収益物件による不動産投資の利点の一つとして節税効果が挙げられます。例えば、物件価格が1億円(土地5,000万円、建物5,000万円)の築古木造アパートをフルローンで購入し、年間家賃収入が1000万円見込める場合、キャッシュフローはこのようになります。
□収入
1000万円(年間家賃収入)
□支出
▲200万円(管理費、固定資産税等)
▲500万円(元利金返済)
⇒キャッシュフロー(実際のお金の流れ)は300万円
一方、会計上の損益計算では借入金利を200万円と仮定しました。元利金返済額が500万円であるのに対して、会計上の支出額としては総返済額のうち元金部分の300万円(500万-200円)は含まれないからです。
ここで返済金利や返済額の内訳を詳細に説明すると話がややこしくなるので、分かりやすく200万円とさせて下さい。っと言うより僕が混乱しそうです。
また減価償却費については築古の木造アパートを前提に計算しました。木造アパートの法定耐用年数は22年です。そして築年数が法定耐用年数を上回っている場合、法定耐用年数に0.2を掛けた年数が償却期間となり、この場合は4年となります。そして減価償却の価格は建物価格の5,000万円を4年で割るため、1年辺りの減価償却費は1,250万円となります。土地については基本的に劣化する事が無いため減価償却の計算としえは対象外となります。
□収入
1000万円(年間家賃収入)
□支出
▲200万円(管理費、固定資産税等)
▲200万円(借入金利)
▲1,250万円(減価償却費)
⇒会計上は▲650万円
その結果、損益としては650万円になり、この金額(会計上の赤字)に対して、それぞれの総所得額に応じた税率により課税額が計算されます。勿論、この場合はマイナスになっているため、本来の課税額から戻ってくる金額となります。
減価償却費については、新築のマンションなど築年数や建築構造(鉄筋コンクリート造や木造など)が異なると償却期間が大きく変わってしまうため注意が必要ですね。
次に課税額の計算です。総所得金額が3,000万円を超えるような方の場合、40%が税率(総課税額から差し引かれる税率)となるため、260万円となります。この場合、実際のキャッシュフローの合計としては不動産収益から必要経費および元利金返済額を差し引いた300万円に260万円を加算した560万円となります。
□税率
⇒ 650万円 × 40% = 260万円
□キャッシュフローの合計
⇒ 300万円 × 260万 = 560万円
一方、僕のような総所得額が695万円に満たないような場合は、会計上の損失が同じ650万円としても税率が20%となるため、130万円となります。またキャッシュフローの合計額は430万円になります。
□税率
⇒ 650万円 × 20% = 130万円
□キャッシュフローの合計
⇒ 300万円 × 130万 = 430万円
所得税の速算表
課税対象額 | 税率(所得税) | 控除額 |
---|---|---|
~195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円超~330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円超~695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円超~900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円超~1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円超~4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
超過累進制度は所得が増える程、課税額を計算するための税率が高くなります。なので当然の事ですが、会計上、総所得金額を抑える事が出来ればそれだけ高い税率分の課税額が差し引かれる事になります。ちなみに超過累進の税率については平成27年分以降は所得金額4,000万円以上の最高税率が45%に引き上げられます。
今回の例では話を分かりやすく(大袈裟?)にするため、減価償却費の償却期間を4年と極端に短いケースを仮定したため、どのような物件を購入してもこれ程大きな節税効果が得られる訳ではありません。また当然、償却期間が短ければその分、短い期間でその効果は無くなってしまします。上記の場合、会計上計上される1,250万円の減価償却費は4年間で無くなってしまいますよね。
ただこれ程の規模になると課税を先延ばしにする事自体が大きなメリットです。キャッシュ(手元資金)が残れば、そのお金を別の投資資金として使えますからね。
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