1棟目がうまく回り始めると、次に来るのが「2棟目を買っていいのか」「どこまで買い増すのか」という判断です。規模を広げるほど家賃収入は増えますが、借入も増え、2棟目・3棟目で融資が止まる人もいます。買い増しの判断は、次の物件の利回りだけでなく、金融機関がどこを見て融資を止めるかから逆算すると分かりやすくなります。
この記事では、金融庁が金融機関に行った調査、日本銀行の貸出の統計、各行の商品説明書をもとに、2棟目以降を買う条件と、買い増しを止める判断の物差しを整理します。
- 1棟目の実績が出ている:満室に近く、家賃から返済と経費を払って手元に残っている。金融機関は融資後の空室率を確認している
- 2棟目の頭金を払っても、1棟目の修繕と空室に備えるお金が残る
- 本人全体の借入が重すぎない:物件ごとの収支だけでなく、全物件と給与収入を合わせた返済の余裕と、物件の評価に対する借入の大きさ
- 年齢と融資期間に余裕がある:団信に入るなら借入時70歳前後・完済時80歳前後を上限とする金融機関が多い
- このどれかが崩れたら、買い増しを止めて、残債が減るのを待つか、評価の低い物件を売って整えるかを考える
- 1棟目が回り始め、2棟目を買ってよいかを判断したい方
- 金融機関が2棟目以降の融資審査で何を見ているかを知りたい方
- 規模拡大をどこで止めるかの物差しを持ちたい方
- 年齢と融資期間の上限から、買い増しの計画を逆算したい方
- 2棟目の頭金を払った後に、1棟目の修繕の備えが残るかを確かめたい方
- 金融庁の調査では、銀行の95%、信用金庫・信用組合の91%が、返済能力の検証で物件の収支だけでなく給与収入なども考慮していると回答しています。
- 融資後に空室率の実績を「必ず確認」している金融機関は、銀行44%、信用金庫・信用組合61%でした。
- 買い増しは、物件ごとの収支・本人全体の借入・手元資金・年齢と融資期間の4つの物差しで判断し、どれかが崩れたら止めます。
- 国土交通省のガイドブックでは、新築から30年間の修繕費のイメージが木造10戸(1K)で約1,740万円、RC造20戸で約4,490万円と示されています。
- 団信に入るなら、借入時70歳前後・完済時80歳前後を上限とする金融機関が多く、年齢が上がるほど借りられる期間は短くなります。
- 次の物件の利回りがよければ、2棟目を買ってよいと思っています。
- 金融機関は、物件の収支だけを見て融資を決めると思っています。
- 物件ごとに法人を作れば、借入を分けて増やせると思っています。
- 金融機関が見ている点から逆算して、2棟目の融資を受けられる状態かを確かめられます。
- 4つの物差しで、買い増しを続けるか止めるかを判断できます。
- 団信の年齢の上限と融資期間から、規模拡大の計画を逆算できます。
🏦 金融機関は2棟目の審査で何を見ているか
金融庁は2018年に、銀行・信用金庫・信用組合を対象に投資用不動産向け融資のアンケート調査を行い、2019年3月に結果を公表しました。そこでは、金融機関が一棟ものの融資で見るべき点が示されています(金融庁「投資用不動産向け融資に関するアンケート調査結果」)。
- 返済のもとは物件のキャッシュフロー:物件の収支を主な返済原資とし、建物の耐用年数と整合的な融資期間で、賃料の下落や空室を織り込んだ完済までの収支を見ることが重要とされています。
- 給与収入も見られている:銀行の95%、信用金庫・信用組合の91%が、返済能力の検証で物件の収支だけでなく給与収入なども考慮していると回答しています。
- 1棟目の実績が見られている:融資後に空室率の実績を「必ず確認」している金融機関は、銀行44%、信用金庫・信用組合61%でした。
- 物件ごとに法人を作って借入を隠すのは不適切:物件ごとに資産管理会社を作り、それぞれがほかの会社の存在を隠して別の金融機関から借りることは、金融庁が「不適切な行為」の類型として挙げています。
2026年の融資の状況
- 日本銀行の統計で、国内銀行が「個人による貸家業」に出した設備資金の新規貸出は、2016年に年4兆4,194億円でした。2020年には2兆4,904億円まで減り、2025年は4兆4,332億円と2016年並みに戻っています(四半期の値を合計した筆者の計算)。信用金庫は2016年の7,213億円に対し2025年は5,298億円で、戻っていません。
- 日本銀行の「金融システムレポート」(2026年4月)は、不動産業への貸出態度について、感染症の拡大前より幾分慎重になったものの、依然として緩いと判断しています。
- 地域銀行の居住用賃貸向けの貸出では、個人向けの案件が減る傾向にあり、新築向けと本店のある都道府県内の案件の比率がやや上がっています(日本銀行「金融システムレポート別冊」2024年3月)。地元以外の物件で融資が付きにくくなる点は不動産投資のドミナント戦略と越境融資の壁|信用金庫・地銀・金融庁監視と段階的拡大の実務で扱っています。
📏 買い増しを止める判断の4つの物差し
| 物差し | 見るもの | 止めるサイン |
|---|---|---|
| ① 物件ごとの収支 | 家賃に対する返済の比率、返済余裕率(DSCR) | 空室や金利上昇を入れると、返済を家賃で賄えない物件がある |
| ② 本人全体の借入 | 全物件の返済と給与収入の関係、借入が何年分の手取りで返せるか(債務償還年数)、物件の評価と残債の差 | 物件の評価より借入が大きく、帳簿上は黒字でも実質の債務超過になっている |
| ③ 手元資金 | 頭金・諸費用を払った後に残る預金 | 1棟目の修繕や空室に備えるお金を、2棟目の頭金に回すことになる |
| ④ 年齢と融資期間 | 団信の加入年齢・完済時の年齢の上限、建物の耐用年数 | 新しい借入の期間が短くなり、返済額が家賃に比べて重くなる |
金融機関の見方には、その物件への融資が成り立つかを見る審査と、借り手全体の返済能力や財務の状況を見て借り手を区分する見方(自己査定の債務者区分)があります。物件の収支がよくても、借り手全体の評価が低ければ融資は慎重になります。①②の数字の目安(DSCRや債務償還年数の水準)には、公的な基準がありません。金融機関や業種によって見方が違うので、自分の取引先がどう見るかを確かめます。指標の計算と一般的な目安はDSCR・LTV・債務償還年数と決算書の見方|ICR・EBITDA倍率からIRR・CCRまで銀行格付け攻略【2026年】、金融機関に出す資料は不動産投資の銀行融資|稟議書・事業計画書・必要書類・属性評価・物件評価の実務にまとめています。


③ 手元資金:修繕の備えを残す
国土交通省の「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」(2018年)は、新築から30年間にかかる修繕費のイメージを、木造10戸(1K)で約1,740万円、木造10戸(1LDK〜2DK)で約2,160万円、RC造20戸で約4,490万円と示しています(2018年時点の価格)。1棟ごとにこの規模の支出が将来かかるので、2棟目の頭金で1棟目の修繕の備えを使い切ると、次の大規模修繕や空室の時期に資金が詰まります。
④ 年齢と融資期間:金融機関ごとの条件(公式資料)
| 金融機関・商品 | 年齢の条件 |
|---|---|
| 関西の地方銀行のアパートローンの例(2行) | 団信に入るなら、借入時70歳未満(または70歳以内)・最終返済時81歳未満(または80歳以内)(2024年の商品説明書) |
| 三井住友銀行 直担アパートローン | 団信に入るなら借入時70歳まで・完済時80歳まで(最長35年) |
| オリックス銀行 不動産投資ローン | 借入時60歳未満・最終返済時85歳未満(最長35年、年収などの条件あり) |
完済時の年齢に上限があるので、年齢が上がるほど借りられる期間は短くなり、同じ借入額でも毎月の返済が重くなります。規模拡大の計画は、何歳までにどの規模にするかから逆算します。
🏘 2棟目をどう選ぶか
- 1棟目と違う条件で分散する:同じエリア・同じ築年・同じ構造に集めると、災害、空室、大規模修繕の時期が重なります。
- 管理の体制を先に決める:戸数が増えると、入居者対応・修繕の手配・会計の手間が増えます。管理会社に任せる範囲と費用を、収支に入れてから買います。
- 空室と家賃の前提を公的データで確かめる:総務省の住宅・土地統計調査(2023年)では、空き家率は13.8%で過去最高、賃貸用の空き家は443万6千戸でした。一方で民営借家の家賃(1か月・1畳当たりではなく1住宅当たり)は、木造54,409円(2018年比4.5%増)、非木造68,548円(同7.0%増)です。エリアと物件の種類で差が大きいので、買う地域の数字で確かめます。
❓ よくある質問
Q1. 1棟目から何年たてば2棟目の融資が受けられますか?
A. 年数の決まりを示した公的な資料はありません。金融機関は1棟目の空室率や収支の実績を確認しているので、確定申告で実績を示せるかが目安になります。
Q2. 2棟目は個人で買うべきですか、法人で買うべきですか?
A. 所得の大きさ、相続、融資の受け方で変わります。物件ごとに法人を作ってほかの借入を隠す方法は、金融庁が不適切な行為として挙げています。判断の材料は不動産投資の法人化はいくらから?デメリットと設立・相続・出口・保険・リスクの全体像にまとめています。
Q3. 規模拡大を止めたら、次に何をすればいいですか?
A. 残債を減らして借入の比率を下げる、評価の低い物件を売って全体を整える、修繕の備えを厚くする、の順に考えます。繰り上げ返済の手数料と判断は【投資家視点】アパートローン繰り上げ返済の判断軸|DSCR・債務償還年数・機会損失・期間短縮型【2026年金利上昇対応】、大家が使える共済は不動産投資が節税にならない理由と罠|減価償却の出口・赤字節税・融資への影響・小規模企業共済で扱っています。
📝 まとめ
2棟目以降は、次の物件の利回りだけでなく、1棟目の実績、全体の借入の重さ、手元資金、年齢と融資期間の4つで判断します。金融機関は物件の収支を返済のもとにしつつ、給与収入や融資後の空室率も見ています。どれかが崩れたら、買い増しを止めて、残債を減らすか物件を入れ替えて全体を整える段階です。
📖 この記事の根拠(出典・参照日2026年10月1日)
- 金融庁:「投資用不動産向け融資に関するアンケート調査結果」(2019年3月)
- 日本銀行:時系列統計データ(貸出先別貸出金「個人による貸家業」設備資金新規貸出)/「金融システムレポート」(2026年4月)/「金融システムレポート別冊」(2024年3月)
- 国土交通省:「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」(2018年)
- 総務省:「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計」
- 金融機関の商品説明書:関西の地方銀行2行の商品説明書(2024年版)/三井住友銀行/オリックス銀行
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関西の不動産投資家。賃貸経営の体験と、法令・公的機関の資料をもとに、税務・融資・賃貸経営・法人運営の実務ガイドを発信しています。


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