インスペクション説明の義務化で中古物件市場はどう変わる?

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ここ数年間、不動産投資家として新しい物件を購入できていませんでしたが、今年、2019年は新しい中古物件を購入したいと考えています。

今回は中古物件の購入を検討する上で重要になる「インスペクション説明の義務化」についてまとめてみました。

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物件の種類はさまざま

投資用物件にはさまざまな種類があります。有名なものとしては以下のようなものがあります。

  • 区分マンション
  • 一棟マンション
  • 一棟アパート
  • 戸建て物件

区分マンションは投資額も比較的少額で始められるため不動産投資を始めたい人が最初に購入する物件としては一番多いです。そしても僕自身も最初に購入した物件も含めて、今保有している物件は全て区分マンションです。

勿論、始めからほぼフルローンで1棟マンションを購入する人もいます。ですが、僕の性格上、なるべく借入金は少額にしてコツコツと続けていきたいこともありこれまでは区分マンションのみを想定していました。

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「説明義務化」で中古物件市場はどう変わる?

2016年の「宅地建物取引業法の一部改正」により、2018年4月1日から中古物件を購入する際にインスペクションの説明が義務化されました。

僕の場合も、次に購入するのはどの程度の規模のモノになるかは分かりませんが、中古物件を購入する以上、今回の法改正は少なからず影響することになります。

インスペクションの説明の流れ

中古物件の取引の流れについては国土交通省の「改正宅地建物取引業法の施行に向けて」の資料が参考になります。

宅建業者は主に以下のタイミングでインスペクションについての説明が必要になります。

  1. 媒介契約締結時
  2. 重要事項説明時
  3. 売買契約締結時

それぞれのタイミングについてもう少し詳しく補足します。

媒介契約締結時

不動産仲介会社は媒介契約の締結時に売り主に対して「インスペクションを実施するか?実施しないか?」を判断するよう告知します。

売り主側がインスペクションの実施を希望した場合はインスペクションが可能なホームインスペクター(既存住宅状況調査技術者)をあっせんします。

重要事項説明時

不動産仲介会社は重要事項の説明時に買い手に対して「該当物件がインスペクション実施済みか?実施されていないか?」を伝えます。またインスペクションが実施されている場合は、インスペクションの結果も含めて説明する必要があります。

売買契約締結時

インスペクションが実施された場合、不動産仲介会社は調査結果報告書を売り手側と買い手側の双方に対して書面で公布する。

不動産仲介会社の業務範囲にも大きな影響

不動産仲介会社側からすれば今までの業務内容に加えてインスペクションの説明や告知などの業務が追加されます。

「あっせん」とは具体的には既存住宅状況調査の業者リストなどを配布するようなものでは無く「インスペクションの対象範囲」や「見積もり対応」などインスペクションを実施するための手配全般を担うことになります。

そのため不動産仲介会社の業務範囲にも今まで以上に膨大になってしまいます。

不動産仲介会社は「媒介契約締結時」「重要事項説明時」「売買契約締結時」それぞれのタイミングでインスペクションに関する説明が必要になります。

インスペクションの意義は本当にある?

インスペクションを担当するのは国家資格である「既存住宅状況調査技術者」を所有する建築士が実施します。

妥当性の高い結果は期待できるか?

実際には既存住宅状況調査技術者のあっせんは不動産仲介会社が行うため、当然、以下のような疑問が出てくるかと思います。

  • そもそもインスペクション結果は信用できるのか?
  • 不動産仲介会社や売り手にとって都合の良い報告内容にならないのか?

ただし、インスペクションを実施したにも関わらず「重大な瑕疵」が後から発覚した場合、インスペクション結果の責任も「調査を実施した側」が追うことになります。

残念なことに不動産業界ではどうしても関係者同士の談合や癒着が行われるため(?)、100%は信用することは難しいかもしれませんが、インスペクション結果の報告内容については「一定の信用レベルはある」と考えられています。

インスペクション後に「重大な瑕疵」が発覚した場合は既存住宅状況調査技術者が責任を負う仕組みになっています。

技術者のレベルや調査の精度に問題もある?

国土交通省が公開している「建物状況調査の結果の概要(重要事項説明用)」の項目には以下の項目が含まれます。

  • 構造耐力上主要な部分に係る調査部位
    • 基礎、床、柱及び梁
    • 外壁、内壁、天井
    • バルコニー及び共用廊下
    • その他(配筋調査、コンクリート圧縮強度)
  • 雨水の浸入を防止する部分に係る調査部位
    • 外壁、内壁、天井、屋根

また劣化状況については以下の3パターンの回答が報告書にまとめられます。

  • 有(劣化箇所が存在する)
  • 無(劣化箇所が存在しない)
  • 調査できなかった

「有」または「無」については報告内容をそのまま受け入れれば良いですが、国土交通省が定めるガイドラインとしても基本的には「調査範囲は目視が可能な範囲に限定」されるため、物理的に調査できない場合は「調査できなかった」になってしまいます。

また、既存住宅状況調査技術者と一言でいっても建築士の資格があれば1日程の研修を受講すれば資格を取得できるため、必ず技術レベルにはばらつきが出てきます。

せっかくホームインスペクターに依頼したにも関わらず「本当に満足できる十分な調査報告がされるのか?」については少し疑問が残ってしまいます。

既存住宅瑕疵保険への加入はより詳細な調査が必要

インスペクションだけでは調査できないような重大な瑕疵が発覚した場合、その修繕費用が膨大になってしまう可能性があります。

そのため、そのようなリスクを軽減するために「既存住宅瑕疵保険」に加入するのも有効な方法です。

ただ、既存住宅瑕疵保険に加入するための審査基準としては通常のインスペクションだけでは不十分な場合もあります。既存住宅瑕疵保険に加入することを想定している場合は、その審査基準を証明できるレベルでの調査が必要になります。

既存住宅瑕疵保険への加入を想定している場合は審査基準に注意が必要です。
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「売り手」と「買い手」の双方の考え方は?

インスペクションの説明義務化によって今まで「インスペクション」という言葉を知らなかった人達もインスペクションの必要性を考えるきっかけになります。

現時点では「インスペクションの説明が義務化」されているだけであり「インスペクションの実施自体が義務化」されている訳ではありません。

ただし今後は「インスペクション実施済みの中古物件」と「インスペクションが実施されていない中古物件」が同じ市場に出回ることが明確に分かることになります。

築浅の区分マンションなどなら「わざわざインスペクションする必要は無い」と考える家主もいるかもしれませんが、築古の一棟マンションやアパートの場合は高い利回りを狙える反面、物件自体のリスクは大きくなるため「インスペクションが実施されていない中古物件」を選択する人は少なくなると予想されます。

恐らく僕も、余程の理由が無い限り「インスペクションが実施されていない中古物件」をわざわざ購入することは考えにくいと思います。

インスペクションの実施費用は物件規模にもよりますが5万円〜10万円前後で、基本的には売り手側の負担になります。ただ、少しでも良い条件(高い価格、早い期間)で売却をしたいのであれば「インスペクションは必ず実施するべき」と考えられます。

インスペクションの有効期限は1年ですが、インスペクション後に地震などで被害を受けた場合は、インスペクション結果の妥当性が揺らいでしまいます。当然、オーナーチェンジの物件の場合は入居者が住んでいるタイミングもあるため、インスペクションしたいタイミングでスムーズに実施できるとは限りませんが、可能な限り売却を検討する直前が良いと思います。

現時点ではさまざまな課題が残っていますが、今後、中古物件市場の透明化を図り流通を活性化するための最初の一歩としては大きな意味があると思います。

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