抵当権と根抵当権の違い|不動産投資家のための担保の基本と費用・抹消・借換まで完全解説

融資戦略
この記事は約10分で読めます。

不動産を購入する際、ほとんどの人は金融機関から融資を受け、対象の不動産に抵当権ていとうけんまたは根抵当権ねていとうけんが設定されます。両者の違いを理解することは、追加融資・借換・売却・他行融資の組み合わせを考えるうえで欠かせません。

本記事では、抵当権と根抵当権の法的な違い・極度額の意味・第一抵当と第二抵当の関係・共同担保の意味・抵当権設定/抹消/借換の登録免許税と司法書士報酬・競売の流れまで、不動産投資家が押さえるべき担保の基本を、民法・登録免許税法・民事執行法など一次情報に基づいて整理します。なお、登記簿の取得方法や登記識別情報通知書、所有権移転登記など登記実務全般は姉妹記事「不動産登記の重要性と登記事項証明書の種類について」に集約しています。

この記事は以下のような方におすすめです!
  • 抵当権と根抵当権の違いを民法レベルで正確に理解したい人
  • 抵当権設定・抹消・借換にかかる登録免許税と司法書士報酬を知りたい人
  • 第一抵当・第二抵当・共同担保の意味と注意点を整理したい人
  • 担保ローンと無担保ローンの基本的な違いを把握したい人
  • 万が一返済が滞った場合の競売・任意売却の流れを知っておきたい人
🎯 30秒でわかる本記事の要点
  • 抵当権は特定の1債権を担保するもの。完済すれば自動消滅し、抹消登記で登記簿から消える。
  • 根抵当権は極度額の枠内で不特定多数の債権を継続的に担保する。完済しても枠は残り、追加融資が可能。
  • 抵当権設定登記の登録免許税は本則0.4%(住宅用家屋なら0.1%)。投資物件には住宅用家屋の軽減は適用されない。
  • 抵当権抹消登記は不動産1個につき1,000円。借換時は新規設定+抹消で二重発生する。
  • 返済不能時は競売へ。落札価格は市場価格の50〜70%程度に下振れすることが多く、早期に任意売却に切り替える選択肢もある。
スポンサーリンク

📚 抵当権の仕組みと不動産担保の基本

抵当権とは、金融機関(債権者)が融資をするとき、ローンを借りる人(債務者)が所有する不動産に設定される「貸し倒れに備えた担保の仕組み」です。借りた側が返済できなくなった場合、金融機関は抵当権を行使して不動産を競売けいばいに掛け、売却代金から貸付金を回収できます。民法369条以下に定めがあります。

📖 抵当権に関する基本用語

抵当権・根抵当権を理解するために、まず最低限おさえるべき用語を整理します。

専門用語説明
抵当権融資に伴い金融機関が設定する権利(担保)
抵当権者抵当権を保有しているお金を貸した側の融資元の金融機関
抵当権設定者抵当権を設定するお金を借りた側の不動産の購入者
根抵当権限度額の範囲内で自由に融資を受けれる抵当権(担保)
第一抵当権債務不履行が起こった場合に優先弁済を受けられる権利
第二抵当権複数の抵当権が設定されている場合の二番目の抵当権
担保物件抵当権が設定された物件
共同担保一つの融資に対して複数の不動産を担保として設定すること
有担保ローン抵当権を設定したローン
無担保ローン抵当権を設定しないローン
不動産登記不動産の状態、所有者、権利関係などを記録する手続き全般
登録免許税登記手続きの際に国に納める税金
司法書士登記手続きを依頼する先の専門家
法務局登記情報を管理する組織

抵当権は不動産登記簿の乙区おつくに記録されます。登記簿の構造(甲区/乙区/表題部)や取得方法は姉妹記事で解説しています。

スポンサーリンク

⚖ 抵当権と根抵当権の違い:法的な完全比較

抵当権(民法369条以下)と根抵当権(民法398条の2以下)は、「特定の1債権を担保する」か「極度額の枠内で複数の債権を継続的に担保する」かという根本的な構造が異なります。

項目 抵当権 根抵当権
担保する債権特定の1債権不特定の複数債権(極度額の枠内)
担保額の上限債権額(借入額)極度額きょくどがく(事前に設定した枠)
完済時の扱い自動的に消滅。抹消登記で登記簿から消える自動的には消滅しない。枠は残り、再度借入可能
追加融資毎回新しい抵当権を設定(再度の登録免許税)極度額の範囲内なら追加登記不要
登録免許税債権額×0.4%(住宅用家屋は0.1%)極度額×0.4%
他行融資への影響完済後は担保余力が復活し、他行で第一抵当が組みやすい枠が残るため他行は後順位に入りにくい

💴 極度額とは(根抵当権の核心)

極度額きょくどがくは、根抵当権で担保される債権の上限額(枠)のことです。借入元本だけでなく利息や遅延損害金も含めた最大想定額として設定するのが一般的です。実際の借入額より大きい金額が登記簿に記載されることが多く、極度額を超える借入については根抵当権の対象外となります。

極度額が実際の借入額より大幅に大きい根抵当権が付いた物件は、他行が後順位の担保権者として入りにくくなります。これは「極度額の枠が常に第一順位として優先されるため、後順位行の実質担保価値が小さい」と判断されるためです。極度額の決定は銀行と協議のうえで行われます。

🔄 第一抵当権と第二抵当権(順位の意味)

同じ不動産に複数の抵当権が設定されている場合、設定順に第一抵当権(1番抵当いちばんていとう)・第二抵当権(2番抵当)と順位が付きます。万が一競売けいばいになった場合、競売代金から第一抵当権者が優先的に回収し、残額があれば第二抵当権者へという順番で配当されます。

第一抵当権と第二抵当権の違い
  • 第一抵当権
    • 競売時に最優先で回収。リスクが低いため金利も低めに設定されることが多い
  • 第二抵当権(後順位抵当)
    • 第一抵当権の回収後の残額にしか手が届かない。リスクが高いため金利も高めに設定されることが多い

🔗 共同担保と共同担保目録

共同担保とは、1つの債権に対して複数の不動産を担保として設定する仕組みです。たとえばアパート1棟と土地を1つの融資の担保とする場合、両方の不動産に同じ抵当権が設定されます。これらの一覧を「共同担保目録きょうどうたんぽもくろく」と呼び、登記簿に附属書として綴じられます。

共同担保のメリットは「個別の物件では担保力が足りなくても、複数を束ねれば融資が出る」点。デメリットは1物件を売却したくても、他の共同担保物件まで巻き込んで抵当権を整理する必要がある点です。共同担保目録に組み込む物件は慎重に選ぶ必要があります。

🆚 担保ローンと無担保ローン

項目 担保ローン 無担保ローン
担保不動産(抵当権設定)なし
金利相対的に低い相対的に高い
借入限度額担保価値に応じて大きく事業規模・決算次第
期間中長期が中心中短期が中心
用途物件取得・建築・大規模リフォーム運転資金・小規模設備・繋ぎ資金

具体的な金利水準・期間・限度額は金融機関ごと・案件ごとに大きく異なります。決算書の作り込みや金融機関との関係構築については役員借入金とDESで自己資本比率を改善|株式会社/合同会社の手続・代表死亡・住民税均等割の実務を併せて参照してください。

スポンサーリンク

📊 不動産担保評価の3手法

金融機関が不動産の担保価値を評価する手法は、不動産鑑定評価基準で3つに大別されています。投資家が「銀行はこの物件をどう評価するか」を読めるようになると、融資打診前の物件選定の精度が上がります。

評価手法 計算方法の概要
原価法げんかほう(積算価格)土地(路線価×面積等)+建物(再調達原価×残存年数/法定耐用年数)
収益還元法しゅうえきかんげんほう(収益価格)純収益(NOI)÷ 還元利回り
取引事例比較法とりひきじれいひかくほう(事例価格)類似取引事例の価格を地域・時点・物件特性で補正

担保評価は金融機関ごとに重視する手法・採用する数値が異なります。同じ物件でも銀行Aと銀行Bで評価額が変わるのはそのためです。具体的な計算例や継続融資への活かし方は不動産投資の銀行格付けと債務償還年数|DSCR・LTV・債務者区分の実務マニュアル【2026年版】で詳しく解説しています。

スポンサーリンク

💴 抵当権設定登記の費用と軽減税率

抵当権・根抵当権の設定には登録免許税とうろくめんきょぜいと司法書士報酬が必要です。投資物件には住宅用家屋の軽減税率は適用されないため、本則0.4%で計算するのが基本です(国税庁タックスアンサー No.7191・法務省)。

登記 課税標準 本則税率 軽減税率(住宅用家屋)
抵当権設定債権額0.4%0.1%(自宅マイホームのみ)
根抵当権設定極度額0.4%なし
抵当権抹消不動産個数1個1,000円
根抵当権抹消不動産個数1個1,000円
抵当権変更(債務者変更等)不動産個数1個1,000円

具体的に5,000万円の融資を抵当権で組む場合、登録免許税は20万円(5,000万×0.4%)。住宅用家屋なら5万円(5,000万×0.1%)。収益物件には住宅用家屋の軽減税率は使えないため、賃貸アパートでは本則0.4%で計算するのが基本です。司法書士報酬は依頼先・案件規模によって異なります。

💴 借換時の登記費用(新設+抹消の二重発生)

融資を別の金融機関に乗り換える「借換」では、旧抵当権の抹消+新抵当権の設定の2つの登記が同時に発生します。借換のメリットを試算するときは、この登記費用を「金利差で何ヶ月で回収できるか」と引き算する視点が重要です。

📐 借換の登記費用試算(借入5,000万円・土地建物2個の場合)
  • 抹消登記:登録免許税2,000円+司法書士報酬
  • 新規設定:登録免許税20万円+司法書士報酬
  • 金利差0.5%(年25万円)なら登記費用回収まで約1年程度/金利差1.0%(年50万円)なら半年程度が目安

🔄 売却時の抹消登記

物件を売却する際、抵当権が残ったまま所有権移転登記をすることはできません。決済日に売主は売買代金で残債を一括返済し、金融機関から発行される抹消書類(登記原因証明情報・解除証書・登記識別情報通知書または登記済証)を司法書士に渡し、抵当権抹消登記+所有権移転登記+(買主側の)抵当権設定登記の3つを同日同時に法務局へ申請します。

売却時の登記費用や個人vs法人の譲渡税差については、不動産売却の出口戦略|個人vs法人の譲渡税差・銀行関係維持・宅建業免許リスクで詳しく解説しています。

スポンサーリンク

⚠ 返済できなければ?(競売と任意売却)

万が一、ローンを返済できない状態(債務不履行さいむふりこう)が続くと、金融機関は抵当権を行使し、不動産を競売にかける手続きに入ります。これは民事執行法に基づくもので、概ね以下の流れで進みます。

フェーズ 起こること
①督促状・催告書滞納が始まると金融機関から督促状・催告書が届く
②期限の利益喪失分割払いの権利を失い、残債一括請求される
③代位弁済保証会社が代わりに残債を支払い、債権者が保証会社に変わる
④競売申立裁判所に競売を申し立て、現況調査が始まる
⑤競売開始決定・落札入札・落札・代金納付・所有権移転

競売の落札価格は、市場価格より低くなるケースが多いとされています。返済が苦しくなった早期段階で任意売却にんいばいきゃく(金融機関の同意のもとで通常市場で売却し、残債を支払う方法)に切り替える選択肢もあります。任意売却なら市場価格に近い金額で売却できる可能性があり、競売手続きの公示や信用情報への影響も最小限に抑えられるとされています。

スポンサーリンク

❓ よくある質問(FAQ)

Q1. 根抵当権を完済しても自動的に消えないのは本当ですか?

A. 本当です。根抵当権は完済しても枠が残るため、自動的には消滅しません。消したい場合は別途「元本確定がんぽんかくてい」の手続きを行ってから抹消登記します。一度元本確定すると枠を再利用できなくなるため、銀行との取引を続けるか終了させるかの方針を踏まえて手続きします。

Q2. 第二抵当権で他行から融資を受けるのは現実的ですか?

A. 一般論としては容易ではありません。第一抵当権者の極度額(特に根抵当権)が大きく設定されている場合、第二抵当権者は実質的な担保価値がほぼゼロになるためです。現実的なのは「第一抵当を完済→他行で第一抵当を組み直す(借換)」または「別物件で他行と第一抵当」という流れです。後順位での融資は商品が限定的で、金利も相対的に高い傾向があります。

Q3. 共同担保に自宅を入れるのは避けるべきですか?

A. 共同担保に自宅を入れると、長期にわたって自宅売却・贈与・名義変更ができなくなる可能性があるうえ、万が一の事業悪化時に自宅が競売対象になります。融資の際に銀行から共同担保を要求された場合は、極度額の調整や別の物件を共同担保に入れる選択肢も含めて慎重に検討する必要があります。家族の生活基盤に直結するため、即決せず税理士・司法書士と相談するのが安全です。

Q4. 抵当権設定の住宅用家屋軽減を投資物件で使えませんか?

A. 賃貸用の収益物件(アパート・マンション一棟・店舗)には住宅用家屋の軽減税率は使えません。住宅用家屋の軽減(抵当権設定0.1%)は「自宅マイホーム」のみが対象です。投資物件は本則0.4%で計算するため、5,000万円融資なら20万円の登録免許税が必要です。これを「投資のコスト」として正しく認識し、利回り試算に織り込むのが基本です。

Q5. 同じ物件でも銀行によって担保評価額が違うのはなぜですか?

A. 銀行ごとに重視する評価手法(原価法・収益還元法・取引事例比較法)と採用する数値が異なるため、同じ物件でも評価額が変わります。土地は路線価・公示地価・固定資産税路線価のどれを採用するか、建物は再調達原価をどう見積もるか、担保掛目を何%にするか等で結果が変動します。詳しくは不動産投資の銀行格付けと債務償還年数|DSCR・LTV・債務者区分の実務マニュアル【2026年版】を参照してください。

スポンサーリンク

🎯 まとめ

本記事のポイント総まとめ
  • 抵当権は「特定1債権専用」、根抵当権は「極度額の枠で複数債権を継続的に担保」
  • 抵当権は完済で自動消滅、根抵当権は完済しても枠が残り元本確定の手続きが必要
  • 抵当権設定の登録免許税は本則0.4%、投資物件には住宅用家屋軽減(0.1%)は適用不可
  • 抵当権抹消は不動産1個1,000円。借換時は新設+抹消の二重発生
  • 第一抵当が優先回収、第二抵当(後順位)は商品が限定的で金利も高め
  • 共同担保は複数物件を束ねて担保にする仕組み。1物件売却時の整理が複雑化するため慎重に
  • 担保評価は原価法・収益還元法・取引事例比較法の3手法。銀行ごとに重視する手法が異なる
  • 返済不能時は競売へ。早期に任意売却に切り替える選択肢もある
スポンサーリンク

📖 この記事の根拠(出典・参考)

  • 抵当権・根抵当権の法的根拠:民法369条〜398条の22/不動産登記法
  • 登録免許税の税率:国税庁タックスアンサー No.7191/法務省「登録免許税の計算」(2026年5月時点)
  • 不動産担保評価の3手法:日本不動産研究所「不動産鑑定評価基準」
  • 競売手続き:民事執行法/法務省「不動産競売の手続き」
  • 抵当権抹消・住宅用家屋軽減:登録免許税法・租税特別措置法
スポンサーリンク

🔗 あわせて読みたい関連記事

コメント

タイトルとURLをコピーしました