不動産投資の法人化|課税所得900万円の損益分岐と、設立・相続・出口・保険・リスクの全体像

法人化・相続・出口
この記事は約18分で読めます。

不動産投資の法人化は、課税所得900万円を超えたあたりが個人と法人の税負担の損益分岐点と言われます。しかし「いつ法人化するか」は、税率の損得だけでは決まりません。実務では、任意償却(青色法人のみ)・損失繰越10年(個人は3年)・所得分散・出口戦略の逆転(売却時は個人有利)・融資戦略上の与信温存までを立体的に判断します。

さらに法人化は、それ単体で完結する論点ではありません。法人で保有を始めた瞬間から、相続(株式評価・役員借入金)/出口(売却の個人有利逆転・物件移管)/保険(団信の債務免除益)/万一のリスク(法人破産でも残る連帯保証)までが、一本の判断軸につながります。本記事は、法人化の損益分岐という「入口の数字」を押さえたうえで、設立・相続・出口・保険・リスクという5つの島の全体像を1本で俯瞰し、各論点を深掘りする記事へ案内する、テーマの目次ハブです。

この記事は以下のような方におすすめです!
  • 個人で1〜数棟を保有し「そろそろ法人化すべきか」を考え始めた投資家
  • 課税所得900万円ラインの損益分岐と判断軸を、具体的な数字で知りたい方
  • 法人化したあと、相続・出口・保険・万一のリスクまで含めた「守りの全体像」を1本で掴みたい方
  • 各論点を深掘りするための、テーマ別の関連記事マップ(目次)が欲しい方
🎯 30秒でわかる本記事の要点
  • 損益分岐は課税所得900万円。個人43%(所得税33%+住民税10%)が法人実効税率を上回るラインが目安。ただし法人維持コスト年130〜180万円を上回る節税が前提。
  • 法人化は「税の損得」ではなく、設立→相続→出口→保険→リスクの一気通貫で決める。出口(売却)では長期保有なら個人20.315%が有利になる「逆転」がある。
  • 本記事は各島の「なぜ連動するか」だけを示す俯瞰ハブ。深掘りは末尾「関連記事マップ」の各スポーク記事へ。
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📊 法人化の損益分岐|課税所得900万円ライン

不動産投資の法人化判断は、まず個人と法人の税率比較が出発点です。

📊 個人と法人の税率比較

課税所得 個人(所得税+住民税) 法人(実効税率)
〜195万円15%15%(中小法人800万以下)
195〜330万円20%15%
330〜695万円30%15%
695〜900万円33%15%(800万まで)/23.2%(800万超)
900〜1,800万円43%23.2%
1,800〜4,000万円50%23.2%
4,000万円〜55%23.2%

📐 損益分岐点の計算ロジック

  • 課税所得900万円超:個人43% vs 法人約23.2% → 差20%以上で法人化メリットが明確。
  • 課税所得600〜900万円:個人30〜33% vs 法人15〜23.2% → 維持コスト次第。
  • 課税所得600万円以下:個人20〜30% vs 法人15% → 法人化メリット小(維持コストで赤字になりやすい)。

💴 法人維持コストの実数値

費目 金額・内容
住民税均等割(赤字でも発生)年7万円(東京・大阪・京都とも資本金1,000万円以下)
税理士顧問料年30〜60万円(決算込み)
社会保険料(役員報酬連動)役員報酬の約30%(労使折半で会社負担分は約15%・損金算入可)。役員報酬月50万円(年600万円)なら会社負担分は年約90万円
合計の目安年130〜180万円(社保ありの場合。役員報酬を抑えれば社保負担は圧縮可能)

つまり節税額が維持コスト年130〜180万円を上回らなければ、法人化は手取りベースでマイナスになります。「税率が低いから法人」ではなく、「維持コストを差し引いても残るか」で判断します。

💰 役員報酬の最適設計と社会保険料

法人化で最も誤解が多いのが役員報酬です。健美家コラムで税理士・渡邊浩滋氏も指摘するとおり、「月6万円が得」「0円にすべき」という表面的な選択は誤りで、社会保険料・給与所得控除・法人税率・将来の退職金を総合して最小化する金額を選びます。

役員報酬 狙い 向く人
0円自社側の社保負担をゼロに。利益は法人税(中小は所得800万円以下で実効約24%)で完結本業の給与で社保加入済のサラリーマン大家
月6万円社保最低ラインに乗せつつ、国民健康保険より負担を抑える国保加入中の専業大家
年600〜800万円給与所得控除(年600万円で164万円)+累進緩和で所得分散不動産所得が大きく所得分散したい人

社会保険料は役員報酬の約30%(労使合計)と重く、高額報酬で社保を払うより、法人に利益を残して法人税で完結させた方が手取りが多いケースもあります。配偶者へ報酬を分散する場合は、扶養・配偶者控除の範囲との兼ね合いを必ずシミュレーションします。資産管理法人を合同会社で作る具体的な実務(定款・登記・1人運営・物件移管)は、不動産投資家の合同会社設立 実務ガイドで詳しく整理しています。

🏦 もう一つの判断軸|「登記場所」から逆算する融資戦略

課税所得900万円という損益分岐点は、あくまで税負担だけを見たときの目安です。しかし不動産投資の生命線は融資であり、ここに見落とされがちな論点があります。西本氏が2025年4月時点(会員セミナー)で示した実感値として、「法人化は損益分岐の数字だけにこだわらず、融資に有利かどうかで判断する」という視点が挙げられました。法人格は事業性融資(プロパー融資)と相性がよく、個人の与信枠とは別軸で金融機関と向き合えるためです。

とりわけ実務上のインパクトが大きいのが、法人の登記場所によって、取引できる金融機関が事実上決まってくるという点です。信用金庫は協同組織金融機関のため、営業エリアと会員資格が定款・登記地に紐づきます。つまり「借りたい金融機関」が先に決まっているなら、設立時に登記地をそこから逆算するという発想が成り立ちます。これは設立後に変更しづらいため、入口で押さえておきたいポイントです。

判断軸 見るべきこと 実務上の注意
税負担(損益分岐)課税所得が分岐点に到達しているか数字「だけ」で決めない
融資との相性事業性融資(プロパー)を引けるか法人格は事業性融資と相性が良い
登記場所どの金融機関で借りたいか信用金庫は営業エリア・会員資格が登記地に縛られる

競合メディアでも同様の指摘があります。楽待は、信用金庫の利用を想定するなら登記前に営業エリア・会員資格の要件を確認しておくべきとしています(出典:楽待)。逆に注意したいのが、ノムコムが挙げる失敗例です。損益分岐点の数字だけで法人化を急ぎ、結局は出口の譲渡課税で税メリットが相殺されて後悔するというパターンで、税・融資・出口を切り離して考えると陥りやすい落とし穴です(出典:ノムコム)。損益分岐は「入口の一指標」と捉え、融資戦略とセットで設立判断を組み立てるのが実務家の発想です。

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🏗️ 法人化の3つの方式|所有・サブリース・管理委託

「法人化=全物件を法人に移す」と思い込んでいる方が多いのですが、実務では物件の所有権を個人に残したまま所得だけを法人へ移す方式もあります。法人化のスキームは大きく3つです。

方式 物件所有 法人の取り分 節税効果 物件移管
管理委託方式個人のまま管理料 家賃の5%程度不要
サブリース方式個人のまま借上げ差益 15%程度不要
不動産所有方式法人へ移転家賃収入の全額最大必要

節税効果は所有方式>サブリース方式>管理委託方式の順で、所得を全額法人に移せる所有方式が最も効果的です。一方で所有方式は物件移管コスト(後述の登録免許税・不動産取得税・譲渡所得税)が発生します。管理料・借上げ率を相場(管理5%・サブリース15%前後)から大きく外して設定すると、税務調査で否認されるリスクがあるため、適正額を守るのが鉄則です。

所有方式が向くのは、築20年超で借入返済が進み、月額賃料60万円以上の一棟ものを持つケース。新築・築浅や区分マンションは譲渡益・移転コストが重く、管理委託やサブリースから始める判断もあります。本記事は最も節税効果の高い所有方式を前提に、以下で器(合同会社・株式会社)と税務メリットを解説します。

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🏢 合同会社(LLC)vs 株式会社|選択基準

📊 合同会社と株式会社の比較

項目 合同会社(LLC) 株式会社
設立費用約6万円(登録免許税)約24万円(登録免許税15万円+公証人手数料)
最低資本金1円1円
役員任期なし(無期限)最長10年
決算公告不要必要
税制(法人税率)同じ同じ
社会的信用
融資の通りやすさ高(地銀・信金)

📋 不動産投資家の選択基準

  • 個人不動産投資家・少規模(〜5棟):合同会社(LLC)でコスト最小化。
  • 規模拡大・融資積極活用(5棟超):株式会社で融資・対外信用。
  • 法人成り・将来IPO検討:株式会社が現実的。
  • 家族専用:合同会社で十分。

不動産投資家の大半は合同会社が標準解です。1人運営・役員報酬・物件移管・議決権リスクまで含めた合同会社設立の具体手順は、不動産投資家の合同会社設立 実務ガイドに集約しています。

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📐 任意償却・損失繰越10年|法人ならではの税務メリット

不動産投資の最大のキャッシュフロー要素である減価償却費は、法人では「任意償却」が認められています。さらに損失の繰越期間も、個人3年に対し法人は10年と長く、これが法人ならではの税務メリットの両輪です。

📊 個人と法人の減価償却の違い

区分 個人 法人
償却の選択強制償却(法定耐用年数)任意償却(限度額内で自由)
償却年限毎年計上必須計上ゼロも可能
活用×利益が大きい年に多く、少ない年に少なく

💴 任意償却の活用例

築22年木造アパート(簡便法4年)取得価額1,200万円のケース:

  • 個人:毎年300万円を強制計上 → 4年で全額償却。
  • 法人:1年目0円・2年目300万円・3年目600万円・4年目300万円など、利益に応じて調整可能。
  • 譲渡や売却年に償却を増やすことで、譲渡益との相殺も可能。

中古の簡便法(築22年木造で4年償却)やデッドクロス・譲渡所得との関係は、中古不動産の減価償却ガイドで計算式まで掘り下げています。

📅 損失繰越|青色法人10年・個人3年

区分 繰越期間 活用シーン
個人(青色)3年短期
法人(青色)10年(2018年4月以降開始事業年度)大規模修繕後の損失を10年で吸収

大規模修繕などで一時的に大きな損失が出ても、法人なら10年かけて利益と相殺できるのは、個人の3年繰越にはない強みです。

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🆚 Before/After|課税所得1,500万円の場合

課税所得1,500万円の投資家が、個人保有のままの場合と合同会社で法人化した場合を比較します。

📕 Before(個人保有)
  • 不動産所得:1,500万円
  • 所得税+住民税:43%
  • 税負担:約645万円
  • 損失繰越:3年
  • 減価償却:強制
📘 After(合同会社で法人化)
  • 役員報酬600万円(個人課税)/法人所得900万円
  • 個人所得税:約100万円
  • 法人税:800万×15%+100万×23.2%=約143万円
  • 合計税負担:約243万円
  • 節税効果:約400万円/年

このケースでは年間約400万円の節税となり、維持コスト年130〜180万円を大きく上回ります。課税所得が高いほど法人化メリットが鮮明になる一例です。

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📋 物件移管の手順とコスト

📋 合同会社設立の手順

  1. 1会社名・所在地・事業目的を決定
  2. 2定款作成(公証役場の認証は不要)
  3. 3資本金の払込
  4. 4登記申請(法務局)
  5. 5税務署への法人設立届
  6. 6都道府県・市町村への法人設立届
  7. 7銀行口座開設・社会保険加入手続き

📋 物件移管の方法

方法 概要 税負担
売買個人→法人へ売却(適正時価で)譲渡所得税(5年超20.315%/5年以下39.63%)+不動産取得税(評価額×3〜4%)+登録免許税(評価額×2%)
現物出資不動産を出資金として法人へ譲渡所得税相当+現物出資検査(資本金500万円超等で検査役選任の手間)
新規取得最初から法人で購入移管コストなし(最も低コスト)

建物移転には登録免許税(評価額×2%)と不動産取得税(評価額×3〜4%)だけで評価額の5〜6%がかかり、これに譲渡所得税が乗ります。築浅・含み益の大きい物件をいきなり所有方式で移すと、移転コストが利益を食うため、新規取得分から法人に積み上げる、または管理委託・サブリースで所得分散する段階戦略が現実的です。土地まで移すと土地の譲渡益課税も発生するため、建物のみ移転にとどめる設計も有効です。移管時の不動産取得税の軽減措置は、収益物件の不動産取得税ガイドで確認してください。

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🚪 出口戦略|売却時は個人有利の「逆転」に注意

法人化の議論は保有中の節税に偏りがちですが、売却(出口)まで含めると、長期保有では個人のほうが税負担が軽くなる「逆転」が起こります。ノムコム・プロなど専門メディアが繰り返し警告する、見落とされやすいポイントです。

売却時の課税 個人保有 法人保有
保有5年超(長期)20.315%(分離課税)約23〜34%(法人所得に合算)
保有5年以下(短期)39.63%(分離課税)約23〜34%(区分なし)
他の損益との通算原則不可(分離)可能(損益通算で軽減)

個人は5年超保有すれば譲渡益に20.315%の分離課税で済むのに対し、法人は保有期間の区分がなく、売却益も他の所得と合算して実効約23〜34%が課されます。つまり「大きな売却益を狙う長期保有型」は法人化が出口で不利になりやすい。逆に、短期売買を繰り返す・売却益を他の損失と通算したい場合は法人が有利です。

結論として、保有中の所得圧縮(法人)と売却益課税(個人)のどちらを重視するかで法人化の損得が変わるため、設立前に「いつ・いくらで売るか」の出口シナリオまで含めて10年スパンで試算することが不可欠です。短期・長期の税率と取得費・減価償却・特別控除を踏まえた譲渡所得の計算は、不動産売却の譲渡所得計算ガイドで詳説しています。

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🧭 法人化の「その先」|投資家が設計すべき5つの島

読者
法人化って、結局どこまで考えておけばいいんですか?設立して節税できれば、それで終わりですか?
著者
設立はスタートに過ぎません。法人で持った瞬間から、相続・出口・保険・万一のリスクまでが一本につながります。「5つの島」として全体像を押さえておくと、設立判断の精度が上がります。

ここまでが「法人化するか否か」の入口です。しかし法人化は、それ単体で完結しません。器をつくった瞬間から、相続・出口・保険・リスクという4つの論点が連動して動き出します。ここでは各島の「なぜ法人化判断と連動するのか」だけを示し、深掘りは各スポーク記事に委ねます。

① 器をつくる(法人化・法人運営)

法人化の本体は「設立して終わり」ではなく、社保・インボイス・役員社宅といった運営の最適化までがセットです。合同会社の設立実務は合同会社設立 実務ガイド、社会保険料の圧縮設計はマイクロ法人の入口出口戦略、2026年10月改正に直結するインボイス対応は法人大家のインボイス、役員社宅で家賃を経費化する実務は役員社宅の節税スキームで整理しています。器を最適化して初めて、損益分岐を超えた節税が現実の手取りになります。

② 引き継ぐ(相続・贈与・家族信託)

法人保有は相続評価が個人保有より複雑になります。自社株(持分)の株式評価や、役員借入金が額面で相続財産になる盲点があるためです。相続準備の全体像は相続準備(役員借入金・認知症・遺言・財産目録)、税額の圧縮は相続税対策(小規模宅地・取得費加算)、生前の移転は生前贈与(7年加算・相続時精算課税)、合同会社特有の論点は代表社員が死亡したらで扱います。「節税のために作った法人」が、相続で逆に負担になる設計を避けるのが目的です。

③ 出る・受け取る(出口・退職)

前章のとおり、法人化は「いつ・いくらで売り、退職金でどう受け取るか」まで設計して初めて損得が確定します。拡大の止めどきと現金化のタイミングはお金の活かし方(退職金の活用)、退職所得控除を絡めた出口はiDeCoの逃げ切れない出口戦略で深掘りしています。法人の最大の出口メリットは、役員退職金という出口の受け皿を設計できる点にあります。

④ 守る(保険・補償)

保険も法人化と無関係ではありません。とくに団信は、法人契約だと債務免除益が課税される盲点があります。団信の加入判断と法人の債務免除益は団信は入るべき?、社会保障を踏まえた保険の見直しは不動産投資家の保険戦略、物件側の備えは火災保険の特約と保険会社の選び方で扱います。法人で借りるなら、団信の課税まで含めて保険全体を組み直すのが実務です。

⑤ 倒れない(リスク・事件)

最後は「倒れない」設計です。法人化すれば有限責任で安心、というのは誤解で、法人が破産しても代表者の連帯保証は残ります。連帯保証と自己破産の現実は法人破産でも代表者連帯保証は残る、過去の不正融資から学ぶ防衛はスルガ銀行スキームの教訓、窮地での立て直しは失敗した時の4段階生存戦略で整理しています。法人化のメリットだけでなく、万一の出口まで知っておくのが守りの設計です。

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✅ NG/OK・セルフチェック・2026年税制改正

❌✅ NG/OK|法人化で失敗しないために

❌ NG:法人化の落とし穴
  • 課税所得600万円台で法人化→維持コストで赤字
  • 個人→法人売買で適正時価より安く設定→税務リスク
  • 役員報酬を年度途中で変更→損金不算入
  • 合同会社設立後に株式会社化→再設立コスト
  • 融資が個人ローン→法人移管で銀行と要交渉
✅ OK:法人化の正解パターン
  • 課税所得900万円超を確認してから設立
  • 合同会社で設立コスト最小化
  • 役員報酬は事業年度開始3ヶ月以内に決定
  • 税理士・司法書士と事前打ち合わせ
  • 関西なら大阪商工会議所の創業支援を活用

🩺 セルフチェック|法人化判定

🩺 法人化セルフチェック
  • ☐ 個人課税所得が900万円を超えている(または3年以内に超える見込み)
  • ☐ 法人維持コスト(年130〜180万円)を上回る節税効果がある
  • ☐ 合同会社か株式会社かの選択基準を理解している
  • ☐ 物件移管の方法(売買・現物出資・新規取得)を比較済み
  • ☐ 配偶者・家族を役員にして所得分散を計画している
  • ☐ 税理士・司法書士に事前相談を実施した

3個以下なら法人化はまだ早い可能性

配偶者贈与や家族役員と組み合わせた相続の設計まで含めて考えるなら、不動産投資家の相続準備(役員借入金・認知症・遺言・財産目録)を並読してください。

📜 2026年4月以降の法人税制改正と判断への影響

2026年4月から「防衛特別法人税」が新設され、基準法人税額に4%の付加税が課されます。ただし基準法人税額から年500万円の基礎控除があるため、課税所得が概ね2,400万円以下の中小法人は実質的に非課税です。つまり課税所得900万円ラインで法人化する通常規模の不動産投資家には、防衛特別法人税の影響はほぼありません。「小規模法人にも増税」という解説が散見されますが、不動産投資家の多くは対象外と考えてよいでしょう。さらに2026年10月にはインボイスの経過措置が縮小し、個人事業主向けには消費税「3割特例」が新設されるなど、判断軸は複雑化しています。

改正項目 適用時期 法人化判断への影響
防衛特別法人税2026年4月〜基準法人税額×4%。年500万円控除で課税所得約2,400万円以下は実質非課税=通常の不動産投資家は影響なし
インボイス2割特例の終了2026年9月末2割特例が終了。以後は本則課税か簡易課税を選択
免税事業者からの仕入控除縮小2026年10月〜控除率80%→50%へ縮小(2029年10月以降は0%)
消費税3割特例(個人限定)2026年10月〜基準期間課税売上1,000万円以下の個人事業主が対象(法人は対象外)・法人化しない方が有利なケースも
青色申告特別控除の見直し2027年分〜優良電子帳簿+e-Taxで75万円新設。55万円控除は廃止(書面は10万円)

誤解しやすいのは防衛特別法人税です。「中小法人にも一律4%増税」と読める解説が出回っていますが、基礎控除500万円により不動産投資家の通常規模では負担はほぼゼロ。一方で個人側はインボイス・3割特例・青色控除の見直しが続き、消費税・所得税の手取りが動きます。「課税所得900万円超なら即法人化」の単純ルールではなく、これらを織り込んで税理士と最低10年スパンで試算するのが、2026年以降の正しい判断軸です。

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❓ よくある質問

Q1. 法人化のベストタイミングは?

A. 個人課税所得900万円突破または3年以内突破見込みがベストタイミングです。突破前に法人を設立し、新規物件を法人で取得しながら段階的に移管するのが理想です。

Q2. 合同会社と株式会社、どちらを選ぶべき?

A. 不動産投資家は合同会社(LLC)が標準です。設立費用6万円・決算公告不要・役員任期なしで維持コスト最小。融資・対外信用が重要なら株式会社、それ以外は合同会社で十分です。設立の具体手順は合同会社設立 実務ガイドを参照してください。

Q3. 個人物件を法人に移すと税金はどれくらい?

A. ①譲渡所得税(取得から5年超で20.315%・5年以内39.63%)/②不動産取得税(評価額×3%)/③登録免許税(評価額×2%)/④消費税(建物部分)がかかります。築古物件で譲渡所得が小さければ移管メリット大、新築・築浅は譲渡所得が大きく出る場合があります。取得税の軽減措置は収益物件の不動産取得税ガイドで解説しています。

Q4. 関西で法人化を依頼する税理士の費用相場は?

A. 顧問料月3〜5万円+決算料15〜25万円=年50〜85万円程度が目安です。大阪・京都・神戸エリアで不動産税務に強い税理士は、顧問先30件以上を目安に選定するとよいでしょう。スポット対応なら年20〜30万円も可能です。

Q5. 役員報酬はいくらに設定すべき?

A. 個人税率と法人税率がブレンドで最小化する金額を選ぶのが原則です。所得税の累進と社会保険料を考慮し、年600〜800万円が一般的です。事業年度開始から3ヶ月以内に決定してください(年度途中の変更は損金不算入リスク)。

Q6. 法人で大規模修繕の損失が出たら?

A. 青色法人なら10年繰越が可能です。例:1年目に1,000万円の修繕損失→2〜10年目で利益が出れば順次相殺。個人の3年繰越と比べ7年長く活用できるのが、法人化の隠れたメリットです。相続まで見据えた設計は不動産投資家の相続準備と並読を推奨します。

Q7. 法人化で社会保険加入は必須?

A. 原則必須です(役員1人でも加入義務)。役員報酬が低い・配偶者を非常勤役員に設定する等で保険料を抑える設計があります。社会保険料は法人と個人で折半(法人負担分は損金算入可能)です。

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🔗 あわせて読みたい関連記事|テーマ「法人化・相続・出口・保険・リスク」を深掘りする

本記事は5つの島の入口を俯瞰するハブです。各論点をさらに深く知りたい方は、下記の島別マップから該当記事へお進みください。

島A|法人化・法人運営(器をつくる)

島B|相続・贈与・家族信託(引き継ぐ)

島C|出口・退職(出る・受け取る)

島D|保険・補償(守る)

島E|リスク・事件(倒れない)

執筆者 西本豪
執筆者:西本 豪(楽待新聞コラムニスト)

関西の不動産投資家・15年以上の実務経験。複数物件を保有し、税務・融資・賃貸経営・法人運営の現場で得た一次情報をもとに、机上の理論ではなく「実際に使える」実務ガイドを発信しています。

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📖 この記事の根拠(出典・参考)

  • 国税庁「法人税の税率」/中小法人の特例(資本金1億円以下)
  • 国税庁「所得税の税率」(住民税10%含む)
  • 会社法/法務省「商業登記」(合同会社・株式会社)
  • 法人税法施行令第58条/国税庁通達(任意償却)
  • 法人税法第57条(青色法人の損失繰越10年・2018年4月以降開始事業年度)
  • 防衛特別法人税(2026年4月施行・基準法人税額×4%・年500万円基礎控除)
  • 楽待・健美家コラム(役員報酬設計・登記場所と融資の実勢)
  • ノムコム・プロ(損益分岐と出口戦略の警告事例)
  • 体験ベース:執筆者(楽待新聞コラムニスト)の関西エリアでの15年の不動産投資・複数物件保有実務

コメント

  1. らて より:

    いちばんおいしいのは法人と個人事業のコラボレーションです。
    まず、事業収入のうち、この部分は法人、この部分は個人事業といった具合で区分します。
    法人からの役員報酬は給与所得控除を控除してちょうどゼロになるくらいにするなど、低めに設定しておきます。そうすると給与所得控除も適用でき、かつ社会保険料もほぼ最低水準でいけます。
    個人事業を残すことのメリットは青色申告特別控除が適用できることです。
    また、法人と個人事業の両方があれば節税(といっても課税の繰り延べですが)の有力商品である倒産防止共済を法人と個人事業で両方で入ることができ、800万円の上限枠を2事業体で使うことができます。
    さらには事業収入を個人事業と法人に分散し、それぞれの売上を1000万円以下にすれば消費税の免税事業者にもなれます。
    私の個人的な意見ですが、将来の年金収入なんて今の年金財政をみればあてにはできないでしょうから、社会保険料は低ければ低いほど良いと考えております。老後の備えが必要であれば小規模企業共済に加入するなど自力で節税しつつ、貯蓄した方が良いと思います。
    以上とおりすがりの税理士の意見でした。

    • 西本 豪 より:

      法人と個人事業を組み合わせる事でそれぞれの控除(給与所得控除および青色申告特別控除)を受けられることは認識しておりましたが、ここまで具体的な方法は想定できておりませんでした。

      倒産防止共済の仕組みについては理解に乏しいところもありますが、是非とも調べてみようと思います。

      また社会保険料につきましては僕も同じ考えです。
      将来どこまで削減されるか予測できない制度ですので、可能な限り支出は抑えたいところですね。
      個人年金や個人型確定拠出年金(iDeCo)なども含め個人として対策できればと考えております。

      専門家としての貴重なご意見を頂けて大変有難う御座います!

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