確定申告とは個人が1年間(1月1日〜12月31日)の売上や経費を計算した上で、国に納めるべき所得税や住民税を計算し、納税する手続きを確定申告のことです。
僕も2014年から個人事業主として事業を進めているので翌年の2015年から毎年確定申告をしています。
従来の確定申告では「税務署まで持参する」または「税務署宛に郵送する」ことで申告書を提出していましたが、e-Taxではインターネットを利用した電子申告が可能になります。
e-Taxの概要と電子申告の必要性
e-Taxとは「国税電子申告・納税システム」の呼称で、国税庁が運営しているサービスです。
逆に言えば、これまではこの程度しかメリットが無かったため、正直、電子申告は「やってもやらなくても良い」申告方法でした。
電子申告のハードルが低くなった(2019年から)
2018年より以前までのe-Taxでは以下の事前準備や機材の購入が必要でした。
僕も開業当時、e-Taxに挑戦しようと考えたのですが、余りにも大変そうだったので挫折してしまいました。
ですが、2019年の確定申告からは「マイナンバーカード方式」と「ID・パスワード方式」の2パターンから選択可能になり、挑戦するためのハードルがある程度低くなりました。
個人的にはID・パスワード方式がおすすめですが、マイナンバーカードやICカードリーダーライターを所有している場合はマイナンバーカード方式を検討するのもありです。
2021年はe-Taxに挑戦する絶好のタイミング
2021年の確定申告からは、従来までの電子申告では無い方法だと、青色申告特別控除の控除額が10万円削減されてしまいます。
控除額が10万円削減されることの影響は所得(課税対象額)によって変わりますが、所得税と住民税を合計すると少なくとも数万円程度は納税額が増えてしまいます。
ちなみに、2021年申告分からは青色申告特別控除が控除額は10万円削減されるものの、基礎控除額も10万円増加するため、プラス・マイナスすると控除額は変わらず「電子申告をしなければ損をする」という訳ではありません。
ですが、だからと言って、電子申告をしない理由にはなりませんし、一度、電子申告を覚えてしまうと、来年以降も同様の対応で青色申告特別控除の控除額を維持することができます。
2021年の確定申告は、電子申告へ切り替える絶好のタイミングです。
可能な限り電子申告を取り入れるべきです。
なお、青色申告特別控除については「知らない人は損してる?小規模不動産経営でも青色申告は申請できる!」の記事で詳しく説明しています。
電子帳簿保存(電磁的記録)による保存は難易度が高い
2021年からも青色申告特別控除として65万円の控除を受けるには、電子申告の他にも「電子帳簿保存(電磁的記録)」があります。
電子データによる保存のルールは、帳簿(仕訳帳、総勘定元帳)、決算書類(貸借対照表、損益計算書)、証憑(請求書、領収証など)を電子化し保存するための法律である電子帳簿保存法によって定められています。
電子帳簿保存による保存はかなり複雑で難易度が高いです。
また、電子帳簿保存において「電磁的記録」と「スキャナ保存」は意味が違います。「データは全てスキャナ保存していれば電磁的記録になるのでは?」と思ってしまいそうですが、そうではありません。
少なくとも2021年の段階では「青色申告特別控除として65万円の控除を受けるには、e-Taxによる電子申告が必要になる」と考えて差し支えありません。
マイナンバーカード方式の特徴
マイナンバーカード方式の特徴は以下のとおりです。
マイナンバーカード方式の対応手順
マイナンバーカード方式の手順は以下の通りです。
- 手順1パソコン、スマートフォンの利用環境を確認する
- 一般的なWindowsおよびmacOSは利用可能
- パソコンとスマートフォンの互換性などに注意する必要がある
- 手順2マイナンバーカードを準備する
- マイナンバーカードの作成には1ヶ月時間が掛かる
- マイナンバーカード取得時に設定した3つのパスワードが必要になる
- 利用者証明用電子証明書のパスワード(数字4桁)
- 署名用電子証明書のパスワード(英数字6文字以上16文字以下)
- 券面事項入力補助用のパスワード(数字4桁)
- 手順3ICカードリーダーライターを準備する
- ICカードリーダーライターを準備する
- 家電量販店やAmazonなどで購入可能
- マイナンバーカード読取対応のスマートフォンでも代替可能
- ICカードリーダーライターを準備する
- 手順4事前準備セットアップ
- 信頼済みサイト及びポップアップブロックの許可サイトの登録 ※1
- 確定申告書等作成コーナー用モジュールのインストール
- JPKI 利用者ソフトのインストールおよびセットアップ
- 手順5確定申告を開始する
- マイナンバーカードを読み取り認証情報を入力する
- 以降の処理はマイナンバー方式もID・パスワード方式も共通
マイナンバーカード読み込みに関するの注意点
マイナンバーカード方式でポイントになるのが「マイナンバーカードを読み取るためのICカードリーダライター」です。
ICカードリーダーライターは家電量販店のAmazonや楽天市場などで簡単に購入できますが、それぞれのパソコン端末に適応した種類を選ぶ必要があります。
ただ、最近ではICカードリーダーライターの機能を搭載したスマートフォンも増えてきています。適応したスマートフォンを持っている場合はわざわざICカードリーダーライターを購入する必要はありません。
徐々に適応できるスマートフォンやパソコン(OS)の種類も増えてきていますが、2021年1月の時点ではAndroidとWindowsパソコン以外の組み合わせだと、サポートされていなかったり互換性の問題で不具合がある組み合わせが多いようです。
僕が2021年の1月にE-Taxのヘルプデスクに電話で問い合わせたところ、市販のICカードリーダーライターを使わない場合、動作保証されているのはAndroidとWindowsパソコンの組み合わせだけのようでした。
Windowsパソコン | Macパソコン | |
---|---|---|
ICカードリーダライター | ◯ | ◯ |
Android | ◯ | × |
iPhone | × | × |
ちなみに、公的個人認証サービスのポータルサイトに掲載されている「マイナンバーカードに対応したNFCスマートフォン一覧(令和2年12月25日更新)」の情報では、iPhone端末でも対応可能のようですが、これはiPhone単体でE-Taxを完結させることはできるものの、iPhoneをICカードリーダライタとしてパソコンを利用した上でのe-Taxができる訳では無いようです。
スマートフォンだけで確定申告ができる?
実は、スマートフォンだけでも確定申告(E-Tax)をすることが可能です。
ですが、残念ながら、2021年の時点では「給与所得者が医療費控除や寄付金控除(ふるさと納税)を利用した場合」などかなり限定的な範囲内に留まります。
もしスマートフォンで電子申告を進めていったとしても、以下のようなケースではパソコン版で申請するよう促されてしまいまう。
なお、スマートフォンだけでは収支内訳書や青色申告決算書の作成ができないため、事業所得などを全て対応することはできないようです。
ID・パスワード方式の特徴
ID・パスワード方式の特徴は以下のとおりです。
ID・パスワード方式はマイナンバーカード方式と比べ、とにかくシンプルです。
ID・パスワード方式の対応手順
ID・パスワード方式の手順は以下の通りです。
- 手順1IDとパスワードを取得する
- 最寄りの税務署で発行する
- ID・パスワード方式の届出完了通知を取得する
- 利用者識別番号と暗証番号を取得する
- 運転免許書などの本人確認書類が必要
- 即日発行可能(所要時間は5分程 ※混雑状況による)
- ID・パスワード方式届出コーナー(インターネット)で発行する
- インターネットからも発行可能だが少し複雑
- 時間があれば最寄りの税務署で発行する方がおすすめ
- 最寄りの税務署で発行する
- 手順2利用環境を確認する
- 基本的に利用可能、それ程心配する必要は無い
- 手順3確定申告を開始する
- 利用者識別番号と暗証番号を入力し確定申告をすすめる
- 以降の処理はマイナンバー方式もID・パスワード方式も共通
ID・パスワード方式の注意点
ID・パスワード方式はマイナンバーカードやICカードリーダーライターが普及するまでの暫定的な対策です。
ただ、ID・パスワード方式は「一度だけ税務署に足を運ぶ」だけで簡単に取り組めますし、マイナンバーカード方式と比べると、機材や端末の互換性のように注意すべき点も少ないので、例え1年後には利用できなくなるとしても「とりあえず2021年の確定申告はID・パスワード方式で乗り切る」という考え方で十分だと言えます。
2021年度最新情報を把握する
e-Taxに挑戦するための事前準備や揃えるべき機材は年々緩和されてきています。
利用パソコンも当初はBluetooth接続が可能なWindowsOSが前提でしたが、少しずつ、MacOSでも利用できるようになってきました。
適応ブラウザもInternet ExplorerやMicrosoft Edgeのような標準ブラウザに限定されていましたが、少しずつGoogle Chromeなども利用できるようになってきました。
最後に2021年1月の時点で、e-Tax(電子申告)や青色申告特別控除の情報を簡単に整理すると以下のようになります。
現時点ではいろいろと制限も多く、まだまだ改善の余地のある制度(システム)ですが、来年以降も少しずつ利用しやすくなるはずです。
どうせ将来的に挑戦するつもりであれば、青色申告特別控除の控除額を65万円に維持するためにも、是非、2021年の確定申告からe-Taxによる電子申告にチャレンジしてみることをおすすめします。
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