土地から新築アパートを建てると、基礎の配筋も、界壁や断熱も、次の工程が始まると見えなくなっていきます。施主が現場で確かめておきたい機会は、配筋・上棟・ボード張り・外壁張り・完成の5回ほどです。
工事中の確認で戸建てと大きく違うのは、住戸の間の壁(界壁)と防火設備、共同住宅の中間検査、検査済証と融資の関係で、2025年4月の建築基準法改正で完成時の手続きも変わりました。以下、施主が工事中にどこを、いつ、何を根拠に確かめるかを工程の順に並べます。工事の前段にあたる土地選びと建築費は、土地から新築アパートの始め方と流れから順に読むとつながります。
- 土地から新築アパートを建てる予定で、工事中に施主として何を確かめればよいか知りたい方
- 配筋検査や施主検査のチェック項目を、アパート特有の論点(界壁・防火設備)まで含めて押さえたい方
- 中間検査・完了検査・保険の検査・第三者検査の違いと、どれが何を見ているのかを整理したい方
- 検査済証が出ないと融資や入居にどう響くのか、違反があったときのペナルティを知りたい方
- 2025年4月の建築基準法改正で、工事中と完成時の手続きに何が加わったかを確認したい方
- 工事中に入る検査は4種類:建築基準法の中間検査と完了検査、瑕疵保険の現場検査(3階建て以下は基礎配筋と躯体の2回)、施主が頼む第三者検査。見ている範囲と深さがそれぞれ違う(任意の住宅性能評価を受ける場合は、その検査も加わる)
- 中間検査の対象は自治体が決める:全国一律なのは3階建て以上の共同住宅の2階床の配筋だけ。木造アパートは大阪府・大阪市・堺市・兵庫県・神戸市・京都市・京都府がそれぞれ規模と工程を指定している
- アパート特有の山場はボードを張る前:界壁が準耐火構造で小屋裏・天井裏まで届いているか、延焼のおそれのある部分の窓・玄関ドアが防火設備か。天井や壁を張った後は見えなくなる
- 工事監理者の報告書を受け取る:建築主は工事監理者を定める義務があり(建築基準法5条の6)、工事監理者は結果を文書で報告する(建築士法20条3項)
- 2025年4月から:新2号建築物は検査済証が出るまで原則使用不可、完了検査で省エネ基準の施工も確認される。検査済証が無いと融資・売却で不利になる
木造アパートなら、①基礎のコンクリートを打つ前(配筋)、②上棟して構造金物が付いた後、③天井・壁の石こうボードを張る前(界壁・防火設備・断熱)、④外壁材を張る前(防水)、⑤引渡しの2週間以上前(施主検査)の5回です。このうち①は打設後に見られなくなり、③も天井や壁を張ると大半が隠れる工程です(完成後は小屋裏点検口から一部を見られるだけ)。工程表をもらった時点で日付を押さえ、行けない日は写真の提出を契約で求めます。
- 中間検査に通ったので施工は問題ないと考えている
- 界壁や防火設備を見る日を決めていない
- 工事監理者が誰で、報告書がいつ届くかを知らない
- 検査済証は引渡しのときにもらえるものだと思っている
- 検査ごとに何を見ていて何を見ていないかを区別している
- ボードを張る前に小屋裏と界壁の写真を受け取る段取りがある
- 工事監理報告書と検査の合格証を工程ごとに受け取っている
- 完了検査から検査済証、融資実行、入居までの日程を逆算している
- 🔍 1. 工事中に入る検査は4種類|何を見て、何を見ていないか
- 📅 2. 工程と見に行くタイミング|5回の立会いと工期の逆算
- 🧱 3. 基礎・配筋|打設前にしか見られない
- 🔩 4. 上棟後の構造金物と中間検査|自治体ごとの指定を先に確認
- 🧯 5. アパート特有の山場|界壁と防火設備はボードを張る前に見る
- ☔ 6. 防水・断熱・配管|外壁と内装を張る前
- 🏛️ 7. 工事監理者と現場の運営|報告書と書面で残す
- 🕵️ 8. 第三者検査を入れるか|費用とアパートでの頼み方
- 💸 9. 支払いと倒産リスク|出来高より先に払わない
- 📋 10. 施主検査(竣工検査)|引渡しの2週間以上前に
- ✅ 11. 完了検査と検査済証|出ないと入居・融資・売却で詰まる
- 🛡️ 12. 引渡し後の責任と保険|10年の瑕疵担保と保険のリレー
- ❓ よくある質問
- 📝 13. まとめ――工事中の確認は「見えなくなる前」に集中させる
- 📖 この記事の根拠(出典・参考)
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🔍 1. 工事中に入る検査は4種類|何を見て、何を見ていないか
「検査に通ったから大丈夫」と考える前に、誰がどの検査をして、何を見ているかを分けておきます。アパートの工事には性格の違う検査が4種類入ります。
| 検査 | 根拠と実施者 | 時期 | 見ているもの |
|---|---|---|---|
| 中間検査 | 建築基準法7条の3。建築主事か指定確認検査機関 | 特定行政庁が指定した工程(木造は多くが小屋組・軸組の完了時) | その工程までの法適合。合格証が出るまで次の工程に進めない |
| 完了検査 | 建築基準法7条。建築主が完了から4日以内に申請 | 工事完了後。受理から7日以内に検査 | 建物全体の法適合。2025年4月以降は省エネ基準の施工も含む。合格で検査済証 |
| 瑕疵保険の現場検査 | 住宅瑕疵担保履行法による資力確保のための保険。国交大臣指定の保険法人(5社)の検査員 | 3階建て以下は基礎配筋の完了時と、躯体の完了時(または下地張りの直前)の2回 | 構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防ぐ部分。保険を引き受けるための確認で、雨水の浸入を防ぐ部分は書類とヒアリングでの確認を原則とする保険法人の例もある(現地での目視は有料のオプション) |
| 第三者検査(ホームインスペクション) | 任意。施主が検査会社や建築士に依頼 | 依頼内容しだい(配筋・上棟・ボード前・完成など) | 施工品質そのもの(目視できる範囲)。設計図書との照合を含むかは会社と契約内容しだいで、一般的なインスペクションには含まれないとする検査会社もある |
注意したいのは、法定の検査も保険の検査も「法律や保険の基準に合っているか」を工程の一時点で確かめるもので、施工の丁寧さ全体を保証するものではない点です。瑕疵保険の配筋検査は、検査会社のコラムでは1回10〜15分程度とされています。保険の検査回数も法律ではなく、国交省が認可する保険法人の業務規程で決まっています。検査に合格したことと、施工が丁寧だったことは別物で、その差を埋めるのが施主の立会いと工事監理者の報告です。
📅 2. 工程と見に行くタイミング|5回の立会いと工期の逆算
工程の中で先に押さえておきたいことが2つあります。1つ目は、建方(小屋組・軸組)の中間検査が来る頃には、基礎の配筋はもうコンクリートの中にあることです。木造アパートの中間検査は建方や屋根の工事を特定工程とすることが多く、基礎の配筋は2階建てなら対象外になる自治体が多くあります(1章・4章の表)。配筋を確かめるのは、工事監理者と瑕疵保険の検査、そして施主の立会いです。2つ目は、工事中に構造の変更が入ると計画変更の確認が必要になり、その手続きが工期に響くことです。地盤や埋設物の事前確認が甘いと、工事中の変更につながります(地盤の話は地盤改良の費用相場)。
見に行く回数は次の5回が目安です。
- 1基礎配筋(コンクリート打設前)
打設後は二度と見られない。保険の1回目の検査と同じ時期 - 2上棟後(構造金物・耐力壁)
中間検査と保険の2回目の検査の前後。金物の種類と位置、面材の釘 - 3石こうボードを張る前(界壁・防火設備・断熱)
アパート特有の山場。界壁が小屋裏まで届いているか、窓・ドアが防火設備か - 4外壁材を張る前(防水)
透湿防水シートの重ねとサッシ周りの防水テープ - 5引渡しの2週間以上前(施主検査)
指摘を直す期間と再検査の日を確保する
工期は家賃の入り始めを決めます。3月の繁忙期に新築として募集したいなら、完了検査と検査済証から逆算して着工日を置きます。工程の遅れは雨天の打設延期と、中間検査や計画変更の手続き待ちで起きやすいので、工程表の中で「ここが遅れると全体が遅れる」基礎→上棟→屋根→外壁の流れに印を付けて進捗を見ます。
🧱 3. 基礎・配筋|打設前にしか見られない
基礎の鉄筋は、コンクリートを打った瞬間に見えなくなります。中間検査の対象にならない自治体も多く、施主が立ち会えるのはこの日だけです。見る項目と基準は次のとおりです。
| 項目 | 基準・見方 |
|---|---|
| かぶり厚さ(立上り) | 4cm以上(建築基準法施行令79条:土に接する部分・布基礎の立上り)。鉄筋から型枠の内側までを測る |
| かぶり厚さ(底盤) | 6cm以上(同条。捨てコンクリートの部分を除く)。鉄筋から捨てコンクリートの上面までを測る |
| 鉄筋の径と間隔 | 基礎伏図・配筋図と照合(D10・D13など、間隔は図面の指示どおり) |
| 継手の重ね長さ | 原則として鉄筋径の40倍以上(引張力が最も小さい部分は25倍以上。施行令73条2項) |
| 配管スリーブの周り | 補強筋が入っているか、スリーブと鉄筋の間のかぶりが取れているか |
| アンカーボルト・ホールダウン金物 | 基礎伏図どおりの位置と本数。後から差し込む「田植え」になっていないか |
| 防湿シート | 破れと重ね。写真で記録 |
持ち物は、配筋図・基礎伏図、メジャー、スマートフォンの3つで足ります。鉄筋を軽く揺すって、打設の振動でずれないように結束されているかも見ます。チェック項目の重要度は同じではありません。かぶり厚さ・スリーブ周り・アンカーボルトの位置の3点は、後から直せない順に優先して見る項目です。
打設後は、型枠を外した基礎の表面に、骨材が露出した空洞(ジャンカ)や、打ち継ぎの時間が空いてできる継ぎ目(コールドジョイント)がないかを見ます。打設日の天候と打設記録、生コンの配合計画書(呼び強度・スランプ)を事前にもらっておくと、指摘の根拠になります。
🔩 4. 上棟後の構造金物と中間検査|自治体ごとの指定を先に確認
上棟すると柱・梁・筋かいを留める金物(ホールダウン金物、筋かいプレート、羽子板ボルトなど)と、耐力壁の面材が付きます。金物は構造図の記号どおりの種類が、指定の位置に付いているか、ボルトの締め忘れがないかを見ます。面材は釘の種類と間隔、めり込みの深さが耐力に効きます。2000年基準の金物の考え方は、中古木造の見分け方として旧耐震・新耐震・2000年基準の違いにまとめていますが、新築ではそれが図面どおり施工されているかを見る段階です。
2025年4月の改正で、木造の必要壁量は建物の実際の重さから計算する方式に変わり、国交省の質疑応答集では多くの場合2〜3割程度増える傾向とされています。断熱材や高性能サッシ、太陽光パネルで建物が重くなるためです。壁や金物が以前の建物より多いのは、図面どおりなら正常です。
この頃に中間検査があります。中間検査は、全国一律で対象になるのが「階数3以上の共同住宅の2階の床とはりの配筋工事」だけで(建築基準法7条の3・施行令11条)、木造アパートはそれぞれの特定行政庁が指定した場合に対象になります。関西の主な行政庁の指定は次のとおりです。
| 特定行政庁 | 木造の共同住宅・長屋の対象 | 検査する工程 |
|---|---|---|
| 大阪府(建築主事を置く市を除く) | 住宅(長屋・共同住宅を含む)で床面積50㎡超 | 3階建て以上・延べ300㎡超・高さ16m超のいずれかは基礎配筋と建方の2回、それ以外は建方のみ |
| 大阪市 | 延べ50㎡超 | 3階以上の住宅等は基礎配筋と屋根工事、それ以外は屋根工事のみ |
| 堺市 | 住宅(長屋・共同住宅を含む)で50㎡超 | 建方は全部、基礎配筋は3階以上・300㎡超などの場合 |
| 兵庫県(神戸市など12市を除く) | 長屋・共同住宅で住宅部分50㎡超 | 建方は全部、基礎配筋は3階以上。建設住宅性能評価を受ける建物などは対象外 |
| 神戸市 | 一戸建て以外は100㎡超(平屋は200㎡超) | 建方は全部、木造の基礎配筋は3階以上 |
| 京都市 | 共同住宅は特殊建築物(100㎡超)などとして一般の区分。長屋は「2階建て住宅等」に入り、3階以下・高さ16m以下・300㎡以下なら小規模建築物 | 一般の区分は基礎配筋と建方の2回、小規模建築物は建方の1回 |
| 京都府(府が特定行政庁の区域) | 木造の長屋・共同住宅で2階以上または50㎡超 | 軸組を金物で接合する工事の1回 |
自治体ごとに検査の回数が1回から2回まで分かれるうえ、指定は改正されることがあります。着工前に、建築地の特定行政庁の「中間検査の特定工程」のページで最新の指定を確認し、工程表に検査日を入れておきます。合格証が出るまで次の工程に進めないので、検査の予約が遅れるとそのまま工期が延びます。
🧯 5. アパート特有の山場|界壁と防火設備はボードを張る前に見る
戸建ての解説で抜け落ちるのが、共同住宅だけにある界壁と、防火の地域や3階建てで求められる防火設備です。どちらも石こうボードや天井を張ると見えなくなるので、確認の日を工程表に入れておきます。
界壁|準耐火構造で、小屋裏・天井裏まで届いているか
界壁は住戸と住戸を仕切る壁で、アパートにも長屋にも、次の2つの規定がかかります。
- 防火:準耐火構造にして、小屋裏または天井裏まで達するようにする(建築基準法施行令114条1項)。スプリンクラーを設けた部分や、天井全体を強化天井(国が定める燃え抜けにくい仕様の天井)にした階などは例外
- 遮音:遮音性能を持つ構造にして、小屋裏または天井裏まで達するようにする(建築基準法30条。性能は施行令22条の3、仕様は告示か大臣認定)。天井が遮音の基準を満たせば、小屋裏・天井裏まで届かせなくてよい
界壁を天井で止めてよいのは、防火の例外(強化天井など)と遮音の例外の両方に当たるときだけです。

この界壁で大量の不備が見つかったのが、2018年に発覚したレオパレス21の問題です。国交省の検討会のとりまとめ(2019年8月)によると、2019年6月末時点で調査を終えた25,992棟のうち9,170棟で明らかな不備があり、その中身は「小屋裏等界壁が施工されていない、又は欠損がある」というものでした。とりまとめが引用するレオパレス21の外部調査委員会の報告では、一部のシリーズで本社部署が界壁は不要という誤った法解釈を指示したこと、施工する意思のない界壁を記載した確認申請書で組織的に建築確認を受けていたこと、工事監理が十分に機能しなかったことが挙げられています。国会でも国交省の住宅局長が、内外装を施工した後の現場検査では下地の仕様を確認するのが難しいと答弁しています。
- 天井ボードを張る前に、界壁の石こうボードが天井より上、屋根の下地まで続いているかを写真で受け取る
- 界壁の中の断熱材・吸音材が図面の仕様(グラスウールかロックウールなど)どおりか
- 界壁を貫通する配管・配線の周りが埋め戻されているか、界壁に付くコンセントボックスに防火の処理があるか
- 完成後は小屋裏点検口から、住戸の境の位置に壁が上まで立っているかを懐中電灯で見る
界壁の不備は、建てた会社の問題でも是正の命令は所有者にも出せる(建築基準法9条)。改修の間は入居者の生活にも響くので、施工中に確かめる方が安くつきます。
防火設備と外壁|防火地域・準防火地域と3階建てで要る
建築地が準防火地域なら、2階建てで延べ500㎡以下の木造でも、隣地境界線や道路の中心線から1階3m以内・2階以上5m以内(延焼のおそれのある部分)の外壁と軒裏は防火構造、その部分の窓と玄関ドアは防火設備にします(建築基準法61条・施行令136条の2)。3階に住戸がある木造アパートは、防火地域・準防火地域でなくても法27条で1時間準耐火などが求められ(延べ200㎡未満で警報設備を付けたものを除く)、延焼のおそれのある部分の窓・ドアは防火設備です。どの地域で何が要るかは、土地選びの段階でアパート用地の探し方とボリュームチェックに整理しています。
現場では、図面で防火設備と指定された位置に、指定どおりの製品が付いているかを見ます。防火設備には、告示の仕様(鉄製の枠に網入りガラスを入れたものなど)と、国土交通大臣の認定を受けた製品があり、メーカーは認定番号の一覧と認定書を公開しています。サッシの納品書・仕様書に書かれた製品名と認定番号を、図面の指定と突き合わせるのが施主にできる確認です。2018年5月には、サッシメーカーが大臣認定と異なる仕様で防火設備を出荷していた事案を国交省が公表しており、現場の見た目だけでは判別できない不適合もあります。
☔ 6. 防水・断熱・配管|外壁と内装を張る前
外壁材や屋根材を張ると、その下の防水紙やサッシの周りの防水は見えなくなります。瑕疵保険の設計施工基準(国交省掲載版・住宅保証機構の2025年版)は、これらの部位に次の数値の基準を置いています。
| 部位 | 基準 |
|---|---|
| 透湿防水シートの重ね | 上下・左右とも90mm以上。窯業系・金属サイディング仕上げの左右は150mm以上(メーカーの施工基準による施工も可) |
| サッシ・貫通口の周り | 防水テープで防水紙を密着させる。2025年版から先張り防水シートなど専用部材での防水も可 |
| 屋根の下ぶき材 | 上下100mm以上・左右200mm以上。谷と棟は両方向に250mm以上 |
断熱材は、壁の隅、配管の周り、コンセントボックスの裏で隙間ができやすく、入居後の結露と光熱費の苦情につながります。2025年4月からすべての新築で省エネ基準への適合が義務になり、完了検査でも省エネの施工が確認されます。国交省のサイトに載っている完了検査の手引き(日本建築行政会議編)では、省エネ基準工事監理報告書や現場の納入仕様書といった書類と、設備機器の型番の目視で確かめるとされています。断熱材とサッシの納入仕様書は、完了検査で使う書類そのものなので、内装を張る前の写真と一緒に施主側でも保管します。
ユニットバスやキッチンが入る前には、排水管の勾配と接続を見ます。勾配不足は入居後の詰まりや逆流の原因になり、直すには内装を壊すことになります。
🏛️ 7. 工事監理者と現場の運営|報告書と書面で残す
施主が毎日現場にいることはできません。その代わりに法律が置いているのが工事監理者です。建築主は、一定規模以上の建築物では建築士である工事監理者を定めなければならず(建築基準法5条の6第4項)、木造なら延べ100㎡超で建築士、延べ300㎡超か3階建て以上なら一級か二級の建築士が必要です(建築士法3条〜3条の3)。工事監理者は、設計図書どおりでない工事を見つけたら施工者に指摘し、従わなければ建築主に報告し(建築士法18条3項)、工事監理を終えたら結果を文書で建築主に報告します(同20条3項)。


- 工事監理者の氏名と資格を確認申請書で確かめる
- 工程ごとの工事監理の記録と写真を、完了時の報告書とは別に途中でも受け取る
- 独立性を高めたいなら、施工会社と資本関係のない建築士事務所に工事監理を別契約で頼む
レオパレスの問題で工事監理が機能しなかったと指摘されたように、工事監理者が名前だけの状態では検査の前段の品質管理が働きません。
現場の運営は、書面で残すことに尽きます。
- 現場定例会と議事録:2〜4週間に1回、施工会社の現場担当と工程・変更・指摘を確認し、議事録をメールで共有する
- 変更は書面で承認:変更の見積もりを書面で受け取り、承認してから発注する。構造や防火に関わる変更は計画変更の確認が必要になり、工期にも響く
- 施主支給:照明やエアコンを施主が支給するなら、納品日・受取人・保管場所を事前に決める。遅れると工程が止まる
- 指摘の伝え方:図面・仕様書・基準のどこと違うかを示し、是正の期限と再確認の日を決める
🕵️ 8. 第三者検査を入れるか|費用とアパートでの頼み方
工事監理者と保険の検査に加えて、施主側で検査会社や建築士に第三者検査(ホームインスペクション)を頼むかどうかは、費用と独立性で判断します。検査会社の公表料金の例は次のとおりです。
| 検査会社の公表例 | 内容と料金 |
|---|---|
| アネスト(収益用アパートの建物調査) | 延べ100㎡・2階・4室で、全室15万円前後/2室10万円前後/外部と共用部のみ5万円前後 |
| さくら事務所(新築賃貸アパートの料金表・関西) | 建築途中の検査は1回6.5万円〜、完成時の検査は7.5万円〜(いずれも税別の最低額。首都圏はそれぞれ6万円〜) |
アパートは全戸が同じ仕様で、内装も同じ業者が施工することが多いため、完成時の調査は各階1〜2室の抜き取りで足りるとする検査会社もあります。工事中に頼むなら、配筋と、界壁・防火設備が見えるボード張り前の2回が、施主の立会いだけでは判断しにくい工程です。依頼は着工前に済ませ、施工会社には検査が入ることを契約時に伝えておきます。
💸 9. 支払いと倒産リスク|出来高より先に払わない
工事中のもう一つのリスクは施工会社の倒産です。帝国データバンクによると、建設業の倒産は2025年に2,021件(前年比6.9%増)で、2026年上半期も1,043件(同5.8%増)と増え続けています。上半期の倒産と休廃業・解散のうち、木造建築工事は947件でした。倒産したときに直接失うお金の中心は、建築費の全額ではなく「支払済み額−出来高」です。これに、工事を引き継ぐ会社への割増の工事費と、工期の遅れによる家賃の機会損失が加わります。
支払いの分け方は、着工3割・上棟4割・完成3割の「3・4・3」、着工4割・上棟4割・引渡し2割の「4・4・2」など会社ごとに違います。契約から着工までの支払いを小さくし、各回の支払い時点で支払い累計が出来高を超えないように組みます。住宅完成保証制度は、住宅保証機構の制度が個人発注の一戸建てを対象にしていて、アパートも対象にする住宅あんしん保証も原則として請負金額3,600万円までです。一棟アパートで完成保証を使える案件は限られるので、支払い条件で守るのが基本です。信用調査の手順と支払い条件の組み方は、工務店の倒産の前兆と契約前チェックリストに詳しく書いています。
雨が続いたときの養生(木材を濡らしたまま放置しない、含水率が下がってから次の工程に進む)も、倒産ほどではありませんが入居後のカビや反りに効きます。雨天時の扱いは議事録に書いておきます。
📋 10. 施主検査(竣工検査)|引渡しの2週間以上前に
完成したら、引渡しの前に施主検査をします。日程は、指摘を直す期間と再検査の日を確保するために引渡しの2週間以上前に置き、外回りを明るいうちに見られるよう午前中に始めることを検査会社が勧めています。
- ☐ 図面・仕様書・メジャー・懐中電灯・マスキングテープ・水平器を持って行く
- ☐ 全戸を回れないときは、各階の端部屋と中部屋を選んで同じ順番で見る
- ☐ 窓・玄関ドア・室内建具の開閉と施錠、網戸、サッシの防火設備の表示
- ☐ 小屋裏点検口から界壁、床下点検口から基礎と配管の漏れ
- ☐ 共用廊下・外階段の手すりの固定、排水、照明
- ☐ 給湯器・換気扇・エアコン・インターホンの作動、水回りの水漏れ
- ☐ 指摘は一覧にして、是正の期限と再検査の日を書面で決める
→ 「引渡し後に直します」は原則として受けず、残工事は一覧に残して期限を切る
不具合は珍しくありません。さくら事務所が2025年に実施した新築一戸建ての検査1,370件では、82%で何らかの不具合が見つかり、指摘の多い部位は開口部など47.7%、基礎・床下面35.5%、外壁仕上げ31.9%でした。一戸建てのデータですが、窓・ドアと基礎まわりに指摘が集まる傾向はアパートでも同じ部位を重点的に見る理由になります。
✅ 11. 完了検査と検査済証|出ないと入居・融資・売却で詰まる
工事が終わったら、建築主が4日以内に完了検査を申請し、受理から7日以内に検査が行われ、合格すれば検査済証が交付されます(建築基準法7条)。この検査済証が、入居と融資と出口のすべてにつながります。
- 入居:共同住宅部分が200㎡を超えるアパート(1号建築物)と、2025年4月からは2階建て以上か延べ200㎡超の建物(新2号建築物)も、検査済証が出るまで原則として使えません(建築基準法7条の6)。例外は、仮使用の認定を受けた場合と、完了検査の申請受理から7日が過ぎた場合です。改正前は、共同住宅部分が200㎡以下の木造2階建てアパートは対象外でした
- 融資:国交省は2003年に、新築の建物への融資で検査済証を活用するなどして法令の遵守に配慮するよう、銀行・信用金庫などの業界団体に要請しています。国交省の検討会が大手の賃貸共同住宅事業者に聞き取った結果でも、中間検査・完了検査の受検が融資の条件になっていることがあると報告されています。竣工時の融資の実行で検査済証の写しを求められることを前提に、提出の日程も工程表に入れておきます
- 出口:中古住宅の売買では、検査済証の保存状況が重要事項説明の項目です。検査済証が無い建物は、買主の融資と将来の増改築で不利になります
違反があったときのペナルティも、施主に向きます。特定行政庁は、工事の停止や、除却・改築・使用禁止などの是正を命じることができ、命令の相手には建築主だけでなく所有者も含まれます(建築基準法9条)。確認を受けずに建てること、検査済証が出る前に使うこと、完了検査を申請しないことは、建築主自身が1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象です(同99条)。設計や施工の違反は原則として設計者・施工者が罰せられますが、建築主の故意による違反なら、建築主も設計者・施工者と同じ刑(違反した規定により3年以下の拘禁刑・300万円以下の罰金など)の対象になります(同98条2項・99条2項)。違法建築と既存不適格の違いと融資への影響は容積率オーバー物件の融資と出口戦略で扱っています。
確認と検査の記録は、建築計画概要書と、自治体によっては台帳記載事項証明書で後から確かめられます。建築計画概要書は公開書類で、特定行政庁の窓口で誰でも閲覧できます。引渡しのときは、確認済証・検査済証・中間検査合格証・工事監理報告書・瑕疵保険の保険証券(付保証明書)の原本をまとめて保管します。
🛡️ 12. 引渡し後の責任と保険|10年の瑕疵担保と保険のリレー
新築住宅の請負人は、構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防ぐ部分について、引渡しから10年間の瑕疵担保責任を負います(品確法94条)。その支払いを確実にするため、建設業者は保険か供託で資力を確保する義務があり(住宅瑕疵担保履行法3条。発注者が宅地建物取引業者の場合は対象外)、保険法人の検査が1章の保険の検査です。賃貸アパートも住宅なので対象です。それ以外の部分の不具合は、請負契約の契約不適合責任で扱います。民法の原則では、施主が不適合を知ってから1年以内に施工会社へ通知します(民法637条)が、請負契約の約款で期間が別に決まっていることがあります。例えば民間(七会)連合協定の工事請負契約約款(令和2年4月改正版)は、請求できる期間を引渡しから2年以内とし、設備機器や室内の仕上げは引渡しのときの検査で直ちに求める(その検査で見つけられなかったものは引渡しから1年まで)と定めています。契約前に約款の期間を確かめ、施主検査で指摘を出し切ることが、この期限への備えです。中古の建物にかける保険との違いは既存住宅売買瑕疵保険の費用・付保証明書・指値の実務と比べると分かりやすくなります。
保険は、工事中は施工会社が入る工事保険(加入の有無は契約時に確認)、引渡しからは施主の火災保険に切り替わります。引渡し日に火災保険が始まるように、融資実行と同じ日程で手配します。準耐火建築物は火災保険の構造区分で一般の木造より有利な区分に入り、地震保険も割安な区分(イ構造)になります。地震保険の保険金額は火災保険の30〜50%の範囲です。金額の目安と特約の選び方はアパートの火災保険はいくら?にまとめています。新築の固定資産税は、住戸の床面積が40㎡以上240㎡以下なら3年間(地上3階以上の耐火・準耐火は5年間)2分の1に減額されます(2031年3月末までの新築が対象。詳しくはアパートの固定資産税はいくら?)。
❓ よくある質問
Q1. 新築アパートの施主検査はいつ、何を見ればよいですか?
A. 引渡しの2週間以上前に、明るい午前中から行います。窓・ドア・建具の開閉と施錠、水回りの水漏れ、設備の作動、共用廊下と外階段に加えて、アパートでは小屋裏点検口から界壁、床下点検口から基礎と配管を見ます。指摘は一覧にして、是正の期限と再検査の日を書面で決めます。
Q2. 界壁が小屋裏まで届いているかは、施主でも確認できますか?
A. できます。天井ボードを張る前なら、住戸の境の壁のボードが天井より上、屋根の下地まで続いているかを目視か写真で確かめます。完成後は小屋裏点検口から懐中電灯で、住戸の境の位置に壁が上まで立っているかを見ます。天井全体を強化天井にして界壁を天井までにする設計もあるので、図面の仕様と照らして見ます。
Q3. 中間検査に合格していれば、施工に問題はないと考えてよいですか?
A. 合格は、指定された工程の時点で法律の基準に合っていることの確認です。検査の対象工程は自治体の指定で決まり、木造アパートでは基礎配筋が対象外の自治体も多くあります。施工の丁寧さ全体は、施主の立会い、工事監理者の報告、必要に応じて第三者検査で補います。
Q4. 第三者のホームインスペクションは入れるべきですか?費用はいくらですか?
A. 法律上の義務はありません。検査会社の公表例では、さくら事務所の新築賃貸アパート向けメニューが関西で建築途中の検査1回6.5万円〜・完成時の検査7.5万円〜(税別の最低額)、アネストの収益用アパートの調査が延べ100㎡・4室の全室で15万円前後です。工事監理者が施工会社と同じ会社の場合や、施主が立ち会えない工程がある場合は、配筋とボード張り前の2回に絞って頼む方法があります。
Q5. 検査済証が出る前に入居させることはできますか?
A. 共同住宅部分が200㎡を超えるアパートと、2025年4月以降に着工した2階建て以上か延べ200㎡超の建物は、原則としてできません(建築基準法7条の6)。例外は、仮使用の認定を受けた場合と、完了検査の申請受理から7日が過ぎた場合です。検査済証の前に使うと、建築主が罰則の対象になります。
Q6. 工務店が倒産したとき、完成保証は使えますか?
A. 住宅保証機構の完成保証は個人発注の一戸建てが対象で、アパートも対象にする住宅あんしん保証も原則として請負金額3,600万円までです。一棟アパートで使える案件は限られるため、支払い累計を出来高より先行させない支払い条件と、契約前の信用調査で守るのが基本です。
📝 13. まとめ――工事中の確認は「見えなくなる前」に集中させる
施主が現場で確かめておきたい機会は、配筋、上棟後、ボード張り前、外壁張り前、施主検査の5回ほどです。中間検査・完了検査・保険の検査はそれぞれ見ている範囲が違い、合格は施工の丁寧さ全体を保証しません。後から見られなくなる配筋と、界壁・防火設備が見えるボード張り前に、確認を集中させるのが施主の現場確認の核心です。
アパート特有の論点は、界壁が準耐火構造で小屋裏・天井裏まで届いているか、延焼のおそれのある部分の窓・ドアが図面どおりの防火設備か、の2つです。どちらも建てた会社の問題であっても、是正の命令は所有者にも出せます。工事監理者を誰にするかを着工前に決め、工程ごとの記録と完了時の報告書を受け取ることで、施主が毎日現場にいなくても確認の網を張れます。
2025年4月の改正で、新2号建築物も検査済証が出るまで原則として使えなくなり、完了検査では省エネの施工も確かめられるようになりました。完了検査の申請から検査済証、融資の実行、入居までを一続きの日程として逆算し、確認済証・中間検査合格証・検査済証・工事監理報告書・保険証券の原本をまとめて保管しておけば、融資の実行や売却のときに書類がそろわずに手続きが止まる事態を避けられます。
📖 この記事の根拠(出典・参考)
- e-Gov法令検索「建築基準法」(5条の6・6条・7条・7条の3・7条の6・9条・27条・30条・61条・98条・99条)/「建築基準法施行令」(11条・22条の3・73条・79条・114条・136条の2)/建築士法(3条〜3条の3・18条・20条)/住宅の品質確保の促進等に関する法律(94条)/特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律(3条)/民法(637条)(2026年9月参照)/民間(七会)連合協定「工事請負契約約款 新旧対照表(令和2年4月改正)」(契約不適合の請求期間)
- 国土交通省「省エネ基準適合義務対象建築物に係る完了検査の手引き(令和7年4月版・日本建築行政会議編)」/「改正建築物省エネ法・建築基準法の質疑応答集(令和8年8月6日時点)」(必要壁量の増加傾向)
- 国土交通省「現場検査のあり方等に関する検討WG 参考資料(保険法人業務規程の認可基準を所収)」(現場検査の時期と回数・確認方法の例)/「住宅瑕疵担保責任保険法人の一覧」/「住宅瑕疵担保責任保険 設計施工基準」(防水紙の重ね・開口部の防水)/住宅保証機構「設計施工基準・同解説 新旧対照表(2025年版)」
- 各特定行政庁の中間検査の特定工程:大阪府/大阪市/堺市/兵庫県/神戸市/京都市/京都府(2026年9月参照)
- 国土交通省「共同住宅の建築時の品質管理のあり方に関する検討会 とりまとめ」(2019年8月。界壁の不備の棟数と原因、受検と融資の関係)/「新築の建築物向け融資における検査済証の活用等による建築基準関係規定遵守について」(2003年2月)/国会会議録「第198回国会 衆議院予算委員会(2019年2月21日)」(界壁問題に関する国交省住宅局長の答弁)
- 建築開口部協会・日本サッシ協会「告示1360号(防火設備の構造方法)の参考資料」(2024年4月)
- 帝国データバンク「建設業の倒産動向(2025年)」「建設業の倒産・休廃業(2026年上半期)」
- 住宅保証機構「住宅完成保証制度」/住宅あんしん保証「住宅完成保証制度」(対象と保証の上限)
- 検査会社の公表情報:さくら事務所「施主(竣工)検査を完全ガイド」(2025年の新築一戸建て1,370件の不具合率)・「料金表(地域別・新築賃貸アパート)」/アネスト「収益用アパートの建物調査の注意点」(料金と抜き取り調査)/hi-info.biz「新築住宅の基礎の配筋検査とは?」(瑕疵保険検査の所要時間)
- 監修について:本記事は建築士の監修を受けたものではありません。検査の指定や基準は自治体と時期で変わります。個別の判断は建築地の特定行政庁と工事監理者にご確認ください
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