の必要資金や年金支給額を(できるかできないは別として)計算しようともせずに、ただ単に出てきた「2,000万円」と言う数字だけに着目して、ぎゃーぎゃー騒ぐのは少し違うような気がします。
自分の老後です。
未来の自分のために何ができるか、少しずつ考えなければいけません。
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