火災保険の仕組みは難しい?加入者ごとの補償範囲を徹底解説!

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火災保険の補償内容は意外と複雑で、内容を正確に把握できていない人も多いはずです。

ですが「補償内容」とは言い換えれば「権利」でもあります。

何か問題が怒った時に「権利を主張できるか?」「権利があることに気づかず主張できないか?」によって大きな差が出てきます。

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融資を受ける場合は火災保険への加入が必要

先日、火災保険の契約内容が加入先の東京海上日動より送られてきました。せっかくの機会なので、改めて内容を確認してみました。

火災保険への加入が必要な理由は?

一般的に投資物件を購入する際、金融機関によるローンを利用する場合は、火災保険の加入が前提となります。

金融機関の立場としては、建物が全焼などの被害に遭った場合でも融資資金が改修不要にならないように基本的には火災保険への加入は必須となります。

そのため、金融機関から融資を受けて住宅ローンを借りる場合は、火災保険に対して「質権設定」がされるのが一般的です。

火災保険の質権設定とは?

火災保険契約には質権設定がされています。

火災などにより建物に対して全焼などの被害を受けた場合、火災保険に加入している場合は支払限度額に応じて保険料が支払われます。

ただし、金融機関からの住宅ローンの債務が残っている場合、まずは融資元の金融機関が保険金を受取ることになります。

当然と言えば当然ですね。

最近の金融機関は事務手続きの軽減などを理由に「火災保険への加入のみ」を確認し、質権設定をおこなわないケースもありますが、質権設定を結ぶことによって金融機関側は住宅ローンをより確実に回収できる仕組みになっています。

質権設定をすることで建物に火災などの被害があった場合も金融機関は住宅ローンを回収することができます。

保証内容は自分で決めることもできる?

僕も投資用物件の購入に伴い金融機関から融資を受けています。

なので火災保険にも当然加入しています。

購入価格1,200万円の物件に対して、僕が加入している火災保険の内容は以下の通りとなります。

  • 保証期間…ローンの借入期間と同じ20年
  • 支払保険料…約6万円(一括払いの長期火災保険)
  • 支払限度額…420万円

融資状況に応じて保険に加入すると言う意味では団体信用生命保険も物件に対する火災保険なども考え方は同じです。

ただし融資を受けた金融機関を経由して火災保険に入る必要はありませんし、必ずしも融資期間と同じ期間で保険に加入する必要もありません。また、補償額の420万円は物件の評価額などをもとに保険会社が設定した金額で、融資元の金融機関が決めたものではありませんでした。

もし支払保険料を減らしたい場合は補償額の削減や補償期間の短縮なども交渉次第では可能かもしれません。なお、保険料の支払い方法については以下の2パターンがあります。

  • 一括払いの長期火災保険
  • 毎月更新の年間契約

長期契約の方が保険料を安く抑えられるので、特にこだわりが無い場合は長期契約で良いと思います。

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保険金額の評価方法について

物価上昇

 

保険金額の評価方法には再調達価額(新価)と時価額があります。

再調達価格の評価方法

再調達価格とは建物に対して被害があった場合、経過した期間に関わらず同等の水準の建物を再築(立て直し)、または再購入するために必要となる金額のことです。

時価額の評価方法

一方、時価額とは再調達価格から経過年数をものに使用による消耗分(経年劣化)を差し引いた金額のことです。

そのため再調達価格と時価額を比べると時価額の評価金額の方が低くなります。

また、今後もしインフレによる価格の上昇などがあれば建て直しに必要となる金額は一層高額になるため、立て直しをする時、十分な資金を確保できない場合があるため、基本的には評価方法は再調達価格として火災保険に加入することが推奨されています。

なおインフレによって価格が上昇してしまう仕組みについてはこちらの記事で詳しく説明しています。

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入居者が加入する火災保険は?

ここまでは物件の所有者が加入する火災保険を中心にご説明してきましたが、次に入居者が加入する火災保険の内容をまとめてみます。

保険会社によって契約内容な多少異なりますが、主に以下の3点が挙げられます。

  • 家財に対する火災保険
  • 借家人賠償責任補償
  • 個人賠償責任補償

賃貸経営の場合、「入居者が火災保険に加入するのならば物件所有者は火災保険に加入する必要が無いのでは?」と思う人もいるかもしれませんが、実は両者が加入する火災保険にはそれぞれ違いがあります。基本的な考え方は以下のようになります。

  • 所有者が加入する火災保険…建物に対する補償
  • 入居者が加入する火災保険…家財に対する補償

ここではそれぞれの特徴について簡単に説明します。

家財に対する火災保険

家財に対する保険の対象範囲は入居者の自己所有物です。

注意点といては以下のようなものは「明記物件」として契約内容に個別に申告し保険証券に明記なければ、補償範囲に含まれません。

  • 貴金属、宝石、美術品など1個(または1組)の価額が30万円を超えるもの
  • 稿本(原稿)、設計書、図案、証書、帳簿等の書類など

仮にこれらの明記物件を申告せずに火災などの被害にあってしまった場合、十分な補償を受けられないため、多少面倒くさくても必ず申告する必要があります。

借家人賠償責任補償

借家人賠償責任補償は入居者が家主に対しる被害範囲を補償するもので、主に以下の考え方が前提となります。

  • 失火責任法
  • 原状回復義務

通常、自分の過失によって他人のモノを壊してしまったり場合は、その損害を賠償する必要があります。(民法第709条)

ですが、火災に関しては「失火責任法」という特別な法律があり「民法第709条」よりも「失火責任法」の方が優先されます。

失火責任法とは

例えば隣の部屋に住んでいた入居者の過失により自分が借りていた部屋に被害が発生したとします。その場合、隣の部屋の入居者に以下のような「重大な過失」があったかどうかによって、責任範囲が変わります。

  • 天ぷら油の使用中に長時間キッチンを離れたことによる火災
  • たばこの不始末や寝たばこによる火災

「重大な過失」があった場合は、出火原因となった入居者の責任になりますが、重大な過失が無ければ出火原因となった入居者に対して賠償責任は無く損害賠償請求を行うこともできないのです。

過失により火災を起こしてしまったとは言え、隣接する全ての被害範囲に対して補償を求める事は余りにも責任が重過ぎるとの考えられるからです。

原状回復義務とは

また、入居者は退去時、部屋を元の状態に戻して退去するという原状回復義務があります。

つまり自分が火災を起こしてしまった場合は勿論ですが、隣人や周りからの被害に巻き込まれてしまった場合も原状回復義務は守らなければいけない訳です。

「自分には責任が無い」では通用しないんですね。

なお、原状回復に対する考え方についてはこちらの記事でもう少し詳しく説明しています。

個人賠償責任補償

個人賠償責任補償は特約(追加オプション)として火災保険に含められることも多く、以下のようなに日常生活の中で想定されるリスクを補償するために備えられています。

  • 浸水などで隣人や下の階に対して迷惑を掛けてしまった場合
  • ベランダからの物を落下させてしまい通行人に怪我をさせた場合
  • 「重大な過失」により火災を発生させ近隣の住宅に被害を与えた場合

借家人賠償責任補償と個人賠償責任補償の違い

仮に自身(入居者)の過失により火災を発生させたり、浸水などにより近隣の住宅に被害を与えてしまった場合、一般的には以下のような考え方になります。

  • 自身の重大な過失は無いが火災を発生させて場合
    • 「被害を受けた近隣住宅側の借家人賠償責任補償」により近隣住宅の被害を補償する
    • 「自身の借家人賠償責任補償」により建物(家主)の被害を補償する
  • 自身の重大な過失により火災を発生させて場合
    • 「自身の個人賠償責任補償」により近隣住宅の被害を補償する
    • 「自身の借家人賠償責任補償」により建物(家主)の被害を補償する
  • 浸水などで隣人や下の階に対して水漏れ被害を発生させた場合
    • 「自身の個人賠償責任補償」により近隣住宅の被害を補償する
    • 「自身の借家人賠償責任補償」により建物(家主)の被害を補償する

少しややこしいですが、入居者側としては借家人賠償責任補償と個人賠償責任補償の両方に加入していれば補償範囲として全て網羅できますし、家主側(管理会社側)としては、必ず入居者にも火災保険に加入してもらうように契約を結ぶ必要があります。

また保険会社によっても補償範囲や支払限度額の上限は異なるため、最低限の契約内容は把握しておかなくてはいけません。

共有部分の火災保険は?

一棟マンションはアパートのような所有者(または管理会社)が建物全体を管理している場合は火災保険の適応範囲も建物全体になりますが、ワンルームマンションのような区分所有の場合は火災保険の適応範囲は専有部分に限定され、共有部分についてはマンションの管理組合が火災保険を掛けることが一般的です。

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火災保険と地震保険の違い

火災保険の補償範囲には主に以下のようなものが含まれます。

  • 火災・落雷
  • 風災(竜巻)・水災(水没)
  • 盗難

盗難が補償範囲に含まれていることは意外と知らない人も多いかもしれませんね。

火災保険は地震には対応していない

ただし火災保険の大きな注意点の一つが「地震については補償されない」ことです。

さらに、例え「火災」が発生したとしても「地震が原因で発生した火災」の場合は火災保険ではカバーできないため、別途地震保険に加入する必要があります。

火災保険の支払限度額が地震保険にも影響を与える

また火災保険の支払限度額は追加で特約として加入する地震保険の金額にも影響を与えます。

それは地震保険の支払限度額は最大で火災保険の50%までになるからです。

保険は何かが起こった時のリスクを軽減するものなので、過剰に契約内容を充実させれば良いと言う訳では無いかもしれませんが、追加で地震保険に加入する場合は、支払額の上限が最大で火災保険の50%となるので注意も必要です。

なので地震のリスクも考慮するのであればその分、火災保険の保険金を増やしておくなどの工夫も必要かもしれません。

また地震保険には別途、以下のような上限額も定められています。

  • 建物の場合は5,000万円まで
  • 家財の場合は1,000万円まで

耐震基準は大規模な地震があるごとに少しずつ強化されていますが、それでも万全と言えるとは限りません。どんなに新しい建物でも想定を大きく超えるような地震が発生した場合は倒壊してしまうかもしれません。

地震保険については、今後も継続的な値上げが想定されており、経営に与える影響も徐々に大きくなるはずなので、しっかりと内容と理解し必要に応じて見直しも検討したいと思います。

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火災保険の内容を理解する大切さ

2015年には10年以上の長期火災保険の販売が中止になります。地震保険の保険料も度々値上げが検討されています。

新しい保険への加入や契約変更するタイミングはいろいろ考えることが多いですが、保険料を見直すための一つのポイントになります。

火災保険はさまざまな補償内容が含まれていますが、自分で内容を精査しないと必要性の低い無駄な補償だったり逆に必要な補償が含まれていなかったりします。

不動産物件を購入する場合、ついつい販売元に言われるがままの火災保険に加入してしまうかもしれませんが、最低限の確認は必要です。

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