合同会社設立の具体的な手続きについて

節税対策
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賃貸経営は入居者の獲得や将来の修繕工事の方針決系などが大切ですが、同じように大切な項目として「節税対策」があります。

節税対策を考慮した上で、個人事業主が事業規模を拡大していく場合、大きく以下のような選択肢があります。

  • 個人事業主として進めていくか?
  • 会社を設立して法人として進めていくか?

賃貸経営の目的が「老後資金の確保」や「低リスクな資産運用」であれば、区分マンション1戸〜2戸程度でも良いかもしれませんが、将来的に事業規模の拡大を目指したい場合は法人化することで節税対策に繋がります。

現在、日本では、法人化の手段として「株式会社」と「合同会社」の2つの選択肢が一般的ですが、この記事では設立費用が安く設立後の運営も比較的容易である「合同会社」の設立について解説します。

  • 合同会社の設立手順や考え方を知りたい人
  • 合同会社の設立に伴う注意点を知りたい人
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合同会社設立の具体的な手続きは

「会社設立」と聞くと事業として大成功しているようなイメージがあるかもしれませんが、賃貸経営の場合は、まだ事業的規模の経営ができていなかったとしても、比較的、早いタイミングで法人化を検討する人が多いです。

また株式会社に比べて、合同会社だと、会社設立に必要となる資料も少なく、設立後の管理コスト(維持費用など)もある程度抑えることができます。

合同会社設立の流れ

合同会社を設立する場合、以下のような手順で手続きを進めることになります。

  1. 基本事項(定款の内容)を確定させる
    • 社名(商号)…何でも良い、自分の好みで
    • 本店所在地(住所)…基本的には自宅で良い
    • 役員…自分(代表社員だけでも良い)
    • 事業目的…基本的には不動産経営などで良い
    • 資本金額…1円以上でも良い
  2. 印鑑を作成
    • 発起人(代表者)の印鑑、印鑑証明書
    • 社判(法人の印鑑)
      • 代表印(会社実印)…会社設立時に法務局で登録
      • 銀行印…法人用口座の作成時に登録
      • 社印(認印、角印)…一般的に利用
  3. 公証役場での認証(1週間程掛かる)
    • 定款、委任状
    • 定款認証代金(株式会社…52,000円、※合同会社は不要)
      • 定款の認証手数料(株式会社…50,000円、※合同会社は不要)
      • 定款の謄本手数料(株式会社…2,000円、※合同会社は不要)
    • 本人確認書類
    • 定款電子データ受け取り用のメディア(CD-R)
    • 発起人(代表者)の印鑑証明書、実印
  4. 資本金の入金
  5. 法務局へ提出
    • 定款、印鑑証明書
    • 資本金の入金書(コピー)
    • 登録免許税(株式会社…150,000円、合同会社…60,000円)
    • 社判(法人の印鑑)、発起人(代表者)の印鑑、(※記載誤り、押印漏れのため)

合同会社の設立には関連資料の作成や公証役場での手続きなどある程度時間が掛かるため、着手してから1ヶ月程は掛かると言われます。

金融機関に対して、(個人では無く)法人として融資を受けたい場合は、その辺りも考慮して、早い段階で金融機関と合意を取る必要があります。

社名変更は面倒くさい?

賃貸経営のために会社を設立したとしても、その社名が全面に出るタイミングは意外と少ないですが、それでも一度決めた社名を変更したい場合もあるかもしれません。

社名変更をするにはどのような手間や費用が掛かるのでしょうか?

まず、社名は登記事項として登記簿に明記されます。

また社名が変わるということは、当然「社判(法人の印鑑)」も変わるはずです。

大規模な会社で社員(役員)の同意が必要な場合は、その辺りの手間は必要かもしれませんが、小規模な賃貸経営の場合だと、ほぼ代表者の独断で変更できるはずなので、意思決定もスムーズに進み、意外と簡単に社名変更できそうです。

ちなみに賃貸経営の場合は余り無いかもしれませんが、以下のように会社形態を後から変更するのもそれ程、難しいことでは無いようです。

  • 合同会社から株式会社への変更
  • 株式会社から合同会社への変更

ただ、いずれにしても「必ずしも必要か?」と考えると微妙なので、会社設立のタイミングで慎重に考えて、その後は基本的に変更しないで済むようにできた方が絶対に良いですよね。

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定款って何?

合同会社を設立するためには定款が必要になることが分かった訳ですが、定款とは具体的にどのようなものなのでしょうか?

定款の役割と記載事項

ここでは定款について簡単に特徴をまとめました。

  • 会社を運営するための基本的な規則(※会社の憲法)
  • 以下3点の記載事項を定める必要がある
    • 絶対的記載事項
      • 定款に必ず記載しなければいけない事項
        • 記載が無ければ無効となる
      • 社名(商号)、本店所在地(住所)、役員、事業目的、資本金額など
    • 相対的記載事項
      • 定款に記載が無くても定款自体の効力には影響がない
        • ただし未記載の場合、該当事項の効力は無い
      • 取締役会の設置規定、役員任期の規定など
    • 任意的記載事項(※定款記載の必須項目では無い)
      • 任意に記載事項を定義
      • 取締役などの役員の人数など
  • 本店所在地を管轄する公証役場に提出し認証を受ける必要がある

定款は株式会社だけでは無く、合同会社でも作成が必須の書類です。ただし、合同会社の場合は「株式の発行」が無いため、株主総会などの項目はありません。

公証役場と法務局

ここまでの説明で定款のイメージがざっくりつかめたと思いますが、せっかくなので、ついでに「公証役場」と「法務局」についてもどのような役割があるのか簡単にまとめてみます。

  • 公証役場
    • 法務省が管轄し全都道府県に設置されている
      • 全国で約300箇所、大阪だけでも11箇所が設置
    • 中立な立場で公的な証書の作成や認証を行う
    • 定款の認証以外にもさまざまな書類の認証を行う
      • 相続関係、不動産の売買関係など
  • 法務局
    • 法務省が管轄し全国に設置されている
      • 法務局、地方法務局、支局、出張所など約500箇所が設置
    • 不動産登記(土地、建物)、商業登記(法人登記)、相続登記などを管理
    • 公証役場で認証された定款の提出先
      • 宗教法人、NPO法人なども登記可能
    • 戸籍・国籍事務、供託事務、人権擁護事務なども対応

「定款」「公証役場」「法務局」の特徴が分かれば、誰かに法人化の手続きを説明する場合でも、とてもスムーズになると思います。

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定款と登記の違い

「定款」と「登記」の違いについても混乱してしまいそうなので簡単に解説します。

  • 定款
    • 会社を運営するための基本的な規則(※会社の憲法)を会社側で管理
  • 登記(登記簿謄本)
    • 定款の規定の中で「法的に定められた」部分を法務局側で管理
    • 手数料を支払うことで誰でも閲覧可能

定款と登記(登記簿謄本)の内容としては、ほとんど大きな違いはありませんが「会社側で管理している」か「法務局側で管理され一般の人でも閲覧可能か」の違いがあります。

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会社員をしながら法人を設立すると?

会社員をしながら賃貸経営のために(つまり副業のために)会社を設立する場合、いくつか注意点が出てきます。

社会保険の負担はどうなる?

個人事業主の場合、従業員が4人以下であれば社会保険への加入義務はありません。

ですが、法人を設立した場合、株式会社でも合同会社でも、また社員が代表社員一人であっても、(役員報酬が0円で無い限り)社会保険には強制的に加入しなければいけません。ちなみに社会保険には以下の5項目が含まれます。

  • 健康保険
  • 年金保険
  • 介護保険
  • 雇用保険
  • 災害保障保険

会社員として勤めている(本業側の)会社で社会保険に加入しており、かつ(自らが設立した会社も含め)どこか別の会社から報酬をもらっている場合、それぞれの会社の社会保険に加入する必要があるのですが、その場合、以下のような流れになります。

  • 勤め先の会社の管轄する年金事務所に「健康保険・厚生年金保険被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を提出
  • 年金事務所が全ての給与金額を合算し、それぞれの会社ごとに「標準報酬月額」で按分した上で、社会保険料を確定
  • 年金事務所からそれぞれの会社に対して社会保険料の金額が通知
  • それぞれの会社ごとに毎月の給与から該当する社会保険料を天引き

なお「標準報酬月額」とは毎年の4月〜6月の収入金額の返金の金額で標準報酬月額表により(大きな差はありませんが)都道府県ごとに定められています。

勤め先の会社にばれないか?

勤め先である会社から給与所得をもらいながら、自ら設立した会社からも報酬をもらってしまうと、勤め先である会社に対して保険料の金額が通知されてしまうため「どのか他の会社から報酬を受けていること」がバレてしまいます。

副業規定などが無く、バレてしまっても構わない場合は特に工夫は必要無いですが、もしバレたくない場合は以下のような対策をするのが一般的です。

  • 自分の役員報酬を0円として社内に内部留保を溜め続ける
  • 同一生計である配偶者や親族に対して報酬を支払う

つまり、いずれかの方法で「自ら設立した会社から自分の報酬を0円にする」ことで、社会保険料の上昇を防ぎ、どこかのタイミング(例えば今の勤め先を退職したタイミングなど)で、法人側から個人側にお金を移せば問題無いはずです。

また、代表を配偶者として会社を設定すれば、登記簿上でも自分の名前が表面に出てくることは無いため、身バレ(身元がバレるの)を避けたい人は有効かもしれませ。

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会社設立のタイミングは?

個人の賃貸経営者が法人化を検討する場合、ポイントになるのは「節税効果と維持コストのバランス次第」になります。

当然ですが、株式会社や合同会社を設立して、法人化するには「設立費用」や「維持費用」が掛かります。

そのため、わざわざお金を掛けて法人を設立したとしてもそれに見合うだけ(またはそれ以上)の効果が無ければ、その分、お金が無駄になってしまいます。

賃貸経営者が会社を設立するタイミングとしては、主に以下の2パターンに分かれます。

  • 売上がが一定以上になったタイミング
  • 融資を受けるタイミング(最初から法人化する)

賃貸経営以外の業種の場合は「売上げが一定以上になったタイミング」が多いですが、賃貸経営の場合は、事業規模が小規模でも、比較的早いタイミングで法人化することが多いです。ちなみに、その一番の理由は「投資用物件の売却益による譲渡所得の課税方法」です。

「法人化はいつするのか?」「そもそも法人化する必要があるのか?」は個人の条件によりさまざまですが、将来的に事業規模を拡大することを目指したいのであれば「融資を受けるタイミング」で最初から法人化するべきだと考える不動産投資家も一定するいます。

なお、賃貸経営における法人化のメリットと適切なタイミングなどについては、以下の記事で詳しく説明しています。将来、法人化を検討したい人にはおすすめの記事だと思います。

賃貸経営における法人化のメリットと適切なタイミングは?
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