モノの値段は需要と供給で決まります。
そのルールは賃貸物件も同じです。
家主としては少しでも高い賃料で部屋を借りて欲しいです。
一方、入居者は少しでも値段を抑えられた条件の良い物件を探します。
今回は賃貸物件の家賃設定についてまとめてみます。
入居者募集の時期がポイント
空室期間が長期化しないためには家賃設定と仲介手数料を適切に設定しなければいけません。
設定金額決定の方針は、家主ごとにさまざまですが「入居者の目線になること」と「仲介会社の立場を理解すること」の両方が必要になります。
そしてその両方を考える上で大きなポイントになるのが「入居者募集の時期」です。
不動産業界には繁忙期が言われる時期があります。
学生にしても会社員にしても最も生活環境が変わるのは4月ですよね。なのでその少し前には新しい生活に備えて部屋探しをすることになります。なので2月〜3月頃が最も入居者の入れ替わりが多い時期になります。
一方、春から夏の終わり頃までは「オフシーズン」と言われます。
就職や入学などの環境の変化は新年度が始まると一旦落ち着くため、その時期を過ぎてしまうとそもそも部屋探しをする人の数が大幅に減ってしまい、例え地域内に競合物件がいなかったとしても空室が続くリスクは増えてしまいますし、さらにその空室が長期化する可能性もあるため、多少入居条件を調整してでも入居者を獲得する必要があります。
また、繁忙期以降の時期は入居者もじっくり部屋を探す傾向もあり、売り手市場から買い手市場に反転するため、大家からすれば空室の場合はかなり長期になることも覚悟する必要があります。
つまり繁忙期とオフシーズンでは家主側の戦略もこのように変わります。
- 繁忙期
- 多少、家賃設定を高くし、仲介手数料を低く設定しても、一定数の入居希望者が見込めるため、無理に価格を下げる必要は無い
- 家主としては強気の姿勢が取れる
- オフシーズン
- 空室期間が長期化することを防ぐため、可能な限り、家賃設定を安くし、仲介手数料を増やす必要がある
- 家主としてはやや弱気な心理状態になる
繁忙期だろうがオフシーズンだろうが、空室が続けば収入への影響は同じです。だったらオフシーズンの間は入居者確保のため、一定期間の値引きやそれなりの優遇も有効です。
差別化できるような特徴のある物件なら話は別ですが、そうで無い場合は、キャッシュバックしてでも入って欲しいくらいです。
長期の空室期間を出すくらいであれば、多少大胆な手法でも結果的にはプラスにすることも見込めます。
適切な価格が設定できているか?
仮に5年前に50,000円の賃料で募集を掛けていた物件だとしても、今現在、同じ賃料を設定できるとは限りません。例えば次のような場合は家賃を下げる必要があるかもしれません。
- 家賃設定を見直していない
- 当初は新築物件であり新築プレミアムの分、割高な設定が可能だった
- デザインや設備機能が時代のニーズにマッチしていない
- 専有部分や共有部分の老朽化が進んでいる
- 地域相場の調査、競合物件のリサーチが不十分である
- 入居者の絶対数が減ってしまったため地域相場が安くなる
- より築年数の浅い競合物件が増えた
- インターネット無料等のオプションが充実した競合物件が増えた
家賃設定は必要に応じて見直す
しっかりと日々の管理を行い計画的な修繕工事が行われていたとしても、やはり物件は劣化するものです。新築や築浅の場合はあまり意識することはありませんが、物件が建てられてからの築年数が経ってくるとその分老朽化は進みます。
実際にはそれ程老朽化していなかったとしても、マンションのデザインや設備機能が現在のニーズにあっていなかったら入居者付けが難しくなるため、その場合も家賃設定を見直す必要があるかもしれません。
周りの環境も正しく把握する
HOME’Sなどのポータルサイトでは、周辺の家賃相場や入居者の家賃希望額を確認出来ます。
ですが、空室を埋めることが目的の場合はその相場額よりさらに値段を下げることも時には必要です。
理由は「現状の家賃相場」とはより正確に言い換えれば「現状も売れ残ってる入居者がいない物件の家賃相場」なので、その相場に金額を合わせても価格競争で優位に立つことはできません。

競合物件より劣っていないか?
競合物件にも競り勝つ必要もあります。
入居希望者がこれから住む物件を探す場合、基本的には最初に地域や最寄駅などを決めるはずです。なので入居者争奪戦の相手はその同じ地域内の物件になります。
人気(需要)のある地域で物件を所有することが大前提ですが、もし同じ地域内に競合となる相手がいないのであれば多少強気な家賃設定でも入居者は付いてくれます。
一方、同じようなスペックで競合となる物件がたくさんあれば、その分競争率が上がってしまいます。
勿論、他の物件と競い合っても差別化できるようなポイントがあれば価格は維持できますが、それが難しければ価格を下げてでも入居者を獲得する必要があります。
もし近くに新築の物件が建てられていたりしたら大きな脅威となるためある程度リサーチする必要がありそうです。
また、もし部屋の設備や品質面で勝負したいのであれば退去者が出てから慌てて考えるのでは無く、ある程度満室経営ができていて時間的にも精神的にも余裕がある時に検討を進めることが有効です。
空室時と満室時では家主の精神的な負担も違ってくるはずです。家主として豊富か経験があれば、空室になって動じることも少ないかと思いますが、僕のような経験の浅い小規模経営の場合は、やはり少し焦ってしまいそうです。
満室経営の時こそ、いろいろな対策を検討するのに適していると言えます。
掲載情報の見直しも必要
インターネットのサイトで情報を掲載する場合、まず大前提として最低限の情報や画像を掲載するが大切です。ここが不十分な場合、サイトの利用者に不満を感じさせることも多く、これでは意味がありません。また、それ以外にもちょっとしたテクニックでも、自分の物件を目立たせる方法もあります。

「検索する側」を意識する
例えば、大阪市内の築浅(新築〜築15年程)ワンルームマンションの場合、大体の相場は50,000万円〜55,000円程になるのですが、仮に、入居者がSUUMOなどの住宅情報サイトで検索する場合、主に以下の2ステップで物件の詳細を確認するはずです。
- 賃料、立地、間取り、築年数等の条件を選択する
- 該当条件を元に並べ替えをする
金額で条件を指定する場合、5,000円刻みで設定される場合が多いです。具体的にはこのようなイメージです。
- 4,5000円〜50,000円
- 50,000円〜55,000円
- 55,000円〜60,000円
その上で価格設定をする場合、このようなポイントを理解しておくと、入居希望者へ自身の物件を効率良く閲覧してもらえます。
- ○○円〜○○円のカテゴリ内に入ることができるか?
- 該当のカテゴリに入れなければそもそも見てもらうことはできない
- カテゴリ内で賃料が安い場合
- 昇順設定の場合、上位に表示されるためスクロールされなくても見てもらえる可能性が高い
- 降順設定の場合、下位に表示されるためスクロールされなければ見てもらえる可能性が低い
- カテゴリ内で賃料が高い場合
- 昇順設定の場合、下位に表示されるためスクロールされなければ見てもらえる可能性が低い
- 降順設定の場合、上位に表示されるためスクロールされなくても見てもらえる可能性が高い
つまり、以下のようなポイントを考慮して価格を設定すると良いと思います。
- 一つでも安いカテゴリに入ることができるか?
- 該当カテゴリ内で上位に表示されるか?
管理費を含めた家賃設定も大切
賃料を安くして検索結果を優位にできれば、ポータルサイト利用者の目に留まる可能性は増えますが「賃料」だけでは無く「賃料+管理費用」であるトータルの「入居者負担額」を基準にすることも有効です。
できれば以下の両方を網羅できればより効果的です。
- 賃料だけでも検索結果を優位にできる
- 賃料+管理費用の合計でも検索結果を優位にできる
共通することとしては、中途半端に上の金額の範囲になってしまう場合は思い切って値下げして一つ下の範囲に含められるようにする方がチャンスが増える可能性が高くなります。
もし家賃を50,500円にしている場合は、可能であれば50,000円にする事が出来ないか一度考えてみる価値はあると思います。
ギリギリでも良いので下の範囲に入り検索でヒットすればチャンスはあります。ギリギリでヒットしても表示順が最後の方になってしまうような気もしますが、その範囲にさえ入ってしまえば掲載される順番を「賃料の高い順」に並べ替えられれば、一気にチャンスが増えるかもしれません。
該当範囲内で「築年数」で並び替えする人もいれば「部屋の広さ」で並び替えする人もいます。
なので、「価格の高い順」で並べ替えをする人も十分いるのです。
敷金と礼金の考え方
価格調整を工夫して利用者に部屋を見てもらえたら、次は家賃以外での優位性をアピールしたいところです。
月々の家賃料を下げることは長期的に考えると少しインパクトがあるかもしれませんが、敷金や礼金であれば多少下げても一度きりです。
最近では大阪や神戸でも「敷金・礼金ゼロ」の物件も増えてきているので、少しでも値引きできれば印象は良くなります。
ゼロ・ゼロ物件など初期費用を低めにすることを想定する場合は、その分、月々の家賃料をあらかじめ少し高めに設定しておけば収入源も少なくて済みます。
売却を想定した際の家賃設定は?
近い将来、売却を視野に入れる場合は家賃設定を高くするべきです。
それは「家賃設定が物件の売却価格に大きく影響を与えるから」です。
投資用物件の売買価格を決める場合、主に収益還元法をもとに金額を計算します。
勿論、周辺相場や競合物件の賃料よりも極端に高い賃料の場合は、信憑性が無いと判断されますが、基本的には月々の家賃設定をもとに収益還元法により売買価格が算出されます。
空室期間の損失を考えると、多少安い賃料でも、速やかに入居者を募集することが大切ですが、売却を想定した場合は、逆に多少空室期間が長期化したとしても、高い賃料で入居付けを目指す方が、トータルとしては大きな収益になると思います。

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