どう防げば良い?大規模修繕工事の7つの問題点と対策について

老朽化対策
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区分マンションを購入して住んでいたり、賃貸経営を続けていると10年〜15年ごとに大規模修繕工事に直面することになります。

大規模修繕工事に必要となる費用は区分所有者ごとに蓄えられた修繕積立金によって補われます。なので、各区分所有者ごとに少しずつ負担し合う訳ですが、それでもとても大きな金額になります。

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そもそも大規模修繕工事とは

大規模修繕工事

不動産を維持する上で「大規模修繕工事」はとても重要な取り組みの一つです。

大規模修繕工事は大きく以下の4つのステップに分けられます。

  1. 工事実施の決定
  2. 工事内容の決定
  3. 工事会社の選定
  4. 工事の実施(施工・確認・引き渡し)

大規模修繕工事の概要についてはこちらの記事で詳しく説明しています。大規模修繕工事の仕組みをイメージするためにもまずはこちらの記事をご覧頂ければと思います。

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大規模工事の7つの問題点

建築現場

大規模修繕工事には膨大なお金と時間が必要になりますが、それなのにも関わらずさまざまな問題点があります。

まずは大規模修繕工事を失敗しないために、どのような問題点があるのかを把握する必要がありますが、主に以下のような問題点が考えられます。

  1. コンサルタントの介入による費用負担の高騰
  2. 工事会社の多重請負構造による中間マージン
  3. 能力不足、職人不足による工事期間の長期化
  4. 過剰なサービス
  5. 不要または必要以上の無駄な工事
  6. 不適切なタイミングでの工事の実施
  7. 品質の低い工事による想定外の追加費用

どれも大きな問題ですが、これらの問題が交わることで、大規模修繕工事に掛かる費用が割高になってしまったり、工事期間の長期化、品質の低下などを招いてしまっています。

コンサルタントは本当に必要?

コンサルタントは大規模修繕工事の依頼者側である管理組合と工事会社を仲介して工事の設計や監理を行います。また工事会社選定のサポートなどもコンサルタントの重要な仕事です。

コンサルタントには通常、大規模修繕工事の5%程のコンサルタント料を支払うことになりますが、中には悪質なコンサルタントもおり、その場合、管理組合(依頼者側)から見えないところで、以下のような必要が発生している可能性もあるそうです。

談合によるバックマージン(リベート)が発生する?

  • 談合による低価格業者の排除
    • コンサルタントが懇意にしている工事会社が落札できるように募集条件を高めに設定することで工事費用が安い工事会社を排除する
  • 談合による工事会社の見積額増額
    • 談合によりコンサルタントが自社へ誘導(推薦)してくれることが分かっているため通常よりも見積額を割増する
  • 工事会社からのバックマージン(リベート)
    • 談合により工事会社が確定した場合、コンサルタントは見返りとして工事会社からバックマージンを受け取る

その結果、管理組合からしたらコンサルタントに業務を依頼することによっておよそ40%程の費用が必要以上に掛かってしまうことになってしまいます。

大規模修繕工事のコンサルタントが関わることで発生する費用
項目必要となる費用割合(概算)
コンサルタント料+ 5%
工事会社からのバックマージン(リベート)+ 10%
談合による低価格業者の排除+ 15%
談合による工事会社の見積額増額+ 10%
合計+ 40%

国土交通省も注意喚起

勿論、このような極端なケースは少ないかもしれませんが、安易にコンサルタントを信用するのでは無く、依頼する側としても以下のような点も注意しなければいけません。

  • 募集基準のハードルは高過ぎないか?
  • 管理会社推薦の会社は要注意?
  • コンサルタントに価値はあるのか?

少し大げさな問題に感じるかもしれませんが、悪質コンサルタントについてはさまざまなところで話題になっていますし、国土交通省としてもいろいろと対策を行っています。

コンサルタントに業務を依頼するする際は、しっかりと見極めをしないと工事の品質は上がらないのに、工事価格だけが割高になってしまいます。

多重請負構造による中間マージンの弊害

大規模修繕工事には複数の工事会社が携わることがあります。

  • 元請け会社
  • 下請け会社、孫請け会社
  • 職人

修繕工事(物件)の規模にもよりますが、元請けの大手ゼネコン会社が全ての工事を担当するのでは無く、請け負った仕事の一部(または全部)を下請け会社などに再委託する構図担っています。

明確な定義はありませんが、一般的には大手ゼネコンには以下のような会社が含まれます。

  • 大林組
  • 鹿島建設
  • 大成建設
  • 清水建設
  • 竹中工務店

新しくビルやタワーマンションを建築するような本当に大規模な工事の場合は、ある程度役割分担する必要がありますが、そこまで規模が大きくないマンションの修繕工事であれば、複数の工事会社が参入する必要はありません。仲介会社が増えれば増えるほど、その分、仲介手数料が必要になり、実際の工事費用以外のところで無駄なコストが掛かってしまいます。

多重請負構造の問題は他の業界でも話題になっていますが、不動産業界では特に問題視されています。

工事期間が長期化する理由

工事期間が長期化する理由には以下のようなものが挙げられます。

  • 台風や長期間の豪雨などの自然環境の悪化
  • 建物の経年劣化が想定上に激しい
  • 工事管理者のマネージメント能力不足
  • 担当者の技術不足や人手不足

当然、工事が長期化するとその分だけ人件費が大きくなるため、結果的に工事費用にも大きく影響を与えます。

なお、物件の規模ごとの工事期間の目安についてはこのようなイメージになります。

物件の規模ごとの工事期間の目安
戸数工期
30戸未満2ヶ月
30戸〜49戸3ヶ月
50戸〜99戸4ヶ月
100戸以上4ヶ月〜6ヶ月

手厚い無料サービスをする本当の目的は?

例え大手の工事会社が元請け会社となったとしても、実際に工事を担当するのはその下請け会社や孫受け会社になります。つまり元請け会社が違ったとしても工事の内容で差別化を図ることが難しいのが現状です。

そこで下記のような無料サービスなどで差別化を図ります。

  • 網戸収納袋や補助鍵の無料配布
  • バルコニーの荷物の移動サービス
  • 防犯対策の説明会の実施

ですが、このように人手やコストが掛かる以上、実際には「無料」で実施できる訳では無く、見えないところでしっかりと価格に埋め込まれています。また無料サービスを実施することによって、本来やるべき作業の品質の低下を招く可能性もあります。

工事会社側としては差別化を強調するための手段ですが、ただより高いモノは無く、不必要なサービスは極力廃城するべきです。

無料サービスと聞いて素直に喜ぶのでは無く、その背景にはどんな思惑があるのかを常に意識していないと、すぐに騙されてしまいます。

不要または必要以上の無駄な工事は無いか?

大規模修繕の工事費用は大きく次の2種類に分けられます。

  • 将来的に資産価値として残り続ける直接的(恒久的)な工事費用
  • 将来的に資産価値としては残らない間接的(一時的に必要)な工事費用

直接的な工事費用は実際に大規模修繕工事に必要となった工事費用ですが、間接的な工事費用には以下のようなものが含まれます。

  • 現場事務所や職人の休憩所(共通仮設)
  • 高所作業で必要となる足場

快適に工事を進めてもらうためにはある程度落ち着ける休憩所や安全性がしっかりと確保された足場が必要にはなりますが、これら間接的な工事費用は大規模修繕工事終了後は不要になり撤去するため資産価値としては残りません。そのため依頼者側としては可能な限りコストを抑えたいところです。

建築業界では「仮設工事は会社の顔(?)」と言われるそうですが、工事会社側のブランディングのための費用負担を管理組合側が捻出するのはおかしな話です。

工事費用の見積もりはなるべく細かい項目まで算出してもらい、必要以上に高い部分が無いかを見極める必要があります。

不適切なタイミングでの工事

大規模修繕工事を実施するタイミングは長期修繕計画を基準として行われます。ただ経年劣化の進行状況は必ずしも当初予定していた通りに劣化していくとは限らないため、本来であれば劣化調査を行って、大規模修繕工事を実施するべきか?もしくはまだ実施しなくても良いのか?を判断するべきです。

また仮に大規模修繕工事の実施が決まったとしても、全ての設備を修繕するのでは無く必要な箇所を見極めて修繕することで工事費用を抑え、工事期間も短縮できます。劣化の進行具合がそれ程進んでいない箇所については、次回の大規模修繕工事のタイミングまで見送ることができるかどうかをしっかり判断することが適切な工事内容に繋がります。

大規模修繕工事のタイミングを数年先延ばしできるだけでも、30年〜40年のように長期的に考えると、とても大きなコスト削減に繋がります。

品質の低い工事をするとすぐに補修工事が必要になる

工事会社の品質レベルによって、経年劣化の進行具合に違いがでます。

大規模工事終了後、保証期間内であれば追加費用無しで対応できるかもしれませんが、建物の寿命という視点で考えた場合、大きな損失になってしまいますし、もし問題が発覚するのが保証期間後であれば、補修工事も自己負担になってしまいます。

大規模修繕工事の後に問題が発生する箇所として最も多いのは「雨漏り」と言われています。全ての工事部分を素人がチェックするのは中々難しいですが、物件ごとにポイントとなりそうな部分だけでも重点的にチェックすることで工事終了後のトラブルを未然に防げるはずです。

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管理組合側にもの問題点はある

住宅建築

ここまでは管理会社がコンサルタントなどサービスを提供する側の問題点を指摘してきましたが、サービスを受ける側(管理組合側)にもいくつかの問題があります。

  • コストの基準が分からないため工事価格の妥当性を判断できない
  • 管理組合側の担当者も本業などがあり多忙であるため大規模修繕工事だけに専念できない
  • 管理組合の理事は数年おきの輪番制である
  • コンサルタントに頼ることによって責任転換の受け皿が存在している

勿論、建築のプロでは無いため高い精度で問題点を見極めるのは難しいかもしれませんが、工事会社やコンサルタントの問題点を把握しておくことで、少しでも良い方向に進めることはできるはずです。

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大規模修繕工事を成功させるために

 

大規模修繕工事で失敗しないためには工事会社やコンサルタントのようなサービスを提供する側だけでは無く、管理組合側としても積極的に取り組み必要があります。

これらの問題点を意識した上で、どのように対応すれば損失を生み出さない適切な大規模修繕工事を実施できるかをしっかりと考える必要があります。

大規模修繕工事の問題点や失敗しないための対策については以下の書籍にも詳しく開設されています。近い将来、大規模修繕工事を実施する必要がある家主や入居者にとってはオススメの一冊だと思います。

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プロフィール

楽待新聞&不動産投資Libraryのコラムニストをしています。
普段、不動産投資家として考えていることや体験談などを掲載しています。
これから不動産投資を始めたい方や、賃貸経営初心者の方に対して、分かりやすい内容を心掛けています。

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