大規模修繕工事の4つのステップ!建物が劣化する仕組みについて

大規模修繕工事 老朽化対策
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投資用物件を保有していたり、区分マンションを購入して方は「大規模修繕工事」という言葉を聞いたことがあると思います?

不動産経営に関わる対応の中でも大規模修繕工事は不透明な部分が多く、非常に分かりづらい対応の一つです。今回は大規模修繕工事の仕組みについて初心者でも分かりやすいようにまとめてみました。

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大規模修繕工事とは

不動産を維持する上で「大規模修繕工事」はとても重要な取り組みの一つです。

何故、重要なのかと言うと以下のようなことが挙げられます。

  • 工事に掛かる費用がとても大きい
  • 工事期間が比較的、長期間(数ヶ月程)になる
  • 数年(一般的には10年〜15年)に1回しか実施しない
  • もしミスや不備があれば改修するためにより大きなコストが掛かる

仮に、大規模修繕工事を依頼する場合、以下のような不安を感じる方も多いと思います。

工事会社から出された見積もりは適正価格なのか?

一般的な商品と違い相場が分かりにくい。

どの会社に依頼すれば良いのか?

工事会社が沢山ありすぎて、選びきれない。

どのように進めれば良いのか…?

何から始めれば良いの?そもそも工事する必要があるの?

大規模修繕工事の目的は?

大規模修繕工事とは建物の劣化を防ぐために一定期間ごとに共用部分を修繕する工事のことです。

主な目的は以下の2点です。

  • 劣化箇所の修繕
  • 住環境の向上

勿論、その次代のトレンド(流行)を取り入れて、入居者ウケするデザインにすることで集客効果を高めることも重要ですが、まずは「劣化箇所の修繕」と「住環境の向上」が再優先事項になります。

そして経営者側としては大規模修繕工事に掛かった費用を、将来どのようにして回収していくのかも考えるべきです。つまり「入居率」や「家賃相場」を高められるような工事を目指さないと、「高いお金を掛けたのに効果はほとんど得られない」ということになってしまいます。

大規模修繕工事は高い費用対効果を得られるようにお金の掛け方を考える必要があります。

大規模修繕工事は具体的に何をするの?

大規模修繕工事は建物の外壁などを対象とした工事ですが、主に以下のような内容が含まれます。

  • 躯体などの修繕、シーリング改修
  • 外壁、内壁、天井、鉄部などの塗り替え
  • 屋上やバルコニー、開放廊下などの防水改修

入居者の入替りのタイミングで実施する内装工事と比べて、大規模修繕工事は少し一定の工事期間が必要になります。工事期間は物件の規模によって異なりますが、一般的な目安としては以下の通りだと言われています。

物件の規模ごとの工事期間の目安
戸数工期
30戸未満2ヶ月
30戸〜49戸3ヶ月
50戸〜99戸4ヶ月
100戸以上4ヶ月〜6ヶ月

ちなみに退去時に必要となる各部屋ごとの内装の修繕工事についてはこちらの記事で詳しくまとめています。

長期修繕計画と修繕積立金

長期修繕計画は不動産が販売されるタイミングで、将来の修繕予定を計画したものとなります。

大規模修繕工事を実施するまでのスケジュールが記載されていますが、一般的には30年ほど先の未来までを計画していることが多いです。あくまでも「計画」なので必ずしもその通りに進むとは限りませんが、もし長期修繕計画が無いような物件の購入は避けるべきかもしれません。

区分マンションの場合、大規模修繕工事に備えて各区分所有者が修繕積立金を毎月積立てて準備しています。一方、一棟物件を所有している場合は全ての積立金を物件大家が準備します。

なので中古物件を購入する場合は「修繕積立金がしっかりと積み立てられているか?」も大きなポイントになります。例え物件価格が安かったとしても、修繕積立金が十分に確保されていなかった場合は、購入者側が大規模修繕工事のお金を捻出しなければいけなくなるため要注意です。

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大規模修繕工事に関わる登場人物

大規模修繕工事には実際に工事を請け負う会社以外にも沢山の関係者が登場します。

管理組合

大規模修繕工事を依頼する側の人達です。

区分所有法に基づき「マンションの区分所有者全員」で構成する団体です。当然、一人(一社)の家主が一棟物件を所有している場合は所有者が管理組合の立場となります。

管理会社

管理組合から委託を受け管理業務を行う会社です。

一括委託の管理会社と一部の業務を委託する一部委託の管理会社があります。

日頃からマンションを管理業務をしているため、物件の問題点や特徴を細部まで把握しているはずです。

工事会社

工事を担当する会社です。

直接工事を受ける元請け会社が工事を担当することもあれば、元請け会社からの依頼を受けて、下請け会社や孫受け会社が工事を担当することもあります。

コンサルタント(監理する機関)

コンサルタントとは実際に工事を担当する工事会社とは別に第三者的な立場から工事の設計や監理を行う専門家です。主に以下の3パターンに分類できます。

  • 管理会社
  • 一級建築士事務所
  • 専門のコンサルティング会社

第三者機関に依頼することで工事の品質を担保できますが、コンサルティング会社側のレベルによっては十分な効果が得られないこともあるため、監理する機関を見極める必要もあります。

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大規模修繕工事の4つのステップ

大規模修繕工事は主に以下の4つのステップですすめられます。

  1. 工事実施の決定
  2. 工事内容の決定
  3. 工事会社の選定
  4. 工事の実施(施工・確認・引き渡し)

それぞれのステップについてもう少し詳しく見ていきます。

工事実施の決定

先程もお伝えしたように大規模修繕工事は10年〜15年程の周期で実施されます。

大規模修繕工事を実施する周期に幅がある理由には以下のようなことが挙げられます。

  • 日射や風雨、使用状況による劣化の進行具合
  • 日常的な手入れ(小規模な修繕や清掃など)

なので一定の時期になると建物の劣化状況を調査し「劣化が進んでいるため大規模修繕工事を実施する必要があるのか?」もしくは「それ程劣化が進んでいないため、一旦、大規模修繕工事を見送るのか?」の判断をすることになります。

劣化が進んでしまうと、改修するためのコストが大きくなってしまいますが、不要な大規模修繕工事を減らす(後ろ倒しにする)ことも、大切な修繕積立費を守るためには大切なことです。

工事内容の決定

もし大規模修繕工事を実施すると判断した場合、次は工事内容を決める必要があります。

購入者が入居する区分マンションであれば区分所有者ごとの希望を取り入れる必要があります。

また賃貸経営用の物件の場合も、全ての箇所に対して満足のいく対応ができれば一番良いのですが、実際は限られた予算の中でやりくりするため「入居者を確保し維持し続けられること」や「費用対効果が高いこと」を踏まえて「どこにお金を掛けて、どこを見送るのか?」の取捨選択をします。

賃貸経営として考える以上、「投じた初期投資に対して何年で改修できるのか?」はとても大切な指標になるはずです。

工事会社の決定

工事内容が決定したら、次は会社選びです。

会社情報や過去の工事実績などを参考に数社をリストアップし、その中から見積内容や工事スケジュールの説明などを踏まえて最終的な1社を選びます。工事費用だけで決めるのではなく、提案内容やその会社の特徴なども理解した上で工事会社を決定します。

工事の実施(施工・確認・引き渡し)

選定された工事会社と管理組合との間で契約を結び、工事が進められます。

また、工事の進行に伴い、以下のタイミングで管理組合側のチェックを行うのが一般的です。

  • 足場解体前
  • 工事完成引渡し前

責任施工方式と設計監理方式

これらの4ステップの進め方としては、責任施工方式と設計監理方式の2種類に分けられます。

責任施工方式の特徴

大規模修繕工事に関わる「設計」「施工」「品質管理」の全ての工程を工事会社が単独で行う方式です。全ての工程を一社で対応できるため仲介手数料等のコストが掛からない反面、工事会社ごとの見積書の比較が難しく、また第三者による相互チェックが行われないデメリットもあります。

設計監理方式の特徴

管理会社や一級建築士事務所などのコンサルタントが第三者の立場で管理組合をサポートします。

ただしコンサルタントに適切な判断能力や監視能力が無いと、返って割高になってしまう可能性もあります。

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大規模修繕工事を検討する前に

大規模修繕工事は一般的な内装の工事と比べても一桁も二桁も価格が変わってきます。

その仕組みを理解することで少しでも最良の選択をできるように備える必要があります。

その他の選択肢は無いのか?

そもそも大規模修繕工事の実施する必要があるのか?を見極める必要があるかもしれません。

高い費用を支払って大規模修繕工事をしても、将来、それに見合った利回りの確保が期待できない場合、以下のようなことを検討する必要があります。

  • 古い物件を壊して立て直しをする
  • 売却して別の物件を購入する

必ずしも大規模修繕工事をすることを前提として考えるのでは無く、それ以外の出口戦略と並行して検討すること必要があります。

出口戦略についての考え方についてはこちらのの記事でもう少し詳しく解説しています。

修繕費と資本的支出との違いを理解する

物件を維持するには大規模修繕工事以外にも沢山のメンテンナス項目があります。

修繕工事を実施する上で修繕費と資本的支出の違いを理解することは税金対策をする上でもとても重要なことになります。「何が経費として計上できて、何が経費として計上できないか」を把握しておく必要があります。

工事価格を高騰させている要因は?

大規模修繕工事の工事価格を高騰させている要因には以下のようなものが挙げられます。

  • コンサルタントによる談合・リベート
  • 工事会社の仕組み(下請け・孫請け)による価格上昇
  • 必要以上に手厚い過剰な工事

以下の書籍にも具体的な数字をもとに詳しく説明されていました。

初心者にも分かりやすい内容になっていたのでオススメの一冊だと思います。

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プロフィール

楽待新聞&不動産投資Libraryのコラムニストをしています。
普段、不動産投資家として考えていることや体験談などを掲載しています。
これから不動産投資を始めたい方や、賃貸経営初心者の方に対して、分かりやすい内容を心掛けています。

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