家賃はすぐに下げられる?減額交渉の法的権利とコロナショックによる影響について

不動産市場
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2020年4月7日(火)、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い改正特別措置法に基づく「非常事態宣言」が発令されました。

対象は「東京都」「神奈川県」「千葉県」「埼玉」「大阪府」「兵庫県」「福岡県」の7都府県で期限はゴールデウィークの最終日である5月6日(水)までの予定です。

その後、4月16日(木)に非常事態宣言の対象地域を全国に拡大し、すでに対象となっている7都府県に加え「北海道」「茨城県」「石川県」「岐阜県」「愛知県」「京都府」を特定警戒都道府県として認定しました。また、5月4日(月)には期限が5/31(日)までに延長されました。

新型コロナウイルスの影響により健康面でも大きな問題が続いていますが、他にも「活動自粛による経済破綻」の問題があり、その結果、職を失った失業者や家賃が支払われない人達が少しずつ増えてきています。

この記事では、新型コロナウイルスによる影響を受けて、現時点で発表されている賃料の支払い猶予に関する意見や、それらの情報に対する反響などをまとめた上で「通常、家賃交渉はどの程度なら可能なのか?」について解説します。

  • 新型コロナウイルスが家賃交渉に与える影響が気になる人
  • 入居者側が家賃交渉をする際の法的な権利や交渉する手順について知りたい人
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新型コロナウイルスが賃料支払に与える影響

活動自粛の影響により飲食店などでは売上の減少が続いており、賃料の支払いが困難になっている経営者が増えてきました。同様に賃貸住宅に住んでいる入居者にもリストラによる失業者やシフト(勤務時間)が大幅に削減されて収入が著しくカットされる人達が報道されています。

政府や都道府県としても以下のような情報が発信されています。

  • 2020年3月31日(火)
    •  国土交通省→賃貸用ビル所有者
      • 賃料支払いの猶予に応じるなど、柔軟な措置を取るよう要請
  • 2020年4月11日(土)
    •  大阪府吉村洋文知事→西村康稔経済再生担当大臣
      • 中小企業や店舗の賃料支払いを3カ月ほど猶予する制度の創設を要望

この他にも「家賃の支払いが困難であれば一定期間賃料を支払わなくても良いはずだ」というような意見があったり、先日の4月12日(日)には東京(渋谷)では「自粛要請を出すのであれば同時に適切な補償も必要だ!」という趣旨のデモ活動も行われました。

このような情報に対して賃貸経営者やその関係者側からは以下のような意見が出てきています。

  • 例えコロナウイルスの影響であっても賃料が支払えないのであれば退去するべき
  • 経済活動の縮小によるしわ寄せを全て家主側で負担するのは筋違い
  • 仮に賃料を一定期間猶予するのであれば金融機関への返済期間も猶予するべき
  • 適切な家賃を支払ってもらわなければ家主側が破綻してしまう
  • 賃貸経営に携わっていない(直接血を流さない)第三者が好き勝手な意見を発信している
  • 無責任な意見が拡散されることで「踏み倒しても良い」と考える人が増えては困る

賃貸経営者の中には可能な限り家賃交渉や支払い期限の延長に応じる考えであったり、家賃交渉の有無に関わらず一定期間の賃料を値下げする方針の方もいます。

僕の個人的な意見としても「今の入居者の経済事情によっては家賃交渉や支払期限の延長はやむを得ない」と考えています。ただ、正直なところ「今の先行き不安な時期に退去されてしまう損失を考えると入居者側の要望に譲歩した方が損失が少ない」という自己防衛的な考えでもあります。

今はたまたま家賃が滞っても賃貸経営(主に融資の返済)自体に大きな影響がありませんが、今後、金融機関への返済が厳しくなってくると同じようなことは言えないかもしれません。

なお、現時点でも既に家賃滞納を経験している家主も一定数いるようで、来月以降にはさらに増加の傾向になるはずです。

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入居者が減額交渉をする権利

今後も「政府としてどのような政策が可能になるか?」によって方向性が決まるはずですが、どのような方針になったとしても、全ての国民が平等に賃料の減額や支払期間の猶予が受けられることはありません。

休業補償給付や住居確保給付金制度(2020年4月20日改正予定)などの議論もありますが、適応条件や申請手続きが複雑だったり、支給時期がもう少し先になってしまったりと不安に感じている人が多いです。

僕自身は家主側の立場なので、当然、減額交渉を受け入れてしまうと、その分の減額分が経営面でのマイナスに直結しますし「苦しかったら家賃を踏み倒してやろう!」という意見には賛同できません。

ただ、賃貸住宅に住んでいる人が適切に家賃を削減することも権利として守られるべきだと思います。

そもそも非常事態宣言が発令されていない平常時の場合、入居者側からの減額交渉はできないのでしょうか?

結論としては借地借家法第32条1項(借地増減請求権)により近隣相場と比べて割高な場合、入居者の権利として家賃交渉が認められていることになっています。

借地借家法第32条1項(借地増減請求権)

建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。

もし、現在の賃料が適正価格以上に高額なのであれば交渉の余地はありますし、また、既に適正価格の場合でも、現状、本当に生活が苦しいのであれば諦めずに交渉することで、数千円だけでも家賃の削減が期待できるかもしれません。

家賃減額交渉の権利は法的にも認められています。
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具体的な家賃交渉の手順

それではどのような方針でアプローチすると効果的な減額交渉が実現できるでしょうか?

通常、家賃を下げたい場合は以下のような手順を踏むのが一般的です。

  1. 賃貸住宅検索サイトで周辺の家賃相場を把握する
  2. もし現在の賃料が高かったら減額交渉を要求する
  3. 減額交渉が決裂した場合の基本方針を検討する

特に何か特殊なことをする訳でも無く、とても平凡でシンプルな方法ですが、具体的な手順についてもう少し詳しく解説します。

周辺の家賃相場を把握する

自分が住んでいるエリアで、間取り、築年数、広さ、設備、駅からの距離などが同じような水準の物件を探してみます。調査方法は「SUUMO」や「HOME’S」のような一般的な賃貸住宅検索サイトで問題ありません。

周辺の家賃相場は賃貸住宅検索サイトで調査できます。

現在の賃料が割高だったら減額交渉する

周辺の家賃相場と比べて、今の家賃が割高であれば、その差分について減額交渉ができないか検討します。もし今の住宅に住み始めてから一定の期間(例えば5年以上とか)が経過していたら、近隣のライバル物件の方が「築年数は新しいにも関わらず値段が安い」なんてこともあるはずです。

「賃料はできるだけ安くしたい」のが本音ですが、周辺の家賃相場と比較した上で論理的な金額を指値で伝えた方が妥当性もあり効果的です。希望の金額を決めたら電話で直接交渉しても良いですし、家賃の減額請求書を作成して郵送しても良いです。

いずれにしても相手を納得させるような「価格の根拠」を説明するのが大切です。

できれば恒久的な(無期限での)減額交渉をしたいところですが、もしその見込みが無さそうな場合は、3ヶ月〜6ヶ月のように期間限定にすることで交渉が成立する確立も上がるはずです。

具体的な指値をもとに論理的な減額交渉を目指しましょう。

減額交渉決裂時の方針を考える

減額交渉をした結果、家主側が値下げに応じてくれたら何も言うことはありません。

特に今の時期だと目標額まで引き下げることができなかったとしても、部分的な譲歩は期待できるかもしれません。

ただ、それでも全く交渉に応じない家主もいますし、管理会社が家賃保証やサブリース契約を結んでいる場合は交渉が難航する可能性もあります。

もし減額交渉が決裂した場合は次のステップとしては以下のような方針が考えられます。

家賃交渉を諦めて引っ越しする

もし引っ越しによる一時金(敷金、礼金、仲介手数料など)を支払ったとしても周辺の住宅に引っ越しした方が、将来的に(1年〜2年程で)総支出額の削減が見込めるのであれば、引っ越しする(もしくは引っ越しをチラつかせて再交渉する)のは合理的です。

ですが、もしあなたが現在の経済状況が厳しい上での家賃交渉なのであれば、現在の先行き不安な経済状況の中、引っ越しするための無駄な出費は避けるべきです。恐らく、地域にもよりますが、一人暮らしでワンルームマンションに引っ越しする場合でも20万円前後は掛かります。

更新拒否で更新料を削減する

賃貸契約を結ぶと1年または2年程で契約更新がありますが、その更新契約書を放置して、更新料を踏み倒す作戦です。急に物騒な方向性になったので驚かれるかもしれませんが、更新手続きを放棄した場合、借地借家法第26条(建物賃貸借契約の更新等)で定められた内容をもとに、契約内容は以下のように更新されます。

  • 合意が無いまま更新期間を迎えた場合は従来の契約内容で自動更新される
  • 更新手続きを放棄しているため更新料は不要になる
  • 一度、自動更新が成立すると以後は更新料を支払う必要は無くなる

ですが、この方法は法律を味方に付けた戦略ではあるものの、トラブルになる可能性もありますし、素人が取る戦略としては精神的なストレスも大きいはずです。そして何より契約の更新時期にしか有効活用できないため、この方法も余りおすすめはできません。

調停に持ち込んで再交渉する

減額交渉が決裂した場合、一番手軽で即効性があるのが「調停に持ち込んで再交渉する」方法です。

「調停」とは当事者同士で争いが解決できない場合に裁判所に申し立てを行い争いを解決する簡便な手段です。調停の特徴は以下の通りです。

  • 手続きは比較的簡単で費用も数千円程度しか掛からない
  • 家主側にもプレッシャーを与えて再交渉の機会が設けられる可能性がある
  • 調停を成立には家賃の値下げが必要なため調停委員は入居者側の味方になる傾向がある

調停についても余り積極的に考えられないかもしれませんが更新拒否に比べると精神的なストレスはかなり軽減されるはずです。少し勇気はいりますが、今の住宅に住み続けてつつ家賃交渉をする方法としては最も現実的な方法だと思います。

家賃は以外と簡単に下げられる?

家賃交渉についての基本的な考え方は、書籍「家賃は今すぐ下げられる! 家賃崩壊時代にトクする知恵」の中でとても詳しく解説されています。この書籍は2019年1月に発売されている書籍なので、当然、今回のコロナショックに対する対策本ではありません。ですが、むしろ現在は追い風が吹いている状態なので、平常時よりもより効果的な対策ができると思います。

ただ「周辺相場を把握して家賃交渉を目指す」程度であれば、この記事の内容だけでも十分に対応可能だと思います。

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退去されて困るのは家主も同じ

ここまで読んで頂いた方の中には「結局は今の家賃が適正価格であれば値下げなんてできないじゃないか?」と思われる方もいるかもしれません。

それに、万が一、家賃交渉が決裂して退去することになったりすると、次の引っ越しの手続きをしなければいけないため、入居者側としては避けたい自体です。

ですが、実は家主側の立場としても部屋が空室になるのは経済的に大きな打撃になるのです。

ちなみに、賃貸市場において、1年の間でもっとも繁忙期となる時期は引っ越しシーズンである2月〜3月です。なので、家主側からしてみては2月〜3月頃は空室の心配も少なく、例え価格交渉をされても強気な姿勢で交渉は決裂しやすいが、逆に4月〜5月頃になると、僕も含めて多くの家主は不安になります。「今、退去されてしまっては最悪、来年の2月〜3月頃まで入居希望者の確保が難しいかもしれない」と心配になるのです。

2020年4月現在、今後の収入がどうなるか分からない中で、わざわざ高額な仲介手数料や引っ越し代金を払ってまで住居を変えたい人は少ないはずです。つまり、空室期間が長期化するリスクが例年以上に大きい訳です。

勿論、値下げの方針は物件所有者の考え方に依存しますが、世間の風潮を踏まえてみても、普段以上に減額交渉の余地は十分にあるはずです。

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相談無しの滞納は絶対にNG

家賃交渉の判断は入居者が自身の経済状況を考慮した上でそれぞれで考えれば良いことです。

ですが、万が一、家賃の支払いが難しい場合は必ず事前に家主(または賃貸管理会社)に相談して下さい。

事前連絡も無いにも関わらず家賃の振込が無ければ家主(または賃貸管理会社)側としても不安になりますし、その後の価格交渉も不利になります。

日本では、現実問題として家賃滞納者をすぐに部屋を追い出されることはできません。入居者が認識している以上に入居者の立場は手厚く守られているからです。

例えば家賃が滞納したからと言って家主側が強硬な手段をとると「自力救済」として、住居侵入罪、不動産侵奪罪、窃盗罪のような不法行為とみなされてしまう可能性が高いです。

恐らく「家賃は無理して支払わなくても良いし住居も明け渡す必要も無い」という意見の背景には「仮に家賃を滞納しても家主側には強硬な手段が取れないから心配無い」という思惑があるんだと思います。

ですが、だからと言って連絡を怠ったり音信不通になるのは得策ではありません。

必ず事前に相談するべきです。

精神的にもつらい時期ですが、コミュニケーションを放棄すること無く、建設的な話し合いができれば、多くの場合、双方で理解し合えると思います。

プロフィール

楽待新聞&不動産投資Libraryのコラムニストをしています。
普段、不動産投資家として考えていることや体験談などを掲載しています。
これから不動産投資を始めたい方や、賃貸経営初心者の方に対して、分かりやすい内容を心掛けています。

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