所有物件の売却を検討する時の考え方について

不動産会社
この記事は約10分で読めます。

投資用の物件を所有していると不動産仲介会社から良く電話が掛かってきます。

スポンサーリンク

不動産仲介会社とのやりとりについて

2018年の後半に掛けて複数の不動産仲介会社から電話が来ました。

結論から先にお伝えすると「希望額に届きそうになかったため売却しなかった」のですが、その時のやりとりを簡単にまとめてみました。

あなたが大阪市内で所有している◯◯物件を売却しませんか?

今のところは売却するつもりは無いですね。

もし宜しければ売却希望価格だけでもお伺いできれば、その金額で購入希望者を探すことができますよ。勿論、希望額に達しない場合は却下頂いても問題ありませんので。

そうですか。ちなみに◯◯物件だとどれくらいの金額で売却できる想定ですか?

築年数や専有面積、その他、現在の家賃収入額によって変わるため一概には分かりません。

築年数や専有面積を把握せずに電話されて来たのですか?

築年数は約5年、所要面積は約25㎡、家賃収入は55,000円程です。

その条件であれば1,200万円程で売却希望額を設定するのはいかがでしょうか?

その場合、僕の手元にはどれくらいの金額が残りますか?

仲介手数料などで50万円程必要になります。

つまり、僕の手元には1,150万円程が残るのですね。

分かりました。少し考えてみます。

不動産売買に伴う仲介手数料について

不動産の売買に伴う仲介手数料には上限額が定められています。

仲介手数料の上限額
売買金額仲介手数料
200万円以下売買金額の5%(+消費税)
200万円超〜400万円以下売買金額の4%+2万円(+消費税)
400万円超〜売買金額の3%+6万円(+消費税)

少し複雑そうに見えますが、売買金額が400万円以上の場合は以下の速算法を使用した計算式で仲介手数料を算出することができます。

  • 仲介手数料=(売買金額✕3%+6万円)✕消費税

一応、「6万円」の内訳をご説明しておく「200万円以下の5%と3%を差し引いた2%分(200万円✕2%=4万円)と「200万円以上〜400万円以下の4%と3%を差し引いた1%分(200万円✕1%=2万円)の合計で6万円になります。

ちなみに不動産仲介会社が「買い手側」と「売り手側」との両方を契約を結んだ場合、それぞれから仲介手数料を手に入れることになり、これを「両手取引」と呼びます。

スポンサーリンク

売買価格は妥当なのか?

すまいValue

不動産仲介会社から伝えられた1,200万円については「満足はしていないものの比較的妥当な金額では無いだろうか?」というのが正直な感覚でした。

ただせっかくの機会だったのでインターネットの一括見積もりサービスを利用して、より多くの情報を入手したいと思い「不動産ポータルサイト」の「すまいValue」の無料査定を依頼しました。

すまいValueのサービスについて

すまいValueのサービスはインターネット上で物件の売却可能額を無料査定してくれるサイトです。

主に以下のような情報を入力することで売却可能額を算出してくれます。

  • 物件種別
    • 区分マンション、または一棟マンション
    • アパート
    • 戸建て、または土地
  • 物件所在地
    • 住所、マンション名、部屋番号
  • 専有面積(任意の項目)
  • 築年数
  • 間取り(任意の項目)
  • 物件の状態
    • 住居中?賃貸中?空室?
    • 月間賃料(賃貸中の場合)
  • 査定方法
    • 訪問査定(より精度の高い金額を提示)
    • 簡易査定(気軽に概算価格を算出する机上査定)
  • 所有者の個人情報
    • 氏名、連絡先(電話番号、メールアドレス)など

すまいValueでは、最大で以下の6社により売却可能額を無料査定してくれます。

  • 東急リバブル
  • 住友不動産販売
  • 野村の仲介+(PLUS)(野村不動産アーバンネット)
  • 小田急不動産
  • 三菱地所ハウスネット
  • 三井のリハウス(三井不動産リアルティ)

どこも大手で有名な不動産仲介会社ですね。

査定結果の確認

無料査定を依頼後、すまいValueより以下の査定会社より査定結果を伺えるとのご連絡を頂きました。

  • 東急リバブル
  • 住友不動産販売
  • 野村不動産アーバンネット
  • 三菱地所ハウスネット
  • 三井不動産リアルティ

小田急不動産の名前が含まれていません。小田急不動産は東京の会社で小田急線沿線駅前の地域を得意としているため関西の物件は対象外なのかもしれません。ただ、それでも5社からの査定結果を得られるのならば相場観は十分に掴めると思います。

そして、翌日〜翌々日頃にはには査定結果がメールで送られてきました。

査定会社査定価格売出価格備考
三井不動産リアルティ無し1,200万円収益還元法(6.3%想定)
野村不動産アーバンネット回答無し
三菱地所ハウスネット1,120万円1,240万円〜1,300万円収益還元法(6.3%想定)
住友不動産販売960万円〜1,020万円1,120万円収益還元法(6.5%想定)
東急リバブル1,180万円〜1,280万円詳細な査定報告書の添付有り

ややばらつきはありますが、基本的には大阪市内で一般的に取引されている利回り(6%前後)を基準とした収益還元法により机上査定した価格とのことでした。

電話を掛けてきた不動産仲介会社とそれ程大きな違いは無さそうです。また今回は「概算価格を算出する簡易査定」を依頼しましたが「訪問査定」を依頼することで、より精度の高い査定金額が分かるはずです。

スポンサーリンク

売却価格の判断基準は?

僕がこの物件を購入しこれまでの4年間の収支は以下のようになります。

区分マンションの収支状況について(概算)
項目金額備考
購入価格1,220万円(マイナス)
購入手数料80万円(マイナス)
固定資産税20万円(マイナス)
ローン返済(金利分)60万円(マイナス)
ローン返済違約金10万円(マイナス)
入居者入替に伴う支出15万円(マイナス)
家賃収入220万(プラス)
手元に残したい金額1,185万

計算しやすいように数字を概算にしています。

そもそも今のタイミングで物件を売却するつもりはほとんど無かったのですが、売却可能額が1,250万円を大きく超える場合は売却を検討する価値があると判断しました。

逆に手元に残るお金が1,185万円を下回る場合は「検討の余地無し」と考えていました。

スポンサーリンク

物件価格は値下げ傾向になる?

1週間後、再度、不動産仲介会社から電話が掛かってきました。

物件の売却はご検討頂けましたか?

やはり売却希望額との乖離が大きいため売却は見送ろうと思います。

2年程前は東京オリンピックの影響などもあり、売買価格はもう少し高かったのですが、今のタイミングではこの金額が限界かと思います。

このまま物件を保有し続けていると物件価格は一層下がってしまう可能性がありますよ。今年になってから金融機関の融資基準も消極的になっています。融資を受けられる人(つまり物件を購入できる人)が減っているため、今後、さらに物件価格は下がる傾向にあります。

ただこの金額で売却すると、これまで家賃収入や金融機関へのローン返済を考慮するとマイナスになる可能性があるため、やはり売却はできないです。

ちなみにローン返済の残額はどれくらい残っていますか?この金額ではやはりローンを返済することも困難でしょうか?

この物件については頭金も支払っていて繰り上げ返済も進めているので、ローンの残額は比較的少ないです。そのためこの金額でもローンを全額返済することは可能ですが「ローンを返済できるか?できないか?」は論点ではありません。今売却するとマイナスになる可能性があるため売却できません。

マイナスになることをお認めになりたくない気持ちは分かりますが、このまま物件を保有し続け物件価格を下げるより、今のタイミングで売却にされた方がマイナス分を最小限にすることにつながります。

購入当初に販売元の営業から聞いていた内容と実際の運用状況に差異があり、想定外の出費に苦しんだ結果、弊社で売却を検討されるお客様がとても多いです。弊社はそのような方のサポートができればと考えています。

購入当初に販売元から嘘を言われたとも思っていませんし、想定を大きく超えるような出費は御座いません。むしろそのような問題のある物件をどのように他のお客様に売り込むのですか(怒)?

それはお客様の資産状況やローンの返済状況などによって変わるため一概には言えないです。

(言ってることが良く分からなくなってきた…)

つまり「今までの運用状況でマイナスになるか?プラスになるか?」では無く「将来的に想定される空率率や家賃の下落率などを踏まえて判断するべき」であり、その結果「保有し続けることはよりマイナスになるから売却するべき」という見解なのですね?

その通りです。購入してしまったものは仕方無いので「いかに損失を減らせるか」に焦点を置いて判断するべきです。

分かりました。それでは御社のいうシュミレーション結果を拝見したいので、収支予測表を作成いただいても宜しいでしょうか?

承知しました。

スポンサーリンク

将来の収支予測をもとに判断する

数日後、不動産仲介会社から収支予測表がメールて送付されてきました。

すべて予測によるシュミレーションですが概要としては以下のような内容でした。

  • 現在の55,000円の家賃収入は入居者の入れ替わりの際に徐々に下がり続ける
    • 10年後に45,000円〜50,000円程になり下げ止まりとなる
  • 変動金利の場合、ローン返済の金利が上昇する可能性がある
  • 管理費および修繕積立金は数年ごとに徐々に上昇する
    • 修繕積立金目安
      • 1㎡につき140円〜265円/月(国土交通省ガイドライン参照)
  • 固定資産税は毎年50,000円程発生する
  • 3年に1回の頻度で入居者の入れ替わりがが発生する
  • 内装修繕(リフォーム)や入居者募集に200,000円程掛かる
    • クロス、CF(クッションフロア)の張替え
      • 各50,000円〜
    • 鍵交換
      • 25,000円〜
    • ハウスクリーニング
      • 25,000円
    • 新規入居者募集(賃貸募集費/広告費)
      • 賃料の1ヶ月分〜2ヶ月分
  • 1回の入れ替わりにより3ヶ月程の空室期間が発生する
  • 20年〜30年が過ぎるタイミングで大規模な設備交換費用が1,000,000円程発生する
    • 給湯器
      • 200,000円〜
    • 浴室(ユニットバス等)
      • 600,000円〜
    • キッチン
      • 300,000円〜
    • 洗面、トイレ等
      • 250,000円〜

そして、その結果「売却をせずに投資額を全て回収するには25年〜30年程の期間が掛かる」という結論が出ました。

スポンサーリンク

出口戦略は常に意識する

数日後、再度、不動産仲介会社から電話が掛かってきました。

収支予測は確認されましたでしょうか?

物件の売却をご検討されますか?

収支予測をまとめて頂き大変有難う御座いました。

頂いた終始予測の内容は妥当な内容だと思います。

ただやはり現時点で売却するとマイナス収支になる可能性もあり、現時点での売却は見送りたいと思います。せっかく情報を頂いたのに申し訳ありません。

そうですか。

やはり決断できなかったのですね?

決断できなかった(怒)?

いえ、「売却しない」と判断しただけです。

決断でいなかった訳ではありません。

そうですか。

それでは今後の運用状況や売却価格によってはプラスに転じるとお考えなのですね?

はい、そう考えています。

この度はいろいろと有難う御座いました。

不動産仲介会社からはいろいろと情報を頂いたのですが、今回は最終的には「売却しない」と判断しました。

ただ、物件を保有している以上、今後もこのような問い合わせは続くはずです。

その時にある程度「この金額だったら検討の余地があるかも?」といえる金額を想定しておくと、その後のやりとりをスムーズに進められますし、そもそも検討する余地も無い金額を提示された場合はすぐにお断りすることもできます。

いろいろなところで「2018年以降は物件価格は下がる傾向にある」と言われていますが、また近い将来、物件価格が上がってくる可能性もあるかと思います。勿論、物件には経年劣化があるため基本的には値下がりする傾向にありますが、もし将来、不動産市場が活性化した時には適切な判断ができるように備えたいと思います。

プロフィール

楽待新聞&不動産投資Libraryのコラムニストをしています。
普段、不動産投資家として考えていることや体験談などを掲載しています。
これから不動産投資を始めたい方や、賃貸経営初心者の方に対して、分かりやすい内容を心掛けています。

西本 豪をフォローする
この記事が気に入ったら
いいね!しよう
最新情報をお届けします。
不動産会社
スポンサーリンク
西本 豪をフォローする

コメント

タイトルとURLをコピーしました