突然ですが、お金を50万円貸してた友人と急に連絡が取れなくなり、そのまま音信不通になったらどうしますか?
「そもそも50万円なんて大金貸さないよ?」と言われそうですが、大家業をしていると、そんなことが起こってしまうかもしれません。
それが夜逃げです。
日本では賃貸経営における最大のリスクは「空室リスク」です。
空室管理を徹底して安定した利回りを維持できれば賃貸経営は成功できるはずです。
ですが、万が一、家賃滞納や夜逃げの被害に遭遇するとその計算は一気に崩壊してしまいます。
この記事では主に夜逃げされた場合の対処方法や備え方について分かりやすくまとめました。
- 夜逃げされた場合の対処方法について知りたい人
- 滞納や夜逃げの被害を無くしたい人、少なくしたい人
もしも夜逃げされてしまったら
家賃滞納や夜逃げ問題は家主にとってもっとも頭を抱える問題の一つです。
もしも入居者に夜逃げされてしまった場合、以下のような問題が想定されます。
- 滞納期間分の家賃収入が回収できない
- 残置物の処分や部屋の修繕費用が家主負担になる
- 次の入居者に住んでもらうことができない
どれも賃貸経営を継続する上でとても大きな不利益になりますし、場合によっては今までコツコツと頑張ってきた成果が一気に崩壊してしまうかもしれません。
予想以上の経済的負担
家賃滞納の末、夜逃げされてしまったら、その期間の賃貸収入はゼロになります。
滞納期間が長期間であれば、当然、損失は大きくなります。
多くの賃貸経営者は銀行などの金融機関から融資を受けて物件を所有しているので、返済にも影響が出てきます。
最悪の場合、経営が破綻して自己破産に陥ってしまうかもしれません。
予め敷金などを数か月分頂いているのであればその分で少しは補う事は出来ますが、敷金も十分にない場合は泣き寝入りとなりますし、たかだか2〜3数ヶ月分の敷金なんて、夜逃げされたら一発で吹き飛びます。
また、滞納により回収不能に陥ってしまった家賃収入は家主にとってとても痛手なのですが、本当に大変なのはその後です。
それは「夜逃げした入居者の失踪後も、一定期間部屋を貸せない状況が続くことで、すぐに次の入居者を募集することができない」ことです。
こうなると本当に悲惨です。
残置物には要注意
入居者が夜逃げしたにも関わらず、すぐに次の入居者を募集できないのは何故でしょう?
それは契約の解除と残置物(荷物)の処分が想像以上に大変だからです。
夜逃げされた場合、もし残置物(荷物)がそのまま残されている場合は要注意です。
保証人や家族、親戚と連絡が繋がれば荷物を引き取らせることができますが、もし連絡が繋がらなかったり、残置物の引き取りを拒否された場合、一定期間荷物を保管しておかなくてはいけません。
加えて、賃貸の名義上はあくまで失踪者の名義人のままとなるため、こちらが一方的に次の入居者に部屋を引き渡す事が出来ない場合が多いです。
部屋にある全ての荷物を持って夜逃げされた場合は、誰の目からしても「夜逃げされたな…」と判断出来るため、解約処理を進めやすいためまだマシです。
ですが、荷物はそのまま部屋に放置されていて、本人だけがいなくなるような夜逃げの場合は、失踪なのか一時的に留守にしているのか分からないです。分からないと言うより「客観的には分からないと見なされる」と表現した方が正しいですね。
被害者側が加害者に?
家賃滞納や夜逃げに被害に合うと、感情的になってしまいます。ですが、そんな時程、冷静になる必要があります。
例えば、以下のようなことをすると、被害者だったはずの家主の方が、逆に加害者になり、自分の首を締めることになるかもしれません。
- 強引な家賃の取り立て
- 恐喝罪になる可能性がある
- 部屋の追い出し
- 裁判を利用しない自力救済も法律的にNG
- 残された部屋の荷物を勝手に処分する
- 住居侵入罪(不法侵入)になる可能性がある
- 窃盗罪になる可能性がある
- 再入手が困難な思い出の品やプレミア品であれは慰謝料を請求される
- 部屋の鍵を勝手に交換する
- 鍵を壊したとして器物損壊罪になる
強引な取り立てをすると、場合によっては「恐喝罪」になってしまいますし、残された部屋の荷物を勝手に処分したり、鍵を勝手に交換して入居者を締め出してしまった場合は「住居侵入罪」や「器物破損罪」になってしまうかもしれません。
また入居者がいない状況で合鍵を使って無理やり部屋に入る行為は「○○が無くなっているじゃないか!」と言われてしまうリスクが伴います。「○○なんて最初からありませんでしたよ?」と言っても、荷物を処分してしまっている以上、立場としては不利になります。
それに家賃を滞納したり夜逃げするような入居者は経済的に困っており、またストレスなどの影響により、室内がゴミ屋敷の一歩手前のような状態になっていることもあるため、ゴミだと判断したものの中に大切なもの(入居者が大切だと主張するもの)が紛れ込んでしまっている可能性もあります。
物件の所有権自体は、当然、所有者である家主のものなのですが、賃貸契約を結んでいる期間は、仮に入居者が夜逃げしていたとしても、入居者側の権利の方が優先されてしまいます。
最初は家主側が「訴えてやる!」と思っていたのに、強引な対応を進めがばっかりに、逆に家主側が訴えられ損害賠償を請求された事例もあります。
一般的な感覚では到底理解できないかもしれませんが、嘘のような本当の話です。
家主自らが「二次災害」を起こさないように、くれぐれもやけくそな対応をしないように気を付けましょう。
家主は意外と立場が弱い
家賃滞納や夜逃げの被害に合うと当初はこのような怒りの感情が湧き上がってきます。
- なんでちゃんとルール通りに家賃を支払わないんだ!
- どんな手段を使ってでも滞納された家賃を全て取り返してやる!
ですが、長期的にトラブルが継続すると、次第にこのような弱気なマインドに変わっていきます。
- 正式な解約手続きをして速やかに出ていってくれ
- 過去の滞納分には目をつぶるから出ていってくれ
- 逆にお金を支払うから頼むから出ていってくれ
「裁判をして徹底的に損害賠償を請求する」のか「未払いの賃料は諦めて次の入居者を獲得して取り返す」のかは、性格や考え方によってさまざまです。
勿論、裁判で徹底的に争う人もいますが、「精神力」や「経験」や「時間」が掛かりますし、必ず満足できる結果になるとも限らないので、どちらが良いかは判断できません。
残念ですが「感情」では裁判に勝てないのです。
夜逃げの被害に合わないために
結局、滞納や夜逃げは確率論なので、いつも時代にも一定数存在します。
ですが、以下のような対策ができれば被害を未然で防げたり、例え被害にあっても個人の負担を軽減できます。
- 家賃滞納が発生した際はすぐに対応し迅速な解決を目指す
- 家賃保証会社と契約を結ぶことで万が一に備える
- 入居者審査を厳重にすることで家賃滞納や夜逃げの確率を軽減する
それぞれについて、もう少し詳しく解説します。
家賃滞納は夜逃げの前兆?
入居当初は誰だって「滞納してやろう!」「家賃を踏み倒してやろう!」なんて考えていませんが、「転職に失敗」「リストラ」「借金の取り立て」「人間関係」など、さまざまな事情により、不本意にもそのような状況に追い込まれてしまうのです。
夜逃げの理由は大きく以下の2種類に分けられます。
- 滞納した家賃自体が支払えないから夜逃げする
- 家賃以外の借金の取り立てに耐えられなくて夜逃げする
一昔前であれば、借金の返済に首が回らなくなり、厳しい取り立てに耐えられなくなった人(または家族)が最後の手段として夜逃げをするケースもあったと思いますが、最近では行き過ぎた取り立てが逆に違法になってしまう事例も多く、どちらかと言えば、滞納した家賃が支払えないために夜逃げするケースの方が多いです。
夜逃げする人の多くは、前触れも無く夜逃げをするのでは無く、その前兆として家賃を滞納し始める傾向がある訳です。
少し大袈裟ですが、家賃滞納が始まったら場合、その入居者は「夜逃げ予備軍」と考えて、慎重な対応が必要になります。
家賃滞納については以下の記事で詳しく解説しています。
家賃保証を活用する
仮に家賃滞納や夜逃げにあったとしても、家賃保証会社と適切に契約できていれば、個人での被害額を軽減することができます。
そのためにも、信用できる管理会社選びが大切になります。
今はそれぞれの管理会社ごとに賃貸管理システムなども充実しています。
全て自分で自主管理できる専業大家であれば、対応に慣れているかもしれませんが、僕のように他に他に本業のある兼業大家であれば、どう考えても利用する方が無難です。
入居者審査の基準は難しい?
信頼出来る管理会社に賃貸管理を任せると、家賃回収の代行などだけでは無く、管理会社の独自の基準で入居者への審査を十分に行い、問題がありそうな(例えば過去の滞納歴や反社会的であるなどの)場合は、入居前にそのようなリスクをかなり軽減出来ます。
また入居後トラブルの前兆などが見受けられれば、個人の経営者よりも対応方法やノウハウが蓄積されているのでかなり心強い存在になります。
契約書は役に立たない
転ばぬ先の杖として、入居希望者と賃貸契約を結ぶタイミングで、以下のような内容を契約書に盛り込むことで、滞納や夜逃げの被害にあった場合、交渉や争いを優位に進められると考える人もいると思います。
- ○○ヶ月、家賃を滞納した場合は全額返済の上、直ちに賃貸契約を解消する
- 緊急事態が起こった場合は、家主(または賃貸管理会社)が合鍵で室内を確認する
- 家賃滞納の末、入居者と連絡が取れない場合は、残置物を処分する
ですが、実はこれらの契約内容は役に立ちません。
このような家主側に有利(?)な条件は「一方的な契約内容」と見なされ無効になってしまいます。
例え、これらの条件を契約内容に明記していたとしても、入居者を追い出したり、残置物を処分するには裁判制度を利用した上で、法律に則って対処する必要があります。逆にそれを守らず強引な対応をすれば「自力救済」になる訳ですが、残念ながら「自力救済」は法的に認められません。
実際に強引な取り立てをしたり、残置物を処分してしまうと「公序良俗違反」として罰せられてしまいます。
トラブルが無ければ本当に良い賃貸経営か?
現時点で僕には他に本業があるため、賃貸経営を自主管理する時間もノウハウもありません。
そのため、管理会社や先輩大家に頼ることも多く、比較的、トラブルが少ない安定した経営を意識しています。
ですが「トラブルが無い安定した経営が本当にベストな賃貸経営か?」と聞かれると、考えが分かれます。
特に「入居者の審査」については「安心が一番」とは言い切れないと思います。
一般的に、家賃滞納や夜逃げ問題を起こしてしまう可能性が比較的高いと言われている人は、生活保護を受給していたり、経済的に余裕の少ない年金暮らしの高齢者のことかと思いますが、そのような入居者は以下のような魅力も秘めています。
- クレームが少ない
- 多少の品質面での不備なら我慢して利用してくれる
小金持ち程、品質にうるさい
- 転勤や異動が無いため長期間住み続けてくれる
- ワンルームのターゲット層である20代の若者の入居期間は平均的に短い
引っ越しする元気もお金も少ない
- 意外と破産のリスクが少ない
- 堅実にお金のやりくりをする人も多い
- 妙な投資やビジネスに手を出そうとしない
このような人達を入居者で拒否してしまうことは簡単ですが、そんな殿様商売がいつまで続けられるのかも微妙なところです。
また外国人労働者や留学生に対して入居者審査を厳しく設定する家主や賃貸管理会社も多いですが、海外ではこれ程手厚く入居者の権利が守られておらず、滞納が続くと普通に部屋から叩き出されてしまう国もあります。そのため、意外と言ってしまえばとても失礼なのですが、日本人と比べても、むしろ外国人の入居者の方が、家賃を滞納しないという意識が平均的に高いかもしれません。
「逆張りの発想」と言えば少し大袈裟ですが「安全=成功」と決めつけるのも、少し軽率な考え方だと思います。
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