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物件概要書(通称マイソク)は、物件の所在地・価格・面積・構造・築年月・権利関係・利回りなどを1〜2枚にまとめた資料で、不動産会社から最初に渡される書類です。投資判断の入口はこの1枚ですが、物件概要書は広告であって契約書ではなく、書かれていない不利な事実までは保証しません。
見方のコツは、欄ごとに「この欄から何が分かり、次に何で裏を取るか」を決めておくことです。利回りは満室想定をレントロールで実質に直し、接道と私道負担は公図と登記で、防火地域の欄は建替え・増築の制約として、建築年月は検査済証と建築計画概要書で確かめます。
- 物件概要書(マイソク)を受け取ったが、どの欄をどう読めばよいか分からない方
- 表面利回りを実質利回りに直して、物件を数字で比べたい方
- 接道・私道負担・防火地域の欄が、建替えや出口にどう効くかを知りたい方
- 告知事項・契約不適合責任の免責・取引態様の意味を、契約前に押さえておきたい方
- 物件概要書と重要事項説明書・告知書の違いと、裏取りの順番を整理したい方
- 物件概要書は広告:インターネット広告やチラシには不動産の表示に関する公正競争規約のルールがあり、一棟アパートなら取引態様・所在地・交通・土地面積と私道負担面積・建物面積・建築年月・価格・構造・階数などが必要な表示事項。再建築不可やセットバックは明示しなければならない
- 利回りは満室想定の表面利回り:健美家の2026年8月期は全国で一棟アパート7.89%、関西8.23%(掲載物件の平均)。レントロールで現況賃料と空室を入れ、経費と諸費用を引いて実質に直す
- 接道と私道負担は権利の話:面積より、誰が私道を持っていて、通行・掘削の承諾が承継されるかを公図・登記・承諾書で確かめる
- 防火地域の欄は建替え・増築の制約:防火地域・準防火地域では10㎡以内の増築でも建築確認が要り、建て替えるときは地域と規模で耐火・準耐火などの構造が決まる
- 建築年月は検査済証とセットで読む:新耐震は建築確認の日で判定し、検査済証の有無と番号は建築計画概要書で確かめられる
①取引態様と広告主(誰が売っているか)、②価格と利回り(満室想定かどうか)、③土地の欄(権利・接道・私道負担・用途地域・建ぺい率と容積率・防火地域)、④建物の欄(構造・築年月・検査済証)、⑤備考と告知事項、の順です。③と⑤に不利な情報が小さく書かれることが多いので、ここを読んでから内見に進むかを決め、契約前に重要事項説明書・告知書・現地で裏を取ります。
- 表面利回りの数字で候補を決めている
- 「私道負担:有」を面積の話だと思っている
- 防火地域の欄は既存物件には関係ないと読み飛ばす
- 築年数だけで新耐震かどうかを判断している
- レントロールと経費で利回りを実質に直してから比べる
- 公図と登記で私道の持ち方を見て、承諾書の有無を確かめる
- 建替え・増築のときに求められる構造を、地域と規模から読む
- 建築確認の日と検査済証を、建築計画概要書で確かめる
- 📄 1. 物件概要書(マイソク)とは|重要事項説明書・告知書との違い
- 🗺️ 2. 欄ごとの読み方|何が分かり、次に何で確かめるか
- 💰 3. 価格と利回り|満室想定を実質に直す
- 📍 4. 所在地と交通|徒歩分数のルールと限界
- 🏗️ 5. 土地の欄|権利・地目・都市計画・用途地域・建ぺい率と容積率
- 🛣️ 6. 接道と私道負担|面積ではなく権利を読む
- 🔥 7. 防火地域・準防火地域の欄|建替え・増築・保険に効く
- 🏢 8. 建物の欄|構造・築年月・面積と検査済証
- 📑 9. 備考・告知事項|末尾の数行に書かれる不利な条件
- 🤝 10. 取引態様と仲介手数料|売主・代理・媒介で変わること
- 📊 11. 物件概要書から値引き交渉の根拠を組み立てる
- ❓ よくある質問
- 📝 12. まとめ――物件概要書は裏取りの順番を決める入口
- 📖 この記事の根拠(出典・参考)
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📄 1. 物件概要書(マイソク)とは|重要事項説明書・告知書との違い
物件概要書は、売主側の不動産会社が物件の概要を1〜2枚にまとめた資料で、業界では「マイソク」と呼ばれます。マイソクは、1969年に「毎日速報センター」の名で創業した不動産広告会社(1994年から株式会社マイソク)の名前が、物件概要書の呼び名として定着したものとされています。法定の書式はなく、会社ごとに体裁も精度も違います。
📋 3つの書類の違い
| 書類 | 受け取る時期 | 性格 | 主な中身 |
|---|---|---|---|
| 物件概要書(マイソク) | 問い合わせ直後〜内見前 | 広告。公正競争規約・宅建業法の広告規制を受ける | 価格・所在地・土地建物の概要・利回り・取引態様 |
| 重要事項説明書 | 売買契約の前 | 宅建業法35条の書面。宅地建物取引士が説明する(オンラインのIT重説・電子交付も可) | 権利関係・法令上の制限・インフラ・契約条件・契約不適合責任 |
| 告知書(物件状況等報告書) | 契約時 | 売主が知っている物件の状況を書く書面 | 雨漏り・シロアリ・事件事故・近隣の事情など |
マイソクで判断するのは「内見と買付に進むか」、重要事項説明書と告知書で判断するのは「契約するか」です。重説の欄の読み方は重要事項説明書の読み方に分けています。
📐 必ず載るはずの項目|公正競争規約の表示ルール
インターネット広告やチラシには、不動産の表示に関する公正競争規約と施行規則で、物件の種類ごとに必ず表示する事項が決まっています。一棟売りのアパート・マンションでは次のとおりです。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 必要な表示事項(一棟売り) | 取引態様、所在地、交通、土地面積と私道負担面積、建物面積、建築年月、価格、借地ならその内容、一棟売りである旨、住戸数、専有面積の最小と最大、構造、階数など |
| 特定事項(明示が必要) | 接道2m未満などで建て替えられない場合は「再建築不可」、2項道路でセットバックが要る旨(後退部分が約10%以上なら面積も)、市街化調整区域、路地状部分が30%以上の土地、傾斜地、高圧線下など |
一棟売りの必要な表示事項には、用途地域・建ぺい率・容積率・防火地域が入っていません(売地では用途地域・建ぺい率・容積率が必要事項)。マイソクに防火地域の欄が無い、または空欄でも、制限が無いとは限らないので、市区町村の都市計画図で確かめます。
広告主の欄も読みます。売主・代理・媒介のどれかという取引態様は、宅建業法34条で広告に明示する義務があります。取引態様によって仲介手数料と保証の中身が変わります(10章)。
🗺️ 2. 欄ごとの読み方|何が分かり、次に何で確かめるか
欄ごとに読むことと、次に確かめる書類は次のとおりです。
| 欄 | 読むこと | 次に確かめるもの |
|---|---|---|
| 価格・利回り・年間収入 | 満室想定か現況か、経費が入っているか | レントロール、固定資産税の課税明細、管理費・修繕の履歴 |
| 所在地・交通 | 徒歩分数は道路距離80mで1分 | 地図での実際の経路、現地 |
| 土地の権利・地目 | 所有権か借地権か、宅地か | 登記事項証明書、借地契約書 |
| 都市計画・用途地域・建ぺい率・容積率 | 今の建物が制限内か、建て替えたら何が建つか | 都市計画図、建築計画概要書、役所の建築指導課 |
| 接道・私道負担 | 道路の種別、接する長さ、私道の持ち方 | 道路台帳・指定図、公図、私道の登記、通行掘削承諾書 |
| 防火地域・準防火地域 | 建替え・増築のときに求められる構造 | 都市計画図、条例、建築計画概要書 |
| 構造・築年月・面積 | 耐用年数、新耐震かどうか | 確認済証・検査済証、建築計画概要書、登記 |
| 取引態様・広告主 | 仲介手数料の要否、業者売主か | 媒介契約・売買契約の条項 |
| 備考・告知事項・現況 | 再建築不可、免責、事件事故、越境、サブリース | 告知書、重要事項説明書、現地 |
💰 3. 価格と利回り|満室想定を実質に直す
物件概要書の利回りは、原則として満室を想定した表面利回りです。公正競争規約の施行規則は、広告に利回りを載せるなら「1年間の予定賃料収入÷取得価格であること」「その賃料収入を保証しないこと」「税金や維持費を引く前の数字であること」を明示するよう求めています。表面利回りは物件の粗い比較には使えますが、手元に残るお金とは別物です。
| 利回り | 計算式 | 使いどころ |
|---|---|---|
| 表面利回り | 満室想定の年間賃料÷価格 | 物件概要書どうしの粗い比較 |
| 実質利回り(FCR) | NOI(年間賃料−空室損−運営経費)÷(価格+購入諸費用) | 手取りの目安。借入のローン定数(年間返済額÷借入額)と比べる |
📈 相場の目安|掲載物件の平均と期待利回りは別物
比較の物差しになるのは、健美家の「収益物件市場動向マンスリーレポート」2026年8月期(9月9日公表)の表面利回りです。掲載物件の平均で、成約した利回りではありません。
| 種別 | 全国 | 関西 |
|---|---|---|
| 区分マンション | 6.61% | 7.13% |
| 一棟アパート | 7.89% | 8.23% |
| 一棟マンション | 7.46% | 7.95% |
日本不動産研究所の不動産投資家調査(第54回・2026年4月)では、大阪のワンルームマンション一棟の期待利回りは4.2%です。これは築浅・駅近の想定物件について投資家が求める、純収益(NOI)に対する利回りで、上の表面利回りとは定義が違います。定義の違う利回り同士を並べて「高い・低い」を判断しないことが、相場を使うときの前提です。
❌ 利回りの盛りを見抜く
- 「想定」と書かずに利回りだけが載っている
- 空室の住戸まで今の募集賃料で満室計算している
- 一部の住戸だけ賃料が周辺より明らかに高い
- 管理費・固定資産税・共用部の光熱費が経費に入っていない
- レントロールで住戸ごとの現況賃料・契約日・空室を確かめる
- 空室は周辺の成約事例や募集事例で賃料を置き直す
- 固定資産税は課税明細書の実額で入れる(評価額に税率を掛けると住宅用地の特例が抜けて過大になる)
- 修繕は築年と履歴から見積もりを取り、年あたりに直す
レントロールの読み方と雛形はレントロールの雛形と作り方、固定資産税の実額の見方はアパートの固定資産税はいくら?にまとめています。
金利との差も確かめます。日本銀行は2026年9月18日に政策金利を1.25%程度に引き上げ(9月24日から適用)、10年国債の利回りは9月に3%前後で推移しています。実質の利回り(FCR)から借入のローン定数(年間返済額÷借入額)を引いた差が、金利上昇に耐えられるかの目安です。計算はローン定数とは?K%の計算式・早見表で扱っています。
📍 4. 所在地と交通|徒歩分数のルールと限界
徒歩分数は、公正競争規約の施行規則で「道路距離80mにつき1分(1分未満の端数は切り上げ)」と決まっています。起点はアパートなら建物の出入口、終点は駅の出入口です。計算は道路距離だけで、信号や踏切の待ち時間、坂道や階段は入らないため、坂の多い土地や幹線道路を渡る立地では、表示より実際の時間が長くなります。地図の徒歩ルートと現地で確かめます。
🏗️ 5. 土地の欄|権利・地目・都市計画・用途地域・建ぺい率と容積率
📜 権利と地目
土地の権利は所有権が基本です。借地権は建物の所有を目的とする地上権か土地の賃借権で、借地借家法の普通借地権(存続期間30年以上)と定期借地権があり、同法の施行前に設定された借地は、更新や建物の朽廃の扱いに旧借地法のルールが残ります(同法附則5条・6条)。借地権の物件は所有権より安く見えますが、地代と、建替え・譲渡のときの地主の承諾と承諾料が要り、融資の条件も変わります。判断の軸は借地権付き物件で利回りを底上げする判断軸に書いています。
地目は登記上の土地の用途で、23区分あります。ただし農地法の農地かどうかは、登記の地目ではなく現況で決まります(農地法2条)。耕作している土地を転用するなら、市街化区域内は農業委員会への届出で足りますが(農地法4条・5条)、市街化調整区域では許可が要り、建てられない場合もあります。地目が田・畑のまま建物が建っている土地は、転用の届出や許可が済んでいるかを確かめます。
🏙️ 都市計画と用途地域
市街化区域は建物を建てられる区域、市街化調整区域は原則として建てられない区域です。調整区域の物件は再建築や融資で制約が大きくなります。用途地域は13種類あり、共同住宅が建てられないのは工業専用地域だけです。第一種・第二種低層住居専用地域の容積率は50〜200%の範囲で都市計画で決まり(建築基準法52条)、高さも10mか12mに制限されるため、戸数を取りにくい地域です。
📏 建ぺい率・容積率と、既存不適格・違法建築
物件概要書の建ぺい率・容積率は、都市計画で指定された数値です。実際に建てられる容積は、前面道路の幅員が12m未満なら「幅員×0.4(住居系)または0.6(その他)」との低い方になります。この係数は特定行政庁が変えられ、大阪市は第一種・第二種住居地域と準住居地域(風致地区を除く)で0.6にしています(4m道路・指定200%なら、0.4では160%、0.6では200%)。建ぺい率は角地や防火の緩和で10ポイントずつ増えることがあります(7章)。今の建物がこの制限を超えている場合は、次の2つを分けます。
- 既存不適格:建てたときは適法で、その後の法改正や都市計画の変更で今の基準に合わなくなった建物。違法ではないが、建て替えると同じ規模は建たない
- 違法建築:建てたときから基準を超えていたか、検査後の増築などで超えた建物。是正命令の対象になり、融資と売却で大きく不利になる
見分ける手がかりは、確認済証と検査済証、建築計画概要書の記録です。容積率オーバーの融資と出口は容積率オーバー物件の融資と出口戦略で扱っています。
🛣️ 6. 接道と私道負担|面積ではなく権利を読む
🛣 接道義務(2m接道・4m道路・2項道路セットバック)|アパートは条例の4mで見る
建築基準法43条1項は「道路に2m以上接すること」を求め、同42条の道路は幅員4m以上が原則です。これを満たさない物件は建築確認が下りず、現状の建物を取り壊した後に新築できません。ただし2mは法律上の最低限で、共同住宅には43条3項に基づく府県条例の上乗せがあり、関西では道路に4m以上接することを求める条例が多数です(大阪府は規模を問わず、兵庫県は用途部分200㎡超、神戸市は3階建てか延べ200㎡超、または旗竿地で竿の幅2m未満・奥行20m超、滋賀県・和歌山県は規模を問わず。京都府・京都市は旗竿地の共同住宅を原則不可)。中古アパートのマイソクで「接道2.5m」とあれば、戸建てなら適法でも共同住宅の建て替えでは条例に当たる可能性があるということです。府県別の条文と長屋の扱いはアパート用地の探し方(接道4m・3m・2mと関西の条例)に整理しています。
| 道路種別 | 条件・特徴 | 建築可否 |
|---|---|---|
| 建築基準法42条1項1〜5号道路(公道・開発道路・既存道路・計画道路・位置指定道路) | 幅員4m以上。5号の位置指定道路は私道 | ○ 建築可(位置指定道路は持分・承諾書を別途確認) |
| 42条2項道路(みなし道路) | 幅員4m未満で特定行政庁が指定。道路中心線から2m後退(セットバック)。反対側が川・崖・線路なら反対側から4mの一方後退。後退部分は建ぺい率・容積率の算定面積から除外され、容積率は後退後の幅員4mで計算 | △ セットバック条件付 |
| 43条2項1号の認定・2号の許可(旧43条但し書き) | 道路ではない通路。認定・許可は建築物ごと。1号の認定は延べ500㎡以内で用途も限られ(農道などに接する場合は劇場などを除く用途、それ以外の道では一戸建て・長屋など)、条例で接道の制限が上乗せされた用途は対象外(施行規則10条の3)。関西の府県条例で共同住宅に接道の上乗せがある地域では、共同住宅は認定の対象にならない | △ 許可が取れれば建築可。原則は投資対象外 |
| 接道2m未満・未接道 | 建築基準法上の接道義務未了 | × 再建築不可 |
再建築不可物件は周辺相場より大きく安く売られることが多いものの、出口戦略が極めて限定されます。43条2項2号の許可で建て替えられる場合の流れ・同意・関西の包括同意基準・担保評価は再建築不可物件は投資で買えるか|43条2項2号の許可・融資・担保評価・出口とボロ物件の3大リスクで扱っています。マイソクで「セットバック済」とある中古は、後退部分が公簿面積に含まれたまま売られていることがあるため、公簿面積と有効面積を分けて坪単価を出すのが指値の第一歩です。
🧾 広告表記の読み分け|「道路」「私道」「道」「通路」「43条」で意味が変わる
マイソクの接道欄の書き方は業者ごとに違い、統一された用語ではありません。それでも、書き分けにはおおむね次の意味が乗っています。表記が曖昧なときは、その曖昧さ自体が確認の合図です。
| マイソクの表記 | 読み取れること | 次に確認すること |
|---|---|---|
| 公道/市道/県道/道路 幅員○m | 道路法の道路で、通常は42条1項1号 | 接する長さ(共同住宅は条例の4m)、道路境界の確定 |
| 位置指定道路/開発道路 | 建築基準法上の道路(位置指定道路は5号で私道。開発道路は2号で、完了後は原則として市町村に帰属する) | 持分の有無と形、通行掘削承諾書、指定図と現況幅の一致 |
| 私道 幅員○m(2項道路) | 4m未満の既存道。後退が要る | 中心線の位置と後退面積、セットバック済みか、私道の持分 |
| 私道負担:有/私道負担面積 ○㎡ | 敷地の一部が私道。その面積は建物を建てられず、建ぺい率・容積率の算定からも外れる | 負担部分の地番と位置、共有か分筆か、他区画の持分 |
| 43条但し書き/43条2項2号/建築審査会の同意を要す | 道路ではない通路に接する敷地。建築には許可が要る | 包括同意基準に該当するか、過去の許可の区分、通路所有者の同意 |
| 道/通路/法定外公共物(里道)/記載なし | 建築基準法上の道路でない可能性が高い | 道路管理課と建築指導課で「道路法の道路か」「42条のどの号か」を分けて確認 |
「私道負担:有」は面積の話ではなく、権利の話です。何㎡負担しているかより、その私道を誰がどう持っていて、掘れるか・通れるかが決まっているかが、出口と工事に効きます。
⚠️ 私道負担と私道持分|共有型・分筆型・持分なしの見分け方
私道に持分があるかどうかは、建築確認の要件ではありません。位置指定道路や開発道路として建築基準法上の道路なら、持分がなくても接道要件を満たせば建築確認は取れます。それでも私道が問題になるのは、通行と掘削(上下水道・ガスの引込、将来の配管更新)が所有者との関係で決まるからです。判定は「持分の形」から入ります。
| 持分の形 | 公図・登記事項での見え方 | 掘削の承諾を取る相手 | 判定 |
|---|---|---|---|
| 共有型 | 道路が1筆で、各区画の所有者が「持分6分の1」のように共有。近年の分譲地に多い | 共有者。共有物の管理は持分の価格の過半数で決め、形状や効用を著しく変える変更は全員の同意(民法252条・251条)。掘削がどちらに当たるかは工事内容で分かれるため、承諾書で明確にしておく | 買える(承諾書があればなお良い) |
| 分筆型 | 道路が短冊状の複数筆に分かれ、筆ごとに所有者が違う。自分の名義が自宅前ではなく飛び地にあることも。古い私道に多い | 掘る筆の所有者それぞれ。各筆は単独所有なので共有物のルールは効かず、他人の筆を掘るには承諾が要る | 条件付き(他人名義の筆の承諾書が要る) |
| 持分なし | 道路筆に自分の名義がない。分譲業者や第三者が所有したまま、または相続で細分化 | 所有者全員(分筆型なら掘る筆の所有者)。所有者が数十人・所在不明のこともある | 承諾書がなければ買わない |
見分け方は3手順です。①法務局で公図を取り、前面道路の筆と地番を特定する ②その筆の登記事項証明書で所有者と持分を読む ③マイソクの「私道負担面積」と、自分の持分がどの筆のどこにあるかを照合する。持分があっても飛び地なら、自分の敷地の前を掘る承諾は結局他人から取ることになります。位置指定道路は持分があっても道路内に建物や塀は建てられず(建築基準法44条)、私道の廃止は特定行政庁が制限できる(建築基準法45条)ため、私道が勝手に消える心配は法的には小さい、という両面も押さえておきます。
📝 通行掘削承諾書|最低限の記載項目と、承継条項が要る理由
通行掘削承諾書は、私道の所有者が通行と掘削を認めたことを示す私文書で、法定の様式はありません。だからこそ中身で効き目が決まります。契約前に確認する項目は次のとおりです。
- ☐ 無償かつ期限のない通行(歩行と車両。建物の使用者=入居者・来訪者・引越しや工事の車両を含む)
- ☐ 道路の掘削と、上下水道・ガス管の埋設・接続・維持修繕・更新(将来の配管更新工事を含む)
- ☐ 掘削後の原状回復の方法と費用負担
- ☐ 承諾を受けた側が敷地を譲渡したとき、承諾が譲受人に引き継がれる
- ☐ 私道の所有者が私道を譲渡したとき、承諾を新しい所有者に引き継がせる
- ☐ 承諾料・通行料の有無(無償なら無償と明記)
- ☐ 私道の地番と範囲が特定されている
- ☐ 所有者全員の署名・押印があり、名義が登記事項証明書の所有者と一致している(名義人が亡くなっていれば相続人)
→ 承継の2項目がない一代限りの承諾書は、出口で効きません
承継条項が要る理由は、承諾書が当事者間の合意(債権)だからです。登記された通行地役権は要役地の所有権とともに移転しますが(民法281条)、承諾書はそうではなく、自分が売るときも、私道所有者が代わるときも、文言がなければ引き継がれる保証がありません。地役権の設定登記まで取れればより確実ですが、私道所有者の協力が要ります。売買契約では、売主が引渡しまでに承諾書を取得して交付することを義務にし、取得できないときは白紙解除できる特約にするのが実務の型です。投資物件では、入居者や来訪者の通行、給排水管の更新工事までを承諾の範囲に入れておかないと、築古の大規模修繕で止まります。金融機関が融資審査で承諾書の写しを求めることもあるため、契約前に写しを手元に置きます。


- 公図で私道の筆と地番を出し、15㎡が共有の持分なのか、分筆された自分名義の筆なのか、飛び地なのかを見る
- 他人名義の筆を掘る必要があるなら、その所有者の承諾書(承継条項付き)が現物であるか
- ないなら、売主が引渡しまでに取得することを契約の条件にする
⚖️ 2023年の民法改正(213条の2)で承諾書は不要になったか
2023年4月施行の民法213条の2は、他人の土地に設備を設置し、または他人の設備を使わなければ電気・ガス・水道の供給を受けられないとき、必要な範囲で設備を設置・使用できる権利を明文化しました。損害が最も少ない場所と方法を選び、目的・場所・方法を事前に通知し、損害には償金を払います。これは工事の権利であって、日常の通行を認めるものではありません(通行は囲繞地通行権〈民法210条〉や承諾・地役権の話)。権利があることと、工事が滞りなく進むことは別です。水道は京都市のように承諾書の提出を求めない事業者もあり、扱いは事業者ごとに違います(ガス・下水道も個別に確認が要ります)。改正で、承諾書のない物件がすぐに工事できなくなることはなくなった、という程度に受け取り、取れるなら取る、が投資家の姿勢です。境界付近の工作物の築造・修繕で隣地に立ち入る権利(民法209条)も同時に整理されましたが、住家への立入りは居住者の承諾が要ります。
🏘️ 協定地・地役権|道路に見えて道路ではない敷地
分譲地では、旗竿地の竿部分を隣接区画と共同で通路として使う「協定地」があります。見た目は道路でも、それぞれの敷地の一部です。奥の区画のためだけに開発道路を作るより費用が抑えられるため採用され、車庫入れのために出入口の角を三角に協定で空けておく例もあります。確認するのは、協定の範囲(どこからどこまでか)、協定の内容(何が制限されるか)、協定の方法(協定書だけか、地役権の設定登記まであるか)の3点です。地役権が登記されていれば要役地の所有権とともに移転し(民法281条)、協定書だけなら承諾書と同じく承継の文言が要ります。自分の土地なのに自由に使えず、舗装や補修は所有者負担、登記には費用がかかる一方、通行権を確保でき、間口の狭い区画同士でも出入りしやすくなります。マイソクでは「協定通路」「通路協定あり」などと書かれ、私道負担の欄には出ないことがあるため、備考欄まで読みます。
🔥 7. 防火地域・準防火地域の欄|建替え・増築・保険に効く
防火地域・準防火地域・法22条区域の欄は、今建っている建物には関係ないと読み飛ばされがちです。ただ、この欄が効くのは建て替えるとき、増築するとき、保険をかけるときで、どれも出口と収支に直結します。
🏚️ 建て替えるときに求められる構造
| 地域 | 建物の規模 | 求められる構造 |
|---|---|---|
| 防火地域 | 3階建て以上(地下を含む)か延べ100㎡超 | 耐火建築物か延焼防止建築物 |
| 2階建て以下かつ延べ100㎡以下 | 準耐火建築物か準延焼防止建築物 | |
| 準防火地域 | 地上4階以上か延べ1,500㎡超 | 耐火建築物か延焼防止建築物 |
| 地上3階か延べ500㎡超 | 準耐火建築物か準延焼防止建築物 | |
| 2階建て以下かつ延べ500㎡以下 | 木造は外壁と軒裏の延焼のおそれのある部分を防火構造、その部分の窓・ドアを防火設備 | |
| 法22条区域 | 規模を問わない | 屋根を火の粉で燃えない仕様に。木造は延焼のおそれのある外壁にも一定の防火性能 |
このほか、3階を住戸に使うアパートは、防火地域の指定に関係なく建築基準法27条で耐火・準耐火などの構造が求められます(階数3で延べ200㎡未満なら、警報設備を設けることで対象外。2階建てでも、2階の住戸部分が300㎡以上なら対象)。防火地域で木造アパートを建て直すのは条件が重く、鉄筋コンクリート造などが前提になりやすいので、土地値で買う物件ほど、防火地域の欄は建替え後の建築費の欄として読むことになります。地域ごとの詳しい条件と、新築でかかる手間はアパート用地の探し方とボリュームチェックと新築アパートの工事中チェックと施主検査に整理しています。
🧱 増築と建ぺい率の緩和
建築基準法6条2項は、10㎡以内の増築・改築・移転なら建築確認を不要としていますが、これは防火地域・準防火地域の外だけの話です。防火地域・準防火地域では、物置程度の増築でも建築確認が要ります。確認を取らずに増築された建物は違法建築になるので、物件概要書の面積と登記・現地の建物に差があれば、増築の履歴を確かめます。
建ぺい率は、準防火地域で準耐火建築物以上、防火地域で耐火建築物などにすると10ポイント増えます(建築基準法53条3項。建ぺい率80%の防火地域の耐火建築物等は、53条6項で建ぺい率の制限がなくなる)。緩和を使って建っている建物は、建て替えるときも同じ構造にしないと同じ広さが建ちません。物件概要書の建ぺい率は指定の数値しか書かれないので、緩和の有無は建築計画概要書で確かめます。
🧯 条例の上乗せと保険
自治体の条例で防火の規制が上乗せされている地域もあります。例えば大阪市は、第一種・第二種住居地域と準住居地域、準工業地域の一部(防火地域を除く)で、建ぺい率60%を超えて建てるなら原則として準耐火建築物以上を求めています。建て替えの想定を立てるときは、建築地の市の条例も確認します。
保険では、準耐火建築物は火災保険の構造区分で一般の木造より有利な区分に入り、地震保険でも割安な区分(イ構造)になります。構造の欄と防火地域の欄は、保険料の見積もりにも使えます(詳しくはアパートの火災保険はいくら?)。
🏢 8. 建物の欄|構造・築年月・面積と検査済証
📐 構造と耐用年数
| 構造(住宅用) | 法定耐用年数 |
|---|---|
| 鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造 | 47年 |
| 金属造(骨格材の肉厚4mm超) | 34年 |
| 金属造(3mm超4mm以下) | 27年 |
| 金属造(3mm以下) | 19年 |
| 木造 | 22年 |
物件概要書の「軽量鉄骨造」は骨格材の厚みで耐用年数が変わるので、確認済証や設計図書で確かめます。中古の耐用年数は、使用可能期間の見積もりが難しければ簡便法で計算でき(取得後の改修費が取得価額の50%を超えると使えない)、耐用年数を全部過ぎたものは法定耐用年数×20%(木造なら22×0.2=4.4年→4年)、一部を過ぎたものは(法定耐用年数−経過年数)+経過年数×20%です(1年未満切り捨て、2年未満は2年)。これは税務の償却期間で、融資期間の決め方は金融機関ごとに違います。計算の詳細は中古・築古物件の減価償却の計算方法にあります。
🏚️ 築年月と新耐震
新耐震基準かどうかは、竣工の年月ではなく建築確認を受けた日が1981年6月1日以降かで判定します。物件概要書の築年月は竣工の時期なので、1982〜1983年ごろの竣工は確認日が1981年5月以前の可能性があります。木造は2000年6月の基準改正(接合金物など)も見ます。見分け方は旧耐震・新耐震・2000年基準の違いにまとめています。
📑 検査済証と建築計画概要書
確認済証と検査済証の有無は、違法建築の疑いと融資・売却のしやすさに直結します。書類を売主が紛失していても、特定行政庁の窓口で建築計画概要書を閲覧すれば、保存されている限り、確認済証・中間検査合格証・検査済証の番号と日付、建築主・設計者・工事監理者・施工者、建ぺい率・容積率の実績が分かります。物件概要書の構造・面積・築年月は、建築計画概要書と突き合わせて初めて裏が取れる欄です。
📑 9. 備考・告知事項|末尾の数行に書かれる不利な条件
🚫 再建築不可・契約不適合責任の免責・現況有姿
備考欄には、本文の欄に収まらない不利な情報がまとめて書かれます。よく出る語と意味は次のとおりです。
| 表記 | 意味と次に確かめること |
|---|---|
| 再建築不可 | 接道の要件を満たさず、解体後に建てられない。43条2項の許可で建てられる余地があるかを確かめる(再建築不可物件は投資で買えるか) |
| 既存不適格・現況優先 | 今の基準に合っていない部分がある。既存不適格か違法建築かを検査済証と増築履歴で分ける |
| 契約不適合責任免責・現況有姿 | 引渡し後に見つかった不具合を、原則として売主に請求できない。ただし売主が知りながら告げなかった不具合は免責されず(民法572条)、売主が宅建業者なら免責の特約自体が無効(宅建業法40条)。建物状況調査を入れるか、修繕費を価格に織り込む(契約不適合責任「免責」の中古物件は買っていい?) |
| 告知事項あり | 事件事故・近隣の事情など。内容を告知書で確かめる |
| 境界非明示・越境あり | 境界の確定と越境の覚書が引渡し条件に入るか |
| サブリース契約あり | 契約の承継、賃料の見直し条項、解約の条件 |
👻 人の死の告知|国交省ガイドラインの中身
国土交通省の「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」(2021年10月)は、居住用の不動産で宅建業者が何を告げるべきかを整理したものです。
- 原則として告げなくてよい:自然死と、日常生活の中での不慮の死(階段からの転落、入浴中の溺死など)。ただし長期間放置されて特殊清掃や大規模なリフォームが行われた場合は告げる対象になる
- 賃貸:上記以外の死と、特殊清掃などを伴った自然死は、発生(特殊清掃の場合は発覚)からおおむね3年が経てば原則として告げなくてよい。事件性・周知性・社会的な影響が特に高いものは除く
- 売買:3年の目安はなく、買主の判断に重要な影響を与えると考えられる場合は告げる
- 期間に関係なく告げる:買主・借主から聞かれたとき、社会的な影響の大きさから把握しておくべき特段の事情があるとき
投資家が物件を買うのは売買なので、賃貸の3年の目安は当てはまりません。物件概要書に書かれていなくても、告知書で売主に確かめ、気になる点は仲介会社に質問するのが確実です。
💴 区分マンションの修繕積立金
区分マンションの物件概要書では、修繕積立金の額も読みます。国交省の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(2024年6月改定。金額の目安は2021年版と同じ)が示す、計画期間全体での積立額の平均は次のとおりです(機械式駐車場の分を除く)。
| 階数・延べ面積 | 平均(円/㎡・月) | 事例の3分の2が入る幅 |
|---|---|---|
| 20階未満・5,000㎡未満 | 335 | 235〜430 |
| 20階未満・5,000〜10,000㎡ | 252 | 170〜320 |
| 20階未満・10,000〜20,000㎡ | 271 | 200〜330 |
| 20階未満・20,000㎡以上 | 255 | 190〜325 |
| 20階以上 | 338 | 240〜410 |
ガイドライン自身が、この幅に収まらないから直ちに不適切とは言えないとしています。今の積立額が低いときは、段階的に上げる計画なのか(2024年改定で、初期額はその物件の均等積立額の0.6倍以上、最終額は1.1倍以内が目安)を、重要事項調査報告書と長期修繕計画で確かめます。
🤝 10. 取引態様と仲介手数料|売主・代理・媒介で変わること
| 取引態様 | 意味 | 買主から見た注意点 |
|---|---|---|
| 売主 | 広告主の宅建業者自身が売主 | 仲介手数料はかからない。業者売主の場合、契約不適合責任について民法より買主に不利な特約は無効で、例外は通知の期間を引渡しから2年以上とする特約だけ(宅建業法40条。買主も宅建業者なら適用なし) |
| 代理 | 売主から代理権を受けた業者 | 報酬は売主と買主から受ける合計で媒介の2倍以内。買主が払う場合もあるので契約前に確かめる |
| 媒介(仲介) | 売主と買主の間に立つ業者 | 報酬の上限は売買価格400万円超で3%+6万円(税別)。800万円以下の低廉な空家等は30万円(税別)までの特例がある |
同じ業者が売主と買主の両方から報酬を受ける両手取引では、業者は買主の利益だけを代弁する立場ではありません。買主に不利な情報を自分から探す前提で、現地調査と書類の裏取りは自分で行います。
📊 11. 物件概要書から値引き交渉の根拠を組み立てる
物件概要書は、買付の価格を決める材料にもなります。数字で示した根拠は、根拠のない値引きの依頼より通りやすくなります。
- 賃料の置き直し:レントロールの現況賃料と周辺の成約賃料の差、空室の住戸の想定賃料の過大さ
- 修繕の繰延べ:築年に対して外壁・屋上防水・給湯器などの更新履歴がなければ、見積もり額を根拠にする
- 法的な制約:セットバック後の有効面積、再建築の条件、私道の承諾書が無いことによる出口の弱さ
- 売主の事情:相続・買換え・資金化など売却の理由と期限を仲介会社に聞き、価格と引渡し時期の組み合わせで条件を出す
融資特約と手付金の準備を示したうえで、根拠を表にして仲介会社経由で伝えます。買付証明書の書き方と条項の組み立ては不動産投資家が買付で勝つで扱っています。
❓ よくある質問
Q1. マイソクとは何の略ですか?
A. 1969年に「毎日速報センター」の名で創業した不動産広告会社(1994年から株式会社マイソク)の名前に由来する呼び名とされています。販売図面と呼ばれることもあります。
Q2. 物件概要書と重要事項説明書は何が違いますか?
A. 物件概要書は広告で、内見や買付に進むかを決める資料です。重要事項説明書は宅建業法35条に基づき契約前に宅地建物取引士が説明する書面で、権利関係・法令上の制限・契約条件まで載ります。物件概要書で気になった点は、重要事項説明書・告知書・現地で必ず裏を取ります。
Q3. 物件概要書の表面利回りは信用してよいですか?
A. 満室を想定した表面利回りなので、そのままでは手取りの目安になりません。レントロールで現況賃料と空室を確かめ、管理費・固定資産税・修繕などの経費と購入諸費用を入れて実質利回りに直してから比べます。相場の比較には、健美家の掲載物件の平均(2026年8月期で一棟アパートは全国7.89%、関西8.23%)のように定義が同じ数字を使います。
Q4. 物件概要書に「私道負担あり」とだけ書かれています。何を確かめればよいですか?
A. 面積ではなく権利を確かめます。公図で私道の筆と地番を特定し、登記事項証明書で所有者と持分を見て、共有型・分筆型・持分なしのどれかを見分けます。他人名義の部分を掘る必要があるなら、通行・掘削・配管の更新と、双方の承継を定めた通行掘削承諾書が現物であるかを確かめ、なければ売主が引渡しまでに取得することを契約の条件にします。
Q5. 防火地域・準防火地域の物件を買うときは何に気をつければよいですか?
A. 建て替えるときに求められる構造と、増築の手続きです。防火地域で延べ100㎡を超える建物は耐火建築物などになり、準防火地域でも3階建てや延べ500㎡超は準耐火建築物などが必要です。10㎡以内の増築でも建築確認が要ります。建ぺい率の緩和を使って建っている場合は、同じ構造でないと同じ広さが建たない点も確かめます。
Q6. 物件概要書の記載が間違っていたらどうなりますか?
A. 物件概要書は広告なので、誤りがあれば公正競争規約や宅建業法の誇大広告の禁止(32条)の問題になり得ますが、売買の内容は売買契約書と重要事項説明書で決まります。物件概要書の数字を信じて買っても、それだけでは保護されにくいので、契約前に書類と現地で裏を取り、気になる点を重要事項説明書と売買契約書の条項に落としておくことが防御になります。
📝 12. まとめ――物件概要書は裏取りの順番を決める入口
物件概要書(マイソク)は、物件を紹介するための広告です。一棟アパートなら取引態様・交通・土地面積と私道負担面積・建築年月・構造などが必ず載る一方、防火地域や建ぺい率・容積率は必要事項ではなく、再建築不可やセットバックのように明示が義務づけられた事項以外の不利な情報は、備考欄に小さく書かれるか、書かれないこともあります。
読む順番は、取引態様と広告主、価格と利回り、土地の欄、建物の欄、備考と告知事項です。利回りはレントロールと経費で実質に直し、接道と私道負担は公図と登記と承諾書で、防火地域の欄は建替え・増築・保険の制約として、築年月と構造は検査済証と建築計画概要書で裏を取ります。物件概要書の役割は、内見と買付に進むかを決め、確かめる書類の順番を決めるところまでです。
欄ごとの確認先を決めておけば、物件概要書を受け取ってから内見・買付・契約までの判断が速くなり、契約直前に致命的な事実が出てきて引き返せなくなる事態を避けられます。
📖 この記事の根拠(出典・参考)
- 不動産公正取引協議会連合会「不動産の表示に関する公正競争規約・同施行規則」(必要な表示事項・特定事項・徒歩所要時間)/首都圏不動産公正取引協議会「必要な表示事項(別表)」
- e-Gov法令検索「建築基準法」(6条2項・27条・42条・43条・45条・52条・53条・61条)・同施行令136条の2/宅地建物取引業法(32条・34条・35条・40条)/借地借家法(2条・3条)/農地法(4条・5条)/民法(209条・210条・213条の2・251条・252条・281条・572条)/建築基準法施行規則10条の3・11条の3/減価償却資産の耐用年数等に関する省令(別表第一)(2026年9月参照)
- 国土交通省「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額(報酬告示)」/「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」(2021年10月)/「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(2024年6月改定)
- 健美家「収益物件 市場動向マンスリーレポート 2026年8月期」/日本不動産研究所「第54回 不動産投資家調査(2026年4月現在)」
- 日本銀行「金融市場調節方針の変更について(2026年9月18日)」/財務省「国債金利情報(令和8年9月)」(10年債は9月1日〜17日に2.891〜3.028%)
- 国税庁「No.5404 中古資産の耐用年数」
- 大阪市「前面道路幅員による容積率制限及び大阪市建築基準法施行条例にもとづく防火規制」(2026年8月19日更新)
- 関西の接道条例:大阪府建築基準法施行条例6条・66条、兵庫県建築基準条例4条・16条・26条、神戸市建築物の安全性の確保等に関する条例22条・32条・45条、京都府建築基準法施行条例4条・8条、京都市建築基準条例5条・9条、滋賀県建築基準条例3条・7条、和歌山県建築基準法施行条例6条(各例規集)
- 京都市上下水道局「給水装置工事に係る関係条例の一部改正及び手続の変更について」(給水管私有地埋設承諾書の廃止)
- 株式会社マイソク「沿革」(1969年創業・1994年社名変更)
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関西の不動産投資家。賃貸経営の体験と、法令・公的機関の資料をもとに、税務・融資・賃貸経営・法人運営の実務ガイドを発信しています。
物件選びの判断基準を扱った書籍に「一級建築士の大家が教える 儲かるアパートの選び方」があります。


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