不動産投資をするためには数百万〜数千万以上の資金が必要になります。
そのため、多くの投資家は金融機関から融資を受けて対象の物件を購入します。
一般的に金融機関が不動産価格を算出する場合、以下の3種類の算出方法を基準として融資額を検討します。
- 積算価格(原価法)
- 比準価格(取引事例比較法)
- 収益還元法
この記事では、比較的良く採用される「積算価格」について解説します。
- 積算価格の計算方法や特徴を理解したい人
- 賃貸経営において金融機関の融資基準を知りたい人
金融機関の融資評価は積算価格で算出される?
金融機関からお金を借りるには融資の審査があり、さまざまな情報から総合的に融資額が判断されます。一般的には以下のような情報が基準になります。
- 物件の評価額、期待できるキャッシュフロー
- 投資家の過去の投資実績、資産額
- 投資家の属性(勤続年数、年収)、人間性
勿論、投資家自身の過去の投資実績や人間性なども大切ではあるのですが、それと同じくらい、もしくはそれ以上に重要なのが「投資用物件の評価額」です。
そして投資用物件の評価額を算出するのに良く利用される計算方法が積算価格です。
物件評価額はあくまで参考値であり、融資基準についても金融機関や融資の時期によって変動します。そのため、必ずしもその金額が保証されるものではありませんが、積算価格の計算方法を理解しておけば「この物件であれば○○万円の融資は期待できるかな?」と、ある程度、融資限度額を予想することができます。

積算価格の計算方法
積算価格には以下の2つのポイントがあります。
- 再調達原価
- 対象の不動産を、再度、建築した場合に掛かる費用
- 原価修正
- 経過年数分の価値の低下(経年劣化)を差し引く費用
積算価格の算出方法を原価法と呼ばれることもあります。積算価格も原価法は厳密には違う意味ですが、同じようなイメージで理解しておいて特に問題無いと思います。
土地価格と建物価格を別々に評価して算出されます。
- 積算価格=土地価格+建物価格
ここからは、土地価格と建物価格について具体的な計算方法を解説します。
土地の計算方法
土地の計算方法は以下の通りです。
- 土地価格=1㎡辺りの土地価格×土地面積
土地の計算をするには以下の価格を基準とします。
- 公示価格(または基準地価)
- 路線価(相続税路線価)×土地面積
- 固定資産税評価額×土地面積
路線価(相続税路線価)は公示価格の80%程、固定資産税評価額は公示価格の70%程です。
公示価格をそのまま土地価格とする場合もありますが、一般的には公示価格の80%である路線価(相続税路線価)をもとに土地の価格を算出することが多いです。
また、以下のような条件によっては土地の価格が増減されることもあります。
- 商業地域や都心
- 10%の増額
- 利用価値(利用用途)の高い角地
- 一番高い評価額で計算し、さらに10%の増額
- 二面の道路に面する土地
- 一番高い評価額で計算
- 利便性の低い旗竿地(道路に接する出入口部分が細い土地)
- 30%の減額
「公示価格(基準地価)」「路線価(相続税路線価)」「固定資産税評価額」については以下の記事て詳しく解説しています。

建物の計算方法
建物の計算方法は以下の通りです。
- 再調達価格×延床面積×(残耐用年数÷耐用年数)
1㎡辺りの再調達価格は以下の通りです。
建物の構造 | 1㎡辺りの価格 |
---|---|
鉄筋コンクリート | 18万円/㎡〜20万円/㎡ |
重量鉄骨 | 15万円/㎡〜18万円/㎡ |
軽量鉄骨 | 12万円/㎡〜15万円/㎡ |
木造 | 12万円/㎡〜15万円/㎡ |
建物構造ごとの耐用年数は以下の通りです。
減価償却の法定耐用年数物件の種類 | 耐用年数 |
---|---|
鉄筋コンクリート(RC) | 47年 |
重量鉄骨 | 34年 |
軽量鉄骨 | 27年 |
木造 | 22年 |
建物の再調達価格についても金融機関ごとに評価基準が異なりますが、面積(延床面積)と耐用年数(残耐用年数)を基準とする基本方針はどこの金融機関でも大差は無いはずです。
当然ながら、建物は築年数が経過するごとに劣化が進んでしまい、資産価値も目減りしていきます。この考え方を減価償却と呼びます。
賃貸経営をする上では減価償却費や法定耐用年数の考え方は切っても切り離せない程重要なポイントになります。以下の記事で丁寧に解説していますので、聞き馴染みが無かった方は、是非、このタイミングで覚えて頂ければと思います。

規模拡大には融資戦略が必要
融資に影響を与える要因や物件の融資評価額が把握できたとしても、それだけで簡単に融資を受けられる訳ではありません。勿論、好条件で融資を受けれる可能性はかなり高まりますが、ちょっとした対策や事前準備で好条件の融資を受けられる可能性をさらに高めることができます。
融資戦略は準備が大切
融資戦略を融資に進めるには、以下のようなポイントが重要になります。
- 準備する資料
- 物件資料、本人確認資料、所有物件情報など
- 融資を依頼する金融機関、店舗
- 不動産融資に積極的な金融機関、店舗
- 融資を依頼する時期
- 融資審査の基準が緩みやすい時期
これらは小手先のテクニックのようにも思えますが、ちょっと工夫するだけで大きな効果が得られる場合もあります。融資戦略の考え方については以下の記事で詳しく解説しています。

金融機関から紹介された物件は安心?
金融機関から効率良く融資を受けることが賃貸経営の成功に繋がる訳ですが、そうすると以下のように思う方もいるかもしれません。

金融機関からの融資を受けるためには得るために紹介された物件を購入すれば安定した賃貸運営ができるのでは無いか?
ですが、残念ながらそれ程話は単純ではありません。
確かに金融機関側としては、積算価格、比準価格、収益還元法などによって算出された評価額をもとに融資判断を下します。
ですが、僕たち賃貸経営者は、利回りやキャッシュフローなどに重きを置いて物件探しをするはずです。
つまり、賃貸経営者と金融機関では物件に対して着目するべきポイントが全然違う訳なので、必ずしも「金融機関が紹介する物件=投資効果が高い物件」にはなりません。
また、金融機関側にも、それぞれの立場や利害関係があったりするため「利害関係無しの中立的な意見」を求めることも難しいかもしれません。
金融機関の担当者は融資の専門家ではありますが、賃貸経営のプロではありません。
先入観や思い込みだけで物件の購入を判断するのでは無く、必ず自分の頭で考えて判断する必要があります。

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