みなさんは、将来、自分の受け取れる年金額をどのくらい把握できていますか?
よく年金の話になると「◯◯年後には日本の人口は◯◯人になってしまい◯◯人の現役世代で◯◯人の老後世代を支えないといけない、だから年金制度はもう破綻するのは時間の問題だ!」ということを話す人を良く見かけます。
確かに年金制度の深刻さを説明する上では分かりやすい表現だと思いますし、人口減少が年金制度にとって大きなマイナス要因であることは確かです。
ですが、今、実際に年金をいくら払っていて、将来いくら貰える予定なのかをすっ飛ばしてそのような話をしても余り意味の無いようにも思えます。
年金制度の基本を理解する
まずは年金制度そもそもの仕組みを把握した上で、「どのような問題点があるのか?」また「自分の老後にはどれ程の年金を受け取ることができるのか?」などを考えていく方がより建設的だと思います。
年金無しの老後なんてありえない
年金に対する考え方は人それぞれですが、あくまで僕個人的な意見としては年金受給を無視して老後の生活を送ることはほぼ無理ではないか?と思います。
勿論、いろいろ工夫して節約することや、必要以上にモノを所有しないミニマリスト的な考え方で支出を抑えられる人もいるかもしれませんが、多くの人はそれだけでは生活できません。
危機意識高い感じで「将来年金は貰えないと考えてた方が良い!」とか言うヤツに限って「支給予定額調べた事ありますか?」と聞くと仕組みさえ知らん。ただ「概算も分からずどうせ自分は貰えないとふんずり返るお前より破綻寸前とは言え対策考えてる国の方が信用できる」とか言うと必ず喧嘩になります。
— 西本 豪 (@go_1101) March 3, 2018
あなたの周りにも「年金なんて当てにならないからいっそうのこと全くもらえないと考えて、将来の備えは個人レベルで計画的におこなうべきだ」と話す人はいませんか?
年金制度を利用しなくても老後生活を不自由なく過ごすことができればそれで問題無いですし、「国の力(お金)に頼らなくてもちゃんと生きていけるようにするするべきだ」という意見はある意味前向きで考え方自体には賛同します。
ですが、仮に年金が全くもらえない前提で老後の不安を解消するとすれば、一体どのような対策が打てるかというと、かなり高利回りな資産運用を目指す必要があるため、リスクの高い金融商品に手を出すしか無くなってしまいます。
なのであれば、少なくとも現段階では「年金なんて一円ももらえない」と必要以上に楽観的に考えるのでは無くて「今の生活の中では◯◯円程もらえる想定だけど、このままのペースで少子化が進めば◯◯円程まで削減されてしまいそうだなぁ」とある程度自分の意見を持っておいた方が、より現実的な対策(貯蓄や資産運用)に繋がります。
勿論、数十年も先のことを細かく予想することはできませんが、もし将来に対する不安がある場合は、ある程度必要な金額を把握してからの方が現実的な対策が打てるようになるはずです。
年金は若い世代が老後世代を支える仕組み
前置きが長くなりましたが、そもそも年金の仕組みとしては若い現役世代が引退後の老後世代の生活費を負担するための制度です。なので厳密には「自分が納めた年金を将来の自分が利用する」訳ではありません。
- 年金の被保険者…年金を支払う現役世代(国内に住む20歳〜60未満)
- 年金の受給者…年金を受け取る老後世代(65歳以上)
「年金」と一言で言ってもその種類は意外と沢山あります。まずはどのような種類があるのかを確認したいと思います。
公的年金と私的年金
年金制度は公的年金と私的年金との2つに分けられます。
公的年金は以下の3種類に分けられます。
年金制度 | 加入者 |
---|---|
国民年金 | 日本国内に住む20歳〜60歳未満の人 |
厚生年金 | 会社員など |
共済年金 | 公務員など |
国民年金は基礎年金として20歳以上から60歳未満の全ての人が加入します。また会社員や公務員等は上乗せとしてさらに厚生年金や共済年金に加入することになります。
一方、私的年金は以下のようなモノが含まれます。
- 企業年金
- 個人年金保険
企業年金は企業が主体となって年金を支給する制度であらかじめ給付額の算定式が確定している確定給付型と運用実績によって給付額が決まる確定拠出型の2種類があります。
また、個人年金保険は、国民年金や厚生年金などの公的年金を補てんする目的で加入するタイプの私的年金です。
国民年金と厚生年金
年金と一言で言ってもその種類はさまざまですが、中でももっとも関わりの深い年金制度は「国民年金」と「厚生年金」の2種類です。
なお、年金を支払う人のことを被保険者と呼び以下の3種類に分けられます。
被保険者 | 被保険者 | 年金の種類 | 保険料 |
---|---|---|---|
第一号被保険者 | 国内に住所のある(外国人を含む)20歳以上60歳未満の全ての人 | 国民年金 | 定額(その年によって異なる) |
第二号被保険者 | 被用者年金(厚生年金・共済組合)の加入者 | 国民年金、厚生年金 | 標準報酬月額をもとに算出 |
第三号被保険者 | 第二号費用保険者の被扶養配偶者で20歳以上60歳未満の人 | 国民年金 | 保険料負担無し |
なお、平成28年10月からは社会保険への加入条件が緩和されパートやアルバイトの場合もで以下の要件を満たせれば厚生年金に加入することができます。
- 一週間辺りの所定労働時間が20時間以上であること
- 一ヶ月辺りの賃金が88,000円以上であること
- 雇用期間の見込みが1年以上であること
- 学生で無いこと(夜間、通信、定時制は加入可)
- 従業員数が501名以上の会社で働いていること
なお、平成29年4月からは従業員数が500人以下の会社でも労使で合意すれば社会保険に加入することが可能です。
年金はいくら支払わないといけないの?
年金の被保険者の場合、国民年金と厚生年金で支払うべき保険料が異なります。
国民年金の支払い保険料は所得額に関わらず一律
平成30年度(平成30年4月~平成31年3月)の国民年金の支払い保険料は月額16,340円です。
国民年金の保険料は、毎年度見直しがおこなわれますが、平成31年度(平成30年4月~)については16,410円となります。前年度分と比較するとプラス70円になっていますね。
過去に何度か保険料が下がった年もありますが、基本的には年々段階的に値上がりしています。
仮に平成30年度の保険料をもとに40年間保険料を払い続けた場合、以下のような計算方法になります。
- 16,340円✕12ヶ月✕40年=7,843,200円
今後も支払う保険料が増え続けることを想定するともう少し高額になってしまいそうですが、概算としてはおよそ800万円程の保険料を支払うことになりそうです。
厚生年金の支払い保険料は所得額に応じて変動する
一方、会社員などの厚生年金に加入している場合は所得額に応じて保険料が変わります。
厳密に言うと「標準報酬月額」を基準に計算される訳ですが、基本的には収入が増えれば増えるほど支払うべき保険料が上がっていきます。
ちなみに標準報酬月額というのは毎年の4月〜6月の収入金額の平均のことです。
なので良く「4月〜6月の給料が高いと社会保険料が高くなってしまう」と言われるのもこのことが理由です。
なお、これらは都道府県ごとに微妙に負担額が違うようです。
標準報酬月額表(大阪府)等級 保険 | 等級 年金 | 標準報酬 | 報酬月額 未満〜以上 | 健康 保険料 | 厚生年金 保険料 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 1 | 58,000円 | 0円~63,000円 | 2,938円 | 8,052円 |
2 | 1 | 68,000円 | 63,000円~73,000円 | 3,444円 | 8,052円 |
3 | 1 | 78,000円 | 73,000円~83,000円 | 3,951円 | 8,052円 |
4 | 1 | 88,000円 | 83,000円~93,000円 | 4,457円 | 8,052円 |
5 | 2 | 98,000円 | 93,000円~101,000円 | 4,964円 | 8,967円 |
6 | 3 | 104,000円 | 101,000円~107,000円 | 5,268円 | 9,516円 |
7 | 4 | 110,000円 | 107,000円~114,000円 | 5,571円 | 10,065円 |
8 | 5 | 118,000円 | 114,000円~122,000円 | 5,977円 | 10,797円 |
9 | 6 | 126,000円 | 122,000円~130,000円 | 6,382円 | 11,529円 |
10 | 7 | 134,000円 | 130,000円~138,000円 | 6,787円 | 12,261円 |
11 | 8 | 142,000円 | 138,000円~146,000円 | 7,192円 | 12,993円 |
12 | 9 | 150,000円 | 146,000円~155,000円 | 7,597円 | 13,725円 |
13 | 10 | 160,000円 | 155,000円~165,000円 | 8,104円 | 14,640円 |
14 | 11 | 170,000円 | 165,000円~175,000円 | 8,610円 | 15,555円 |
15 | 12 | 180,000円 | 175,000円~185,000円 | 9,117円 | 16,470円 |
16 | 13 | 190,000円 | 185,000円~195,000円 | 9,623円 | 17,385円 |
17 | 14 | 200,000円 | 195,000円~210,000円 | 10,130円 | 18,300円 |
18 | 15 | 220,000円 | 210,000円~230,000円 | 11,143円 | 20,130円 |
19 | 16 | 240,000円 | 230,000円~250,000円 | 12,156円 | 21,960円 |
20 | 17 | 260,000円 | 250,000円~270,000円 | 13,169円 | 23,790円 |
21 | 18 | 280,000円 | 270,000円~290,000円 | 14,182円 | 25,620円 |
22 | 19 | 300,000円 | 290,000円~310,000円 | 15,195円 | 27,450円 |
23 | 20 | 320,000円 | 310,000円~330,000円 | 16,208円 | 29,280円 |
24 | 21 | 340,000円 | 330,000円~350,000円 | 17,221円 | 31,110円 |
25 | 22 | 360,000円 | 350,000円~370,000円 | 18,234円 | 32,940円 |
26 | 23 | 380,000円 | 370,000円~395,000円 | 19,247円 | 34,770円 |
27 | 24 | 410,000円 | 395,000円~425,000円 | 20,766円 | 37,515円 |
28 | 25 | 440,000円 | 425,000円~455,000円 | 22,286円 | 40,260円 |
29 | 26 | 470,000円 | 455,000円~485,000円 | 23,805円 | 43,005円 |
30 | 27 | 500,000円 | 485,000円~515,000円 | 25,325円 | 45,750円 |
31 | 28 | 530,000円 | 515,000円~545,000円 | 26,844円 | 48,495円 |
32 | 29 | 560,000円 | 545,000円~575,000円 | 28,364円 | 51,240円 |
33 | 30 | 590,000円 | 575,000円~605,000円 | 29,883円 | 53,985円 |
34 | 31 | 620,000円 | 605,000円~635,000円 | 31,403円 | 56,730円 |
35 | 31 | 650,000円 | 635,000円~665,000円 | 32,922円 | 56,730円 |
36 | 31 | 680,000円 | 665,000円~695,000円 | 34,442円 | 56,730円 |
37 | 31 | 710,000円 | 695,000円~730,000円 | 35,961円 | 56,730円 |
38 | 31 | 750,000円 | 730,000円~770,000円 | 37,987円 | 56,730円 |
39 | 31 | 790,000円 | 770,000円~810,000円 | 40,013円 | 56,730円 |
40 | 31 | 830,000円 | 810,000円~855,000円 | 42,039円 | 56,730円 |
41 | 31 | 880,000円 | 855,000円~905,000円 | 44,572円 | 56,730円 |
42 | 31 | 930,000円 | 905,000円~955,000円 | 47,104円 | 56,730円 |
43 | 31 | 980,000円 | 955,000円~1,005,000円 | 49,637円 | 56,730円 |
44 | 31 | 1,030,000円 | 1,005,000円~1,055,000円 | 52,169円 | 56,730円 |
45 | 31 | 1,090,000円 | 1,055,000円~1,115,000円 | 55,208円 | 56,730円 |
46 | 31 | 1,150,000円 | 1,115,000円~1,175,000円 | 58,247円 | 56,730円 |
47 | 31 | 1,210,000円 | 1,175,000円~1,235,000円 | 61,286円 | 56,730円 |
48 | 31 | 1,270,000円 | 1,235,000円~1,295,000円 | 64,325円 | 56,730円 |
49 | 31 | 1,330,000円 | 1,295,000円~1,355,000円 | 67,364円 | 56,730円 |
50 | 31 | 1,390,000円 | 1,355,000円~円 | 70,403円 | 56,730円 |
例えば標準報酬月額が400,000円だった場合、報酬月額が395,000円~425,000円になるため、それぞれの値は以下の通りとなります。
- 等級(厚生年金保険)…24
- 標準報酬…410,000円()
- 標準月額…395,000円~425,000円
- 厚生年金保険料…37,515円
厚生年金保険料は雇用主である会社と加入者である従業員が折半する仕組みなので、およそ19,000円程になります。概算だと月収(標準報酬月額)の10%弱って程の負担になりまますね。
- 37,515円÷2(会社との折半分)=18,757円
所属する会社にもよりますが、実際は年収(つまり標準報酬月額)は少しずつ上っていく傾向にあるはずなので、年度ごとに計算する必要がありますが、仮に同じ条件で厚生年金を支払い続けると以下のような計算方法になります。
- 18,757円✕12ヶ月✕40年=9,003,360円
普段、会社員として厚生年金を納めているだけでは特に意識することは少ないかもしれませんが、自営業(フリーランス)として国民年金を納めている立場からしてみると、厚生年金の「会社が半分折半してくれる」仕組みは本当はとても有り難いことなんです。
年金は何年間払い続ければ貰えるのか?
国民年金の保険料の納付期間は20歳以上60歳未満の40年間です。
40年間、しっかりと国民年金を払い続けることができれば満額分の年金を受給することできます。
ただし仮に満額の受給では無かったとしても国民年金の保険料を(免除期間なども含めて)10年以上支払うことができればその納付期間に応じて満額分から差し引かれた分の年金を受給することができます。
なお平成29年7月末までは国民年金の保険料は25年間(300ヶ月)納付しないと受給資格を得ることができませんでしたが、平成29年8月1日からは年金制度改正(年金機能強化法)により保険料を10年間(120ヶ月)納付すれば受給資格を得られるように短縮されました。
- 平成29年7月までは25年間保険料を納付しないと受給資格を得られない
- 平成29年8月からは10年間保険料を納付すれば受給資格を得られる
このため「25年間は年金を払い続けるのが難しい」と考えていた保険料の未納者も「10年だったら納付できそうだ」と納付に対する意欲が高まる一方、本来、年金の受給資格が無かった人に対しても年金を支給することになるためその分の財源は必要となります。
ちなみに厚生年金については全ての人が加入する訳では無いため国民年金の受給資格を持っていることを前提として、かつ厚生年金の保険料を1ヶ月以上支払っていれば受給資格を得ることができます。
生活が苦しくて払えない時は「免除」してもらえる
保険料の負担が厳しくて、どうしても支払えない事情がある場合は「免除申請」をすることで、保険料を免除してもらえる可能性があります。
免除期間には生活状況などに応じて以下のように分けられています。
免除の種類 | 免除係数(平成21年3月以前) | 免除係数(平成21年4月以降) |
---|---|---|
1/4免除 | 5/6 | 7/8 |
1/2免除 | 2/3 | 3/4 |
3/4免除 | 1/2 | 5/8 |
全額免除 | 1/3 | 1/2 |
※基礎年金の国庫負担割合が3分の1から2分の1に引き上げられたため上記のような計算式となります。
保険料を未払いまま放置し続けていると当然ながらその期間の年金は受給できませんが、免除申請することによって(満額ではありませんが)免除係数に応じた分の年金を受給できるため、将来の負担を軽減するためにも検討の余地はあると思います。
年金はいくらもらえるの?
国民年金と厚生年金について具体的にいくら支給されるのかをまとめてみました。
ただしそれぞれの計算方法はかなり複雑そうなイメージを与えてしまいそうです。
なので最後に「概算の受給額」についても簡単な計算方法を記載しています。
国民年金の支給額は?
国民年金の保険料は所得に関わらず一律で月額16,340円です。
なので支給額についても所得金額は関係無く、年間で満額779,300円が支給されます。
ただしこの金額はあくまで20歳〜60歳までの40年間しっかり払い続けた場合に支給される金額となるので、もしその間、保険料を支払っていない期間がある場合はその分が差し引かれた支給額になってしまいます。勿論、先程、上記で記載した通り最低でも10年間は保険料を納付していることが前提となります。
ちなみに保険料納付の免除期間が無かった場合は以下の計算方法で受給できる年金の金額を算出することができます。
- 779,300円✕(保険料を納付した月数+免除期間月数✕免除係数)÷480ヶ月=年間受給額
先程もお伝えした通り老後支給される年金は満額で779,300円です。なので40年間(480ヶ月)しっかりと保険料を納付したいた場合は年間受給額も779,300円となります。
一方、未払いの期間があった場合は、満額の779,300円を実際に支払った期間を40年間(480ヶ月)で割った割合分が支給されることになります。
なお免除期間がある場合はもう少し計算方法が複雑になりますが、基本的な考え方は上記と同じようなイメージになります。
厚生年金の支給額は?
厚生年金に加入している場合、国民年金の受給額に厚生年金分を加算して支給されることになります。
厚生年金の受給額は以下の計算方法で算出することができます。
- 厚生年金受給額=報酬比例年金額+経過的加算+加給年金
つまに厚生年金の受給額を算出するには以下の3つの金額を合計する必要があります。
- 報酬比例年金額
- 経過的加算
- 加給年金
報酬比例年金額の算出方法
報酬比例年金額は現役時代に得た収入や厚生年金に加入した期間をもとに計算する方法です。
「報酬比例年金額」「経過的加算」「加給年金」の中でもっとも複雑な計算式が必要となりますが、厚生年金の受給額を構成する上でもっとも中心となる部分でもあります。
※個人的には「報酬比例年金額」だけを理解しておけば十分だと思います。
まず報酬比例年金額を計算する場合、給与を受け取った時期によって計算方法が異なります。
- 平成15年3月まで…月の平均給与をもとに「平均標準報酬月額」を算出
- 平成15年4月以降…給与と賞与(ボーナス)をもとに「平均標準報酬額」を算出
平成15年3月より以前は月々の給与のみで「平均標準報酬月額」を算出していましたが、平成15年4月以降は給与に加え賞与(ボーナス)も含めた年収に対して12ヶ月で割った「平均標準報酬額」を算出しています。
そしてこれらの金額をもとに算出した報酬比例年金額の受給額が以下の通りとなります。
※以下の2つの計算の合計金額が報酬比例年金額の受給額となります。
- 平均標準報酬月額✕7.125/1000✕平成15年3月以前の被保険者期間
- 平均標準報酬額✕5.481/1000✕平成15年4月以降の被保険者期間
僕のように平成15年4月以降に会社員として社会人デビューした人については「平均標準報酬額」をもとにした計算だけで報酬比例年金額の受給額を算出することができますが、それ以前に会社員として厚生年金の保険料を支払っている方の場合は両方の合計を算出する必要があります。
経過的加算と加給年金について
経過的加算とは20歳より前や60歳以降になって支払った保険料に対して支給される部分です。
国民年金の加入期間は20歳〜60歳までの40年間ですが、厚生年金の加入期間は中学校卒業後(義務教育終了後)から70歳までと実は国民年金の加入期間よりも広範囲なので、その基礎年金として反映されない期間が支給されることになります。
一方、加給年金とは厚生年金の加入期間が20年以上ある場合に配偶者(65歳未満)や子供(18歳以下)に対して支給される年金となります。
加給年金の支給額対象者 | 支給額 | 年齢制限 |
---|---|---|
配偶者 | 226,300円 | 65歳未満 |
子(1人目/2人目) | 226,300円 | 18歳以下または一定の障害がある20歳未満の子供 |
子供(3人目以降) | 各75,400円 | 18歳以下または一定の障害がある20歳未満の子供 |
国民年金と厚生年金の受給額の合計は?
仮に僕(平成15年4月以降の被保険者)が40年間働いた平均年収が600万円の場合、厚生年金の受給額は以下のようになります。
国民年金の受給額
国民年金の受給額は40年間しっかり保険料を納めているため満額の779,300円が支給されます。
- 国民年金の年間受給額=779,300円
厚生年金の受給額
厚生年金の受給額は年収(平均標準報酬額)と勤続年数(加入期間)をもとに算出した結果、1,315,440円が支給されます。
なお、経過的加算および加給年金については0円で計算します。
- 平均標準報酬額=6,000,000円÷12ヶ月=500,000円
- 厚生年金の年間受給額=5000,000円✕5.481/1000✕480ヶ月=1,315,440円
- 経過的加算=0円
- 加給年金=0円
合計の受給額は?
合計の受給額は国民年金と厚生年金の受給額を合計するため以下の通りとなります。
- 合計の年間受給額=779,300円+1,315,440円=2,094,740円
- 合計の月間受給額=2,094,740円÷12ヶ月=174,561円
今回は分かりやすくするため配偶者がいない(一生独身である)ことを前提として計算しましたが、配偶者や子供の年齢によってはより計算が複雑になってしまいます。
もっと簡単に概算受給額を知りたい場合は?
国民年金と厚生年金のそれぞれの受給額をご説明しましたが、正直、やや計算が複雑で難しいと思われるかもしれません。
そんな人は以下の計算方法でもっとシンプルに概算金額を算出することができます。
- 国民年金の月間受給額=支払年数÷6
- 厚生年金の月間受給額=支払年数✕平均年収÷2,500
あくまで概算受給額ではありますが、先程の計算方法よりかなりシンプルに算出できるため、これなら少し覚えやすいかもしれないですね。
先程と同じ条件である40年間、平均年収が600万円で働き続けた場合の計算をしてみると以下の通りとなります。
- 国民年金の月間受給額=40年÷6=6,6666円
- 厚生年金の月間受給額=40年✕5,000,000円÷2,500=96,000円
- 合計の月間受給額=162,666円
若干開きがあるような気もしますが…あくまで概算金額のイメージをつかむには良い計算方法だと思います。
繰上げ受給と繰り下げ受給
国民年金を受給できるのは基本的には65歳以降となります。
ですが「繰上げ受給」および「繰り下げ受給」をすることで年金の受給開始時期を最大で5年間ずらすことができます。
当然のことながら繰上げ受給の場合は受給開始時期を前倒しにできる反面、その分だけ受給額は減ってしまいますし、繰り下げ受給の場合は受給開始時期を後倒しにする分、受給額が増えます。
- 繰上げ受給…60歳から受給することが可能:支給開始年齢によって年金額が減額
- 繰下げ受給…70歳まで送らせて受給することが可能:支給開始年齢によって年金額が増減
つまに長生きできる自信があるのであれば繰り下げ受給を選択した方が受給総額が大きくなりますし、逆に長生きできる自信が無い場合は繰上げ受給を選択した方が受給総額が大きくなる訳です。
※平均寿命まで生きることを考えると繰上げ受給は選択しない方が良いでしょう。
勿論、人がどれだけ長生きできるかなんかはそんな簡単には分かりません。また、一度繰上げ受給を選択してしまうと、その分下がってしまった受給額を支えに一生生活していくことになります。
60歳の時点で多少生活が厳しくなると「繰上げ受給を検討してみようか?」と考えるかもしれませんが、今後の長い老後生活のことを考えて慎重に判断する必要があります。
年金の計算方法は難しい
ここまでいくつかの計算方法をご紹介してきましたが、年金の計算方法はとても複雑です。
また計算に必要となるそれぞれの値なども数年(もしくは毎年)ごとに変わってしまうためファイナンシャルプランナーのような余程専門的な業務をしている方以外は把握するのが難しいですし、また把握する必要もありません。
イメージだけでも簡単に理解できれば十分だと思うので、もし細かな金額などを把握したい場合は自力で計算するのでは無く、以下のようなサービスを利用することでより正確な受給額を調べられると思います。
- ねんきんネット
- 年金受給額計算シミュレーションサイト
- ねんきん定期便
「ねんきんネット」や「年金受給額計算シミュレーションサイト」などはインターネットさえ利用できる環境であればいつでも情報を確認できますし、「ねんきん定期便」はその名の通り定期的に年金情報が自宅へ送られてくるはずなので、その辺りを確認するだけでも十分だと思います。
まずは仕組みを理解しよう
年金の問題はとても複雑そうなイメージがありますが、わざわざ書籍を購入したりしなくても少し調べてみるだけどインターネットで調べられることが多いです。例えば以下のような項目は案外すぐに調べることができます。
- 年金保険料を納付する金額
- 年金を貰える金額
- 年金を貰うために納付すべき最低期間
調べようとせず、理解しようとせずに「どうせもらえない」と悲観的なことを言ってしまう人もいますが、一般的な収入の場合、年金受給額を完全に無視して老後の生活を快適に送れる人はほんの一握りです。
確かに現時点で予定されているよりも受給金額が削減されてしまう可能性は高いですが、それでもまずは仕組みをある程度理解して、概算でも構わないので「老後自分がどの程度の年金を受給できるのか?」は把握しておいて損は無いと思います。
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