不動産投資に関わらず、投資にはさまざまなデメリットやリスクがあります。
残念ながら、そう簡単に上手くいくものではありません。
不動産投資は「不労所得」と言い換えられることもあり「さまざまなリスクがあるから手を出さない方が良いよ」と言う意見が多いことも確かです。ですが、そのほとんどが投資経験の無い人のイメージや思い込みによる意見のような気もします。
この記事は、書籍「はじめての不動産投資成功の法則」で紹介されているポイントをベースに、僕の考えや体験談をまとめた内容です。
ですが、それでも「一般的に考えられる賃貸経営のデメリットやリスクが全て網羅されている」と考えています。この記事の内容を理解した上で、それでも「不動産投資をやりたい!」と思えるのであれば、是非とも前向きに挑戦していけば良いと思います。
- 不動産投資のデメリットについて知りたい人
- 不動産投資のリスクを理解した上で安心して挑戦したい人
不動産投資のデメリットを理解しよう
不動産投資のデメリットには以下のようなものがあります。
- 想定できないリスク、想定するのが難しいリスクが沢山ある
- 不動産価値が目減りする、目減りする可能性が高い
- 株式や投資信託などと比べ売買しにくい、特に売却時の負担は大きい
勿論、僕はこの記事の中で「不動産投資には沢山のデメリットがあるからやばい…」という内容をお伝えしたいのでは無く「デメリットをしっかり理解できれば適切な対策が打てるようになる」ということです。
人は「自分の知らないもの」には知らないがゆえに過剰に恐れてしまいます。本当はそれ程心配する必要が無いものに対しても過剰に恐れてしまい、その結果、挑戦の機会を失います。
本来、手に入るかもチャンスがあったかもしれないのに、必要以上に心配してしまった結果、挑戦を諦めてしまうような「機会損失」にはなりにくくなります。
デメリットのリスクようなネガティブな情報は「正しく恐れる」ことが大切なのです。
リスクを把握できれば対策が打てる
一般的に不動産投資は何年〜数十年と長い期間を掛けて継続運用することになります。
また、投資金額も文字通り桁違いなので、株式投資や投資信託などと比べるとリスクが目立ってしまいます。
賃貸経営を続けていると以下のようなリスクが想定されます。
最大のリスクは空室リスク
不動産投資を行う時、一番頭を悩ますのは空室リスクです。
正直、空室のリスクさえ回避できれば不動産経営は成功したも同然です。
空室が続けば家賃も下落する
空室が増えてしまったり、入居者から得られる家賃が減ってしまうと、当初想定していた表面利回りが得られなくなってしまいます。
また、空室が続き部屋が埋まらなくなってしまったとしたら、次は家賃を安く設定するしかない状況に陥ってしまいます。
当然、家賃が下落すれば、入居者から得られる家賃収入も少なくなるため、やはり表面利回りが低くなってしまいます。
人口減少により空室率が増える?
日本は今後、人口の減少に伴い空室率が高くなる事が予想されています。
っと言うより、既に人口の減少は進んでいて空室率も高くなってしまっています。これから先はさらに急激にこの傾向が大きくなります。
また、2020年からは日本の総人口だけでは無く「世帯数」も減っていくと予想されています。
より影響を受けにくい地域を検討する
ただ世帯数で考えると一人暮らし世帯は、そこまで人口減少の影響を受けません。また地域によっても人口の推移は変わるので、東京圏・名古屋圏・関西圏のような、将来的にも比較的人口を維持できる(減少したとしても緩やかに減少する)ような地域をターゲットにすると空率リスクは最小限に回避する事が出来ます。
例えば関西圏で人口の維持が期待できる地域としては、主に以下のようなエリアです。
- 大阪府大阪市
- 中央区、北区、西区、天王寺区、鶴見区、浪速区、淀川区
- 兵庫県神戸市、西宮市、尼崎市
- 京都府京都市
関西の人気の地域としてはオフィス街や大学などの近くが多く、安定した人口増加(人口維持)が見込めます。
地域選びは将来性も大切
投資エリアを検討する場合、当然、現在の価値やニーズを基準にエリアを見極めることになりますが「将来、その地域がどのようになっているか?」を予想することも大切です。
街自体が老朽化し治安が悪くなってしまったり、ゴーストタウンになってしまえば、個人の力ではほぼ手の打ち用が無いため個人的にはよっぽど大きなリスクに感じます。
将来的にも活性化し続けれるような街を選びたいですね。
物件の修繕のリスク
今住んでいる入居者が退去した場合、次の入居者が気持ちよく生活を送れるように、部屋を綺麗に修繕したり壊れている箇所を修理したりします。
当然、建築されてからの期間が伸びれば伸びる程、部屋が汚れてきたり、備品が壊れやすくなる訳ですが、当初、想定していた以上の出費が掛かってしまうと、その分、実質利回りが低くなってしまいます。
金利上昇のリスク
投資用物件を購入する場合、金融機関から融資を受けることになります。
金利の種類を理解しよう
金融機関から融資を受ける場合、金利の種類は大きく3種類に分けられます。
- 固定金利型
- 変動金利型
- 固定金利選択型
基本的にはもっとも金利の低い変動金利型を選択することになりますが、将来の金利上昇が心配であれば固定金利型を選択すればローン返済額が一定になります。
想定以上に返済金利が上がってしまうと、当然、月々の返済額も増えてしまいキャッシュフローが低くなってしまいます。
個人的には「当分、金利が急激に上昇する可能性はかなり低い」と考えていますが、どうしても金利上昇リスクが不安な場合は、やや高金利(1%程)ではありますが、固定金利を選択することで、金利変動リスクを回避することができます。
将来的に金利は上昇傾向?
金利については2015年〜2016年頃は史上最低の低金利時代と言われていました。2019年の時点では少し金利が上がってきていますが、それでもまで十分に低金利時代です。
つまり、今後、返済途中で金利が上がる可能性が極めて高いです。なので、金利が上がっても安心して十分支払いを維持できるような返済計画が必要であり、そのためには金利が上がる仕組みや金利上昇の上限などを正しく理解しておかないといけません。
ローン返済は前倒しで支払う事で返済期間を早める事は出来ますが「今月は出費が多く厳しいので返済を少なめにして欲しい」と言う事は基本的に出来ませんし、もし交渉できたとしても信頼を無くしてしまいます。
家賃滞納リスク、夜逃げのリスク
もし入居者からの家賃が滞納されてしまった場合、本来得られずはずの家賃が得られなくなり、経営に大きな影響を与えてしまいます。
最悪の場合、入居者(家賃滞納者)が夜逃げし、音信不通になってしまえば、家賃収入が得られられないだけでは無く、残置物の処分や次の入居者の募集が(法律や契約の都合上)とても難しくなり、賃貸経営をする上で致命的な損失に繋がってしまいます。
入居者の死亡リスク(殺人、孤独死など)
万が一、入居者がトラブルなどにより殺害されてしまったり、自殺などが起こった場合は、遺体の処理や部屋の修繕費用が高額になってしまいます。
また、高齢者の場合は孤独死のリスクが高くなりますし、一人暮らしの場合は発見が遅れることも多く、その分、部屋の損傷は大きくなってしまいます。
個人的には余り賛同はできないのですが、孤独死のリスクを避けるために高齢者の入居をお断りしている家主も一定数います。
火災や震災などの天災リスク
賃貸経営に関わらず、物件を所有している以上、仕方無いことですが、もし所有物件で火災が起こったり、地震などにより倒壊、浸水してしまった場合は、修繕のために大きな費用が掛かります。
火災保険や地震保険に加入することでリスクを軽減できますが、保険料金もどんどん上昇傾向になっているため、「必ず必要な保険」と「それ程必要では無い保険」を見極める必要があります。
損害賠償、訴訟のリスク
火災リスクや震災リスクと同様、賃貸経営をしているかに関わらず考えられるリスクですが、所有物件の破損や倒壊などが通行人や入居者に対して怪我をさせてしまえば、裁判で訴えられて損害賠償を支払うことになる可能性もあります。
万が一、死者を出してしまったとしたら、その損害賠償額は致命的な金額になるはずです。
「リスク」と「リスクの対処法」
ここまで散々「リスク」という言葉を使いました。
一般的なイメージとしては「リスク=危険」だと思います。ですが、金融商品や投資の世界では、リスクは「危険」では無く「不確実性」と考えられています。
またリスクに対する対策としては「問題が起こる可能性」と「問題が起こった場合の影響」の2本の軸を基準に考えれば良いと思います。
- 問題が発生する可能性が低く、問題が起こった場合の影響も小さい
- 問題が発生する可能性が低く、問題が起こった場合の影響は大きい
- 問題が発生する可能性が高く、問題が起こった場合の影響は小さい
- 問題が発生する可能性が高く、問題が起こった場合の影響も大きい
例えば「問題が発生する可能性が低く、問題が起こった場合の影響も小さいリスク」であれば、そのまま放置し続けても良いかもしれません。逆に「問題が発生する可能性が高く、問題が起こった場合の影響も大きいリスク」には、多少コストを掛けてでも全力で対応する必要がありそうです。
賃貸経営における「リスクへの対処法」は人それぞれ違いますし、共通する「答え」がある訳ではありませんが、不動産投資家としては大切な能力の一つです。例えば以下のような方針が考えられます。
- リスク回避
- 金利上昇リスクを回避するため金利が上がらない固定金利を利用する
- リスク低減(リスク最適化)
- 修繕リスクを低減するため修繕積立金を準備する
- 空室リスクを軽減するため好立地の物件のみを購入する
- 震災リスクを軽減するため新耐震基準の物件を購入する
- リスク転移(リスク共有)
- 空室リスクを転移するために一括借上げ契約(サブリース)を活用する
- 家賃滞納リスクを転移するため入金代行(滞納保証)の契約を結ぶ
- 震災リスクを軽減するため地震保険に加入する
- 高齢者の死亡リスクを転移するため孤独死保険に加入する
- リスク保有
- 人気のエリアなので空室リスクを保有し一括借上げ契約(サブリース)を活用しない
- 地震発生の可能性が低い地域なので震災リスクを保有して地震保険には加入しない
不動産の資産価値は目減りする
一般的に不動産の資産価値は緩やかに目減りしていきます。
将来、地域全体が活性化したり景気が良くなり土地の価格が上昇することも例外的にはありますが、基本的には時間が経てば経つ程、その価値は少なくなっていきます。
資産価値が目減りすることは避けられませんが、その影響を最小限に留めることは可能です。例えばは以下のような方法が考えられます。
適正価格を見極めるには?
いつの時代でも、不動産価格を適正な価格で購入することができず、賃貸経営に失敗してしまったり、自己破産してしまうケースは多く見られます。例えば2018年に話題になった「かぼちゃの馬車」の事件では、適正価格を大幅に超えた金額で物件を購入した(素人の)投資家が大きな損失を被ることになりました。
ですが、逆に適正価格を大きく下回る値段で不動産を購入することができれば、多少、資産価値が目減りしたとしても大丈夫です。
適正価格以下で購入するには?
「適正価格を下回る値段で購入することができるのか?」と疑問に感じるかもしれませんが、これこそが不動産投資家としての重要な能力になります。
例えば以下のようなケースだと、比較的、安値で購入することができるかもしれません。
- 安く売却してくれる、または売却する事情がある人から購入する
- もともと資産家の家庭に育ち物件を所有している人
- 相続対策として親族から物件を譲り受けた人
- 金融機関への返済の都合上、速やかに現金化を実現したい人
- 客観的に物件価値が低いと判断されている物件を購入する
- 築年数が経過し過ぎて資産価値の低い物件
- メンテナンスを怠り空室が増加し収益性が悪い物件
- 自己破産などにより競売に掛けられた物件
このような物件を購入することができれば、資産価値が目減りする心配も少ないですし、不動産投資家としても、一気に成功に近付けるはずです。
修繕コストを抑える
物件を所有する以上、時間の経過と共に資産価値が減少するのは仕方無いことですが、以下のポイントを抑えることができれば修繕費用の削減に繋がります。
- 効果的な修繕工事
- 先行投資額を回収できるような収益性の高い修繕工事
- 収益に関わらない修繕工事は敢えて放置するのも有効
- 問題の箇所を適切なタイミングで修繕
- 雨漏り、外壁塗装などを怠り過ぎると逆に修繕費用が嵩むことも
- 先行投資額を回収できるような収益性の高い修繕工事
- 戦略的な設備投資やリフォーム
- 入居者に喜ばれる設備を取り入れる
- 地域ごとのニーズ(家族構成)にあった間取りや広さ
- 新耐震基準の物件のみを購入する
- 旧耐震基準の物件と比べ、倒壊リスクが軽減される
- 震度6強~7程度の揺れでも倒壊しにくい
- 旧耐震基準の物件と比べ、倒壊リスクが軽減される
実際に物件を所有すると、気になるところは全て修理したいと思ったり、自分の好きな間取りにリフォームしたいと感じるかもしれませんが、修繕工事の目的はあくまでも「入居者が快適に生活を送ること」です。
仮に完璧の状態で無かったとしても、入居者が余り気にしていなかったり、退去に繋がらないような箇所であれば、後ろ向きな判断に思えるかもしれませんが、敢えて放置するのも良いかもしれません。
ただ、手を加えることで賃料を大幅に改善できる見込みがある場合は、適切に判断して、修繕費用を投じることで、長期的な収益性の向上に繋がります。
不動産は売却しにくい?
株式投資や投資信託などと比較して、不動産の場合は「売却するための障壁」が非常に高くなります。例えば以下のような要因があります。
売買手数料が高い
物件を売却する場合、仲介会社へ支払う売買手数料は以下の通りです。
仲介手数料の上限額売買金額 | 仲介手数料 |
---|---|
200万円以下 | 売買金額の5%(+消費税) |
200万円超〜400万円以下 | 売買金額の4%+2万円(+消費税) |
400万円超〜 | 売買金額の3%+6万円(+消費税) |
余程築年数の経過した小規模な物件で無い限りは400万円を下回ることは少ないと思うので、基本的には「売買金額の3%+6万円(+消費税)」と考えれば良いと思います。
仮に1,000万円のワンルームマンションを売却した場合、40万円程の売買手数料が必要になります。
- (1,000万円×3%+6万円)×10%=396,000円
正直、手数料だけでこんな高額になってしまうのは少し納得できない気もしますが…
不動産を売却するには宅建業者(不動産仲介会社など)にお願いしなければいけないので、必要経費として割り切るしかありません。
また、この他にも以下のようなお金が必要になります。
- 登録免許税
- 所有権移転登記、抵当権設定登記、抹消登記
- 司法書士への報酬
- 印紙税
- 売買契約書、金銭消費貸借契約書、領収書
- 不動産取得税(購入時のみ)
- 火災保険料(購入時のみ)
- 融資を受けるための前提条件(必須)
- 必要に応じて地震保険への加入も検討(任意)
- 金融機関へ支払い
- 購入時の手数料(購入時のみ)
- 一括返済手数料、違約金など(売却時のみ)
株式や投資信託の場合、手数料や信託報酬などを支払う必要がありますが、(やや誤解を与える言い方ですが)正直、誤差の範囲内です。ですが、不動産投資の売買にはより高額な売買手数料が必要になりますし、普段余り意識しないような税金面での負担も強いられてしまいます。
売買益の税金が高い
売買手数料と同じくらい、もしくはそれ以上に大きな負担になるのが、物件を売却した際の税金です。
物件を売却すると、その売買益に応じて「譲渡所得」が発生します。
譲渡所得税は物件を所有した期間によって「短期譲渡所得」か「長期譲渡所得」の2種類に分けられます。
- 売却物件の所有期間が5年未満
- 短期譲渡所得となり所得税および住民税が高くなる
- 売却物件の所得期間が5年以上
- 長期譲渡所得となり所得税および住民税が安くなる
具体的な税率については以下の通りです。
短期譲渡所得と長期譲渡所得の税率の違い短期譲渡所得 | 長期譲渡所得 | |
---|---|---|
所有期間 | 所有期間5年以下 | 所有期間5年超 |
所得税 | 30.63% | 15.315% |
住民税 | 9% | 5% |
合計 | 39.63% | 20.315% |
所有期間が5年以上である長期譲渡所得でも20.315%と比較的高い税率が課せられますが、所有期間が5年未満の短期譲渡所得であれば39.63%ものとても高い税率が課せられます。
流動性が低く換金性が悪い
株式投資や投資信託の場合はすぐに売却することが可能です。
勿論、自分の希望する価格で売却できるかどうかは所有している銘柄や時期に左右されますが、ある程度妥協することができれば、売却にそれ程苦労することはありません。
株式や投資信託は毎日のように売り買いがされていますよね。
一方、不動産投資の場合はそう簡単には売却先が決まりません。それは単に飼い主側が販売価格に納得しない場合もありますし、そもそもニーズ自体が無ければ話になりません。
また、仮にこちらの希望する金額で購入希望者が見つかったとしても、多くの場合、金融機関からの融資に頼ることになりますが、そのタイミングでその購入希望者に対して、十分な融資が下りるかどうかは分かりません。その投資家の属性や金融機関の融資姿勢によっては融資を受けることができず、購入希望者としても「買いたいけど買えない」状態になってしまうかもしれません。
その場合は値下げ交渉を受けることもあるでしょうし、最悪の場合、売買自体が白紙撤回になってしまいます。
また、株式投資や投資信託を売却した場合、数日程で売却価格(マイナス手数料分)を現金化できますが、不動産の場合は売買のための手続きが多く、数ヶ月掛かってしまうのが一般的です。
デメリットを克服できれば賃貸経営は成功する
賃貸経営には沢山のデメリットがリスクが潜んでいることが分かりました。
もう一度、簡単にまとめてみると以下の通りです。
- 想定できないリスク、想定するのが難しいリスクが沢山ある
- 不動産価値が目減りする、目減りする可能性が高い
- 株式や投資信託などと比べ売買しにくい、特に売却時の負担は大きい
ですが、これらのポイントを踏まえ、一つ一つ、懸念点を潰していけば、不動産投資で大失敗する可能性は限りなくゼロに近付けられるのではずです。
繰り返しになりますが、この記事の内容は、書籍「はじめての不動産投資成功の法則」で紹介されていた内容をもとに僕の経験や考えをまとめたものです。
この本には他にも「失敗しないための物件選び」や「利益を最大化するための融資戦略」など、これから賃貸経営を始めたい人にとって、有益な情報が丁寧に解説されています。興味がある方は、是非、一度、読んで頂ければと思います。
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