「平成30年度税制改正の大綱(平成29年12月22日に閣議決定)」により、基礎控除や給与所得控除などの金額が見直されました。
その結果、税金の計算方法が大きく変わります。
実際に影響が出てくるのは2020年1月からです。
- 所得税…2020年(令和2年)から
- 住民税…2021年(令和3年)から
税制改正自体は毎年実施されますが、平成30年度の税制改正は影響範囲が大きく、かなり複雑な内容です。
国税庁によると96%の人にとってはほとんど影響は無く、個人として何か対応しなければいけないことが増える訳ではありませんが、一部、損する人や得する人が出てきます。
会社員や公務員の人については、源泉徴収により税金を納めているため、打てる対策は限られてしまいますが、個人事業主やフリーランスについては、少し準備をすることで、今後の節税対策にも繋がります。
また、税制改正の内容を理解することができれば、今後の日本政府の方針なども何となく見えてきます。
- 2020年の税制改正の内容に興味がある人
- 2020年以降、自分が税制面で得するのか?損するのか?知りたい人
そもそも控除って何?
国に税金を納めることは国民のルールです。「納税の義務」は「教育の義務」「勤労の義務」と並んで、国民の3大義務の一つです。それではどのような仕組みで納めるべき税金が決まるのでしょうか?
年間収入と給与所得と課税対象額
まず初めに「年間収入」と「給与所得」と「課税対象額」それぞれの言葉の意味を正しく理解する必要があります。簡単にご説明すると以下の通りです。
- 年間収入(年収)
- 源泉徴収票に記載されている「支払金額」
- いろいろな金額を差し引かれる前の「最も大きい金額」
- 給与所得(所得)
- 年間収入から給与所得控除を差し引いた金額
- 課税対象額(課税総所得金額または課税所得)
- 給与所得から所得控除(14種類)を差し引いた金額
- 所得税や住民税が計算される基準となる金額
なので、年間収入と給与所得と課税対象額は必ず以下のような関係になります。
- 年間収入(年収)>給与所得(所得)>課税対象額(課税総所得金額)
年間収入、給与所得、課税対象額のそれぞれの言葉を不確かな状態で捉えてしまうと、それ以降の計算式がめちゃくちゃになってしまいます。最初は少し混乱してしまうかもしれませんが、必ず「年収とは何か?」「給与所得とは何か?」「課税対象額とは何か?」を意識した上で計算するように心掛けましょう。
なお、給与所得控除や所得控除については、この記事の中でさらに詳しく解説します。今の段階で理解できていない人も、是非、このまま読み進めて頂ければ大丈夫です。
控除は所得から一定金額を差し引く仕組み
会社員でも個人事業主でも投資家でも仕事をして収入を得た場合、その金額に応じて税金を支払うことになります。
そして、一般的には、収入が多ければ多いほど、納めるべき税金の金額の割合も大きくなってしまいます。
ただし、厳密には、年間収入(年収)を基準に税金の計算をする訳ではありません。
給与所得者の場合、以下の順序で所得税や住民税を算出します。
- 年間収入から給与所得控除を差し引き給与所得を算出する
- 給与所得から基礎控除などの所得控除(全14種類)を差し引き課税対象額を算出する
- 課税対象額を基準に所得税(超過累進税率)や住民税(一律10%程)を算出する
この「年間収入からいろいろと考慮された金額を差し引く仕組み」を控除と呼びます。
- 控除額が多い場合
- 納めるべき税金が少なくなって嬉しい
- 控除額が少ない場合
- 納めるべき税金が多くなって悲しい
投資家やお金持ちの人達(小金持ちの人も?)の中には、常日頃から「どうすれば控除額を増やして節税できるだろうか?」と考えている人も一定数います。
控除の仕組みが理解できると「どうすれば手元にお金を残せるか?」が少しだけ見えてきます。
14種類の所得控除
所得控除にはさまざまな種類があり、なんと全部で14種類もあります。
- 担税力低下を考慮するための控除
- 雑損控除、医療費控除
- 社会政策上の要請による控除
- 社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、生命保険料控除、地震保険料控除、寄附金控除
- 個人的事情を考慮するための控除
- 障害者控除、寡婦控除(寡夫控除)、勤労学生控除
- 最低限生活費を確保するための控除
- 配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除、基礎控除
2020年の税制改正では以下の3種類の控除が改正されます。
- 給与所得控除…給与所得を算出する際に差し引かれる控除
- 公的年金控除…雑所得(公的年金)を算出する際に差し引かれる控除
- 基礎控除…給与所得や雑所得、その他の所得から最後の差し引かれる控除
ちなみに、基礎控除は14種類ある所得控除の中の一つですが、給与所得控除と公的年金控除は所得控除よりも前のタイミングで差し引かれる控除です。
基礎控除の改正
基本的に「控除」とは何か条件を満たした時に予め定められた金額が収入から差し引かれる仕組みです。ですが「基礎控除」は唯一、全ての国民に対して適応される控除です。
改定前(2019年)までの基礎控除額は所得税と住民税ともに収入に関わらず一律の税率でした。
- 所得税の基礎控除額…一律で38万円
- 住民税の基礎控除額…一律で33万円
その基礎控除が2020年1月以降、以下のように改正されます。
課税対象額 | 所得税の基礎控除額 | 住民税の基礎控除額 |
---|---|---|
2,400万円以下 | 48万円 | 43万円 |
2,400万円超〜2,450万円以下 | 32万円 | 29万円 |
2,450万円超〜2,500万円以下 | 16万円 | 15万円 |
2,500万超 | 無し | 無し |
課税対象額が2,400万円以下の人は控除額が増えるため、税金の負担は少なくなり嬉しい限りですが、課税対象額が2400万円以上の場合、逆に基礎控除額が削減され、結果的に増税になってしまいます。
今まで収入金額に関わらず一律だった基礎控除額ですが、2020年以降、収入金額によって基礎控除額が変わるため、収入が2,500万円以下の人(つまりほぼ全ての給与所得者)は「給与所得者の基礎控除申告書」を提出しなければいけなくなります。
給与所得控除の改正
給与所得控除とは給与所得者に対して適応される控除です。
個人事業主やフリーランスの場合、業務に使う備品などを経費として計上できますが、会社員や公務員などにはそのような仕組みはありません。もし会社員や公務員が業務で使う備品(スーツ、パソコン、筆記用具など)を個別で計上したら、税務署側の負担は膨大になってしまいますよね。
なので、給与所得者に対しては年収に応じて給与所得控除が適応されます。
給与所得の控除額は数年おきに改正されています。2017年〜2019年までの給与所得控除額は以下の通りです。
給与等の収入金額 | 給与所得控除額 |
---|---|
〜162.5万円以下 | 65万円 |
162.5万円越〜180万円以下 | 収入金額×40% |
180万円越〜360万円以下 | 収入金額×30%+18万円 |
360万円越〜660万円以下 | 収入金額×20%+54万円 |
660万円越〜1,000万円以下 | 収入金額×10%+120万円 |
1,000万円超〜 | 220万円(上限額) |
一方、2020年1月以降の給与所得の控除額は以下の通りです。所得金額により多少の違いはありますが、全体的に10万円の控除額が削減されています。
給与等の収入金額 | 給与所得控除額 |
---|---|
〜162.5万円以下 | 55万円 |
162.5万円越〜180万円以下 | 収入金額×40%ー10万円 |
180万円越〜360万円以下 | 収入金額×30%+8万円 |
360万円越〜660万円以下 | 収入金額×20%+44万円 |
660万円越〜850万円以下 | 収入金額×10%+110万円 |
850万円超〜 | 195万円(上限額) |
控除の上限額については、2019年までは1,000万円以上が220万円でしたが、2020年からは850万円以上で195万円の控除になります。
つまり、控除額が少なくなったため、税金の負担が増えてしまい悲しい状態になります。
なお、給与所得控除は10万円削減されていますが、その分、先程ご説明した基礎控除が10万円増加している、結果的に多くの人(年収850万円までの給与所得者)はプラス・マイナス・ゼロになっています。
所得税額調整控除の創設
年収が850万円以下の給与所得者は「基礎控除の増加分」と「給与所得控除の減少分」を相殺することにより、何も影響が無いことになります。
ですが、年収が850万円を超える給与所得者については「基礎控除額は10万円しか増分されない」にも関わらず「給与所得控除は10万円以上減少されてしまう」ため、結果的に増税になってしまいます。
そこで「所得金額調整控除」と呼ばれる制度が新しく創設されました。
給与所得が年収が850万円を超えて、その上で、以下の条件のどれかに該当する人は所得金額調整控除が適応されます。
- 本人が特別障害者である
- 年齢23歳未満の扶養親族がいる
- 特別障害者である同一生計配偶者、あるいは扶養親族がいる
そして、所得金額調整控除が適応されることにより、以下の金額が控除されます。
- 控除額=(年収ー850万円)×10%
ただし、年収1,000万円を超える場合は一律で1,000万円として計算されてしまいます。また、控除を受けるには「所得税額調整控除申告書」を提出する必要があります。
どんどん書類が増えていく。。。
青色申告特別控除の改正
青色申告制度とは納税者に正しい申告を行わせるため記帳習慣を確立させることを目的とする制度です。そして、青色申告特別控除とは不動産所得、事業所得または山林所得の金額から10万円または65万円が控除できる制度です。
改正前、つまり2019年度の事業所得として翌年2020年に提出する確定申告までの場合、青色申告の特別控除枠は以下の2通りになります。
- 10万円控除の条件
- 65万円控除の条件を満たしていない場合
- 65万円控除の条件
- 複式簿記による記帳する
- 貸借対照表および損益計算書を確定申告書に添付する
- 法定申告期限内に確定申告を提出する
- 経営が事業的規模である(不動産経営の場合)
そして、改正後、つまり2020年度の事業所得として翌年2021年に提出する確定申告からは、青色申告の特別控除枠は以下のように改正されます。
- 10万円控除の場合、そのまま維持される(改正無し)
- 65万円控除の場合、控除額が55万円に削減される
- 65万円控除の条件を満たし、かつ 電子データ化することで65万円控除を維持
つまり、65万円の控除を受けるには従来の条件を満たしていることに加え、確定申告書の電子データ化が必要になります。
ちなみに、意外と知らいない人も多いかもしれませんが、小規模な賃貸経営でも開業届を提出し、適切な処理をすることで、青色申告特別控除(10万円控除)を受けることは可能です。
青色申告特別控除で65万円控除を受けるには?
電子データ化の方法は以下の2種類です。どちらも少し複雑で面倒くさいですが、今後も控除額を65万円のまま維持するためにも、しっかり覚えておきたいものです。
e-Tax(国税電子申告納税システム) による確定申告
e-Taxとはインターネットを利用して、確定申告の手続きを電子化できるシステムです。e-Taxを利用するには以下の2点を事前に準備する必要があります。
- マイナンバーカード
- ICカードライタまたはマイナンバーカード対応NFCスマートフォン
僕も過去にマイナンバーカードを取得しましたが、完成するまでに半年近くの掛かりました。もしe-Taxによる確定申告を予定している人は可能な限り早めに対応するべきです。
ちなみに、e-Taxは確定申告の提出だけでは無く、開業届や青色申告承認申請書の提出も可能です。
電子帳簿保存による確定申告
電子帳簿保存については、e-Taxよりもさらに対応が大変だと言われます。ポイントについては以下の点が挙げられます。
- 帳簿の備え付けの3ヵ月前までに税務署からの承認が必要になる
- 課税期間の途中から適用できない
65万円の青色申告特別控除を受けることが目的であれば、まずは、e-Taxを検討すれば良いと思います。
公的年金控除の改正
公的年金は税法上「雑所得」として扱われ、所得税や住民税の課税対象として取り扱われます。
給与所得者と同様、受取額に応じて公的年金控除が適応されますが、2020年以降は公的年金控除が僅かではありますが削減されてしまいます。
まず、改正前の公的年金控除額は以下の通りです。
公的年金等の収入金額 | 公的年金等控除額 | |
---|---|---|
65歳未満 | 130万円未満 | 70万円 |
130万円超〜410万円未満 | (年金収入✕25%)+37万5000円 | |
410万円超〜770万円未満 | (年金収入✕15%)+78万5000円 | |
770万円以上 | (年金収入✕5%)+155万5000円 | |
65歳以上 | 330万円未満 | 120万円 |
330万円超〜410万円未満 | (年金収入✕25%)+37万5000円 | |
410万円超〜770万円未満 | (年金収入✕15%)+78万5000円 | |
770万円以上 | (年金収入✕5%)+155万5000円 |
そして、2020年以降、公的年金控除は以下の通り改正されます。主な変更点は以下の通りです。
- 公的年金等の収入に関わらず、一律で控除額が10万円削減される
- 公的年金等の収入が1,000万円を超える場合、控除額の上限が195万5,000円までになる
公的年金等の収入金額 | 公的年金等控除額 | |
---|---|---|
65歳未満 | 130万円未満 | 70万円 |
130万円超〜410万円未満 | (年金収入✕25%)+27万5,000円 | |
410万円超〜770万円未満 | (年金収入✕15%)+68万5,000円 | |
770万円超〜1,000万円未満 | (年金収入✕5%)+145万5,000円 | |
1,000万円超 | 195万5,000円 | |
65歳以上 | 330万円未満 | 110万円 |
330万円超〜410万円未満 | (年金収入✕25%)+27万5,000円 | |
410万円超〜770万円未満 | (年金収入✕15%)+68万5,000円 | |
770万円超〜1,000万円未満 | (年金収入✕5%)+145万5,000円 | |
1,000万円超 | 195万5,000円 |
一律で控除額が10万円削除されることについては、上記でもご説明した通り、基礎控除額が10万円増加するため、プラス・マイナスでゼロになり、特に影響はありませんが、公的年金等の収入が1,000万円を超える人は、その分だけ損してしまいます。
また、公的年金等以外の収入と合算して所得金額が1,000万円を超える場合、さらに控除額が削減されます。
- 公的年金等以外の収入と合算して所得金額が1,000万円を超える場合
- 控除額が10万円削減される
- 公的年金等以外の収入と合算して所得金額が2,000万円を超える場合
- 控除額が20万円削減される
「年金生活で年間1,000万円以上って、どんだけ恵まれてるねん?」と思いますが、このような人達は控除額が削減されるため、結果的に増税になってしまいます。
別にええやん?
現実問題として年金で年間1,000万円を超えるケースはかなり限られていて、影響を受ける人はほとんどいません。
ちなみに、公的年金控除については年金の受給だけでは無く「小規模企業共済」や「個人型確定拠出年金(iDeCo)」の受け取りの際にも影響する内容なので、制度を利用する場合は控除される概算額だけでも理解していた方が良さそうです。
各種合計所得金額要件等の見直し
2020年の税制改正により、各種控除を適応するための合計所得金額要件が見直されます。
ただし、基本的には給与所得控除が削減されたことによる見直しであり、適応要件を満たすための年収自体は今までのままです。つまり特に何か大きな変更がある訳ではありません。
同一生計配偶者および扶養親族の控除対象者
配偶者控除や扶養控除を受けるための適用要件が以下の通り改正されます。
- 改正前(2019年まで)
- 合計所得金額が38万円以下
- (年収103万円から給与所得控除65万円を差し引いた額)
- 改正後(2020年以降)
- 合計所得金額が48万円以下
- (年収103万円から給与所得控除55万円を差し引いた額)
源泉控除対象配偶者
2018年度の配偶者控除および配偶者特別控除の改正により新たに加えられた源泉控除対象配偶者の要件についても以下の通り改正されます。
- 改正前(2019年まで)
- 合計所得金額が85万円以下
- (年収150万円から給与所得控除65万円を差し引いた額)
- 改正後(2020年以降)
- 合計所得金額が95万円以下
- (年収150万円から給与所得控除55万円を差し引いた額)
配偶者特別控除の対象者
配偶者特別控除を受けるための適用要件が以下の通り改正されます。
- 改正前(2019年まで)
- 合計所得金額が38万円超〜123万円以下
- (年収103万円超〜201.6万円以下から給与所得控除を差し引いた額)
- 改正後(2020年以降)
- 合計所得金額が48万円超〜133万円以下
- (年収103万円超〜201.6万円以下から給与所得控除を差し引いた額)
勤労学生控除の対象者
配偶者控除や扶養控除を受けるための適用要件が以下の通り改正されます。
- 改正前(2019年まで)
- 合計所得金額が65万円以下
- (年収130万円から給与所得控除65万円を差し引いた額)
- 改正後(2020年以降)
- 合計所得金額が75万円以下
- (年収130万円から給与所得控除55万円を差し引いた額)
家内労働者等の事業所得の必要経費算入
家内労働者の事業所得などにおいて必要経費として計上できる最低保証額が以下の通り改正されます。
- 改正前(2019年まで)
- 計上できる最低保証額が65万円まで
- 改正後(2020年以降)
- 計上できる最低保証額が55万円まで
なお、家内労働者の具体的な仕事内容としては「内職」「新聞の集金」「検針員(水道、電気、ガスなど)」「ヤクルトレディ」などが含まれます。
家内労働者の必要経費として計上できる最低保証額については、給与所得控除の削減とは直接的な因果関係はありませんが、給与所得控除が10万円削減されたことを考えると、妥当な改正だと言えます。
得する人と損する人
この記事の冒頭でもお伝えしましたが、2020年の税制改正により、税金の負担が大きく増減する人はそれ程多くないと思います。ですが、僅かながら得する人と損する人がいるのも事実です。
自分は得するのか?損するのか?を把握しておくことで、何か対策ができるかもしれません。
まずは、2020年の税制改正により税制面で得する人は以下の通りです。
- フリーランス、個人事業主、投資家、不動産経営者
- 確定申告を電子化し青色申告特別控除(65万円)を維持できた場合、基礎控除の10万円増加分だけ控除額が拡大する
- 扶養控除を受ける人
- 基礎控除の10万円増加分だけ控除額が拡大する
次に、2020年の税制改正を受けてもほとんど影響が無い人は以下の通りです。
- 給与が850万円以下の会社員
- 基礎控除が10万円増加するが、給与所得控除が10万円削減されるため影響無し
- 年金受給者(合算の所得金額が1,000万円以下)
- 基礎控除が10万円増加するが、公的年金控除が10万円削減されるため影響無し
最後に、2020年の税制改正を受けて損してしまう人は以下の通りです。
- 給与が850万円以上の会社員
- 基礎控除は10万円増加するものの、給与所得控除が10万円以上削減されるためトータルの控除額が削減される
- 年金受給者(合算の所得金額が1,000万円超)
- 基礎控除が10万円増加するが、公的年金控除が大きく削減されるためトータルの控除額が削減される
- 2400万円以上の会社員や個人事業主
- 基礎控除が6万円以上削減され、かつ給与所得者の場合は給与所得控除も25万円削減されるためトータルの控除額が大きく削減される
- 給与所得を取得している年金受給者
- 基礎控除が10万円増加するが、給与所得控除と公的年金控除のそれぞれで10万円ずつ(合計20万円)削減されるためトータルの控除額が10万円削除される
基本的には給与所得者にしても個人事業主(フリーランス)にしても、年間収入が大きければその分、税制面での負担が大きくなる結果になりました。
お金持ちは税金を沢山払うべき?
2020年からの税制改正については以下のようなポイントがあります。
- 高所得者に対して増税することで格差を是正する
- 働き方改革を目指した考え方が反映されている
- 国が少しずつ(副業も含めて)個人事業主やフリーランスを推奨している
中でも貧富の差を縮小することで、所得の再分配が実現されることを期待している人も多いと思いますが、現実問題として、本当に格差を是正することは可能なのでしょうか?
これは、あくまで僕個人的な考えなのですが、税制改正によって格差を是正するのは、そう簡単なことでは無いと思います。
政府主導の政策を宛にして格差を縮めたい一般の人が、どれだけ「お金持ちはその分たくさん税金を払うべきだ!」と主張しても、常日頃から税金対策をしている富裕層にはそう簡単には勝てません。
確かに超過累進税率では、収入が増えれば増える程、納めるべき税率もどんどん増えていきますが、それは個人の給与所得や事業所得などに限った話です。
富裕層の場合、給与所得や事業所得に比べて、さまざまな収入源があるはずです。
配当所得の割合が多ければ、適応税率は超過累進税率よりも遥かに抑えられますし、事業の規模が一定以上になれば会社を設立することで、個人の超過累進税率では無く、法人税として税金を圧縮することもできますし、その上、経費計上が可能な範囲も拡大します。
つまり、一般の人達が思っている程、格差は埋まりません。
少し精神論になってしまいますが、他力本願の考え方では無く、どうしたら収入を増やせるか?どうしたら納めるべき税金を減らせれるかは、経営者や投資家に関わらず、全ての人が考えていくべき課題だと思います。
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