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サブリースは解約できない?オーナー側から解約する条件・正当事由・立退料と手順|家賃減額への対処と新法の実務

サブリースは解約できない?オーナー側から解約する条件・正当事由・立退料と手順 空室対策・賃貸管理
この記事は約19分で読めます。

サブリース(一括借り上げ)を結んだオーナーが「解約したい」と言うと、業者からはほぼ決まって「借地借家法で解約はできません」と返ってきます。半分は本当で、半分は違います。オーナー側からの解約は「できない」のではなく「正当事由が要る」。これが借地借家法28条の条文どおりの答えで、国土交通省のガイドラインも「オーナーからの解約には正当事由が必要」と業者に説明を義務づけています。

この記事では、なぜ解約が難しいのかを条文で確認したうえで、オーナー側から解約する3つのルートと手順、正当事由と立退料の考え方、賃料減額請求(32条)との関係、解約後の入居者との契約の扱い、解約すべきかの損益計算までを、借地借家法・最高裁判例・国土交通省の資料に沿って整理します。

この記事は以下のような方におすすめです!
  • サブリース契約を解約して管理委託や自主管理に切り替えたいオーナー
  • 業者から賃料減額を求められ、応じなければ解約すると言われている方
  • 「正当事由」「立退料」「違約金」が自分の契約でどう働くかを条文で確認したい方
  • サブリース付き物件の売却を前に、解約するか付けたまま売るかを判断したい方
  • これからサブリース契約を結ぶ前に、解約条件を契約書でどう固めるか知りたい方
🎯 30秒でわかる本記事の要点
  • オーナー側からの更新拒絶・解約申入れには借地借家法28条の「正当事由」が必要。業者を借主として保護する仕組みで、契約書の特約で外せない(30条)。
  • 解約の入口は3つ。①業者との合意解約 ②期間満了の1年前〜6か月前に通知する更新拒絶 ③契約に中途解約条項があればその手続き。②③には正当事由が要る。
  • 立退料は正当事由を補う要素で、条文・国交省ガイドライン・標準契約書のどこにも金額基準はない。
  • 業者側は32条で賃料減額を請求でき、最高裁がサブリースにも適用を認めた。ただし減額をそのまま受け入れる義務はない(国交省・消費者庁・金融庁のリーフレット)。
  • 解約後は入居者との転貸借をオーナーが引き継ぐ。合意解約は入居者に対抗できず(民法613条3項)、期間満了・解約申入れによる終了は入居者へ通知して6か月後(借地借家法34条)。
📕 Before(業者の説明のまま)
  • 「借地借家法で解約できない」と言われて諦める
  • 減額通知をそのまま受け入れる
  • 違約金条項を読まずに合意解約に応じる
  • 解約後の入居者・敷金の扱いを考えていない
📘 After(条文と手順を押さえた)
  • 自分の契約が普通借家か定期借家か、中途解約条項があるかを確認済み
  • 更新拒絶の通知期限(満了の1年前〜6か月前)を把握し、正当事由の材料を揃える
  • 減額請求には根拠資料の提示を求め、相当と認める額を主張する
  • 解約後の転貸人の地位承継と敷金の引き継ぎまで見積もって損益を判断する

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🎯 1. 結論:解約は「できない」ではなく「正当事由が要る」

サブリース契約は、法律上はオーナー(貸主)と業者(借主)の建物賃貸借契約です。業者はその建物を入居者に転貸します。借地借家法は建物の借主を強く保護する法律で、その保護は借主が事業者であるサブリース業者にも及びます。最高裁は、賃料自動増額特約や賃料保証特約が付いたサブリース契約にも借地借家法32条(賃料増減請求権)が適用されると判示しました(最判平成15年10月21日・平成12年(受)第573号、最判平成15年10月23日・平成14年(受)第852号)。

オーナー側から契約を終わらせる入口は3つで、それぞれ条件が違います。

ルート 根拠 条件・期限 正当事由
① 合意解約 契約自由 業者が応じれば期日・清算条件を合意書で決める。契約書に違約金や損害賠償額の予定があればその額が交渉の起点 不要
② 更新拒絶 借地借家法26条・28条 期間満了の1年前から6か月前までの間に通知。通知を忘れると同一条件で更新され、期間の定めのない契約になる 必要
③ 中途解約の申入れ 契約の中途解約条項+28条。期間の定めがない契約なら27条(申入れから6か月で終了) 契約書にオーナーからの中途解約条項がなければ期間中の一方的解約はできない。あっても正当事由は要る 必要

一方、業者側からの解約は事情が違います。契約書に業者から解約できる旨の規定があれば、契約期間中であっても業者から解約される可能性があると、国土交通省・消費者庁・金融庁の連名リーフレットが明記しています。「30年一括借り上げ」という言葉から受ける印象と、契約の実態はここで食い違います。

もう一つ、契約の型を最初に確認します。普通借家契約なら上の表のとおりですが、定期借家契約としてサブリースを結んでいる場合、オーナーからの途中解約は原則としてできない代わりに、家賃を減額できない特約を定めれば32条の減額請求も排除できると国交省のガイドラインは説明しています。自分の契約書の冒頭で、どちらの型かを見てください。

📜 2. なぜ「解約できない」と言われるのか:条文で確認する

業者の「解約できません」の根拠は借地借家法の3つの条文です。原文を引きます。

条文 要旨(原文に沿った要約) サブリースでの意味
26条1項 期間の定めがある建物賃貸借で、当事者が期間満了の1年前から6か月前までの間に更新しない旨の通知をしなかったときは、従前と同一条件で更新したものとみなす。ただし期間は定めがないものとする 通知期限を逃すと自動更新。その後は「期間の定めのない契約」になり、27条の解約申入れ(6か月)の対象になる
28条 貸主による更新拒絶の通知または解約の申入れは、貸主・借主(転借人を含む)が建物の使用を必要とする事情のほか、従前の経過、利用状況、現況、明渡しの条件として貸主が財産上の給付をする旨の申出をした場合のその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければすることができない オーナーからの更新拒絶・解約申入れの全部にかかる要件。「転借人を含む」とあるので、入居者の事情も業者側の事情として考慮される
30条 この節の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは無効 「オーナーはいつでも解約できる」という特約を入れても、業者に不利な特約として無効になる

国土交通省の特定賃貸借標準契約書(令和3年4月版)も、第2条3項で「甲(オーナー)による更新拒絶通知は、借地借家法第28条に規定する正当の事由がなければすることができない」と書いています。ガイドライン(令和5年3月改正)は、業者が広告で「○年間借り上げ保証」と表示する場合は、その期間中でも業者から解約する可能性があることと、オーナーからの中途解約条項がある場合でも28条の正当事由がなければ解約できないことを表示するよう求め、「いつでも自由に解約できます」という表示を誇大広告の具体例に挙げています。つまり「解約できない」は業者の脅し文句ではなく、法律と行政資料が前提にしている構造です。

ただし条文をよく読むと、禁じられているのは「正当事由なしの一方的な解約」であって、解約そのものではありません。次章が正当事由の中身です。

⚖️ 3. 正当事由の中身と立退料:何を揃えれば認められるか

28条が挙げる考慮要素は5つです。①双方が建物の使用を必要とする事情 ②建物の賃貸借に関する従前の経過 ③建物の利用状況 ④建物の現況 ⑤明渡しの条件または引換えに貸主が財産上の給付(立退料)を申し出た場合のその申出。ガイドラインも重要事項説明でこの5要素をオーナーに説明するよう業者に求めています。

通常の住宅賃貸借では①の「借主が住み続ける必要」が重く見られます。サブリースでは借主は住んでいない事業者で、①は「転貸事業を続ける必要」に置き換わり、そこに転借人(入居者)の事情が加わります。オーナー側が組み立てるべきは、①自分が建物を使う(自ら管理・運営する)必要性と、②〜④で業者側の事情が弱まっていること、⑤立退料の申出、の積み上げです。

考慮要素 オーナーが用意する材料
① 使用の必要性 自主管理・管理委託に切り替える具体的な計画(管理会社の見積書、募集条件、修繕計画)。売却予定なら買主側の条件(サブリース解除を求めている事実)
② 従前の経過 契約締結時の説明内容と重要事項説明書、賃料改定の履歴、減額請求の根拠資料の提示有無、業者側の債務不履行(家賃遅延・修繕未実施・報告義務違反)の記録
③ 利用状況 入居率・転貸賃料と保証賃料の差(業者の取り分)・募集活動の実態
④ 建物の現況 原状回復・大規模修繕の実施状況、業者指定工事の見積と相見積の差
⑤ 財産上の給付(立退料) 業者の逸失利益(残期間の転貸差益)を基礎に金額を提示する。①〜④が弱いほど立退料の比重が上がる

💴 立退料に「相場」はない

立退料は正当事由を補う要素であって、独立した権利ではありません。借地借家法28条・国交省ガイドライン・特定賃貸借標準契約書のどれにも、立退料の金額や算定式は書かれていません。「賃料の何か月分」という言い方は実務上の交渉の目安として使われますが、公的な基準ではなく、業者の逸失利益(残りの契約期間に得られたはずの転貸差益)と①〜④の強弱で個別に決まります。オーナー側の計算としては、業者の年間の転貸差益(入居者からの賃料総額−オーナーへの保証賃料)を出し、それに残期間や更新の見込みを掛けたものが、業者が失う利益の上限になります。ここから①〜④の材料で減らしていく、という組み立てです。

違約金条項にも注意します。標準契約書は、損害賠償額の予定や違約金の定めがあるときは契約書に明記するよう求めています(賃貸住宅管理業法施行規則48条4号)。違約金条項がある契約では、合意解約の交渉はその額が起点になり、更新拒絶や中途解約の申入れでは立退料と違約金の関係を整理する必要があります。契約書に金額の定めがなければ、違約金を払う根拠はありません。

🧭 4. 解約の手順:通知から合意書まで

  1. 1
    契約書を読む(型・期間・解約条項・違約金)
    普通借家か定期借家か、契約期間と満了日、オーナーからの中途解約条項の有無、業者からの解約条項と予告期間、違約金・損害賠償額の予定、転貸借の承継条項、敷金の扱い。満了日から逆算して「1年前〜6か月前」の窓を暦に落とすのが最初の作業です
  2. 2
    材料を揃える
    3章の表の①〜⑤。入居者名簿(レントロール)と転貸賃料の一覧、周辺の募集賃料、管理会社の見積、修繕の相見積、業者の債務不履行があればその記録。減額請求を受けているなら、業者から交付された減額の根拠資料(5章)
  3. 3
    まず合意解約を打診する
    解約希望日、転貸借の承継方法(入居者との契約と敷金をオーナーが引き継ぐ)、精算(未払家賃・原状回復費・違約金)を書面で提案します。業者にとっても採算の悪い物件は手放したい場合があり、合意解約なら正当事由の争いを避けられるのが最大の利点です
  4. 4
    応じなければ更新拒絶または解約申入れを内容証明で
    更新拒絶は満了の1年前〜6か月前に、中途解約は契約条項の予告期間に従って、配達証明付き内容証明郵便で通知します。通知書には正当事由の要素(使用の必要性・従前の経過・立退料の申出)を記載します。期間満了後に業者が使用を続けた場合、オーナーが遅滞なく異議を述べないと更新されたものとみなされる(26条2項)ので、満了後も異議を書面で残します
  5. 5
    協議がまとまらなければ調停・訴訟
    正当事由の有無は最終的に裁判所が判断します。ここからは弁護士の領域で、費用と期間(1〜2年単位)を、解約で取り戻せる差益と比べて判断します。売却を急ぐなら、争わずにサブリース付きで売る選択も比較に入れます(8章)

手順の途中で「解約するなら残期間の保証賃料を全額払え」という要求が出ることがあります。契約書に損害賠償額の予定としてその旨の定めがなければ根拠はなく、あっても業者の逸失利益は転貸差益であって保証賃料の総額ではありません。金額の根拠を契約書の条項番号で示すよう求めるのが最初の返答です。

📉 5. 家賃減額請求との関係:32条は業者の武器だが、受け入れ義務はない

解約の話は、たいてい業者からの賃料減額請求から始まります。借地借家法32条1項は、租税負担の増減・経済事情の変動・近傍同種の建物の借賃との比較で借賃が不相当になったときは「契約の条件にかかわらず」当事者が将来に向かって増減を請求できると定め、最高裁はこれがサブリース契約にも適用されると判示しました。賃料自動増額特約や賃料保証特約があっても、32条1項は強行法規で特約では排除できない(最判平成15年10月21日・平成12年(受)第573号)。「30年家賃保証」の保証は「払い続けること」であって「額」ではない、というのはこの判例が根拠です。

ただし同じ判例は、減額の当否と相当賃料額を判断するときは、賃料額が決められた経緯、約定賃料と当時の相場の関係、業者の転貸事業の収支予測、オーナーの敷金や建築資金の返済予定など「諸般の事情を総合的に考慮すべき」とも述べています。業者が数字を突きつけてきても、オーナー側の建築資金の返済予定や契約時の収支前提は、減額幅を抑える方向の考慮要素です。

読者
業者から「来月から2割減額、応じないなら解約」と通知が来ました。減額に応じるしかないのですか?
著者
応じる義務はありません。国土交通省・消費者庁・金融庁のリーフレットが「減額請求された場合でも、そのまま受け入れなければならないわけではありません」と明記しています。

  • 業者は減額請求の前に、減額後の額と設定根拠を書面で交付して説明する必要があります(国交省ガイドライン)。まず根拠資料を求めます
  • 協議が調わなければ、オーナーは減額を正当とする裁判が確定するまで「相当と認める額」の支払いを請求できます(32条3項)。差額の精算は確定後で、年1割の利息が付きます
  • 「応じなければ解約」は、業者側の解約条項があれば実行され得ます。その場合の受け皿(管理委託への切替と入居者の承継)を先に用意してから返答します

減額交渉そのものの進め方(相場資料の集め方・拒否の伝え方)は家賃交渉される時の対応5パターンで扱っています。

🏢 6. 業者側からの解約:契約期間中でも起こる

オーナーからの解約に正当事由が要る一方で、業者からの解約は契約条項で決まります。国交省のガイドラインは、広告で「○年間借り上げ保証」と表示する場合でも「当該期間中であっても、業者から解約をする可能性があること」を表示するよう求め、標準契約書の重要事項説明書記載例には「本契約では、契約期間中においても、当社から解約の申し入れをすることにより、解約をすることができます」という文言が載っています。「30年一括借り上げ」でも、業者側の中途解約条項があれば期間中に切られるのが契約の実態です。

標準契約書のコメントは、業者からの中途解約を認める場合は「契約締結後、貸主及び借主の実情に応じて定めた期間が経過するまでは解約できない」とすることや、民法の原則(解約申入れから3か月で終了・民法617条・618条)より長い6か月程度の予告期間を設けることが望ましいとしています。契約前なら、この予告期間と、業者側解約時の原状回復・敷金精算の条件を特約で固めるのが防御になります。

業者が解約を通告してきた場合、オーナーの実務は次章の「解約後」と同じです。加えて、業者に契約違反(家賃遅延・修繕未実施・報告義務違反)があれば、標準契約書18条の型では債務不履行解除の側に立てるので、解約の主導権と精算条件が変わります。

🔑 7. 解約後の実務:入居者・敷金・管理はどうなるか

ここが上位の解説にほとんど書かれていない部分です。サブリース契約が終わっても、入居者(転借人)との賃貸借は消えません。

場面 法律・契約の定め オーナーの実務
合意解約した場合 貸主は借主との合意解除を転借人に対抗できない(民法613条3項)。転借人は住み続けられる 入居者の契約はそのまま。オーナーが転貸人の地位を引き継ぐ
期間満了・解約申入れで終了した場合 貸主が転借人にその旨を通知しなければ終了を対抗できず、通知から6か月で転貸借が終了(借地借家法34条) 入居者を退去させる意図がないなら通知はせず、地位承継で契約を続ける。建て替え等で退去が必要なら別途正当事由が要る
地位の承継 標準契約書は、契約終了時にオーナーが転貸人の地位を承継すると定め、終了原因(期間満了・解約申入れ・債務不履行解除・合意解除)を問わないとする。ガイドラインは承継後に「正当な事由なく入居者の契約更新を拒めないこと」「業者の敷金返還債務を承継すること」を説明事項に挙げる 敷金は業者から受け取れなくても入居者への返還義務を負うので、解約合意書で敷金の引継ぎ額と支払期日を必ず決める

解約日までに揃える引継ぎ資料は、入居者ごとの賃貸借契約書と敷金額、レントロール(賃料・契約期間・更新日)、保証会社の契約、火災保険、鍵、滞納・クレームの履歴、修繕履歴です。入居者へは賃貸人の変更と振込先の変更を書面で通知します。業者との合意書には「承継する入居者契約の一覧」「敷金の引継ぎ額」「引継ぎ書類の期限」を別紙で付けると、解約後の紛争が減ります。管理委託への切替の段取りは賃貸経営でやることの全体像と賃貸管理会社の選び方と使い分け|仲介・管理・サブリースの違い・囲い込み・近畿レインズで扱っています。

融資との関係も一つ。サブリースの保証賃料を前提に返済計画を組んだ融資では、解約で収入の前提が変わります。契約上、賃貸条件の変更を金融機関へ届け出る定めがあることが多いので、解約の前に金融機関へ相談し、切替後の想定収支を示しておきます。

🧮 8. 解約すべきか:損益の計算式と立退料の上限の出し方

感情論を外して、数式で決めます。数字はすべてサンプルです。

項目 計算 サンプル(6戸・入居者賃料計45万円/月)
A 現状の手取り 保証賃料(減額後) 37万円(入居者賃料の約82%)
B 切替後の手取り 入居者賃料×想定稼働率−管理委託料−募集費の月割り 45万円×92%−管理料5%(2.1万円)−募集費月割1万円=約38.3万円
C 業者の転貸差益 入居者賃料×実稼働率−保証賃料(−業者の経費) 45万円×92%−37万円=約4.4万円/月=約53万円/年
D 立退料の上限の目安 C×残期間(更新の見込みを含めた年数) 残3年なら約160万円。正当事由の材料(3章)が強いほどここから下がる
E 回収期間 (D+違約金+弁護士費用)÷(B−A) B−A=1.3万円/月なら回収に10年超=解約の経済合理性は低い

このサンプルでは、減額後の保証賃料と切替後の手取りの差が小さく、立退料を払って解約する意味がありません。解約が合理的になるのは、B−Aが大きい(保証賃料が相場から大きく乖離している)か、売却でサブリース解除が買主の条件になっているか、業者に債務不履行があって立退料なしで終了できる場合です。逆に、業者の転貸差益Cが薄い物件は業者側にも解約の動機があるので、合意解約が通りやすくなります。

売却を前提にする場合は、サブリース付きで売る価格と、解約後に売る価格を仲介会社に別々に査定させ、その差額と(D+違約金)を比べます。ここは物件と買主の融資次第で、一般的な割合は言えません。

📝 9. これから契約する人へ:解約条件を契約書で固める

解約の難しさは契約の型と特約で大きく変わります。新法(賃貸住宅管理業法)は業者に契約前の書面交付と説明(30条)、契約時の書面交付(31条)を義務づけ、ガイドラインは重要事項説明書に「借地借家法32条・28条の適用を含めたリスク事項」「家賃が減額される場合があること」「更新拒絶には正当事由が必要であること」を記載させています。この説明がない業者は法律違反と、3庁のリーフレットは注記しています。契約前に見る項目は次のとおりです。

  • 普通借家か定期借家か:定期借家型なら、家賃を減額できない特約で32条の減額請求を排除できる(ガイドライン)。代わりにオーナーからの途中解約も原則できないので、期間の長さと再契約条件を確認する
  • オーナーからの中途解約条項:あっても正当事由は要るが、条項がなければ期間中の解約申入れ自体ができない。売却時の解除条件を入れられるか
  • 業者からの解約条項と予告期間:予告6か月以上、契約後一定期間は業者から解約できない旨、業者側解約時の原状回復と敷金精算
  • 違約金・損害賠償額の予定:金額と適用場面。ない場合は「ない」ことを確認する
  • 転貸人の地位承継と敷金の引継ぎ:契約終了時にオーナーが承継する旨と、敷金相当額の引渡し
  • 賃料改定の手続き:減額請求時の根拠資料の交付、改定周期、免責期間(入居後・退去後に賃料が入らない期間)の日数
  • 修繕の発注:業者指定か相見積可か。大規模修繕の負担区分

免責期間や修繕の指定は解約とは別の損益項目ですが、契約書の同じ条項群に入っているので一緒に見ます。業者選びの段階で見るべき登録・財務の確認先は、賃貸住宅管理業者の登録簿(国土交通省)です。

✅ 10. まとめ

サブリースは「解約できない契約」ではなく、「オーナー側からの解約に正当事由が要る契約」です。借地借家法28条は貸主からの更新拒絶・解約申入れの全部にこの要件をかけ、30条で特約による回避を封じています。だから業者の「解約できません」は法律の構造として半分正しい。もう半分は、正当事由を積み上げれば解約できるし、合意解約なら正当事由すら要らない、ということです。

手順は、契約の型と満了日の確認、材料の収集、合意解約の打診、内容証明での更新拒絶または解約申入れ(満了の1年前〜6か月前)、調停・訴訟の順。立退料に公的な相場はなく、業者の転貸差益×残期間が上限の目安で、正当事由の材料で下げていきます。減額請求は32条で業者に認められていますが、根拠資料の交付を求め、相当と認める額を主張する権利がオーナーにもあります。

解約後は、入居者との契約と敷金をオーナーが引き継ぎます。合意解約は入居者に対抗できず、期間満了や解約申入れによる終了でも入居者への通知から6か月は転貸借が続きます。解約するかどうかは、減額後の保証賃料と切替後の手取りの差で立退料と違約金を何年で回収できるかで決めます。差が小さいなら解約せず、差が大きいか売却条件になっているなら解約に動く。これが数字で決める順番です。

❓ よくある質問

Q1. サブリース契約はオーナーからいつでも解約できますか?

A. できません。オーナーからの更新拒絶・解約申入れには借地借家法28条の正当事由が必要で、これは特約で外せません(30条)。契約書に中途解約条項がなければ、期間中の解約申入れ自体ができません。業者との合意解約なら正当事由は不要なので、まず合意解約を打診し、応じなければ期間満了の1年前〜6か月前の更新拒絶通知に進みます。

Q2. 立退料はいくら払えば解約できますか?

A. 決まった額はありません。立退料は正当事由を補う要素で、借地借家法・国交省ガイドライン・標準契約書のどれにも金額基準はなく、払えば必ず解約できる性質のものでもありません。目安は業者の転貸差益(入居者賃料−保証賃料)に残期間を掛けた額が上限で、オーナー側の必要性や業者側の債務不履行があるほど下がります。

Q3. 業者から「解約なら残期間の保証賃料を全額払え」と言われました。

A. 契約書に損害賠償額の予定や違約金としてその定めがあるかを確認します。定めがなければ根拠はなく、あっても業者の損害は転貸差益であって保証賃料の総額ではありません。金額の根拠を契約書の条項番号で示すよう書面で求めるのが最初の返答です。

Q4. 減額請求を拒否したら業者から解約されますか?

A. 業者側の中途解約条項があれば、契約期間中でも業者から解約される可能性があります(国交省ガイドライン・3庁リーフレット)。拒否する前に、管理委託への切替と入居者の承継の受け皿を用意しておきます。減額請求そのものは、根拠資料の交付を求め、協議が調わなければ相当と認める額を主張できます(32条3項)。

Q5. 解約したら入居者は出ていかなければなりませんか?

A. 出ていく必要はありません。合意解約はオーナーから入居者に対抗できず(民法613条3項)、期間満了・解約申入れによる終了でもオーナーが入居者に通知してから6か月は転貸借が続きます(借地借家法34条)。標準契約書はオーナーが転貸人の地位を承継すると定めており、業者から受け取れなかった敷金も入居者への返還義務はオーナーが負うので、合意書で敷金の引継ぎを決めます。

Q6. 定期借家でサブリースを結べば減額も解約もされませんか?

A. 定期借家型のマスターリースで「家賃を減額できない」特約を定めれば、32条の減額請求は排除できます(国交省ガイドライン)。ただしオーナーからの途中解約も原則できず、期間満了で終了する契約になるので、期間の長さと再契約の条件、業者側の解約条項の有無を契約前に確認します。

📖 この記事の根拠(出典・参考)

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執筆者 西本豪
執筆者:西本 豪(楽待新聞コラムニスト)

関西の不動産投資家。賃貸経営の体験と、法令・公的機関の資料をもとに、税務・融資・賃貸経営・法人運営の実務ガイドを発信しています。

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