大規模修繕工事を成功させるためにはたくさんの課題があります。
適切に対応しないと予想以上にコストが掛かってしまったり、工事期間が長くなってしまいます。
大規模修繕工事の実施を左右する劣化調査
大規模修繕工事を実施するには建物の劣化調査を実施し、「大規模修繕工事を実施する必要があるのか?今はまだ実施しなくても良いのか?」を判断する必要があります。
大規模修繕工事を実施するまでの間隔は一般的には10年〜15年くらいと言われますが、最終的には劣化調査の結果をもとに工事の実施を決定します。
建物劣化調査の5つの試験方法
建物劣化調査には以下のような試験項目があります。
- 目視調査
- 外観を目視することで「欠損」「ひび割れ」「膨れ」などの状況を確認します。
- 打診調査
- テストハンマーや打診棒などを使い外壁の表面を打診し、診断音の違いにより劣化状況を判断します。
- 中性化試験
- 本来、コンクリートはアルカリ性なのですが、雨や排気ガスなどの影響により徐々に酸化していきますが、コンクリートが酸化することでその内部にある鉄筋が錆びやすくなってしまうため、コンクリートよりサンプルとなるコアを一部採取し、中性化の進行状況を測定します。
- 引っ張り試験
- 外壁タイルや塗膜(塗料)の下地に対する粘着強度を診断します。
- 物性試験
- コンクリートの劣化状況の確認や劣化原因の調査をします。
実数精算方式とは
劣化調査では目視や手の届く範囲の状況をもとに全体的な修繕範囲を想定しますが、最終的には足場を組んでから詳細な劣化状況を確認した上で修繕工事の見積もりを作成します。
そのため以下のような問題点があります。
- 想定以上に劣化が進んでいる場合、その分、工事費用が高額になる
- 想定以上に修繕箇所が多い場合、その分、材料の調達に時間が掛かり、工事期間が長期化する
これらの問題点は実際に足場を組んでから初めて判明することなので、この辺りも十分考慮して計画しないと工事費用、工事期間共に対応できないようになってしまいます。
劣化調査の注意点
劣化調査は大規模修繕工事を成功に導くためにとても重要です。失敗しないためには以下のような注意が必要です。
修繕積立金ありきの工事内容にしない
大規模修繕工事を実施するためには、しっかりと毎月の修繕積立金を準備しておく必要があります。資金に不足があれば十分な修繕工事を実施できないからです。
ですが、修繕積立金の金額を基準とした修繕工事するのでは無く、本当に必要な部分だけを対処することで、修繕積立金をストックしておき、次回以降、本当に必要になった時に有効活用したいものです。
工事の実施には客観的な決断が必要
劣化調査を実施する会社が、その後の大規模修繕工事を実施する業者が同一の会社だったり、利害関係のある会社(仲介会社など)である場合、大規模修繕工事を実施することにより結果的に劣化調査を実施した会社の利益につながることになります。
そのため、仮にまだ大規模修繕工事が必要な段階では無かったとしても「すぐにでも対応が必要」という内容の調査報告書を提出してくる可能性が考えられます。
また大規模修繕工事の実施により利益を得る仲介的な立場の会社は工事費用が高額になれば、その分、自社の売上げ(利益)が大きくなるのが一般的です。
なので、調査報告書の結果内容をうのみにするのでは無く、工事の依頼者側(管理組合側)としてもその内容を客観的に評価し、必要な時期に必要な修繕工事を実施できるように適切に判断しなければいけません。
大規模修繕工事のその他の問題点
大規模修繕工事にはその他にも以下のような問題点があります。
- コンサルタントの介入による費用負担の高騰
- 工事会社の多重請負構造による中間マージン
- 能力不足、職人不足による工事期間の長期化
- 過剰なサービス
- 不要または必要以上の無駄な工事
- 不適切なタイミングでの工事の実施
- 品質の低い工事による想定外の追加費用
大規模修繕工事の問題点についてはこちらの記事で詳細に説明しているので、今後、大規模修繕工事を検討されている方には、是非、読んで頂ければと思います。
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