ニュースや経済番組を見ていると「インフレ率」「物価上昇率」「実質GDP」など、景気の状況を判断するためのキーワードが沢山出てきます。
「何のこっちゃ?」…ですよね。
また、当たり前のようにこのようなことが言われていますが、意外と雰囲気でしか理解できていない人が多いと思います。
- インフレになると物の値段が上がる?
- GDPが上がると景気が上向きになる?
- 消費税を増税しても景気対策としては逆効果である?
やっぱり「何のこっちゃ?」…ですよね。
現在の日本では「社会保障費の問題」や「日本の借金問題」など、暗い話題も多いです。
ですが、このような断片的な情報は意外と見えにくいところで繋がり合っていることもあります。
残念ながら、この記事では「聞いたことがあるような経済用語」や「聞いたことが無いような経済用語」が少し多めに出てきます。ですが、これらの複雑化した経済用語をできる限り簡単に整理してみました。
一通り理解できれば、経済用語の基本的な仕組みや考え方がざっくり理解できるはずです。
初心者の方でも分かるように、丁寧にまとめてみましたので、少し長文になりますが、是非、最後まで読んで頂ければと思います。
- インフレ率の考え方について知りたい人
- 景気動向とGDPについて知りたい人
- 日本の借金や社会保障費などの仕組みを知りたい人
経済用語を理解する必要はあるの?
そもそも社会に出てしっかりと自分の仕事をしていれば、なんとなく生きていける今の時代に、専門的な経済用語を理解する必要性はあるのでしょうか?
日本で普通に生活していく上で「インフレ率とは何か?」「実質GDPとは何か?」が理解できておらず、何か困ることがあるかと言えば…正直、ほとんど無いはずです。
だって、周りの友人や上司達も雰囲気でしか分かっていないですからね。
ただ、今がどのような時代で、この先、どのような経済になっていくのか?を予想することができれば、次の正しい行動が見えてきます。しっかりとした判断基準が持てるかもしれません。
そして、その判断のためには最低限の知識が必要になります。
自分の大切なお金を守るためにも、また効率的に増やすためにも、せめてニュースなどで報道されている内容は理解できるようになった方が、絶対に有利なのです。
インフレ率と消費者物価指数の関係
日本はこれ先、インフレになることを目指しています。
インフレ率とは物価の上昇率のことです。
「何のこっちゃ?」…ですよね。
余りにも抽象的な言い方になってしまったので、もう少し具体的に解説してみます。インフレ率のイメージがつかめるはずですので、頑張って読み進めて下さいね。
インフレ率は主に以下の指数をもとに評価されます。
- 消費者物価指数
- GDPデフレーター
実際には「消費者物価指数」をもとにインフレ率が計算されるのが一般的です。なのでこの記事でも消費者物価指数をもとにインフレ率の仕組みを解説します。
消費者物価指数とは
消費者物価指数は「経済の温度計」とも呼ばれています。消費者物価指数の主な特徴は以下の通りです。
- 商品やサービスの購入価格を基準とした指数
- 総務省が毎月発表する小売物価統計調査を元に作成される指標
- 調査範囲…167市町村を選定
- 小売価格…代表的な約30,000の店舗
- 家賃…約25,000世帯
- 宿泊料…約530事業者
- 指数品目は以下の基準で選定された約600品目
- 家計支出上重要なもの
- 価格変動の面で代表性なもの
- 継続して調査が可能なもの
- 基準年と比べて家計消費の動向を評価
- 基準年平均を100として上昇しているか?下落しているか?を測定
- 消費構造を一定のものに固定して測定(購買数量は変動させない)
- 基準年は西暦末尾が0または5の年(※5年ごとに改定される)
- 算出基準には消費税分の金額も含められる
- 主に利用される指数として以下の3種類がある
- 総合指数(CPI)
- 生鮮食料品を除く総合(コアCPI)
- 野菜や果物などは天候や農作/不作などの要因により価格変動が大きいため除外
- 食生鮮食料品およびエネルギーを除く総合(コアコアCPI)
- 為替、原油価格などの影響により変動が大きいため除外
商品やサービスの値段だけでは無く、家賃の金額なども考慮されるんですね。なお、具体的な指数品目としては以下の通りとなります。
10大費目 | 主な項目 |
---|---|
食料 | 穀類、肉類、外食 |
住居 | 家賃、設備修繕維持費 |
光熱、水道 | 電気代、ガス、水道代 |
家具、家事用品 | 白物家電、食器類 |
被服および履物 | 和服、洋服、履物 |
保健医療 | 医薬品、診療代 |
交通、通信 | 自動車購入料、ガソリン代、携帯電話通信料 |
教育 | 授業料、補習教育 |
教養娯楽 | 教養娯楽用耐久財(テレビやパソコンなど)、宿泊料、受信料 |
諸雑費 | 理美容サービス、用品、かばん類 |
約600品目あるだけあって、とても細かくカテゴリ分けされています。
コアCPIとコアコアCPI
一般的にニュース等で報道される物価情報は総合指数(CPI)で、インフレ率およびデフレ率を評価する基準としては生鮮食料品を除く総合(コアCPI)が採用されています。
「○月の全国消費者物価指数は原油安などの影響で○%下落しているが、エネルギー関係を除けば物価は上昇傾向にある」などと報道されることがありますが、この場合「生鮮食料品を除く総合(コアCPI)は下落しているけど、食生鮮食料品およびエネルギーを除く総合(コアコアCPI)は上昇している」と解釈することができれば理解の幅が広がります。
物価指数の計算方法
物価指数を算出するには、商品やサービスの「数量」と「価格」をもとに求めることができます。
先程の繰り返しになりますが、数量については「消費構造を一定のものに固定」することになります。物価指数を算出方法は以下の通りです。
- (Σ(評価年の購入価格✕基準年の購入数量))÷(Σ(基準年の購入価格✕基準としの購入数量))✕100
この「購入価格」と「購入数量」は上記の約600品目について、基準年に決めた購入数量が適応されます。この基準年に固定した商品やサービスの数量をバスケットと呼びます。
ちなみに[Σ]は「全ての合計」という意味です。「全ての品目」って意味ですね。
価格と物価の違い
「物価が上がった」と聞くと「全体的な商品やサービスの価格も上がる」と考えてしまいそうですが、物価の上昇と価格の上昇に因果関係はありません。
「物価が上がる」とは「消費量を固定した上で同じ商品やサービスの値段が上がる」ことですが、必ずしも全ての商品やサービスが平等に値上げされる訳ではありませんよね?
例えば、食料や家具/家電の価格が上がることにより「インフレ率が上昇した」という事実があったとしても、その裏では居住費は下がり続けているかもしれません。にも関わらず「インフレ率が上昇した」という分かりやすい数値だけをもとに「これからの不動産の価格は上がるはずだ」と考えるのは、どう考えても間違っています。
「インフレ率」はあらゆる商品やサービスを総合的に集計して算出された数値です。
なので「日本全体の物価として○○である」と言う根拠にはなるかもしれませんが「インフレ傾向だから○○の価格も上がるはずだ」と考えるのは少し無理がありそうです。
インフレ率と生活の影響は?
基本的には、日本を、そして日本人が裕福になるためにはインフレに向かう必要があります。インフレ率が生活へ与える影響としては以下のようなポイントがあります。
- インフレ傾向になると物価(モノの値段)が上がるから生活が苦しくなる
- インフレ傾向になると企業の設けが増えるため(単純に考えれば)給与が上がるはず
- 給与が上がれば物価(モノの値段)が上がっても生活は苦しくならない
- つまり収入を増やさないとジリジリ貧困(ジリ困)になる
- 既に収入が確定されている年金受給者などはきつくなる
- インフレ傾向になるとお金の価値が相対的に下がる
- 貯金しているだけだとジリジリ貧困(ジリ困)
- 逆に借金のリスクが軽減する
- 低金利で積極的に借金をすることで高いレバレッジを目指すべき?
実は、インフレ傾向になると貯金をするよりも借金をして事業や投資にお金を投入することの方が断然有利になります。以下の記事で具体的な仕組みについて解説しているので、あわせて読んでいた頂ければと思います。
景気が良いってどういう状態?
インフレ率と同じように景気の良し悪しを評価する指数としてGDPがあります。GrossDomesticProductの略で、国内総生産とも呼ばれます。
GDPとは国内で一年間に生み出された商品やサービスの付加価値のことです。
「何のこっちゃ?」…ですよね。
もう少し丁寧にご説明したいと思います。
名目GDP成長率と実質GDP成長率
日本のGDPは約500兆円程を推移しています。
日本のGDPはアメリカに次いで世界2位でしたが、2010年に中国に抜かれてしまいました。2019年の時点で日本のGDPは、アメリカ、中国に続いて世界3位です。ちなみに、国民1人辺りのGDPは世界第25位前後を推移しています。
バブル崩壊以降はずっとほぼ横ばいとなっており「失われた30年」とも言われています。
そして、GDPは主に以下の2種類に分けられます。
- 名目GDP
- インフレ率(物価変動)を考慮したGDP
- 実質GDP
- インフレ率(物価変動)を考慮しないGDP
先程、上記でご説明したインフレ率ってキーワードが出てきましたね。再確認になりますが、インフレ率とは物価の上昇率の考え方でしたね。
ちなみに、経済の成長を評価する際には主に実質GDPをもとに判断されます。
GDPの算出方法
GDPの算出方法についてもう少し具体的に解説します。
もう一度、GDPとは何なのかを確認してみます。
GDPとは国内で一年間に生み出された商品やサービスの付加価値のことです。
「付加価値」って言葉がいまいち分かりにくいです。
付加価値の定義は業者によって変わります。具体的には以下のようなイメージです。ちなみに付加価値には人件費も含まれます。利益から社員の給与を支払ったかたと言って、その分の「付加価値」が差し引かれることはありません。
- 製造業…製造することが付加価値
- 加工業…加工することが付加価値
- 運送業…物流することが付加価値
- 販売業…販売することが付加価値
例えば自動車ディーラーなどは販売業です。仮にTOYOTAのワゴンRを100万円で販売したとしても、その100万円分、全てが自動車ディーラーの付加価値(手柄)では無いはずです。
TOYOTAのワゴンRの販売額が100万円だとしてもそこには以下のような付加価値がある訳です。
- 鉄やゴムなどを製造する付加価値
- ボディやタイヤなどを加工する付加価値
- 製造元、加工元から運送するための付加価値
- 自動車ディーラーが消費者に販売するための付加価値
他にも家電製品や洋服などであればインターネットで購入する人もいるかもしれません。その場合は「通信費用」や「システム開発、運用(サービス料)」なども関わってくるはずです。
ポイントは「2重計上」はされないことです。
仮に自動車ディーラーがTOYOTAのワゴンRを100万円で販売する場合、当然仕入額は100万円以下になります。例えば80万円とかでしょうか。この場合、自動車ディーラーの付加価値は100万円から80万円を差し引いた20万円になります。
販売業者にしても加工業者にしても製造業者にしても、全ての業者が全ての売上額をGDPとして計上してしまうと、2重にも3重にもなってしまいます。なのでそうならないように各業者ごとの「成果」をGDPとして計上する訳です。これが「付加価値」です。
GDPや付加価値についてはこちらの記事がとても参考になりそうです。
日本の借金は本当にやばいの?
日本は借金大国と呼ばれています。
2019年の時点で日本の借金は1,100兆円程です。
- 国債の発行残高…900兆円
- 地方債の発行残高…200兆円
余りにも金額が膨大過ぎて、もはや多いのか少ないのかすら良く分からない金額ですね。
ちなみに、先程もご説明した通り、日本のGDPは500兆円程なので、単純計算でもGDPの2倍程の金額です。
日本の借金問題のポイント
それでは本当に日本はやばいのでしょうか。
日本の借金問題については「とても深刻だ!」と言う意見と「それ程問題では無い」と言う意見に分かれています。日本の借金問題のポイントとしては、主に以下のようなことがあげられます。
- 日本の借金は日本国民から借りている借金である
- 貸している側の日本国民が不安になる心配は無い
- この先「インフレになるか?」「デフレになるか?」で負担は変わる
- インフレになると相対的にお金の価値が下がるため理論上は負担が減る
- 銀行券(お札)の発行権限を行使すれば借金も返せてインフレにも誘導できる
- この先「低金利になるか?」「高金利になるか?」で負担は変わる
- 高金利にならないように日本銀行が調整する?
- 借金を減らすには「歳入を増やすか?」「歳出をへらすか?」しかない
- プライマリーバランスを黒字化(歳入>歳出)できれば解決できる
- 消費税が増えれば歳入は増えるはず(増税賛成側の意見)
- 消費が冷え込めば逆に歳入は減る(増税反対側の意見)
また日本の借金問題を解決する1つの方法として「消費税を増税すること」もあげられています。消費税の増税についてもさまざまな意見があるため一概に「どちらが正しい」とは言えません。増税をしたら、その分消費が冷え込むため、結果的に不景気になってしまいます。
所得税や住民税の他、社会保険料や厚生年金などの大きな負担を強いられている若者世代の目線に立てば、(既に逃げ切っている)退職後の老後世代から税金を多く徴収する数少ない手段の一つとも言えますが、全国民から(消費額に応じて)平等に徴収する訳なので、収入が低ければ低いほど(相対的な負担割合が大きくなるため)生活が苦しくなります。
他にも「消費税を増税した分、法人税(会社が払う税金)が減税されていて矛盾している!」と言う意見もあります。
プライマリーバランスは改善できる?
ところで、日本の借金がどんどん増えていっているのは何故なんでしょうか?
それはプライマリーバランス(基礎的財政収支)のマイナス(赤字)が継続的に続いてしまっていっているからです。
プライマリーバランスとは国や地方自治体の財政収支のことです。もう少しシンプルに説明すると収入と支出のバランスのことです。例えば、平成30年の収入と支出には以下のようなものが含まれます。
- 収入(一般会計歳入総額)…97兆7,128億円
- 租税及び印紙収入…59兆790億円(60.5%)
- 所得税…19兆200億円(19.5%)
- 法人税…12兆1,670億円(12.5%)
- 消費税…17兆5,580億円(18.0%)
- その他…10兆3,340億円(10.6%)
- 公債金…33兆6,922億円(34.5%)
- 建設公債…6兆0,940(6.2%)
- 特例公債…27兆5,982億円(28.2%)
- その他収入…4兆9,416億円(5.1%)
- 租税及び印紙収入…59兆790億円(60.5%)
- 支出(一般会計歳出総額)…97兆7,128億円
- 基礎的財政収支対象経費…74兆4,108億円(76.2%)
- 社会保障…32兆9,732億円(33.7%)
- 地方交付税交付金等…15兆5,150億円(15.9%)
- 公共事業…5兆9,789億円(6.1%)
- 文教及び科学振興…5兆3,646(5.5%)
- 防衛…51,911(5.3%)
- その他…9兆3,879億円(9.6%)
- 国債費…23兆3,020億円(23.8%)
- 債務償還費…14兆2,745億円(14.6%)
- 利払費等…9兆0,275億円(9.2%)
- 基礎的財政収支対象経費…74兆4,108億円(76.2%)
公債金とは国債を発行して借りられたお金のことで、これがいわゆる1年間で増えてしまった国の借金の部分です。平成30年では33兆円程が国の借金として増えてしまった訳ですね。
逆に公債金に頼らなくても収入と支出のバランスを維持することができれば借金は増えません。
また「所得税」「法人税」「消費税」などによる収入額が「社会保障」などを含めた支出額を上回ることができれば「プライマリーバランスが黒字化」であり、今の日本の大きな目標の一つになっています。
つまり「税収を増やすこと」と「社会保障費を削減すること」など、沢山の課題がある訳ですが、それらを上手く解決することができれば、理論上は国の借金も減らしていけるのです。
※データの詳細は財務省が発表している「平成30年度一般会計歳出・歳入の構成」に纏められています。
日本の未来は?
今の日本の現状としては、正直、明るい話題は少ないと思います。不安材料の方が多いイメージですね。
- 保険料や年金などの負担が増えていく
- 少子高齢化によって働き手が減っていく
- 将来が不安な若者が多いから消費活動が活発にならない
このような状況の中で政治や政策で何かを改善するのは難しいです。
誰かのお金を誰かに再分配することで解決することもあるのですが、それをするとお金を奪われた人たちの反感を買ってしまいます。
そう考えると、最終的に日本を救うのはテクノロジーやサービスだと思います。技術者や投資家達のコツコツとした努力で明るい未来を切り開く希望が持てるかもしれません。
- 医療技術の発達により個々の医療費用を削減させる
- IT技術を発展させることで人間がやっていた作業が自動化される
- みんながわくわくしてお金を使いたくなるサービスが増える
…とは言うものの「失われた○○年」と言われ続けてきた日本が、そう簡単に改善できる訳でもありません。
なので僕たちの打てる手としては、このようなことを見極める必要があるはずです。
- これから日本の経済状況はどのようになっていくのか?
- どこからどこにお金が流れていくのか?そしてそれは正しい流れなのか?
- 何を捨てるのか?何を諦めるのか?そして何に投資するのか?
- 海外とは相対的に何が違うのか?
そもそも日本に住み続ける価値はあるのか?- どのような働き方、投資活動をすれば幸せになれるのか?
つまり「考える」ことが大切なのです。
考えて、考えて、考え抜くことで、消して明るいとは言えない日本の未来を賢く快適に暮らすことができるはずです。
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