日本の抱える大きな問題として「人口減少問題」や「少子高齢化問題」などがあります。
「人口が減少すると何の問題があるのか?」と言えば以下のようなものが挙げられます。
- 労働力の低下による競争力が低下
- 労働人口の減少および高齢化人口の上昇による年金問題
日本として、どうしても高齢化による年金問題が取り上げられます。勿論、年金問題を解決することはとても大切ですが、賃貸経営者としてはもっとも心配なのは「空室率の増加問題」です。
このまま人口が減り続けると賃貸市場にどのような影響があるのかを今後の予想も交えてまとめてみました。
日本の人口は減少していく
日本の人口は10年程前から少しずつ減少していっています。
また2020年頃からは世帯数も減少傾向になると予想されています。
人口と世帯数の違いは以下の通りです。
- 日本の人口
- 日本に住んでいる人の総数
- 2017年の時点では1億2,600万人〜1億2,700万人程
- 日本の世帯数
- 日本にある世帯の数
- 2017年の時点では5,300万〜5,400万程
つまり4人家族が同じ家に住んでいる場合、人口は4人なのに対して、世帯数は1世帯になります。
2020年頃からは世帯数も減少する
出生率も減少傾向になっていて2017年に生まれた新生児の数は過去最低水準の94万人となり、このままでは2050年頃には日本の人口は9,500万人程になっているとも予想されています。
また、ワンルームマンションを中心としている区分投資家として「世帯数さえ維持できればまだ需要は見込めるのでは無いか?」と考えるかもしませんが、残念なことに2020年頃からは世帯数も減少傾向になると予想されています。
人口増加が見込める地域もある
多くの地域で人口が減少していくと言われている中、市町村ごとの将来推計人口を見てみると、東京を中心に人口増加が期待できる地域も少なからず存在します。
裏を返せば、その分だけその他の地域は人口の減少が進むわけですが、将来の人口増加や維持(もしくは微減)が見込める地域を見極めることでリスクを抑えることはできる訳ですが、長期的な視点で考えると、やっぱり日本全体で人口減少に向かっているので、人口が減少しても賃貸経営を続けられるような工夫が必要です。
世帯数の減少は空室率に大きな影響がある
今までは、仮に人口が減ってきても、世帯数は増加傾向でした。
その理由は主に以下の2パターンと考えられます。
- 昔と比べて親元を離れ一人暮らしをする若者が増えたから
- 未婚率(生涯未婚率)の増加により高齢者や中高年(特に男性)の一人暮らしが増えたから
そのため「世帯あたりの人数」は徐々に減少傾向になっています。
ただし、今後も引き続き日本の総人口が減ることで、結果的に世帯数も減少していくことになります。
賃貸経営の視点で考えると「世帯数はお客様の数」な訳です。
そのため日本の世帯数が減っていけば、賃貸経営者同士で限られたお客様を奪い合うことになるため、単純に考えても、より競合物件(他の家主)との競争が厳しくなることを意味します。
空室率は年々増加の傾向
人口や世帯数の減少により空室率(空き家率)は年々増加傾向です。
空室率が増え続けている原因としては人口減少だけでは無く固定資産税など別の問題もありますが、それでも、仮に空室率が20%の地域では5室中1室は空室になってしまう計算なので、この数字が大きくなればなるほど、経営が行き詰まることは目に見えています。
不動産会社の平均入居率は信用できない?
良く不動産会社の営業は「弊社の物件は入居率95%なので大丈夫です!」と誇らしげに言ってきます。
日本の平均空室率が15%〜20%程であることを考えると少しギャップがありますが、それだけその不動産会社の物件や管理業務が優秀なのでしょうか?
確かに立地、物件の品質、管理会社の業務レベルなどにより高い入居率を確保している物件もありますが、それでもこの高過ぎる入居率は少し疑わしいものです。
基本的に平均入居率の定義は販売会社や管理会社によって考え方が違います。
具体的には平均入居率を高く算出するために調査対象を入居率の高い物件や入居率の高い時期を中心に計算することが一般的です。
「自分が購入しようとしている販売会社の平均入居率は○○%だから安心だ!」と考えるのでは無く、平均入居率の定義を正しく理解して冷静に見極める必要があります。
関西の賃貸市場は大丈夫?
よく不動産販売会社の営業は「今、日本の世帯数はどんどん増えているのでワンルームマンションは需要増です!」と言います。特に首都圏や大都市の営業だとは「地方では人口が減っているが都心では増え続けているので全然問題無い」ような言い方をします。
確かにその通りで、現状では東京圏・名古屋圏・関西圏の合計人口は全国人口の半数以上を占めているといえます。ですが、だからと言って日本全体での人口が減り続ける中、「都心だったら大丈夫!」と言う考えは余りに軽率で楽観的な考え方です。
短期的には一時的に増加傾向の地域もありますが、長期的に考えるとやっぱり日本全体で人口減少に向かっているからです。
日本の未来は明るい?
今の日本はとても元気です。東京ではオリンピックへの期待が高まっていますし、関西でも大阪万博が開催されることもあり、以下のようなイベントを控えています。
大阪では近い将来、主に以下のようなイベントが予定されています。
- 2019年…G20サミット首脳会議
- 2022年…新今宮駅前に星野リゾート開設
- 2023年…新名神高速道路全線開通
- 2024年…夢洲にカジノを含む統合型リゾート施設を開設
- 2024年…京阪中之島線延伸、大阪市営地下鉄中央線延伸
- 2025年…大阪万博開催
- 2031年…なにわ筋線開通
- 2037年…リニア中央新幹線大阪延伸
- 2046年…北陸新幹線大阪延伸
この辺りだけを見て不動産投資を考えると「何も心配いらない」考えたくなりますが、残念ながら、それは錯覚です。
東京の場合、2020年までは物価は上がり需要も増え続けるかもしれませんが、賃貸経営者からしたら2020年以降のことをしっかり予測しないといけません。
不動産の場合、長期(例えば35年)でローンを組んでいる場合も多く、むしろ2020年以降の方が大切です。
地域が発展することは喜ばしいですが、ある一定数の需要を超えた先に待っているのは、ただの過剰供給です。
東京圏や関西圏で不動産を保有することは基本的には良い判断かもしれませんが、ただ余りにも「全て上手く行くので何も問題無い」と言う意見を信じ過ぎるのはやはり疑問です。
家主が取るべき対応策は?
それでは、現在、賃貸経営をしている家主としてはどのような対応策があるでしょうか?
…と言いたいところですが、結局は「基本的なことをコツコツをする」しか無いように思います。
競合のリサーチと差別化
入居希望者の数が減るということは地域ごとの顧客(入居希望者)獲得の競争が厳しくなることを意味します。
そう考えると適切な価格設定をすることや、近隣の競合物件を比較されても見劣りしないような差別化が必要になります。最近だとAIやIoTなどの最先端技術を取り入れた物件も徐々に注目されてきています。
高齢者や外国人を積極的に迎え入れる
繰り返しになりますが、これからの日本は少子高齢化によって高齢者の割合がどんどん増えていきます。「高齢者は孤独死などのリスクがあるからできれば避けたい」と考える家主もいますが、正直、そんなことは言ってられないはずです。
また、今後、日本は国として外国人を積極的に受け入れる方向に向かいます。特に労働面では、ある程度、外国人の方に支えてもらわなければいけない程の人手不足になっていますが、それは賃貸経営でも同じことです。
何かと苦労しそうなイメージもあると思いますが、外国人や高齢者の入居者にはそれぞれにメリットがあるので、特徴を理解し対応することで安定性の高い賃貸経営に繋げることができます。
賃貸市場が崩壊することは無い?
これからの日本の賃貸市場は少しづつに厳しさを増していくはずです。
ですが、賃貸経営に向かない地域から徐々にレッドオーシャンに向かうかもしれませんが「一気に需要が崩壊する」ということはありません。
「価格の下落」にしても「需要の低下」にしても一気に常識が覆るような極端なリスクが少ないことは不動産のメリットの一つです。
株式投資やFXなどは一瞬で暴落してしまうようなこともありますが、不動産投資の場合は少なくとも一瞬(数ヶ月)でそのような自体に陥る可能性は極めて低いです。
勿論、震災による建物倒壊のリスクや液状化のリスクは存在しますが、株式投資やFXなどを比べると経営側で備えることでコントロールできる範囲のリスクだと言えます。
楽観視し過ぎるのは良くないことですが、過剰に悲観し過ぎると何もできなくなってしまいます。
リスクは謙虚に受け入れながらも、自分にできることをコツコツと進めることが大切だと思いました。
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