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複利効果は嘘?投資信託・積立NISAの「複利」の正体と、不動産投資で複利が効く条件|72の法則の誤差も計算

複利効果は嘘? 投資信託と積立NISAの複利 不動産投資で効く条件 資産形成・キャリア
この記事は約13分で読めます。

「投資信託や積立NISAの複利効果は嘘」という話には、当たっている部分と、言い過ぎの部分があります。投資信託には預金のような「年◯%」の約束がないので、「年5%の複利で増える」は前提を置いた計算にすぎません。一方で、利益を引き出さずに置いておけば、増えた分も含めた全額が次の値動きを受けます。複利は「増える仕組み」ではなく、増えるときも減るときも掛け算で積み重なる仕組みです。

この記事では、「嘘」と言われる理由を3つに分けて試算で確かめ、72の法則の誤差、税金と手数料の効き方、不動産投資で複利が効く部分と効かない部分を整理します。

❓ 先に答え:よく聞く5つの言い方の判定
  • 「年5%の複利で増える」:投資信託に利率の約束はないので、5%は仮定です
  • 「投資信託に複利効果はない」:言い過ぎです。分配しない投資信託は、組み入れた株の配当も中で再投資され、増えた分ごと値動きを受けます
  • 「積立なら雪だるま式に増える」:最初の10年ほどは、残高の増加の大半が自分の入金です(毎月3万円・年5%なら10年目の残高の78%が元本)
  • 「平均5%なら30年で4.3倍」:値動きがあると、真ん中の結果はもっと低くなります(標準偏差20%なら年率は約3%台)
  • 「不動産投資は複利で増える」:家賃は自動では再投資されません。複利的に進むのは、借入の元金返済と、家賃を再投資・繰上返済に回した部分です
この記事は以下のような方におすすめです!
  • 積立NISAや投資信託の「複利効果」が本当か確かめたい方
  • 金融機関のシミュレーションと、実際の増え方の差を知りたい方
  • 72の法則をどこまで信じてよいか知りたい方
  • 家賃を繰上返済に回すか、次の物件や投資信託に回すか迷っている方
  • 不動産投資と投資信託を同じ物差しで比べたい方
🎯 30秒でわかる本記事の要点
  • 金融庁の説明では、複利は「得た収益を元本にプラスして運用することで得られる利益」。利率の約束は含まれない
  • 「嘘」と言われる理由は、①利率がない ②積立の増加の大半は入金 ③値動きで平均より低い年率になる、の3つ
  • 固定5%の試算は「平均」に近く、「真ん中の結果」ではない(30年の試算では約3人に2人が下回る)
  • 72の法則は年8%前後で最も正確。当てはめる率は平均ではなく年率換算(幾何平均)
  • 不動産は、借入の元金返済が借入金利で複利的に進む。繰上返済の効果は「ローン金利×(1-税率)」で比べる
📕 Before(読む前)
  • 「年5%で30年なら4.3倍」を、ふつうに起きる結果だと思っている
  • 積立の残高が増えたのを、運用益だと思っている
  • 72の法則に、平均リターンや表面利回りを当てはめている
📘 After(読んだ後)
  • 試算は「平均」で、真ん中の結果はもっと低いと分かる
  • 残高のうち、入金と運用益を分けて見られる
  • 不動産と投資信託を、自己資金IRR(年率換算)で比べられる

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❓ 1. 複利は嘘か:言い方を分けて判定する

金融庁のNISA特設サイトは、複利を「投資や預金などで得た収益を、当初の元本にプラスして運用することで得られる利益」と説明しています。ここに「毎年◯%」の約束は含まれていません。「嘘」かどうかは、どの言い方を指しているかで答えが変わります。

よく見る言い方 判定 理由
年5%の複利で増える前提を置いた計算投資信託に利率の約束はない。5%は仮定
投資信託に複利効果はない言い過ぎ分配しない投資信託は、配当も中で再投資され、増えた分ごと値動きを受ける
分配金を再投資すれば複利効果は限られる分配金は信託財産から払われ、その分基準価額が下がる。課税口座では普通分配金に税金がかかり、税を引いた額しか戻らない
複利は資産を増やす仕組み増える方だけを見た言い方下落も掛け算で効く。+20%の翌年に-20%なら、100は96になる

たとえば全世界株式の代表的なインデックス投資信託の交付目論見書には、「信託財産の成長を優先し、原則として分配を抑制する方針」とあり、連動をめざす指数は配当込みです。組み入れた株の配当は投資信託の中で再投資され、基準価額に含まれています。

💰 2. 理由①:積立で増えた額の大半は、最初は自分の入金

毎月3万円を年5%(固定と仮定)で積み立てた場合の、残高の中身です。

経過年数 残高 うち入金(元本) 残高に占める元本 直近1年の増加のうち運用益
5年203万円180万円88%20%
10年463万円360万円78%37%
20年1,217万円720万円59%61%
30年2,446万円1,080万円44%76%

試算の前提:月末に積立、月の利回りは(1+年利)の12乗根-1、税金・手数料なし。

運用益が1年の増加の半分を超えるのは15年目ごろです。10年たっても残高の約8割は自分が入れたお金なので、「複利の効果を感じない」のは計算どおりです。

なお、同じ条件でもサイトによって試算の数字が少しずつ違います。原因の一つは月の利回りの置き方で、「年利÷12」とするか「(1+年利)の12乗根-1」とするかの違いです。毎月5万円・年3%・30年なら、前者は約2,914万円、後者は約2,894万円になります。金融庁のつみたてシミュレーターは、2025年9月に計算ロジックを一部修正したと公表しています。

📉 3. 理由②:平均5%でも、値動きがあると年率は5%を下回る

値上がりと値下がりが同じ幅でも、資産は減ります。

2年間の値動き 単純な平均 実際の年率(幾何平均) 100の2年後
+50% → -50%0%-13.4%75
+20% → -20%0%-2.0%96
+25% → -15%5%3.1%106.25

近似式では、実際の年率はおおよそ「平均-(標準偏差の2乗÷2)」になります。平均5%・標準偏差20%なら、5%-0.04÷2=3%前後です。100万円を30年置いた場合、年5%なら432万円ですが、年3%なら243万円で、単利5%(250万円)にも届きません。

📊 毎月3万円・30年を2万回試算すると

2章と同じ毎月3万円の積立で、年の平均リターン5%・標準偏差20%の値動きを仮定し、2万回試算しました(月末に積立)。

期間 入金の合計 固定5%の試算 真ん中の結果(中央値) 入金を下回った割合 固定5%の試算を下回った割合
10年360万円463万円約430万円約3割約6割
20年720万円1,217万円約1,040万円2割強約6割
30年1,080万円2,446万円約1,890万円約2割約3分の2

固定5%の試算は「平均」に近い値で、「真ん中の結果」ではありません。大きく増えた少数の結果が平均を引き上げるため、試算を下回る人の方が多くなります。標準偏差を15%に下げると、30年の中央値は約2,110万円、入金を下回る割合は1割弱になりました。

この試算は仮定の分布によるもので、実際の資産の値動きではありません。金融庁のNISAガイドブックは、1989年以降、毎月同じ金額ずつ国内外の株式と債券に積立投資をして20年保有した場合、元本割れのケースはなかったとしています(100万円が186万〜331万円)。株と債券を組み合わせた過去データで、上の試算とは前提が違います。どちらも将来を約束するものではありません。

🔁 積立は、値動きの順番でも結果が変わる

一括で100を入れた場合、年+30%・+20%・+10%・-10%・-25%の順でも、その逆の順でも、5年後は115.8で同じです。毎年20ずつ積み立てた場合(合計100)は、この順なら84.3、逆の順なら145.6になります。積立は残高が大きくなった終盤の値動きほど金額に効きます。

読者
それなら、積立はやめた方がいいということですか?
著者
やめる理由にはなりません。固定利率の試算を「真ん中の結果」と読まないこと、使う時期に近い下落ほど金額への影響が大きいことを前提に、取り崩す時期と金額を考えておく、という話です。

🧾 4. 税金と手数料も掛け算で効く:NISAの非課税が効く場所

一括で100万円を入れ、年5%(固定と仮定)で30年置いた場合です。

口座・課税のされ方 30年後
NISA(非課税)432.2万円
課税口座・分配しない投資信託(売るときに1回だけ課税)364.7万円
課税口座・毎年分配して、税引後を再投資322.9万円

分配しない投資信託なら、課税口座でも途中で税金はかかりません。NISAの効果は「途中で再投資できる額が増える」ことではなく、最後に利益の20.315%を取られないことです。途中で課税される分配や売買の入れ替えをすると、税の目減りも複利で効きます。

手数料(信託報酬)も同じです。同じ条件で年0.1%なら420.0万円、年1.0%なら324.3万円、年2.0%なら242.7万円になります。年1%の差が、30年で約100万円の差になります。

🧮 5. 72の法則は嘘か:誤差の表と、当てはめる率

72の法則(72÷年利=お金が2倍になる年数)は、近似式です。正確な年数は「log2÷log(1+年利)」で求められます。

年利 正確な年数 72÷年利 差
1%69.66年72年2.34年長い
3%23.45年24年0.55年長い
5%14.21年14.4年0.19年長い
8%9.01年9年ほぼ同じ
10%7.27年7.2年0.07年短い
20%3.80年3.6年0.20年短い

最も正確なのは年8%前後です。低い利回りでは長めに出るので、1〜3%なら「70÷年利」の方が近くなります。

誤差より大事なのは、当てはめる率を「平均」ではなく「年率換算(幾何平均)」にすることです。平均5%・標準偏差20%の資産に72÷5=14.4年を当てても、真ん中の結果にあたる年率は3%強(試算では3.15%)なので、2倍になるのは22〜23年です。不動産なら、表面利回りではなく、自己資金に対するIRR(=年率に換算した複利の利回り)に当てます。

似た法則に、3倍になる年数の「115の法則」と、毎月積み立てた残高が入金合計の2倍になる年数の「126の法則」があります。126の法則は固定利率で積み立てた場合の近似で、値動きのある資産の結果を示すものではありません。

🏠 6. 不動産投資で複利は効くか:効く部分と効かない部分

🏘 家賃は、自動では再投資されない

借入なしで5,000万円の物件を買い、経費を引いた家賃(NOI)が年250万円、価格は横ばいとします。家賃を貯めるだけなら、30年で物件と現金の合計は1億2,500万円(2.5倍)です。毎年の家賃を年5%で運用し続けられれば、約2億1,600万円(4.3倍)になります。「不動産は単利」というのは、家賃を再投資しない場合の話で、差は「家賃をどこに回すか」で生まれます。

🏦 借入の元金返済は、借入金利で複利的に進む

元利均等返済では、毎月の返済額のうち元金の部分が、毎月「1+月の金利」倍ずつ増えていきます。4,000万円・金利2%・30年の場合、年間の元金返済は1年目98.3万円、10年目117.7万円、20年目143.7万円、30年目175.5万円です。家賃から返す元金の分だけ、自己資本(物件価格-借入残高)が増えます。ただし、この増え方は物件価格が横ばいという前提で、価格の変動も掛け算で効きます(年+1%なら30年で1.35倍、年-1%なら0.74倍、年-2%なら0.55倍)。

⬇ 繰上返済は「ローン金利で運用した」のと同じ効果

3,000万円・金利2%・30年の借入に、100万円を期間短縮型で繰上返済した場合に減る利息です。

繰上返済した時期 減る利息
借入直後79.8万円
5年後62.9万円
10年後47.6万円
20年後21.1万円

借入直後の79.8万円は、100万円を年2%の複利で残りの期間運用したのとほぼ同じ規模です。ただし、賃貸用のローンの利息は不動産所得の必要経費なので、繰上返済で浮く分には税金がかかります。税引後の効果は「ローン金利×(1-所得税と住民税の税率)」で見ます。

所得税率 所得税(復興特別所得税等込み)+住民税10% 金利2%の繰上返済の税引後効果
20%30.4%1.39%
33%43.7%1.13%
45%55.9%0.88%

比べる相手として、2026年10月15日発行の個人向け国債(固定5年・募集は9月30日まで)は年2.24%、税引後1.78%です(中途換金は発行から1年後からで、直前2回分の利子相当額が差し引かれます)。不動産所得が黒字で税率が高いほど、金利2%の繰上返済の税引後の効果は低くなります。手元資金の厚さと合わせて判断します。

⏳ 頭金を貯める間は、複利が止まる

年72.6万円の手残り(NOI250万円-年間返済177.4万円。借入4,000万円・金利2%・30年の場合)で次の物件の頭金1,000万円を貯めると、現金のままなら13.8年、年5%で運用しながらなら10.7年かかります(運用すれば値動きのリスクが加わります)。元金返済で増えた自己資本は現金ではないので、そのままでは頭金に使えません。

⚖️ 7. 投資信託と不動産を同じ物差しで比べる:自己資金IRR

CCR(自己資金に対する年間の手残りの割合)は、株でいえば配当利回りに近い数字で、投資信託の年率とは比べられません。比べるなら、自己資金に対するIRR(=買ってから売るまでを年率の複利に換算した利回り)を使います。

条件 10年で売却 20年で売却
金利2%・諸費用なし・価格とNOIは横ばい12.2%10.8%
金利2%・諸費用350万円・価格とNOIは横ばい8.1%8.3%
金利2%・諸費用350万円・価格年-1%・NOI年-0.5%5.4%6.5%
金利3%・諸費用350万円・価格年-1%・NOI年-0.5%2.8%4.7%
金利3%・諸費用350万円・価格年-2%・NOI年-1%-0.9%2.3%

試算の前提:物件5,000万円、借入4,000万円(30年・元利均等)、NOI初年250万円、売却費用4%、税引前。諸費用350万円(物件価格の7%)は仮に置いた値です。

表の下2行のように、金利3%で価格が年1%以上下がると、自己資金IRRは投資信託に置いた年5%の仮定を下回ります。比べるときは、不動産所得は総合課税、投資信託の売却益は申告分離課税(分配金は申告不要・申告分離・総合課税から選べる。NISAなら非課税)という税の違いも加えます。

❓ よくある質問

Q1. 積立NISAの複利効果は嘘ですか?

A. 「年◯%の複利で増える」という約束はないので、その部分は仮定です。ただ、利益を引き出さなければ増えた分ごと次の値動きを受ける仕組みはあります。最初の10年ほどは残高の増加の大半が入金なので、効果を感じにくいのは計算どおりです。

Q2. 72の法則は嘘ですか?

A. 近似式としては使えます。年8%前後ではほぼ正確で、年1%では2.3年ほど長く出ます。値動きのある資産では、平均リターンではなく年率換算(幾何平均)を当てはめないと、2倍になる年数を短く見積もります。

Q3. 分配金を再投資するコースなら複利になりますか?

A. 分配金は投資信託の財産から払われ、その分基準価額が下がるので、再投資は出した分を戻すことに近い動きです。課税口座では普通分配金に税金がかかり、税を引いた額しか戻らないため、分配しない投資信託より目減りします。

Q4. アインシュタインが「複利は人類最大の発明」と言ったのは本当ですか?

A. 本人が言った証拠は見つかっていません。名言の出どころを調べるQuote Investigatorによると、複利を「最大の発明」と呼んだ最も古い例は1916年の投資会社の広告で、アインシュタインの言葉とされた最も古い例は、本人の死後の1976年の新聞記事(「言ったと伝えられる」という書き方)です。

Q5. 不動産投資に複利は効きますか?

A. 家賃は自動では再投資されないので、そのままでは単利に近い増え方です。複利的に進むのは、借入の元金返済(借入金利で加速する)と、家賃を再投資・繰上返済に回した部分です。物件価格の上下も、借入があると自己資本に大きく効きます。

📝 まとめ

投資信託や積立NISAに「年◯%の複利」の約束はありません。それでも、利益を引き出さずに置けば、増えた分も減った分も掛け算で積み重なります。「複利効果は嘘」と言われるのは、利率がないこと、積立の増加の大半が最初は入金であること、値動きで実際の年率が平均を下回ることの3つが理由です。

固定利率の試算は平均に近い値で、真ん中の結果はそれより低くなります。72の法則は、年率換算した率に当てはめて使います。税金と手数料も掛け算で効くので、NISAの非課税と低い信託報酬は長い期間ほど差になります。

不動産投資では、借入の元金返済が借入金利で複利的に進みます。家賃を繰上返済に回すか、次の物件や投資信託に回すかは、ローン金利の税引後の値と、ほかの運用先の税引後の見込み、手元資金の厚さで比べます。

📖 この記事の根拠(出典・参照日2026年10月1日)

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執筆者 西本豪
執筆者:西本 豪(楽待新聞コラムニスト)

関西の不動産投資家。賃貸経営の体験と、法令・公的機関の資料をもとに、税務・融資・賃貸経営・法人運営の実務ガイドを発信しています。

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