「不動産投資も複利で雪だるま式に増える」とよく言われます。しかし、これは半分正しく、半分は誤解です。預金や投資信託のように利息が自動で元本に乗る純粋な複利は、不動産では起こりにくい。それでも、キャッシュフロー(CF)の再投資・繰上返済・元本返済による自己資本の増加という3つの仕組みを意図的に回せば、不動産は複利に近い加速で資産を増やせます。
本記事は、72の法則をはじめとする複利の基本から、「なぜ不動産の純粋複利は効きにくいのか」という不都合な事実、そしてレバレッジと組み合わせて複利的な拡大を実現する実務、表面利回りの罠を避けるIRR・CCRといった正しい指標、複利を食い潰す手数料・税金・空室リスクまでを、数字とシミュレーションで網羅します。
- 「不動産投資は複利で増える」を鵜呑みにせず仕組みを理解したい方
- 72の法則を不動産にどう使う/使えないのかを正しく知りたい方
- 繰上返済とCF再投資、どちらが資産を増やすか迷っている方
- 表面利回りの誘い文句に惑わされず、IRR・CCRで判断したい方
- 新NISA等の金融複利と不動産投資をどう組み合わせるか考えたい方
- 72の法則=72÷年利で「複利で2倍になる年数」。単利は100の法則、3倍は115の法則
- 家賃は元本にしか付かない=純粋な複利は不動産では効きにくい(72の法則をそのまま当てると過大評価)
- 不動産で複利を効かせる3エンジン=①CF再投資による規模拡大 ②繰上返済の利息減 ③元本返済による自己資本の自動増加
- 判断は表面利回りでなくIRR・CCR(自己資金配当率)・自己資本比率で行う
- 複利の天敵は手数料・税金・空室/修繕によるCF毀損・金利上昇。レバレッジは諸刃の剣
- 「利回り8%なら72÷8=9年で資産2倍」と単純計算
- 家賃が勝手に複利で増えると思っている
- 表面利回りの高さだけで物件を選ぶ
- 純粋複利は効かない前提で、CF再投資・繰上返済を能動的に回す
- 自己資本の増加とレバレッジで「複利的」な拡大を設計する
- IRR・CCRで判断し、表面利回りの罠を避ける
- 📐 1. 複利とは──72の法則・115の法則と単利との決定的な差
- ⚠️ 2. 【重要】不動産投資に純粋な複利は効きにくい──72の法則の誤解
- 🏠 3. それでも不動産で複利を効かせる3つのエンジン
- ⚡ 4. レバレッジ×複利の相乗効果と「諸刃の剣」
- 🧮 5. 複利を測る正しい指標──表面利回りの罠とIRR・CCR・自己資本比率
- 🚨 6. 複利の3大天敵──手数料・税金・キャッシュフロー毀損
- 🆚 7. 不動産の複利 vs 新NISA・REITの複利──どう組み合わせるか
- 📅 8. 30年シミュレーション──繰上返済型 vs 再投資型 vs 金融複利
- ❓ 9. よくある質問
- ✅ 10. まとめ──「複利は弱い、だからレバレッジと設計で勝つ」
- 📖 11. この記事の根拠(出典・参考)
- 🔗 12. あわせて読みたい関連記事
📐 1. 複利とは──72の法則・115の法則と単利との決定的な差
複利とは、得た利益を元本に組み入れ、その合計に次の利益が付く仕組みです。利益が元本にしか付かない単利と違い、利益が利益を生むため、期間が長いほど差は雪だるま式に開きます。
📊 単利 vs 複利の長期差(元本100万円・年5%)
| 経過年数 | 単利(年5万円ずつ) | 複利(年5%) | 差 |
|---|---|---|---|
| 10年 | 150万円 | 約163万円 | 約13万円 |
| 20年 | 200万円 | 約265万円 | 約65万円 |
| 30年 | 250万円 | 約432万円 | 約182万円 |
30年で単利250万円に対し複利は約432万円。同じ年5%でも、複利は単利の1.7倍超に達します。これが「時間を味方につける」と言われる理由です。
🔢 倍化・3倍化を即算する4つの法則
| 法則 | 計算式 | わかること |
|---|---|---|
| 72の法則 | 72 ÷ 年利 | 複利で元本が2倍になる年数 |
| 100の法則 | 100 ÷ 年利 | 単利で元本が2倍になる年数 |
| 115の法則 | 115 ÷ 年利 | 複利で元本が3倍になる年数 |
| 126の法則 | 126 ÷ 年利 | 毎月積立(ドルコスト)で2倍になる年数 |
例えば年利5%なら、72÷5=約14.4年で2倍(複利)、100÷5=20年で2倍(単利)。複利と単利で5.6年も差が出ます。ただしこの法則は「利率が一定」を前提とした概算で、年利が高いほど誤差が大きくなる点に注意してください。
📐 多金利・期間別の倍率早見表(複利・100万円→何倍?)
| 年利/期間 | 10年 | 20年 | 30年 |
|---|---|---|---|
| 3% | 約1.34倍 | 約1.81倍 | 約2.43倍 |
| 5% | 約1.63倍 | 約2.65倍 | 約4.32倍 |
| 7% | 約1.97倍 | 約3.87倍 | 約7.61倍 |
| 10% | 約2.59倍 | 約6.73倍 | 約17.4倍 |
年利の差が時間で増幅されるのが複利の本質です。5%と7%の差はわずか2pt、しかし30年後には4.3倍と7.6倍=約1.8倍の開き。10%なら同じ30年で17.4倍に届きます。だからこそ、わずかな手数料や税負担の差が長期で資産形成を大きく変えます(§6で詳述)。
⚠️ 2. 【重要】不動産投資に純粋な複利は効きにくい──72の法則の誤解
ここが本記事の核心です。「利回り8%だから72÷8=9年で資産2倍」という計算は誤りです。理由は、不動産の家賃収入が「元本にしか利息が付かない=単利的」な性質を持つからです。
- 家賃は自動再投資されない──預金利息は口座に積み上がり翌年の利息を生みますが、家賃は通帳に貯まるだけ。新たな物件の頭金になる額が貯まるまで数年かかり、その間は遊休資金(単利状態)です。
- キャッシュフローが毎年変動する──空室・修繕・金利・税制で手残りは上下します。72の法則が前提とする「一定利率」が成立しません。
- 表面利回りは複利の率ではない──広告の表面利回りは「年間家賃 ÷ 物件価格」にすぎず、経費・空室・返済を引いた手残り(実質)とはかけ離れます。これを72の法則に当てると倍化年数を大幅に過大評価します。
つまり、不動産を「ほったらかしで複利運用」しようとすると、実態はむしろ100の法則(単利)に近い。複利を期待するなら、後述の3エンジンを能動的に回す必要があります。なお、REITの分配金再投資のように現金を即再投資できる仕組みなら、不動産系でも複利は機能します。


- 金融商品=純粋複利だが自己資金の範囲内
- 不動産=複利は弱いがレバレッジで規模を先に作れる
🏠 3. それでも不動産で複利を効かせる3つのエンジン
純粋複利が効きにくくても、次の3つを意図的に回せば複利“的”な資産加速は十分に可能です。
🔄 エンジン①:CF再投資による規模拡大(スノーボール)
毎月の手残りを貯め、次の物件の頭金にして買い増す。1棟が2棟、2棟が4棟と保有規模そのものを増やすことで、CFの総額が雪だるま式に膨らみます。これは「利益を元本に組み入れる」複利の発想そのものです。楽待新聞には、20代で開始し数年で家賃年収を数百万円規模へ伸ばし、CFと融資枠を再投資して規模拡大した投資家の事例も紹介されています(個別の数字は物件・属性・時期次第)。
ただし再投資はlumpy(不連続)です。頭金が貯まるまでの待機期間をいかに短縮するかが、複利的拡大のスピードを決めます。例えば年CFが72万円なら次の頭金1,000万円が貯まるまで約14年、150万円なら約7年、200万円なら5年と、初動のCF水準が次サイクル到来までの「待機時間」を支配します。融資の引き直しや自己資金効率の改善は不動産投資の銀行融資|稟議書・事業計画書・必要書類・属性評価・物件評価の実務もあわせてご確認ください。
⬇ エンジン②:繰上返済=確定利回りの“複利的”効果
住宅ローンや事業性ローンは残高に対して利息が付く=借り手から見れば複利です。だからこそ繰上返済は強力で、金利2%のローンを繰上返済すれば、税引後・リスクゼロで年2%の確定リターンを得たのと同義です。市場の不確実な5%より、確定の2%が勝る局面は多々あります。
一方で繰上返済は手元資金を減らし、次の物件の頭金(規模拡大)を遅らせます。「繰上返済(安全・確定)」と「再投資(拡大・不確実)」のどちらを優先するかは、金利水準・残置期間・手元流動性で判断します。一般に低金利局面では再投資、金利上昇局面では繰上返済が有利に傾きます。
具体的な数字で見てみましょう。借入3,000万円・残期間30年・金利2%・元利均等返済の場合、月返済額は約11.1万円、総利息はおよそ991万円です。ここで100万円を期間短縮型で繰上返済すると、条件次第ですが支払利息のうち約25〜40万円が消えるのが一般的です。これは100万円を年2%・税引後・ノーリスクの確定運用に回したのと同等の効果。同水準の金融商品(国債・MMF等)で同じリスクで2%確定を取れる選択肢は、現実にはほぼ存在しません。だからこそ繰上返済は「保守的だが強い一手」になります。なお繰上返済には「期間短縮型」(残期間を縮める=総利息圧縮が最大)と「返済額軽減型」(月返済額を下げる=手元CFを厚くする)の2タイプがあり、複利的な拡大を加速したいなら前者、当面のCFを安定させたいなら後者が向きます。
📈 エンジン③:元本返済による自己資本の自動増加
不動産最大の特徴が、入居者の家賃でローン元本が減り、あなたの自己資本(純資産)が毎月自動的に増える点です。物件価格が横ばいでも、ローンを完済すれば物件価値ぶんがまるごと自己資本に変わります。これは手間ゼロで進む“静かな複利エンジン”であり、CF設計の中で見える化すべき要素です(参考:不動産投資のキャッシュフロー設計|DSCR・空室控除・税後CF・元利返済込みの実務)。
具体的な推移を見ます。物件5,000万円・自己資金1,000万円・借入4,000万円・金利2%・30年元利均等の場合、物件価格が横ばいでもローン残高は次のように減り、自己資本(物件評価額−残債)はその分だけ自動で増えていきます。
| 経過年数 | ローン残高(概算) | 自己資本(物件価格−残債) |
|---|---|---|
| 0年(取得時) | 4,000万円 | 1,000万円 |
| 5年 | 約3,460万円 | 約1,540万円 |
| 10年 | 約2,890万円 | 約2,110万円 |
| 20年 | 約1,640万円 | 約3,360万円 |
| 30年(完済) | 0円 | 5,000万円 |
30年間で自己資本は1,000万円から5,000万円へ=5倍に増加します。これは家賃収入とは別に進む静かな“元本複利”であり、たとえ年CFが薄い物件でも、長期保有で意味を持つ理由です。価格下落や空室があれば数字はぶれますが、エンジンの方向そのものは確実に資産形成側へ向きます。
⚡ 4. レバレッジ×複利の相乗効果と「諸刃の剣」
不動産が金融商品と決定的に違うのは、融資(レバレッジ)で自己資金の数倍の資産を最初から運用できる点です。自己資金1,000万円で5,000万円の物件を持てば、値上がり・家賃・元本返済の効果はすべて5,000万円ベースで働きます。複利が弱くても、運用元本を先に大きくできるのが不動産の強みです。
効くかどうかの分水嶺がイールドギャップ(物件の総収益率FCR − ローン定数K)。ここがプラスなら、借りるほど自己資金利回り(CCR)が高まる「正レバレッジ」。マイナスなら借りるほど沈む「逆レバレッジ」です。詳細は不動産投資のイールドギャップ・ローン定数・レバレッジの実務ガイドを参照してください。
具体例で見ます。5,000万円の物件・FCR 5%(年NOI 250万円)/自己資金1,000万円/借入4,000万円・金利2%・30年元利均等を想定すると、ローン定数Kは約4.44%、年返済額はおよそ178万円。年CFは250 − 178 = 約72万円、自己資金1,000万円に対するCCR = 約7.2%です。物件単体のFCRは5%でしたが、レバレッジで自己資金ベースの利回りは7.2%まで押し上がります。これが正レバレッジの正体です。
同じ物件で金利が2%→4%に上がるとどうなるか。ローン定数Kは約5.73%まで上昇し、年返済額は約229万円。年CFは250 − 229 = わずか21万円、CCRは2.1%まで急落します。イールドギャップは+0.56%から−0.73%へ反転し、複利的拡大のエンジンが一気に止まります。これが金利上昇期の「逆レバレッジ」リスクです。
- 金利上昇でローン定数が上がると、正レバレッジが一瞬で逆レバレッジに転落
- 過剰借入+空室で返済が家賃を上回ると、複利どころか元本毀損
- 出口(売却)で残債を価格が下回ると、自己資本がマイナスに
🧮 5. 複利を測る正しい指標──表面利回りの罠とIRR・CCR・自己資本比率
複利的な拡大を正しく管理するには、表面利回りで判断してはいけません。表面利回りは経費も空室も返済も無視した「見かけの率」で、72の法則に当てると倍化年数を大幅に過大評価します。
- 「表面8%だから9年で2倍」と営業トークを鵜呑み
- 経費率・空室・返済・税を無視
- 倍化年数を過大評価して過剰投資
- FCR(総収益率)・NOI で物件の実力を見る
- CCR(自己資金配当率)で自己資金の回収速度を測る
- IRR で時間価値込みの複利的リターンを評価
| 指標 | 意味 | 複利との関係 |
|---|---|---|
| CCR(自己資金配当率) | 年間CF ÷ 投下自己資金 | CCR10%=10年で自己資金回収→再投資原資に |
| IRR(内部収益率) | 保有期間の全CFと売却益を時間価値で割引いた率 | 複利ベースの総合利回り。比較の最終指標 |
| 自己資本比率 | 純資産 ÷ 総資産 | 元本返済の進捗=静かな複利の見える化 |
計算式と経費の全項目は不動産投資の利回り計算ガイド|表面・実質・FCR・NOI・CCR・IRRと関西物件タイプ別の実質利回り相場に整理しています。CCRが高いほど自己資金の回収が速く、回収した資金を次へ回す=複利的拡大の回転数が上がります。
🚨 6. 複利の3大天敵──手数料・税金・キャッシュフロー毀損
複利は「率」と「時間」で効きますが、毎年わずかに削られると長期で甚大な差になります。
📊 手数料・コストの長期インパクト(年5%・30年)
| 実質年利 | 30年後(元本100万円) | 差 |
|---|---|---|
| 5.0%(コストなし) | 約432万円 | ― |
| 4.0%(年1%のコスト) | 約324万円 | −約108万円 |
たった1%のコスト差が30年で約25%もの差を生みます。不動産では管理委託費・客付けAD・売買仲介手数料・ローン手数料がこれに当たります。
💰 税金とCF毀損
- 税金──家賃収入は総合課税。高所得帯ほど手残りが削られ、再投資原資が減ります。減価償却の取り方や不動産投資の減価償却|中古簡便法・築22年4年償却・デットクロスの管理が複利の維持に直結します。
- デッドクロス──減価償却が終わり元金返済が進むと、帳簿上の利益が出るのに手元現金は薄い状態に。CF再投資のエンジンが止まります。
- 空室・修繕──実質利回りを直撃し、72の法則の「一定利率」前提を崩す最大要因。
- 金利上昇──変動金利では返済額が増え、正レバレッジが逆転するリスク。
💀 デッドクロスの数値イメージ(簡略)
例えば築22年の中古木造アパート(簡便法で4年償却)を購入した場合、最初の4年は減価償却費が大きく税後CFも厚くなります。しかし5年目以降は減価償却がゼロになる一方、ローン元金返済は変わらず続くため、帳簿上は黒字(課税所得が増える)のに手元キャッシュは細るという、典型的なデッドクロスに陥ります。CF再投資の回転数が落ち、複利“的”な拡大は止まります。対策は、減価償却が切れるタイミングで売却・組み替えする、別物件で新たな償却を生む、法人化で任意償却を活用する等。減価償却の組み立ては不動産投資の減価償却|中古簡便法・築22年4年償却・デットクロスで詳述しています。
空室率の悪化も複利を直接削ります。先ほどの5,000万円・FCR 5%・年NOI 250万円の物件で空室率が15%に上がると、家賃収入は実質85%、NOIはおよそ200万円台前半まで沈み、CCRは7.2%から3%台へ大幅低下します。複利の「率」そのものが削られるため、長期で見ると倍化年数が一気に延びる構造です。物件選定時の想定空室率は強気にしない、入居付け・原状回復のコスト構造を予め織り込む、というのが複利を守る基本になります。
🆚 7. 不動産の複利 vs 新NISA・REITの複利──どう組み合わせるか
純粋な複利という意味では、新NISAやインデックス投信のほうが素直に複利が効きます(配当・分配を自動再投資できるため)。一方、不動産はレバレッジで運用元本を先に大きくできる。両者は競合ではなく補完関係です。
| 項目 | 不動産投資 | 新NISA・投信 |
|---|---|---|
| 純粋な複利 | 効きにくい(再投資がlumpy) | 効きやすい(自動再投資) |
| レバレッジ | ○(融資で数倍) | 原則なし |
| 流動性 | 低い(売却に時間) | 高い(即日売却) |
| 手間 | 管理・客付け等あり | ほぼ放置可 |
具体的な30年比較イメージは次の通りです。A 新NISA(1,000万円・年5%複利)は約4,322万円が一つの中央値。B 不動産再投資型は条件が揃えばレバレッジ込みの総資産で1億円超を狙えますが、空室・金利上昇・売却タイミングで結果はぶれます。C 不動産・繰上返済型は完済後の純資産が物件価格相当(例:5,000万円)+累積CF。リスクとリターンの「絶対値」と「ぶれ幅」が全く違うので、片方だけに賭けず両輪で持つのが合理的です。
現実的な戦略は、不動産でレバレッジを使い規模と元本返済を進めつつ、生まれたCFの一部を新NISAで純粋複利に回す「二刀流」です。積立側の理論武装は積立投資で失敗しない4つの理論武装|ドルコスト平均法・新NISA×iDeCo、資産全体の設計は老後2000万円問題は通過点|新NISA・不動産投資家の資産経営戦略もあわせてどうぞ。
📅 8. 30年シミュレーション──繰上返済型 vs 再投資型 vs 金融複利
自己資金1,000万円を起点に、3つの戦略を概念比較します(前提:金融複利は年5%、不動産はレバレッジ・CF再投資ありの“概算イメージ”。実際は物件・融資・時期で大きく変動します)。
| 戦略 | 仕組み | 30年後の傾向 | リスク |
|---|---|---|---|
| A 金融複利(新NISA等) | 年5%を自動再投資 | 1,000万→約4,300万(純粋複利) | 価格変動・レバレッジなし |
| B 不動産・再投資型 | CF+融資枠を再投資し規模拡大 | レバレッジ次第で金融複利を上回る可能性 | 空室・金利・流動性 |
| C 不動産・繰上返済型 | 借入を圧縮し無借金へ | 確実だが拡大は緩やか。完済後は高CF | 機会損失(拡大の遅れ) |
各戦略の「中の動き」を概算で追うとイメージが鮮明になります。A 金融複利は最もシンプルで、1,000万円が毎年5%で再投資され続けるだけ。B 不動産再投資型は、自己資金1,000万円で5,000万円の1棟目を持ち、年CF約72万円+元本返済を14年ほど積み上げて次の頭金1,000万円を作り、2棟目を取得。さらに10〜15年で同様に3棟目…と進めば、30年後の総資産(保有物件評価額)は条件次第で1億円〜1.5億円規模、純資産(自己資本)も5,000万〜1億円規模に達し得ます(空室率・金利・売却タイミングで変動)。C 繰上返済型は、年72万円のCFを全額繰上返済に回せば借入は当初の30年より大幅に早く完済し、無借金後はNOI 250万円がそのまま手残りに。30年後の純資産は完済物件+累積CFで5,000万円+数千万円規模が一つの目安です。
結論として、拡大期は再投資(B)でレバレッジと複利的成長を取り、安定期は繰上返済(C)でリスクを落とし、並行して金融複利(A)で純粋複利を補完するのが、リスクとリターンのバランスが取れた現実解です。出口の取り方は不動産売却の出口戦略|個人vs法人の譲渡税差・銀行関係維持も参考になります。
❓ 9. よくある質問
Q1. 結局、不動産投資に72の法則は使えますか?
A. そのままでは使えません。72の法則は「複利・一定利率」が前提ですが、不動産の家賃は単利的で、利回りも空室・修繕で変動します。倍化年数の概算には100の法則(単利)の方が近く、複利的に増やすにはCF再投資・繰上返済・元本返済を能動的に回す必要があります。
Q2. 繰上返済と再投資、どちらを優先すべき?
A. 金利と局面で変わります。低金利で正レバレッジが効くなら再投資で規模拡大、金利上昇局面や手元流動性が薄いときは繰上返済(確定リターン)が有利です。繰上返済は「ローン金利=税引後・ノーリスクの確定利回り」と理解すると判断しやすくなります。
Q3. 複利を最大化する不動産の利回りは何%が目安?
A. 表面ではなく実質(FCR・CCR)で見ます。重要なのは利回りの絶対値より、イールドギャップ(FCR−ローン定数)がプラスであること。プラスなら借入を使うほど自己資金利回り(CCR)が上がり、回収・再投資の回転が速まります。
Q4. 新NISAと不動産、複利目的ならどちらが有利?
A. 純粋な複利効率は新NISA等の金融商品が上です。不動産の強みはレバレッジで運用元本を先に大きくできること。両者は補完関係で、不動産でCFを作り、その一部を新NISAで複利運用する二刀流が王道です。
Q5. 50代から複利を活かせますか?
A. 活かせます。残り時間は短くても、繰上返済による確定リターンや、家賃でのローン元本返済(自己資本の自動増加)は年齢に関係なく働きます。完済済み物件のCFは老後の家賃年金にもなります。
Q6. 自分の数字で複利をシミュレーションする手っ取り早い方法は?
A. 表計算ソフトで =元本*(1+年利)^期間 を入れるのが最速です。年利には表面利回りではなく実質ベース(FCR・税後CCR)を入れるのが鉄則。金融機関や国税庁が公開している複利計算ツールも、年利・期間・元本を入れるだけで使えます。「想定」と「楽観/悲観」で3パターン試算しておくと、判断がぶれにくくなります。
Q7. 完済後の物件をどう活かす?家賃年金化の設計
A. 借入完済後の物件は、年NOI(諸経費控除後の純収益)がそのまま手残りに近い「家賃年金」になります。例えばFCR 5%の5,000万円物件なら年NOIは約250万円。年金代わりに使うなら、空室対策の継続(リフォーム・客付け強化)と、修繕積立(年NOIの15〜20%目安)を優先します。新NISAの取り崩しと組み合わせると、毎月の生活費とインフレ対応を不動産CF+金融資産の二本柱でまかなえます(参考:老後2000万円問題は通過点|新NISA・不動産投資家の資産経営戦略)。
✅ 10. まとめ──「複利は弱い、だからレバレッジと設計で勝つ」
不動産投資に純粋な複利は効きにくい、というのが本記事の出発点でした。家賃は元本にしか付かず、再投資はlumpyで、利回りも変動する。だから「表面利回り÷72で資産2倍」という計算は誤りで、実態はむしろ単利(100の法則)に近いのが現実です。
しかし、それは不動産が劣るという意味ではありません。不動産には金融商品にないレバレッジがあり、入居者の家賃で元本返済=自己資本が自動で増えるという静かなエンジンが備わっています。ここにCF再投資による規模拡大と、金利局面に応じた繰上返済を組み合わせれば、複利“的”な加速は十分に設計できます。
鍵は、表面利回りに惑わされずFCR・CCR・IRR・自己資本比率で管理し、手数料・税金・空室・金利という複利の天敵を抑えること。そして拡大期は再投資、安定期は繰上返済、並行して新NISAで純粋複利を補完する。複利の限界を正しく理解した投資家だけが、時間を本当の味方にできます。
明日から動くなら、まずは保有物件のFCR・ローン定数K・CCRを実数で計算し、自分が今「正レバレッジ」か「逆レバレッジ」かをはっきりさせるところから。次に、年CFを「再投資原資」と「繰上返済原資」と「金融複利(新NISA等)原資」の3バケツに振り分け、金利動向と空室実績を見ながら配分比率を年1回見直す。これだけで、複利は曖昧な期待ではなく、毎年の意思決定に組み込まれた具体的な数字に変わります。
📖 11. この記事の根拠(出典・参考)
- 72の法則・100の法則・115の法則・126の法則:複利/単利での倍化・3倍化年数の概算ルール(金融用語の一般的定義)。
- 「72の法則は不動産投資で使えない理由」:家賃の単利的性質・CF変動・金利一定前提の崩壊(不動産投資メディア各社の解説)。
- イールドギャップ/ローン定数/CCR/IRR:自己資金利回りと正逆レバレッジの判定指標(実務指標)。
- 規模拡大の実例:楽待新聞「実践大家コラム」等で紹介される、CF・融資枠の再投資による拡大事例(個別数値は条件次第)。
- 複利の数値:元本100万円・年5%の単利/複利比較(10/20/30年)は複利計算式に基づく試算。


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